ゆうぽむの間に挟まりたくねぇ!   作:ぁさ

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10-⑦

 

 

 

 

「やっほー☆元気してるー?^^」

「なっ……!?いつからそこに……!?」

「ついさっき。てかそんなんどうでも良いしーw」

「くえっ!?」

 

 

 くっそウザいテンションで背後の茂みから飛び出し、ベンチに座った侑にしがみつく。足まで使ってガッチリと。椅子の上でおんぶしてるような感じだ。うーん、我ながら良い不審者っぷりだねぇ!

 

 

「なるほどなるほど?少なくとも侑が歩夢ちゃんに対して何したのか、何を考えてるのはよーく分かったよ。愛ちゃん、盗み聞きと割り込み、ゴメンね?」

「んーにゃ、良いよ愛さんは。けど……」

「は、な、し、て……!」

「誰が離すか」

「ぬぐぐぐぐぐ……!」

 

 

 いっしょーけんめー力を入れてるみたいだけど、もう全然ダメ。璃奈ちゃんと腕相撲して負けるような奴に振りほどかれるつもりは無い。基礎体力はあるのに、筋肉の使い方がへたくそなんだよなぁ……歩夢ちゃんに言わせれば"そういう所も可愛いの"って感じなんだろうけど。

 

 

「…………」

「おーおーぶすくれちゃって。可愛いお顔が台無しだねぇ」

「後ろからしがみついてるのに顔が見れるわけないじゃん……あと嘘くさい」

「心にもない事を言ってごめんねー」

「謝るくらいなら最初から言わないで」

「"内緒事されてたら悲しい"って言ったやつから隠し事されてたんだ。これくらいの仕返しは許してよ」

「…………」

 

 

 ようやく抵抗は無意味と悟ったのか、口撃に切り替えて来た。

 けど、ざーんねん。同好会皆のパワーを授かったスーパーモードのワタシにそんな程度じゃ効きませーん……もしニチアサとかでこんな邪悪なパワーアップしたヤツが出てきたら我ながら嫌だなぁ……

 

 

「侑。ワタシの言いたいこと、分かる?」

「……私に怒ってるのは分かる」

「その理由」

「…………」

「じゃあ言ってやる。いい加減もうウンザリなんだ」

 

 

 ウンザリ。

 その言葉に、ビクリ、と侑の体が跳ねた。何を言われるんだろう、そんな恐れが伝わってくる。

 そんな侑に構わずワタシは、今日この日までの万感を込めて。

 

 

「侑。あんた歩夢ちゃんのこと、なんだと思ってんの?」

「…………は?」

 

 

 頭の中まで染み入るように耳に口を近づけて、ただ心のままに、語りかけた。

 

 

 

 

 

「今まで何を見てたの?歩夢ちゃんは一から十までずっと見守ってなきゃ何も出来ない子じゃない。寧ろワタシらの手伝いなんか無くても自分で歩けんだよ。歩夢ちゃんの道を舗装することはあったとしても、別にしなくたって進めるんだよ。それを何?自分が手助けしなきゃダメだった?傲慢にも程があるわ」

 

 

「あげく、自分の夢を見直す?歩夢ちゃんのために?なんだそれ。歩夢ちゃんがスクールアイドルになったキッカケ忘れたの?"あんたと夢を見つけたい"って思ったからでしょ? "あんたと"だぞ?その歩夢ちゃんが、せっかく侑が自分で見つけた夢を、自分のために諦めたと思わせる気?何がしたいんだよ」

 

 

「『夢を見つけたんだ!あ、でもそれちょっと都合が良く無いね……考え直して?』 ……って歩夢ちゃんが言ったわけでもないんでしょ?言うわけないもん。想像しただけでもきっもち悪い。多少動揺したり気持ちが揺らいだりすることはあるかもだけど、んなこと悪霊か邪悪なものに憑りつかれでもしない限り言うもんか」

 

 

「侑が夢を諦めるならそれはご勝手に。だけど、その理由に歩夢ちゃんを持ち出すな。不愉快なんだよ」

 

 

 

 

 

「……じゃあ、どうしろっていうの!?歩夢を支えたいのは嘘じゃ無い!でも今の私じゃ、夢を追いながら全部をサポートするなんて出来ない!どっちも諦めないなんて……力不足で……無理なんだよ……」

 

 

 一方的に言われていた侑は、けれどワタシの最後の一言で爆発した。

 その顔に、さっきまで浮かべていた諦観は無い。代わりにワタシへの怒りと ―― 自分への怒りが満ちていた。

 

 ……ふん。その顔が出来るなら、まだ捨てたもんじゃないや。

 これでそのまま萎むなら、もう放っておこうと思ってたよ。

 

 

「知らん」

「……えぇ……」

 

 

 だから。侑への文句を切り上げて。ワタシなりのアドバイスを送ってやることにした。

 

 

「横から見てたワタシからすれば、歩夢ちゃんは別に侑に何もかもをサポートしてほしいとまでは思ってないように見えるけど?そりゃして貰ったら嬉しいだろうけど、歩夢ちゃんが求めてるのは"自分を一番に見て欲しい"、それだけだよ」

「……だけ、かな……」

「だけとは言うけど、かなーり重いお願いだと思わんかね?他人の一番に居座ろうとするんだから。それに"一緒に居たい"やらなんやらがくっついてくるわけだし……んで、その努力をすべきは侑じゃなくて歩夢ちゃんだ。歩夢ちゃん自身が、侑の一番の座を失わないように頑張らないとなんだよ」

「私の一番って……そんなの、変わるわけ、ないけど……」

「歩夢ちゃんがそう思うかは、また別の話っすね」

 

 

 あっちこっちにトキメいてる癖して何言ってんだって感じ。まぁそれは言わないけど。歩夢ちゃんは歩夢ちゃんで割とアレだし。

 

 

「つーか、もっと単純な話。侑、あんた本当に歩夢ちゃんを全面的にマネージメントしたいとか思ってるわけじゃ無いでしょ。サポートしたいっての自体は本心だろうけど、そこまでベッタリにはさ」

「……なんで」

「だって別に今までやってないじゃん。やろうと思ったらスクールアイドルフェスティバルの前からやれたのに。唐突なんだよ」

「それは……そうだけど……」

 

 

 口籠る侑に、あからさまに"はぁ"とため息をつく。表面上は、侑に呆れているように。その本心では……これから言い放つことに、覚悟を決めるために。

 

 

「いい加減察してよ、めんどくさ」

「……?」

「もっとシンプルにさぁ。侑がそれ言い出したのってさぁ」

 

 

 訝しげな顔に、こちらは半目になって。

 いかにもどうしようもないヤツを相手にするように。

 口に出す。

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、って焦ったからでしょ」

 

 

「ーー……あ」

 

 

 

 

 

「侑、今あんたは歩夢ちゃんのためを思ってるようで思ってない。本当に歩夢ちゃんのためを思うなら、いま何をすべきか、改めて考えてみな?」

「…………」

「……少なくとも、歩夢ちゃんの奥底に居るのは間違いなく、侑だよ。この十数年、ずーっと。あんたらにくっ付いてたワタシが断言しちゃる。なーんでこんなこと言う必要あんのか分かんないけど」

「…………」

「それを踏まえたうえで……ん?」

 

 

 そこまで言ったところで、バタバタとこちらに誰かが近づいてくる足音が聞こえた。

 拘束を止めて向いたそっちに居たのは……あれは、今日子ちゃん?なんで?

 

 

「ん。愛さんが教えたんだ。色葉ちゃんに聞かれたからねー」

 

 

 そう言って愛ちゃんがスマホをひらひらさせる。ワタシにやらせてくれてると思ったら、そんな事を……いや、丁度良かったか。 

 

 

「失礼しますっ!侑さん……歩夢ちゃんのステージ作り、手伝って欲しいんです!」

「……えっ?わ、私?」

「はい。悔しいけど……ほんっとーに悔しいけど!今の歩夢ちゃんに元気を出してもらうには、侑さんのアドバイスが必要なんですっ!……お願いしますっ!」

「……私は……」

 

 

 "原作"の展開が、ここに来たのか。今日子ちゃん達はただ純粋に歩夢ちゃんの応援をしてくれてるんだもんな。侑がどうなってるかを知らない以上、この流れが変わる事は無かった……そういう事なんだろう。

 

 さっきまでの侑なら、もしかしたら断っちゃってたかもしれない。

 けど、今なら……

 

 

「ねぇ、ゆぅゆ」

 

 

 まだ逡巡している侑に……愛ちゃんが、優しく語りかけた。

 ワタシが付けた傷を、癒すように。

 

 

「ゆぅゆがいま感じてるそれに、無理に名前を付けなくても良いと思うんだ。でも、ゆぅゆの一番は紛れもなく歩夢で、その歩夢が不安がってる。今の考え方の何が気になるかは、コノ子が言ってくれた。その上で……ゆぅゆはどうしたい?まだ言葉にならないなら……今日子ちゃん達は、手伝いたい?」

「…………うん…………手伝いたい…………」

「ん!そんならそれを気持ち込めてやってみな!そしたら気持ち整ってくるかもじゃん!」

 

 

 腕を引いて立ち上がらせた侑に愛ちゃんは……なんとそのまま、腕を組みに行った。

 

 

「ち・な・み・に。愛さんもゆぅゆのイチ推しの座、狙ってんかんね?」

「……えっ!?」

「ふふふ!一番近くで応援してくれる子の一番になりたいのは、アイドル側にとっちゃ当然の感情なんだよ?」

 

 

 過激なファンサービスにどぎまぎしてる侑をリリースしてカラカラと笑う愛さん。

 ……この場に色葉ちゃんが居なくてよかったね!面倒なことになってたかもね!

 

 

「寛容にならんといかんよう!期待を胸に歩きたいから!不安なんて扇風機で吹き飛ばしちゃいなよ、ファンだけに……なんつって!」

「ふ……ふふっ……!あはは……!」

「ん!そのちょーし!」

 

 

 愛ちゃんのダジャレ。それにようやく……ようやく、侑が笑った。控えめにだけど、確かに。

 ……あぁ。きっともう、大丈夫だ。

 

 

「そんじゃあ」

「行って、こい!」

 

 

 愛ちゃんと二人、その背中にバチィン!と平手を決める。

 その勢いに押されて前へ出た侑は、首だけでこっちを振り返ったあとに。

 

 

「……うん!行ってくる!」

 

 

 力強く、何かを胸に秘めて、走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 あーあーあーやっちゃった!

 

 

 見守り系オタクのくせに特定CP推進しちゃった!ギルティですわぁ!ワタシの最後の指摘なんぞ無くても愛ちゃんの言葉でなんとかなったろーにね!てへっ!

 

 いや分かるよ?分かってんだよ?一見あんま執着してなさそーな侑が実は激重感情持ってるってやつ燃えるよね!しかも本人的には別に特別なことじゃなくて当たり前って思ってたらなお良いよね!激重ではあるけど自覚してないだけってのも美味しいよね!どちらにせよ「あくまで普段は普通、でもふとした時に重い」ってのが良いんだよねぇ!今回ワタシ、そのバランス感を崩しちゃったかもねぇ!ごめんね!

 

 けどさぁ!ちょっとくらい思うじゃん!?『もーちょっと歩夢ちゃんとイチャイチャしていいのよ?』って! 『歩夢ちゃんの1割くらいは嫉妬を表に出してもいいのよ?』 って!思うじゃん!!それを歩夢ちゃんに察されそうになって取り繕うとことか!それを見た誰かに呆れられたりとか!見たいじゃん!!

 

 もーね!今回のこのグダグダ侑のせいなんだから、ちょっとくらいワタシの私情入れても良いやん?ってね!思っちゃってね!ごめーんねっ!

 

 

 

 

 

「……ふふっ!キミもお疲れ様!」

「愛ちゃんこそ。ごめんねぇ、ウチの手のかかる幼馴染が」

「ホントだよ、3人揃って。まったく飽きさせてくれないんだから!あーあ、良いなぁ幼馴染って!」

「なら愛ちゃんも幼馴染にならないかい?」

「マジで?じゃあせっつーも入れて5人だね!あはは!」

 

 

 あーもう愛ちゃんマジ女神。こんな面倒なヤツらをほっとかないでくれるんだから。これで間違えたら許さんからな、侑。もしダメならつるし上げてやる。

 

 

「……ん!キミももう大丈夫そーだね!」

「うん。たぶんもう、大丈夫」

「歩夢の方には行かないの?」

「あっちは……うん。平気だと思う。栞子ちゃんが行ってるから」

「ほうほう、そっか!しおってぃーのこと、信頼してんだね!」

「するでしょ。あんな良い子」

 

 

 それに、きっと……今頃、歩夢ちゃんの傍にはあの子もいる。そんな予感がする。だって、ヒーローってそういうものでしょ?だから、大丈夫だよ。

 

 

「しっかし、ゆぅゆの一番になるのは大変そーだなぁ」

「あ、本気だったんだ」

「本気もホンキ!なんならキミの一番にもなりたいって思ってるから!」

「誘惑するの止めて?靡きそうになるから」

「あっはは!キミもてごわそーだけどね!ゆぅゆと歩夢が、本当に大切なんでしょ?」

「歩夢ちゃんは大切。侑は知らない」

「ふふふ!そっか!」

「ま、みんなに取っちゃいい迷惑だろうけどね。ワタシみたいなのに思われても。邪念マシマシだし」

 

 

 幼馴染をご飯にしてるCP厨のヘンタイだからね。ちかたないね。

 むしろ今までよく見捨てないでくれたもんだよ。

 

 

「あはは、なぁにそれ!」

 

 

 肩を竦めたワタシに、けれど愛ちゃんは快活に笑って。

 

 

 

 

 

「どんな下心があったって ―― 誰かを大切に思う。そのこと自体が悪いことなわけ、ないじゃん!」

 

 

 

 

 

 にかっ!とした笑顔と共に、そう断言した。

 

 

 ……たはは。

 

 

 

 

 

「ほんと……敵わねーや。愛ちゃんには」

 

 

 

 

 

 

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