ゆうぽむの間に挟まりたくねぇ!   作:ぁさ

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10-⑨

 

 

 

 

 

「ふー……何とか間に合ったね!」

「侑先輩が手伝ってくれたおかげです!」

「んー……おかげっていうか、私のせいっていうか……」

「え?」

「いや、なんでも。とにかく後は……あ……」

「はぁっ……はぁっ……侑、ちゃん……それに、みんなも……」

「……歩夢……」

 

 

 侑ちゃんを求めてたどり着いた先。そこには今日子ちゃん達、今まで私のステージ作りを手伝ってくれていた子達も居た。

 乱れる息を整えながら、どう話しだそうか迷う。ここに来るのに必死で、その後の事は考えてなかったから。

 そんな私を見かねたわけじゃないだろうけど、先に口を開いたのは、侑ちゃんだった。

 

 

「出来たよ……歩夢のステージ。ほら。私は相談されただけなんだけどね」

「え?……わぁぁ……!」

 

 

 促されるままに進んだそこにあったのは、花が咲き誇るフラワーロード。

 木々はリボンでラッピングされ、まるでおとぎ話の舞台のようで。

 『ここで唄えたら、最高だろうな』

 そう思ってしまう、素敵なステージだった。

 

 

「歩夢ちゃん、元気ないみたいだったから、みんなで1つ1つ気持ちを込めて作りました!」

「この飾り付けた花にも、意味があるんです」

「黄色いガーベラの花言葉は、『愛』……私達の、気持ちです!」

 

「こんな……こんな、私のために……」

 

「こんなじゃないですっ!」

「可愛くて、純粋で!いつも頑張ってて!」

「私達は、そんな歩夢ちゃんが大好きなんですっ!」

 

 

 今日子ちゃん達から送られる言葉に、胸がいっぱいになってくる。

 私をここまで応援してくれる人たちがいることに、"あぁ、やっぱり"……そう、実感してしまう。

 

 

「侑先輩が作った花もあるんですよ!」

「え?」

 

 

 今日子ちゃんに促されて侑ちゃんが取り出したのは、ピンク色の花。

 ふわりと開いた花弁が可愛らしい……ローダンゼの花、だった。

 

 

「綺麗……」

「花言葉は、『変わらぬ想い』」

「……変わらぬ……」

 

 

 少しだけ申し訳なさそうな顔をした侑ちゃんは、けれど、私の顔をまっすぐに見つめて来た。

 

 

「歩夢が知らないうちにすっごく成長しようとしてることに、焦ってた。置いてかれちゃうんじゃないかって」

「そんな!?それこそ、私の方が……」

「え?いやいや、私の方が」

「私だよ!?」

「……ははっ」

 

 

 何でかは分からないけれど、そのやり取りで最後の肩の力が抜けたみたいだった。

 ゆったりと微笑んだ侑ちゃんに、どきり、としてしまう。そこに居たのは、紛れもなく、私の好きな侑ちゃんだった。

 

 

「でもね、それに拘るのはもう、止めようと思う。どれだけ離れても、どれだけ時が過ぎても――私は歩夢を想い続けてる。その気持ちだけは、絶対に変えないから。変わらないから」

 

 

「……ゆう、ちゃん……」

「だから……もう一度、私にも……歩夢を応援させてくれる、かな?」

「……うん……!」

 

 

 視界が滲む。

 零れ落ちそうな涙を、なんとか堪える。

 

 

 

 友達がいる。

 仲間がいる。

 応援してくれる人がいる。

 ピンチに駆けつけてくれる人がいる。

 信じてくれる人がいる。

 好きだと、言ってくれる人がいる。

 

 

 私は……なんて"しあわせもの"なんだろう。

 

 

 嬉しい。本当に嬉しい。でも、まだだ。

 侑ちゃんが本心を伝えてくれたんだから。

 私も ―― 伝えないと。

 

 

「……あのね?侑ちゃん。それに、みんなも……私、考えてたことがあるの。私の、次の夢……」

「次の……」

「……聞いてくれる?」

 

 

 ローダンゼの花を手に握り締めて伺えば、みんな頷いてくれた。

 その優しさに安心して、もう一度息を吸い込んでから、話し出す。

 

 

「侑ちゃんが背中を押してくれたから、私はスクールアイドルを始められた。みんなが応援してくれたから、今の私が出来た。みんなが認めてくれたから、私は……一歩踏み出し続けることが、出来た」

 

 

 変わらないものも、増えていくものも、どっちも大切。だから、どっちも手放したくない。

 それが、スクールアイドルとしての、私のワガママ。

 それを成すために、私は……この"一歩"を、改めて踏み出す。

 

 

 

 

 

「だから……私は、なりたい。みんなが私にしてくれたように、立ち止まっている人の背中を軽くでも押してあげられるような、スクールアイドルに」

 

「みんなに直接私が出来ることなんて、無い……でも、前を向いて歩き続ける私の姿に、明日も頑張ろうって思って貰えるような、スクールアイドルに」

 

「視界の片隅に映った私を見て、少しだけ幸せになれるような……そんなスクールアイドルにっ!」

 

「私はっ!私を応援してくれる人にエールを贈れるスクールアイドルになりたいっ!」

 

「そんな私を……応援してくれる?」

 

 

 

「「「「 もちろんっ! 」」」」

 

 

 

 間髪入れずに叫んでくれる、侑ちゃんとみんな。

 その心の温かさに、遂に私の涙腺は決壊した。

 この感謝よ伝われと、全員をまとめて抱きしめたあと ―― 私は侑ちゃんから貰ったローダンゼを髪に刺して、ハート形の門を象ったアーチの前に立った。

 

 

 

 

 

 ココロが疼く。

 愛しさがあふれ出してくる。

 

 

 きっとこの先には、果てしなく険しい道が伸びているんだろう。

 挫けそうになるかもしれない。諦めそうになるかもしれない。

 私は特別なんかじゃない、普通の弱い人間だから。

 

 でも……みんなが私を支えてくれるなら、きっと大丈夫。

 そしてその分、私もみんなを支えたい。

 私を"しあわせ"にしてくれる、みんなを想って、力いっぱい。

 

 

 

 

 

 特別じゃない女の子だって変われるんだって!

 

 スクールアイドルは、こんなに素敵なんだって!

 

 精いっぱい、叫び続けてみせる!

 

 逆境も!不安も!きっと乗り越えてみせるっ!

 

 

 

 

 

「みんな、ありがとう! ―― 大好きっ!!」

 

 

 

 

 

 明日も、あなたが笑顔であれるように……私、唄うよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……あっ!?ここで歌うの!?

 

 

 お、おう……そっか、そうなのか。Awaking Promiss、ここで来るのか……これは予想外。

 まぁ歩夢ちゃんがあーいう結論に達したなら、侑以外のみんなの前でも披露するのが自然か。なんか"2期"終盤くらいまで一気にパワーアップしちゃった気がするけど……いやぁ、女の子の成長って早いねぇ。男子1日見なけりゃ何とやらとは言うけど、女の子だってその比じゃねーや。

 ……あートキメくー……もっと近くで見てー……

 

 

「……良いね、歩夢の歌。胸にじーんって来ちゃうよ」

「ですね。また殻を破られたように思えます。私も負けてられません!」

「……本当に……良かった……」

 

 

 え?お前は何してんだって?わっかんねーかな?愛ちゃんせつ菜ちゃん栞子ちゃんと遠目から観劇してんだよ。いつもみたいに潜んじゃいねーよ。

 

 そりゃ侑を送り出しはしたよ?でもその後を追っかけないとは言ってないよね?寧ろ愛ちゃんも賛同したからここにいるんだよ?ワタシ悪くない。んで、歩夢ちゃんにこの場所をメッセしたってワケ。そうじゃなきゃ、流石にこんなとこ見つけらんないでしょ。愛ちゃんは愛ちゃんで、せつ菜ちゃんに送ってたしね。いえーい、共犯者!

 

 

「けど、せつ菜ちゃんが栞子ちゃんを担いできたときは何事かと思ったよ。しかも何時ぞやのファイヤーマンキャリーで」

「いやぁ……流石にあそこに放置は出来ないですし、私も送り出した手前、その後が気になりましたし……」

「ご迷惑をおかけして申し訳……え?私、ファイヤーマンキャリーで運ばれてきたのですか……?」

「めっちゃ目立ってたよ、しおってぃー」

「えぇぇぇぇ……」

 

 

 タイミング的にどうしても向こうは見れなかったけど、"原作"+αの良いシーンが展開されていたようだ。うーん、そっちも見たかった。円盤に収録してくれないかなぁ。

 

 

「"誰かの背中を、少しだけ押せるスクールアイドル"……か。歩夢にピッタリじゃん」

「っていうか、歩夢ちゃんはずっとそうしてたけどね。中学の時も、それより前も。侑の陰に隠れがちだったけど、いつも誰かを気に掛けてくれてた」

「……そうなんですね……昔から、あの人は……」

「ということは、寧ろ今回はそれを自覚的にやろうとするようになっただけ、という事ですか。自分が気づいてなかった潜在能力を解放する!定番ですけど燃えますね!」

「愛さん的にはこっちが燃やされてるかな?今の成長著しい歩夢見てると、負けてらんねー!って気持ちが溢れてくる……あれ?それってスクールアイドルの背中まで押してるってこと?ヤバくね?相乗効果で愛さんたち無限テンアゲにならない?」

「ふっ……ふふふっ!なんですか、その理屈!……でも、えぇ。私も……今、過去最高に滾っています……!」

 

 

 あーあーあー……熱血二人に火がついちゃった。こりゃ数日後のスクールアイドルフェスティバルは猛暑になりそうだ。 

 

 

「……栞子ちゃんは、どう?今の歩夢ちゃんなら、望んだものは見れそうかい?」

「……もう、見れています」

 

 

 栞子ちゃんは、歩夢ちゃんが歌う姿から一時も目を離さない。心にまで焼き付けるかのように、見つめ続けている。

 その栞子ちゃんの本心は、分からない。けど、なんでかな。そう遠くない未来に、分かる気がする。

 それが分かる場面に、ワタシは居ないかもしれないけど。でも、きっと何とかなるだろう。今日みたいに。

 

 

「……あ、でも」

「ん?」

「歩夢さんの昔のお話は……聞きたいです」

「へ?」

「あ!それ愛さんも聞きたい!ゆぅゆのも!」

「私もぜひ!……とはいっても、私にはお返しになるような面白い昔話は無いんですけど……」

「こっちの話にだって面白エピソードがあるとは限らないでしょ」

「あはははは!なにそれ、おもしろー!」

「無いわけないと思われてる!?」

「ふふっ……ふふふっ……!」

 

 

『ん?あれ?あそこにいるのって……』

『え?みんな!?アノ子まで!?』

 

 

 あ。侑達に気づかれちゃった。そりゃこんだけ騒いでたら見つかるか。

 今日子ちゃん達まで引き連れてバタバタとこっちに向かってくる……おーおー?侑と歩夢ちゃんめ、手なんか繋いじゃって?いいぞ!もっとやれ!後ろでそれガン見してる今日子ちゃんも含めてめっちゃ美味しいから!

 

 

「……あははっ!」

 

 

 髪を撫でる風が気持ちいい……そういや、フードなしに歩夢ちゃんのライブ見たの、今回が初めてだ。心なしか色んなものが良く見える気がする。良いものを見た後は視力も上がる、当然だね。

 遠くから駆け寄ってくる、侑や歩夢ちゃん達も。

 隣にいる、愛ちゃん達も。

 その誰もが、笑っている顔も。

 

 

 ……あぁ。うん。

 "原作"とは、全然違う展開には、なっちゃったけど。今回は。

 この光景が、見れたのなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―― ゆうぽむや、皆の間に挟まれて…………

 

…………良かった…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これにて10章完結となります。
お付き合いいただきありがとうございました。
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