ゆうぽむの間に挟まりたくねぇ!   作:ぁさ

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11-⑥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――かくして、波乱に満ちた舞台の幕は一先ず降りた。

 

 この世界にこぼれ落ちた異物の色は、すでに無い。歪められてなお溢れる光の中に、溶け消えた。思うがままに伸びる虹は、混沌すらも受け入れた。物語は、護られたのだ。

 

 

 しかし、未来は依然として不透明である。

 翡翠。白銀。そして、黄金。

 いずれ燦然たる光を放つであろう彼女たちは、虹に寄り添うのか。はたまた虹を呑みこむのか、あるいは呑まれるのか。そもそも偶像となるのだろうか。それすらも、筋書き通りに進むとは限らない。

 

 

 けれど。どんな未来であろうと、彼女達は歩き続けるだろう。

 己が信じた理想を抱き。

 たとえ時折迷ったとしても、それでも前へ。

 

 

 嗚呼。彼女らの踏み出す"一歩"に祝福あれ。

 今はただ、そう願うばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……とかなんとか考えてたらなんかいきなりボーナスステージが始まった件について。

 

 

 

 

 え?なに?うっすら気配は感じてたけど栞子ちゃんあんな激重感情抱えてたの?"原作"だとそこまで絡みなかったじゃん。それとも"原作"でもあんなだったの?ふいのトキメキに過呼吸待ったなしなんですけど??取り繕うのが大変なんですけど??

 

 うっわぁ、2人で"Dream with You"歌ってるぅ。栞子ちゃんからリクエストしたっぽい?振り付け完璧じゃん。もしかして栞子ちゃんってばこっそりコピってたりした?色んな意味で意味深ー!ご飯ほしー!

 

 

 

 

 

「……ふふっ、なかなかの振り回しっぷりね。やっぱり歩夢は小悪魔系の素質もあるわ。今度レッスンしてあげようかしら」

「ダメだよ果林ちゃん、無理に変なこと教えたりしちゃ。歩夢ちゃんは今みたいに、自然に相手に寄り添えるのが素敵なところなんだから」

「エマは過保護ねぇ……分かったわよ。まぁ歩夢から求められたら話は別だけど。栞子ちゃんも育て甲斐がありそうだし……これからが、楽しみだわ」

「……うん。そうだね……こんなに楽しくなるなんて……やっぱり日本に来て良かった!ふふっ!」

 

 

「…………!」

「せっつー止めなね?突っ込んじゃダメだかんね?今そーいう空気じゃないから」

「わ、分かってます!分かってますけど……あんな熱いシーンを見せられたら魂が疼いて仕方ないんですよ……!ここはひとつ、同好会メンバーが全員推参して大団円とですね……!」

「愛さんせっつーのそういうパッション溢れるとこすっごい尊敬してるけど、ダメなもんはダメっ。しおってぃービックリしちゃうじゃん!せめて全部終わってからっ!」

 

 

「……璃奈ちゃんボード抱えて何してんの?りな子」

「栞子ちゃんの初ステージを記録に残してる。いつか何かに使えるかもだから」

「盗撮じゃん!?え!?それ、そんな機能あったの!?」

「これはれっきとした同好会活動の一環。大丈夫、フェス中のかすみちゃんも、ちゃんと可愛く撮ってるから」

「え?あー……ならまぁいっか!ちゃんと後で動画見せてね!」

「話の分かる部長、好き。璃奈ちゃんボード『キランッ』」

 

 

「恐ろしい野獣……それに惹かれていく少女……互いに手を取り踊る月夜の晩に、少女を連れ戻さんとする聖職者……!この新展開、これはこれでアリなのでは……!?」

「もしもぉし?しずくちゃ~ん?帰っておいで~?」

「…………はっ!?な、なんですか!?私はなんでもないですよ彼方さんっ!」

「なんでもない子の慌て方じゃないんだよなぁ……まったく、飽きさせてくれない同好会だぜ。彼方ちゃん、もしかしてずっと夢の中にいるのかなぁ?……ふふっ、なぁんてね」

 

 

 

 物陰から様子を伺ってる観客の皆さんも大盛り上がりですよ!そりゃあんな青春の1ページ見せられたらこうなりますよねぇ!

 

 

 

 

 

  ――  飛び立てる Dreaming Sky 一人じゃないから……  ――

 

 

 

 

 

 ……おや、2周目に入った。栞子ちゃん、どうやら納得いかないところがあってやり直しを懇願したらしい。完璧主義だねぇ。ただ歩夢ちゃんともっと歌いたかっただけだったりしたら美味しいねぇ!

 

 

 

 

 

「…………」

「おぅおぅどした?やけに静かじゃん。あの光景にゃトキメキ感じないの?」

 

 

 ……みんなが夢中になっている、その中で、一人。

 少し離れた場所で、騒ぐでもなく、ジッと2人を見つめ続けてる侑に声を掛けた。

 

 

「ううん、逆だよ。なんか……感動し過ぎしちゃって」

「感動?」

「うん。だって、みんなが最後に歌ってくれたことが、もう現実になってる。迷う栞子ちゃんに、歩夢があんな風にエールを送ってる」

「…………」

「スクールアイドルって、やっぱりすごいや。自分のやりたいことに正直で、自由で……それがみんなに伝染していく。私もやりたいって、そんな気持ちになってくる……」

 

 

 ひとときもステージから目を離さない侑に肩をすくめて、私もステージに集中する。まぁいつもみたいにコッソリ動画も撮ってるけどね?記憶と記録は別なんすわ。今日この日を、しっかり焼き付けないと。

 

 

「ちぇっ。つまんねーの。歩夢ちゃん盗られてヤキモチ妬いてんのかと思ったのに」

「盗るとか盗らないじゃないでしょ」

「まぁそれはごもっとも」

「それに、盗られないのにヤキモチなんか妬かないよ」

「ふーん……」

 

 

 …………ほーん?

 ……ふへへ。

 そうかい。そうかい。

 

 

「ごちそうさまです」

「え?なにが?」

「なーんでも」

 

 

 さらに美味しくなったねぇ、侑ってば。

 それでこそ追い甲斐があるってもんだ。

 今後もその調子でワタシの渇きを満たしてね!

 

 

「そういうアナタは?」

「ん?」

「トキメキ、感じてる?」

 

 

 応えるまでもない問いを、鼻で笑い飛ばした。

 今ここに居ることが、何よりの証明でしょ。

 

 

 

 

 

  ――  ずっと隠してたの ココロの奥 芽生えてた気持ちを見ないフリして……  ――

 

 

 

 

 

「……音楽科に挑戦する勇気は出た?」

「うん」

「そっか」

 

 

 そりゃ良かった。本心からそう思う。

 "原作"通りのストーリーになりそうだ……とかじゃなくて。

 今はただ、侑が"夢への一歩"を踏み出す勇気を得られたことが、嬉しい。

 

 ……はは。なんだ。私もまだこんな真人間らしいこと思えたんだ。いがーい。

 

 

「……アナタは?」

「ん?」

「スクールアイドルに戻る勇気とか、出た?今のアナタなら、やれるんじゃない?」

「……あぁ……」

 

 

 言われて、フードを被ってない頭をポリポリと掻く。なんだ、侑ってば今でもそれを気にしてたの?それでいつまでも同好会に誘ってきてたの?もう未練ないっつったのに。

 

 スクールアイドルの神様に愛されてなかった、だっけ?そんな風に言ったこともあったっけ。今思えばダサいことこの上ねーや。拗ねてるだけじゃん。

 

 

 ……まぁ、侑は今のワタシならやれると思ってるらしいけど。

 理由は分かんないけど、ワタシ自身も昔よりはマシに出来るんじゃないかって気はする。けども。

 

 

「いや。今日の皆を見てて改めて思った。スクールアイドルには、ワタシはもうならんよ。スクールアイドル同好会にも入んない」

「……そっか」

「他にやりたい事が出来たから」

「……え?」

 

 

 頭を掻いていた手の腕をいい感じの角度にして、侑から見えないように顔を隠して。

 ワタシらしくテキトーに、軽く聴こえるように意識して。

 

 

 

 

 

 

「ワタシ、新聞部に入るわ」

 

 

 新たに抱いた、決意を告げた。

 

 

 

 

 

「…………へ?新聞部?」

「ん」

「な、なんで?」

「んー……」

 

 

 はは。なんかいざ話すとなると恥ずかしいな、自分のことを語るって。みんな凄いね。

 

 でもな。

 侑に"隠し事されたら悲しい"って言ったのは、ワタシだしな。

 がんばろ。

 

 

 

 

 

「ほら、ワタシさ、ブログ書いてたっしょ?歩夢ちゃん達を紹介するブログ。流石に忘れてないと思うけどさ……今日のフェスに、居たんだよ。それ、見てるって人が」

 

「このLove誰かに伝われー!って書き殴ってたものが、実際にちゃんと届いてた。ささやかでも歩夢ちゃん達の力になれてたんだって、無駄じゃなかったんだって分かった。自分の好きなものが、自分の思った通りに伝わって、しかも共感してもらえてた」

 

「それがなんか……めっちゃ嬉しくてさ。直接言われたわけじゃないけど、ちゃんと言葉で聴いたらさ……すっごい実感として、身に染みたんだよ」

 

「……だから、もっと書きたくなった。歩夢ちゃんや、かすみちゃん達や、スクールアイドルみんなのことを、もっとワタシの文字で知ってほしいって……そう思った」

 

「ま、手段はなんでも良いんだけどね。動画でも、漫画でも、SNSでも……でも、どーにもワタシの発信するものは客観性とか論理性に欠けてる。主観マシマシで欲望のまま書いてるせいでキモくなってる自覚がある。今まではそれでも良かったけど……今まで以上に誰かに見てもらいたいなら、たぶん今のままじゃ、足りない」

 

 

「だから、新聞部に入る」

 

 

「虹ヶ咲の新聞部って、新聞といいつつマルチメディア発信してるしAI活用なんかにも積極的なんだよね。新時代のニュースメディアの在り方を常に模索する……だとかなんとか。まぁそんな高尚な意識はワタシにゃないんだけど、そこで学ばせて貰えれば、どんな形であれ今よりマシなものをアウトプット出来るようになりそうだって思ったんよ」

 

 

「偶然。ほんとにカンペキに偶然だった。でも、たぶんスクールアイドルフェスティバルが無かったら、こんな気持ちになることも無かった……ワタシも貰ったんだよ。みんなや、侑に」

 

『スクールアイドルのみんなのことを、もっとしっかり、もっと沢山の誰かに届けたい』

 

「……夢って言えるかはまだ分かんないけど……それが今日、みんなのおかげで気づいた、ワタシの気持ちなんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

  ――  歩き出そう Dreaming way 未来へと続く……  ――

 

 

 

 

 

 

「……そっか」

「……そ。そーいうわけだから、ワタシは同好会にゃ入んない。ま、そのうち取材には行くけど?邪険にするなよ泣いちゃうぞー?」

 

 

 新聞部とスクールアイドル同好会の掛け持ちも、やろうと思えばできるだろう。

 でもスクールアイドルの記事を書きたいって人間が、その相手とズブズブなのはダメでしょ。客観性が損なわれる。

 

 だから。

 みんなとワタシは、本当にここでお別れだ。

 ま、本来あるべき姿になるってだけだけどね。

 

 だからワタシは絶対挟まらなくなるからさ、侑も安心して歩夢ちゃんとイチャイチャしてくれ。

 大丈夫。絶対バレずにデバガメするから。

 

 

「……そっかぁ……」

「おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―― じゃあ、アナタと私はライバルだね!」

 

 

 

 

 

「…………は?」

「私がスクールアイドルの歌を作曲するのと、アナタがスクールアイドルの記事を出せるの!どっちが早いか勝負だよ!」

 

 

 ……なんて、流石にしんみりした気持ちになってたのに。

 なんか侑が変な事を言い出した。

 

 せっかく顔隠してたのに、思わずそっち見ちゃったじゃないかよ。

 なんでそんな良い笑顔してんのよ。

 

 

 

 

 

「……いやいや。ジャンル違い過ぎて競争出来るようなもんじゃないじゃん。だいたいそこがゴールなの?それに早けりゃ良いってもんじゃないっしょ」

「ふーん?自信無いんだ。まぁそれなら良いけど。ごめんごめん、無理強いしちゃったね?うん、ゆっくり頑張ってね?」

「…………はぁぁぁぁ??」

 

 

 あーなんか久方ぶりに侑の煽り聴いた気がするわー

 こいつ、ワタシに対してだけは気軽に喧嘩打ってくる奴だったもんなー

 ここんとこ真面目に活動してたからかー?

 逆に安心すらするわー

 

 はっはっは……はははっ。

 あぁ、安心するよ。ったく。

 

 

 

 

 

「つい最近ピアノに触り始めた初心者が大きな口叩くじゃん?よーし良いだろ買ってやるぞその喧嘩。みんなに愛想尽かされないように頑張れよー?」

「余計な心配だけど、そんなに気になるならたまに見にくれば?」

「おぅ行っちゃる。そんでみんなに詰め寄られてアタフタしてる姿を見て笑ってやる」

「詰め寄られて……?なにその状況。いったいどんな想像してるの?怖いんだけど」

「はっはっは」

「笑ってるけど、どっちかっていうならアナタの方が大変じゃない?同好会に顔を見せなくなったらきっと璃奈ちゃんとかが悲しむよ?」

「はぁ?ピンキーちゃん?別にワタシみたいなお手伝い1号のことなんか気にしないっしょ。昔のよしみのエマさんとか彼方さんならまだ分かるけど」

「……自分を客観視できないやつが記者とか出来るの?」

「侑にだけは言われる筋合いないやい」

 

 

 そう言いながら小突き合う。

 お互いの腕が交差する。

 侑とは手をつなぐ気になんてなれないけど。

 こーいうのなら、悪くない。

 

 

 

 

 

 ……何事も、全部上手く行くことなんて、あるわけなくて。

 実際は、後悔しちゃうことばかりなんだと思う。

 

 ―― でも。

 

 夢を応援してくれる人や。

 夢に向かって頑張りあう仲間がいれば。

 

 ワタシも。

 

 きっと、今度こそ。

 

 

 

 

 

  ――  あなたに 届いてほしいよ Beating my heart……  ――  

 

 

 

 

 

 

 そうしているうちに、歩夢ちゃんと栞子ちゃんのデュエット2週目が終わった。

 やり切ったように微笑む二人に我慢できなくなった皆が、侑とワタシを残してステージへと駆け寄っていく。

 

 もしかして、これ全員で歌う流れ?なんだよう、スペシャルステージにもほどがあるじゃん。ジャージってのも乙だよね。これ独占するの罪でしょ。いつかこの動画公開しよ。

 

 ……あ、歩夢ちゃんが少し離れたとこに居るワタシ達に気づいた。手招きしてる。

 最推しに誘われるとか光栄の極みじゃん。よし、近く行こ。最後の贅沢だ。

 

 

「……ま、気が向いたら侑のことも書いたげるよ。記事の隅っこにちょこっとだけね」

「別に良いよ。そのうち嫌でも4ページくらい丸々私のことを書くハメになるだろうから」

「MOOKかよ。雑誌は流石に出せにゃーよ」

「夢は大きい方が楽しくない?」

「それは人それぞれでしょ」

「でもさ、いずれ自分だけの本が出せたら素敵じゃん?」

「……まぁ、それはそう」

 

 

 一緒に歩む侑が、そんな事を言ってきた。

 

 自分の本。

 その響きは、正直、心躍る。

 歩夢ちゃんが表紙を飾る本を自分で出せたら。

 

 …………

 

 あっ、ヤバ。これダメだ。分不相応な妄想が膨らむ。侑め、なんて事を吹き込んでくれるんだ。

 

 

「じゃあタイトルは何にする?」

「今考えんの?てか内容が先じゃないの?」

「スクールアイドル特集に決まってるじゃん」

「決まってんの?」

「全国のスクールアイドル特集に決まってるじゃん」

「規模が大きくなったの?」

「で、タイトルは?」

「あー……そうだなぁ……」

 

 

 全国のスクールアイドルの特集ってことは、まぁラブライブ大会に触れないわけにはいけないだろう。なんだかんだ、基本の目標になるのに違いないんだから。

 けどワタシが書く以上、どうしたって虹ヶ咲のみんなは贔屓したくなる。かといって虹ヶ咲の名を冠しちゃ忖度が過ぎる。

 となると、虹ヶ咲が中心でありつつも他校生徒と協力して作り上げるスクールアイドルフェスティバルにフィーチャーしたい。夢見るスクールアイドルがどんどん参加表明してくるのは想像に難く無いし、話題性は十分だ。

 それに……侑や副会長みたいなスクールアイドルじゃないけどスクールアイドル活動に関わる人から、ライトなファンまで。いろんな人の声なんかも、載せたいよね。

 

 

 

 

 

 競技者としての頂点を目指す、ラブライブ。

 自分の夢を自分で叶えるために集う、スクールアイドルフェスティバル。

 それに関わる、すべての人。

 

 

 

 

 そんな数多の煌めきと、トキメキを詰め込んだ本。

 

 それに相応しい、タイトルは……

 

 

 

 

 

 ……………………

 

 …………

 

 ……

 

 うん。よし、決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「安直ではあるけど…………

 

 

"ラブライブ・スクールアイドルフェスティバル ALL STARS!"

 

 

 ……なんてどう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






新しい明日へと さぁ 夢がここから 始まるよ

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