ミズキがシャーレに戻ってきてしばらく。
ミズキは何があったのか、昼間にも常に出ているようになった。
そして、意識せずとも物に触れられるようにはなったものの、当番の生徒に直接触れることや、生徒たちがミズキのことを見ることはできなかった。
どうやら、ミズキに直接触れることができるのは私だけのようだった。
「先生ー!」
「どうしたの、ミズキ?」
ニコニコと顔を綻ばせながら私のもとに歩いてきたミズキ。後ろ手に何かを隠しているようなポーズをしていた。
「じゃーん!ペロロ様の映画です!」
「おお、ヒフミの大好きなやつだね」
「はい!今日の当番だったヒフミさんが、おすすめの映画だって貸してくれたものがあるんです!一緒に見ませんか?」
「うん、いいよ」
ミズキが持ってきたのは、『ペロロジラ』という映画。かの有名(?)な『ペロロジラ』シリーズの第1作目だ。
先週公開が始まった、『ペロロジラ -1.0』のCMを見てミズキがペロロジラに興味を持ったが、ミズキはエデン条約の調印式の時が例外だっただけで変わらずシャーレの外には出れないようだった。
それでしょんぼりしていたミズキを見かねてヒフミに相談したところ、今日のお昼にミズキにサプライズで持ってきてくれたのだ。
「楽しみです!」
ミズキのために設置されていたテレビに最近取り付けられたBDプレイヤーにディスクを入れ、ぽちぽちとリモコンを操作していた。
〜〜〜〜♪
ミズキが設定を確認した後スタートボタンを押せば、モモフレンズの会社のクレジットが流れて映像が始まった。
「お、始まったね。こっちにおいで、ミズキ」
「はい!」
テレビの前に設置されたソファーに座り、テレビの前で立って操作していたミズキを呼ぶ。私の声に応えたミズキは、にこにことこちらに振り向いて走り寄り、ぽすんと私の真横に密着するように座った。
……きょ、距離が近い…
「さ、見ましょう!」
「う、うん」
〜〜〜〜〜♪
映画が終わり、エンディングロールが流れていく中、ミズキは固まっていた。
「……み、ミズキ?」
「──────────」
「だめだ、固まってる」
予想の数倍の大破壊とキャスト達の熱演、そして感動のストーリーラインによって、ミズキは後半から完全に固まってしまっていた。
ほろり
「!?」
唐突にミズキの頬にひとすじの涙が流れ、頬から零れ落ちた涙が結晶のように煌めきながら消えていった。
「うっ……ぐすっ……」
「み、ミズキ!?怖かった!?」
「い、いえ……」
泣きながらも怖かったわけではないとミズキは否定し、訳を一生懸命になりながら説明してくれた。
「ペロロジラが……かっこよくて……最期が悲しすぎて……」
「あっ、そっちなんだ」
怖がっていないのなら、てっきりキャスト達の熱演とストーリーに泣いているのかと思っていたけど……ペロロジラの方に感動していたとは……
ひとしきり泣いた後、ミズキは静かにBDプレイヤーからディスクを取り出し、ケースへと戻した。
「はぅ……とってもよかったです……」
「ふふ、泣いてたくらいだもんね」
「あうぅ……もう!」
「あはは……まだ今日は時間があるけど、どうするの?」
「ヒフミさんが持ってきてくださったのはこの『ペロロジラ』だけなので……どうしましょう?」
「……感想とか言い合う?」
「……そうですね!」
こうして私たちは、見終わったペロロジラの感想を言い合いながら、ほんわかとした時間を過ごしたのだった。
「そういえば、なんですけど」
「うん?」
しばらくして、ミズキが話題を切り替えた。時間はまだ23時で、私たちが寝るには少し早い時間だった。
「先生はモモフレンズではなく、ロボットとかの方が好きなんですよね?」
「うん、そうだよ」
「先生おすすめの作品とかってあったりするんですか?」
ミズキが期待するように、私に話題を振った。
「うーんとね、結構あるよ。『機動兵器カイザー』とか」
「か、カイザー?カイザーって……あのカイザーですか?」
聞いたことがある様子のミズキ……それもそうだ、私がミズキに話したことがあるからね。
「うん、アビドスを攻撃してた、悪い会社。でも、作品に罪はないからね」
「なるほど……」
納得してくれたようなミズキ。
「あとは、『ヘルメットライダー』とか、『2人はブルキュア』みたいなのも好きかな。どれも長いシリーズだから、何作品もあるけど……まぁ、それは『ペロロジラ』も同じかな」
「へぇ……いつか見てみたいです!」
興味を持ってくれたようだ。ミズキと共通の話題、共通の趣味ができるのは私にも嬉しいからね。
まぁ……ずっと一緒にシャーレにいるから、共通の話題なんて結構いっぱいあるけど……
まぁ何はともあれ、ミズキが見たがっているし出してこようかな。
「このシャーレに置いてあるから、いつでも見れるよ。明日にでもみる?」
「本当ですか!?ぜひ見ます!明日見たいです!」
明日見るとは言ったものの、目をキラキラとさせ、楽しみだという気持ちが抑えられていない。
「ふふ、今から楽しみだと寝れないよ?」
「大丈夫です!最近は力の消費よりも回復速度の方が早くて、寝なくても問題ないので!」
衝撃の事実を明かすミズキ。クールそうな見た目なのに胸を張り、ドヤ顔で私に自慢げに言うその姿はとてもかわいいのだが……
「え、寝てないの……?いや、夜の間は起きてるのは前からだったっけ……」
「そうですよ?」
ミズキにとっては当然のことながら、私にとっては寝ている間のことのためいまいちピンときていなかった。
「……あれ、前までは私が寝た後ミズキは時間を潰していると思ってたけど……今、朝まで一緒に寝てるよね……?」
「そうですね。あくまで寝る必要がないだけで、寝ることはできますから大丈夫ですよ?」
「あ、そうなんだ」
それなら安心。私がミズキを拘束して、夜の間暇にさせてしまっているのではないかと少し心配してしまった。
「ちゃんと寝なきゃダメだよ?」
「はい!毎日ちゃんと……寝てます!」
「何その溜め!?」
今ぜったいに3秒ぐらい悩んだよね!?
「…………///」
「ねぇミズキ!?」
なんで顔赤らめてるの!?私寝てる間に変なことミズキにしてないよね!?
その後何度聞いてもミズキは答えてくれなかった……
そんなこんなで話をしていれば時計は24時を示していた。
「ほら、先生!寝ましょう!」
私の追求を振り切るようにパッと私の後ろにつき、背中を押すミズキ。
「う、うん……ミズキも、ちゃんと寝てね……?」
「…………はい!」
「た、溜めないでくれると嬉しかったなぁ……」
私たちはいつものように寝室に来た。目覚ましをセットし、明日のスケジュールを軽く確認して寝る前にやることを全て終わらせる。
「先生、いつもみたいにしてください……///」
ミズキが何かに期待したような、恥ずかしそうな顔をして私にお願いする。
「ふふ、はいはい。おいで、ミズキ」
いつものように私が先にベッドに寝て、両手を広げる。
一緒に寝始めた初日と同じように私に抱きつかれていた方がいい、とミズキが2日目に言ってから、こうして私の腕の中に入るようにベッドに寝るのが習慣となった。
…………いいのかこれで……
……いや、でも一緒に寝るってもういったし、最初にやったのは私の方だし……
「えいっ!」
「うわっ」
ミズキが後ろを向いて腕の間に飛び込んできた。
ミズキの背中を受け止める。
「ふふ、びっくりしましたか?」
「う、うん」
「ふふ、なら少し勇気を出したかいもありました///」
その言葉を聞いて様子を伺えば、飛び込んだ勢いで少し乱れた美しい白髪の合間から覗いた、エルフのような長く尖った耳の先端が少し赤くなっていた。
「ふふ、恥ずかしかった?」
「うう……言わないでください……///」
恥ずかしがりながらも私の服の袖を後ろ手に掴み、催促するミズキ。
「そんなに急かさなくても、ちゃんとやってあげるよ」
「あう……///」
寝っ転がっているミズキの下から右腕を通してお腹の前に回し、左腕をミズキのお腹と腕の間に通して、お腹の前で手を組んだ。
「ミズキはどうしてこれが好きなの?」
私がそう聞くと、ミズキは耳をさらに赤らめた後、恥ずかしそうにか細く声を発した。
「その……///先生を、より強く感じられて……///」
「寂しく、なくなるんです……///」
「……それは、よかったね……私も、協力できて嬉しいよ」
なんだかこっちまで恥ずかしくなってきてしまうようなミズキの言葉に、私まで恥ずかしくなってしまいそうだったが、なんとかかっこいい大人の姿を崩さないために強い意志で声色に出るのを止めた。
「それじゃ、寝ようか」
「は、はい!」
ミズキが遠隔で電気を消し、部屋は真っ暗になった。
「おやすみ、ミズキ」
「はうっ///も、もう……耳元で囁かないでくださいっ///」
「あ、ごめんね……」
どうやらミズキの頭に近づいておやすみを言ったら、ちょうど耳元だったらしい。
「……おやすみなさい、先生。また、明日もよろしくおねがいしますね?」
「うん、ミズキもね。おやすみ」
改めておやすみを言い、私の意識はすぐに落ちていった。
(……耳、すごくくすぐったかったです……)
(……少し喋る時の息がかかっただけなのに……)
(……うぅ……///)
……なんでこんな官能的になってるんです???
もしかしてタグとか増やした方がいいですか???
リアルが忙しくなるので、投稿頻度が下がるかもしれません
タグに不定期更新って最初からついてるので許してください……
(……高評価、感想、お願いします)