割と強いスキルを持ってるが、リスクが高すぎる件。 作:綾坂 慎二
「うわっ最果てのダンジョンかよ、はやく
俺は最果てのダンジョンに来るのは少なく見積もっても20回は超えている、つまり常連だ。この程度では焦らない、転移運ゲーをしていると多々来てしまうことがあるからだ。
「ほいほい転移っと」
ポケットに入れていた転移結晶を使ったが、景色が変わらない、というか使用されていない。
「壊れてんのか?なら別の転移結晶を使うか」
ポケットにあった
「アイテムボックス」
そう唱えるとボックスの中身を見て、必要な物を取り出すことができるのだが、一向にアイテム選択画面が出てこない。
「ボックスも壊れてんのか?朝はちゃんと起動してたのにどういうことだ?」
最果てのダンジョン常連の俺もこんな状況に陥るのは初めてだ、転移結晶が壊れていて使えないことは多々あったが、アイテムボックスが起動しないことはなかった。
「ポケットに突っ込んでた転移結晶は全部使えなかった、どうすればいいんだ」
悩む時間はない、誰一人として制覇したことがないダンジョンだぞ、とろとろしてたら、あっという間にこの世を去ることになる。
ダンジョンは人が侵入してくると一定時間経過で魔物《モンスター》が発生する、ダンジョンによって発生秒数はまちまちだが、基本的に3分~5分で1体以上発生する。
「俺がダンジョンに転移してから10分は経ってる、最低でも2体はどこかのフロアに湧いたってことだよな」
魔物がこれ以上湧く前に脱出する策を練るしかない。だが最果てのダンジョンの魔物の知識がない。
ダンジョンには中間地点《セーブエリア》というのがある、そこを目指すのが第一目標だ。
中間地点は簡潔に言うと、転移スポットだ。ダンジョンから脱出することはもちろん、中間地点まで到達すると次からそのダンジョンに転移する時に中間地点からスタートすることが可能になる。他にも特典があり、最初に到達した人物には激レアアイテムが貰えるという噂だ。
「敵と邂逅せずに移動か…割と詰んでるな…取り敢えずポッケ確認するか」
ポケットを漁ると移動や戦闘に役に立ちそうなものが大量にあった、無駄にポケットが多い服装に感謝する日が来るとは思わなかった。
「お!あった!でもそろそろバッテリーが切れそうだな」
これで少しの間は安全に進める、しかしバッテリーの容量が半分を切っている。
「短期決戦だな、元々長時間滞在する気はなかったしいいよな…」
いいわけないが、自分を鼓舞するために声に出し言い聞かせる。
節約ために、ライトは数秒付けてある程度道を覚えることに徹する。
急な接敵には対応できないのは懸念点だが、余程のことがない限り容量を節約しながら安全に進むことができる。
「魔物以外の問題は足場が悪いってところだな、これじゃ道を覚えるのも一苦労だ」
俺がこのダンジョンに来てから大体40分は経っている、魔物もその分湧いているはずだ。
「超強い魔物が最低でも8体以上湧いてるって詰んでるよな」
割と終わってる現実を嘆いていると、ポカっと何かを踏んでしまった音がした。
すると辺り一体が照らされ、転移を使う時に発生している青い光が眩しく発光した。
「眩しいな…これって…」
先ほどいたはずの薄暗い場所とは違い、明るい場所に転移していた。
「クソ!忘れてた!転移トラップかよ、やばいやばいやばい」
初級レベルのダンジョンにはほぼないので頭から抜け落ちていた。転移トラップ経験するのは初めてだが、これが非常に不味い状況ってのは様々な文献で読んできた。
転移トラップのやばい要素は一つしかない、ここにいるボスを倒さない限り元の場所に戻れないってところだ。
「どうする俺…ここから脱出する方法がないわけではないが」
スキルが通用しない相手じゃないなら勝てる見込みはあるがリスクが高すぎる。
「策を考えるのとちょっと休むか、この場所にいる間はダンジョンには俺がいないことになっている。魔物が追加で湧くことはない」
不幸中の幸いだが、ゆっくりできる時間をできた、この場で取る行動はとっくに決まっている。
疲れをとるため少し寝ることにした。
「よく寝た、寝ながら
スキルが通用する相手なら勝機はある、俺自身は弱いがスキルが反則並に強い。その分リスクがデカいが命と比べると大したことあるけどないということにしておく。
問題はスキルを使う条件を満たせるかだ。
俺のスキルは対象に一瞬でもいいから触れないといけない。超強い魔物相手に触ることなんてできるのか?
「いや無理だろ、このスキル魔物相手に試したことないから通用するかわからねえし」
小細工を考える時間はあるが、アイテムボックスが使えない以上長時間はいられない。
「いい策思いついた!これならワンチャンあるぞ」
この策が通用しなかったら俺は死ぬ、成功する
「このスキルを頼らないといけない状況になるなんてな…」
スキルを使用する覚悟は決めたはずなのに、本当に使っても良いのか?と心の自分が問い質してくる。
「死ぬよりはマシだ、いい加減はっきりしろよ俺」
禍々しい扉の前で再度覚悟を決め、扉をゆっくりと開ける。
「あれ?中に誰もいないのか?」
外からライトで照らし、中を眺めていると何者かに押され、ボス部屋に入ってしまった。想定外の出来事だったが、それ以上に気掛かりなことがあった。
「ボスがいない?」
明らかにボス部屋の雰囲気だったのに、ぱっと見渡しても誰もいない、あるのは玉座だけだ。
「どういうことだ?過去に誰かが倒したのか?」
罠地域について詳しくないのが痛い、一度ボスを倒したらそれ以降ボスは湧かなくなるのかがわからない。
「何か嫌な気配がするんだよな…明らかに怪しいのはあそこだよな」
ボスがいるのならば、唯一の遮蔽物である玉座の裏にいるはずだ。
「怖いけど近寄るしかないよな…できることはしておこう」
元々はボス対策の為に忍ばせておいた煙玉を、すぐに使える状態にし事前対策は完璧だ。後は進むだけ。
床に違和感がないこと念入りに確認するために、300mくらいの距離を数分かけて進んだ。
「よし!無事に玉座裏に回れた!」
ところがボスの姿は見当たらない、やはり俺の勘違いだったのか?
「あ!何か貼り紙があるぞ!こういうのって普通は直接刻まれてるもんじゃないのか?テンプレ的に」
馴染みのない言語で綴られているから、ほとんど読めないがこれを押せばいいみたいなことが書かれていた。
「押すのか?それっぽいの見当たらないけど」
やれることがないから、とりあえず指示に従って押す前に煙玉を使い急な接敵対策をとる。
「指示に従って、ボスが出てきたら溜まらんからなできる対策は取っておかないと」
「押すぞ!何も出てこないでくれよ!」
覚悟を決めて、押すと貼り紙が青く光りだす。
「この光はたしか転移トラップの時に見た光だ、また転移するのか?」
今回転移したのは紙だけだった、でも何もなかったはずの中央に宝箱っぽいのが置かれていた。