コンフェッティア小話   作:タコのスパイ

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 アレな妄想短文を詰め込んだだけの小ネタ。暑くて頭回らない中で書いたのでかなり雑です。
 そして(2)があるかは未定。


下世話コンフェッティア(1)

【紙と肉】

 

 ペーパーの言動は毎回毎回唐突だ――とデメトリアは思う。ただでさえ画用紙の顔は表情の変化が分かりづらい上に、本人も口数が少ないから尚更だ。

 しかしデメトリア自身としては、そんな彼(あるいは彼女)に嫌悪や忌避を抱いた事など一瞬たりともない。同じ「真意が読めない」タイプでもデリリーニよりは比較にならない程まともだし、子供は多少ミステリアスなほうが可愛げがあると思う。

 ただ……、

 

「えっと、ペーパー……?」

 

 コンフェッティアの名物アトラクションが一つ、オルゴールを模した巨大観覧車のゴンドラの中に二人は居た。

 遠慮がちな呼びかけに、ダッフルコートを(めく)った腹を撫で回す紙の手が止まり、鉛筆で描かれた目がこちらを見上げる。

 

「さっきからずーっと私のお腹触ってるけど……楽しいの?」

 

 間髪入れずに頷くペーパー。曰く、薄くて硬い自分と違って「厚み」「体温」のあるデメトリアの身体は新鮮らしい。

 確かに、これまでに出会ったコンフェッティアの住人は人形やスイーツばかりだから、自分のような生身の人間は物珍しく感じる……のかも知れない(なおデメトリアとしては、人間に近いように見えるデリリーニの外見は『見せかけ』で、その道化衣装の中には綿かプラスチックでも詰まっているのではないかと疑っている)。デメトリア自身とてその言い分が理解出来ないわけではないし、同時に当のペーパーには下心の片鱗の欠片すらも存在しない事も分かっている。だからペーパーの好きにさせているのだ。

 その時、脇腹を撫でた紙の手にデメトリアの思考が断ち切られ、驚きとくすぐったさの混ざった甲高い声が上がる。普段の彼女よりも数オクターブ高いそれがゴンドラ内に響くが、ペーパーの手を止めるに至らない。むしろその反応を何処となく面白がっている雰囲気すらある。

 デメトリアが固まっているうちにペーパーが身体ごと密着させてきたかと思うと、伸びて来た手がコートの内側に入り込む。脇腹だけでなく背筋にまで、細く固い画用紙の指が届くのを感じる。だが今のデメトリアにペーパーを制止する余裕など無かった。

 

(早く飽きて! じゃないと、コンフェッティアだの異常だのがどうのこうの以前に、私の頭が茹だってどうしようもなくなるから!)

 

 

【勉強の時間】

 

「ほらほら、こっち来て! スイーツもジュースも本もここにはいっぱいあるんだよ!」

 

 塗料工場の紫の区画(エリア)は園内唯一の蛸ことウーウーの生家であり、彼女が秘密を貯め込んだ秘密基地でもあった。そんな場所にウーウーが誰かを招き入れるなど滅多に無い、まさに特別な事なのだ。

 最初に出会った時と違う二本足のウーウー(何故姿が違うのかと聞いたところ『蛸なんだから色も形も変えられて当然だよ?』との事だった)に手を引かれながら、ペーパーは「部屋」の中を軽く見渡す。

 倉庫の一角を改造したと思しきそこは、床も壁も紫のタイルで統一された空間。紫色なのは棚やテーブルといった家具類も例外ではなく、反面ウーウーが嫌いだという緑色の物は一つも見当たらない。ずっと見ていると眩暈がしてしまいそうだ。

 

「よく来たなモノクロ! ここは大魔王ウーウー様の牙城……っていうのは、今は良いか。それより見せたいものがあるんだ!」

 

 薄っぺらい脚を畳み、手近なクッションの上に腰を下ろしたペーパーの目の前にウーウーは何かを広げてみせる。あられもない姿の女性の写真がふんだんに印刷されたそれは、現世で言うところの「グラビア誌」であった。

 何故こんなものがコンフェッティアにあるのだろうか。ペーパーの疑問にウーウーは答えた。

 

「この工場がスイーツや玩具を作ってるのはもう知ってるだろうけど、たまにこういう変なものがコンベアから出て来るんだ。デリくんに聞いても教えてくれなかったし、ペーパーは何なのか知ってる?」

 

 ペーパーは暫し真剣に考えた末、確か大人が読む物だったと返す。それを聞いたウーウーは分かりやすいほどに目を輝かせ、

 

「……って事は、これを読んでれば大人になって、いつかは大魔王にも近づけるって事だね!」

 

 僕と一緒に大人になろう! と本を半ば強引に鞄に突っ込まれたのを拒む事はペーパーには出来なかった。

 

 蛇足だが、デメトリアと合流後に件の写真集を見せたところ、何故か顔を真っ赤にした彼女の手によって哀れな雑誌は奈落の底へと葬り去られた。

 何故そのような凶行に及んだのか、理由は終ぞ教えてくれなかった。




 めでたい一周年に何を書いてるんだ……。
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