ゆうぽむの間に挟まりたくねぇ!   作:ぁさ

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11-③

 

 

 "ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会"。

 その1期最終回である"13話"では、スクールアイドルフェスティバル当日が描かれる。

 

 

 今まで各々が壁にぶつかり、それでも乗り越えた先でついに辿り着いたお祭りを、みんなは存分に謳歌する。

 

 スクールアイドルは自分が思うがままのステージを。

 参加した学生はずっとやりたかった出し物を。

 集ったファンは許される限界の応援を。

 

 自分自身の夢を叶えようと誰もが浮かべる笑顔を見て、発案者である侑のテンションも最高潮に達していた。

 

 

 ……しかし。運命が押し付けてくる試練は、まだ終わっていなかった。

 突然の雨が、お台場に降り注いだのだ。

 

 屋外会場であるスクールアイドルフェスティバルは、当然中断を余儀なくされ、スクールアイドルフェスティバルの開催時間を容赦なく奪っていく。

 多くのステージが中止となる。夢が叶えられず終わっていく。

 雨よ、止め。その願いが通じたのは……フェスティバルの終焉予定時刻を、過ぎた後だった。

 

 みんなの期待に存分に応えることが、出来なかった。

 失意にくれる侑。

 果たして、皆の夢が叶う場所は、このまま泡沫の夢となってしまうのか ――

 

 

 

 

 

(……はーぁ……)

 

 

 

 

 

 ここまで"原作"からかけ離れ放題になったんだから、もしかしたらワンチャン降らないかもしれない。そんな愚かな期待を抱いていたワタシを嗤うかのように、テントに当たった雨がバタバタと音を立てている。せめてピチチャプ程度の勢いなら可愛げもあるってのに。空気の読めない天気だこと。

 

 

 

 

 

『…………』

 

 

 イベントTシャツに一旦着替えたみんなの表情は明るいとは言い難い。当たり前だ、こっからもっと盛り上げちゃる!って所で文字通り水を刺されたんだから。

 

 壁際に貼られた工程表に、次々と黒線が引かれていく。その不本意な五線譜を描いている侑の雰囲気は、殊更重い。あの日見つけた確かな夢。これから自分が"一歩"を踏み出すためのプロローグ。それがこんな形で終幕するだなんて、不本意という言葉じゃ収まらないだろう。

 

 刻々と迫る19時の閉会時間。雨が上がる気配は、まだ、ない。

 

 

 

 

 

「これで本当に……終わり、なんでしょうか?」

 

 

 遥ちゃんの呟きに、誰も応えられなかった。

 姉である彼方さんも。頼れる3年生や、生徒会長や、ヒーローや、部長や、才気あふれる1年生も。超大型助っ人の栞子ちゃんも。経験豊富な強豪ライバル達も。誰も。

 

 空からの重圧を相手に、ワタシ達は、誰もが無力だった。

 

 

「……ピンキーちゃんの発明品で雲を吹き飛ばすとか……」

「……警察のお世話になる覚悟で、今から作る?」

「……うん、止めよっか」

 

 

 作れるんかーい!……なんて、普段のノリなら突っ込むんだけどね。色んな意味で、そんなつもりにゃなれない。

 

 ……実は準備の段階で、天気が荒れた時のプランは考えられていた。ワタシが言いだしたわけじゃない。そもそもそういう状況を想定した計画が必要だったから。まぁ当たり前っちゃ当たり前だ。

 けれど、成立したのは"一時中断"って至極現実的な案だけだった。サブプランを考えるには、あまりにも時間が足りなかったから。というか、屋外会場で他にどんな対応策が取れるん?って話ですわ。

 

 これも今後の教訓に……なんて。

 さすがに言う気分にゃ、なれねーや。

 

 

 ……でも、まだだ。

 

 

『…………』

 

 

 まだ、彼女たちの火は絶えてない。

 燃え足りない想いがもう一度弾けたいってブスブス燻ってるのが分かる。

 雨さえ上がれば……あるいは、きっかけさえあれば。きっと一気に爆ぜてくれるはずだ。

 

 

 

 

 

 

「……私、ちょっとお客さんの様子、見てくるね」

 

 

 ……ただ……いっぱいいっぱいの侑にゃ、どうやら感じ取れなかったみたいだけど。

 

 屋根付きの休憩所を周るつもりなんだろう、レインコートを着て外に出ていく。

 侑が出ていったところで何かが変わるわけじゃない。寧ろお客さんと接することで居たたまれない思いをするかもしれない。それでも、何かしないと気が持たないだろう侑のことを、誰も止めることは、出来なかった。止められるとしたら、歩夢ちゃんだけだろうけど、その歩夢ちゃんも声をかけず……

 

 

 

 ……ってあれ?なんか違和感あると思ったら……さっきから歩夢ちゃん居なくない?

 

 

 

「お疲れ……もしかして、いま外に出て行ったの、侑ちゃん?身体を冷やさないと良いけど……」

「あ、歩夢ちゃん。そうだけど……今までどこに居たの?」

「クロークだよ。みんなの衣装をドライヤーとタオルで乾かしてたの。量が多かったから、ちょっと時間かかっちゃった」

「あ!す、すみません、気が付かなくて……!」

「うふふ。大丈夫だよ。気になっちゃうもんね、雨」

 

 

 キョロキョロと辺りを見回したところで、そう言いながら歩夢ちゃんが姿を見せた。その手に重ね持ったタオルを慌てて受け取りに行く栞子ちゃんに、特に気にする様子もなく、いつものように微笑みかける。

 

 

「もしかして、私達の分まで……?」

「うん。なるべく跡や皴がつかないように気を付けたけど……もし不味そうなところがあったら言ってね?この後着た時に、気になっちゃうようだと嫌だし」

「……ありがとうございます。でも……もう、"この後"は……」

「……うん。閉会するまで、雨、止まないかもだね」

「……はい……」

「でも、準備はしておこうよ。もし雨が上がったら、すぐ再開できるように。ね?」

 

 

 遥ちゃんの視線の先には、未だ勢い衰えぬ雨。けれどそれを確認して尚、ほんのわずかに憂いを見せただけで、歩夢ちゃんの表情は依然、微笑みを象っていた。

 

 

「……歩夢さんは……ずいぶんその……前向き、なんですね……?」

「前向き……そうでもないよ?さっきまで私も落ち込んでたし……」

 

 

 あまりにも平静に見えるその様子に、姫乃ちゃんが思わず口に出した、問いかけ。

 

 

 

 

 

「でも、そうだね。今は ―― 最後まであきらめたくないって、そう思ってる

 

 

 

 

 

 それに対する、歩夢ちゃんの応えに。

 

 

『…………』『…………』『…………!』

 

 

 その背後に居た同好会の面々が、ぴくりと震えた。

 

 

 

 

 

「このスクールアイドルフェスティバルは、参加してくれるみんなの夢が叶って欲しい……そんな願いが込められた場所。だけど、まだ全然。全然、やり足りないよね」

 

「全部はもう取り戻せない。叶えられない。それは分かってる。でも、これで終わりは絶対に、嫌なの」

 

「このイベントの思い出を、"残念だったね"って、そんな風に終わらせたくないの」

 

 

 

「せめて、みんなに伝え切りたい。参加してくれたみんなに、協力してくれたみんなに……今の、この想いを。そして……」

 

「最後は"楽しかったね"って……スクールアイドルってやっぱり素敵だって!……みんなに笑って欲しいの!」

 

 

 

「……うちの同好会も、今までいろんなことがあって……それこそ同好会が無くなっちゃいそうなこともあったけど……」

 

「めげずに、足掻いて、"一歩"を踏み出し続けたから……ここまで来れた」

 

 

 

「だから、やれる事はやろうかなって。私に思いつくのは、ただこうやって衣装の手入れをすることくらいで、無駄になるだけかもしれないけど……」

 

「それでも……動き始めたなら、止めちゃいけない。我慢しちゃいけない」

 

「"始まったのなら貫くのみ!"……って、諦めが悪くて負けず嫌いな()()()に、そう教わったから!」

 

 

 

 

 

「……~~~~~っ!!」

「きゃっ!?せっ、せつ菜ちゃん!?」

「あっははははははははははっ!!歩夢!!あ~ゆ~む~~~~ぅ!!」

「愛ちゃんまで!?ちょ、ほっぺぇぇ!」

 

 

 ……せつ菜ちゃんが無言のまま歩夢ちゃんを肩ごと抱きしめ、首に腕を回した愛ちゃんが頬を人差し指でつっつき回す。

 

 

「ふふふっ♪よぉ~っし、じゃあ私はモップとか持ってくるよ!ステージ使うなら、水気を拭き取らないとだしね!」

「エマ、そういうことはボランティアさんにお願いしなさいな。ただでさえ歩夢が出番取っちゃってウズウズしてるんだから」

『はい!任せてください!』

 

 

 エマさんは力瘤を作り、果林さんはそれを抑えてボランティアスタッフにウィンクを飛ばす。

 

 

「やっぱり作ろうかな。青空ボム」

「止めようねぇ、璃奈ちゃん。それ作ったらお縄になるんでしょお?璃奈ちゃんも一緒じゃないと、彼方ちゃん泣いちゃうからね?」

 

 

 璃奈ちゃんがワタシの妄言を再検討し始めたけど、彼方さんがやんわりとそれを抑え。

 

 

「…………」

「……そうやって拗ねてる暇あるの、部長さん?」

「分かってるもん!こっからがかすみんの見せ場なんだから!ほら、皆さん!もっといい案無いか考えましょうっ!」

「人任せじゃん」

「かすみんだって考えますぅっ!」

 

 

 しずくちゃんに煽られたかすみちゃんが、何とも締まらない号令をあげた。

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 呆気に取られる東雲と藤黄のメンバー達とは対照的に、虹ヶ咲の面々がボルテージを上げていく。

 いや、ただ奮い立っているだけじゃない。場を満たしつつあるこの雰囲気は、もっと荒々しい。

 

 ―― 闘争心。

 

 負けちゃいられないと。自分も、いやさ自分こそがやるのだと。そんな勝気さが隠しきれていなかった。

 燻っていた火が、猛り狂い始めたんだ。

 

 

「……ははっ……」

 

 

 いいじゃん。こういう方がみんならしい。

 こうなったみんなは、もう止められない。

 小さなその身に収まり切らない情熱を猛らせて、どこまでも走り続けるのだ。

 

 

 

 

 

「あぅぅぅぅぅ……」

 

 

 ……その火を燃え広がらせた当人は、同級生にもみくちゃにされて喘いでますが。

 

 

 

 

 

「……なんか、分からされちゃいました。スクールアイドルとしては、私の方が先輩なのに」

「……そうですね。負けてられません。果林さんに情けないところばかり見せてなるもんですか……!」

「あ、そういうモチベーションなんだ……でも、同感です!お姉ちゃんの前で、恥ずかしいことなんて出来ない!」

「…………」

 

 

 遥ちゃんが、姫乃ちゃんが、一歩遅れて意気を上げ始める。

 同じく見守る側だった栞子ちゃんが、その胸に抱えたタオルを握りしめる。

 仮設テントの中の熱は、もはや外にまで溢れ出しそうになっている。

 

 ……ワタシみたいなスカしたアホまで巻き込んで、ね。

 

 まったく、いつだったかに思い知ったはずなのに忘れてやんの。

 任せるべきは天なんかじゃなく信頼できる幼馴染、だってさ!

 

 

「……はははっ!」

 

 

 

 

 

 

 ―― 侑。改めて思い知りなよ。

 

 

 ワタシらの虹は、厚い雲すら引き裂くぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そういえば……"あの歌"の作曲って、どんな状態なんでしょう?」

 

 

 ……ん?

 

 

 

 

 

「さっき愛さんのとこに連絡来たよ。ようやく出来た!ってさ」

「流石ですね!感謝してもしきれません!」

「なんか"天使が舞い降りて完成した!"ってメッセに書いてたんだけど。りなりー行った?」

「え?……知らない……」

「ともかく、そっちの練習もしないと!ポジションも決まらなかったし……」

「……今回のセンターは、もう決まったようなものでしょう?」

「そこ大事だね、果林ちゃん。今回は、ね!」

「今回は、だよねぇ」

「……ぶー……今回だけですよぅ?」

「……え?」

 

 

 

 

 ……あーあーあー!雨の音、すっごいなー!

 なんか相談してるみたいだけどなーんも聞こえないなー!

 

 

 

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