シャーレの夜に出る幽霊ちゃんとの生活   作:めろんムーン

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み、みてたんですか

 

 

 

 夜。今日も私は、溜まりに溜まった仕事を片付けていた。

 

「せんせい、こんばんわ」

 

 スゥッ……と壁を抜けて現れたのは、ミズキ。

 

 ここ数週間ほど私がアビドスに行っていた間、シャーレの掃除をしたり、仕事を私の代わりに片付けたりしていてくれたらしい。

 

「こんなにおそくまで……まいにちおつかれさまです」

 

 時計を見れば、もう22時。

 

「いや、ミズキもお疲れ様。本当は、片付けや掃除なんかも私がやるべきだと思うんだけど……」

 

「そのくらい、わたしにまかせてください……せんせいは、お昼も夜もいそがしいんですよ?」

 

「でも、生徒に掃除とか片付けをさせるのは……」

 

「わたしの趣味みたいなものですから、気にしないでください。それに、わたしは夜にしかいないですし、学校にも行ってないんです。やることがないんですよね」

 

「……なるほど?」

 

「つまり、わたしはせんせいのおてつだいをしてない場合、ただの居候の幽霊になっちゃうんです!」

 

「……幽霊は基本そっちの方が多いと思うけどね?」

 

「い、いいんです!居候のなにもしていない幽霊はなんかやなんです!!」

 

「……まぁ、ミズキがそういうならお手伝いとかはしてもらおうかな」

 

「はい!まかせてくださいね!」

 

 

 

 さて、私も早めに仕事を終わらせようと思った矢先、ふと疑問が浮き上がって思わず口から出てしまった。

 

「ミズキってどこで寝てるの?」

 

「……はい?」

 

 案の定困惑されてしまった……しかし、切り出してしまった以上はミズキはしっかり応えようとしてくれるだろう。なら、せめて誤解のないように取り繕う必要があるかな。

 

「いや、ミズキはいつも日の入りから日の出の間しかいないけど、それ以外はどこにいるのかなって」

 

「……突然ですね?」

 

「ふと疑問に思ったからね」

 

「うーん、どこにいるか……ですか。強いていうなら、あいている用具入れとか、予備のおふとんやベッドが置いてある部屋とかでしょうか……でも大半は、ういたまま寝ることがおおいです」

 

「う、浮いたまま……その格好で……???」

 

 透けているドレスを着たミズキが浮きながら寝ているのは心臓に悪いんじゃあ……と思ってしまう。

 

「はい、この服、着替えられないので……」

 

「……透けているの、わかってる?」

 

「あ、それはわかって☆7°€4(────っ!!??」

 

 

 

 あ、完全に頭から抜け落ちてたやつ……

 

 ミズキは人の声とは思えない謎の言語で叫びながら、胸元と股間を隠す。

 

「そ、そうです……このお洋服、すけてました……はっ!?せ、せんせい……もしかして、ずっとみてました……!?」

 

 私が見ていた可能性に気が付き、私に縋り付くミズキ。

 

 ……一度隠したのに、縋りついたせいで隠せなくなっている。

 

 

「…………」

 

 

 目を逸らすしかない私。どう否定しても信じてもらえないだろうし、かといって認めれば社会的に凄まじくまずい。

 

 そもそも今は縋りつかれているので、透けているのがよりはっきりとわかってしまうため、この状況でミズキの方に目を向けるわけにはいかない……

 

 

「せ、せんせい……!?こ、こたえてください!!下着とか、もしかしてずっと見てたんですか……!?」

 

「……………………」

 

 

 ぴょんぴょんとミズキが飛び跳ねて私に抗議する。薄い生地のせいで身体の動きがより鮮明にわかり、大変よろしくない。

 どうすることもできず、とりあえず目を瞑る。

 

「せんせー!!せんせい!!??答えてください!!」

 

 もはや答えるしかないみたいだ……ついにミズキが浮遊して、無理やりわたしの顔を掴んで見つめている……

 

 見ていないという嘘は通じない……さっきからの沈黙の後にそれはもう無理だ……

 

 かといって、黙っているのも無理だろう。今まで黙っていたせいで、もはや顔に引っ付くような問い正し方でミズキはわたしに詰め寄っている。

 

 ……何か事情があるのかと思って指摘しなかったのは私だし、見たのも私。全面的に私が悪いね……

 

 ……どうしよう……

 

「せーんせー!!わ、わたしの下着、見たんですか!?見てないんですか!?そ、それだけでも答えてくださいよ!!」

 

 

 

「………………………………か、可愛かったと思うよ?」

 

 

 

 とりあえず褒めることしか思いつかなかった……

 

 

 

「うぇっ!?!?!?」

 

 

 

 わたしが褒めると同時に、ボッという音が出るかと思うほど、瞬間的にミズキの顔に朱が入る。

 

 

 

「は、はわ……はわわわわ……///」

 

 

 

 死人のような白い頬を見事なピンクに染めて、恥ずかしがるミズキ。あまりの恥ずかしさからか、両手で顔を覆い隠して後退った。

 

「う、うぅぅ……///や、やっぱり見てたんですね……///」

 

 『少しわかっていましたけど!!』というような副音声が聞こえそうな声色で呟かれる。

 

「ひどいです……もっと早くにおしえてくれてもよかったのに……///」

 

「ご、ごめんね……なにか事情があってそういう服なのかと……」

 

「この服は目覚めた時からこれなんですよぅ!!……着替えもできないし、人もいなかったので忘れてました……」

 

 それは可哀想だ……

 

「……どうする?上着とか貸そうか?」

 

「……いえ、上からなにかを羽織ったりはできないんです……すべてとおりぬけてしまって……」

 

「え、ペンとかは普通に持ったりしてるのに?」

 

「みためをへんこうすることができないみたいなんです……まえに髪を切ろうとした時も、だめでした……」

 

「へぇー……服も合わせて身体の一部ってことなのかな」

 

「たぶんそうなのではないかと……」

 

 ……と、いうことは……

 

「……じゃあ、どうするの?そのままになっちゃうけど……」

 

「う、うぅ……せんせいにしか見えないですし、がまんします……で、できるだけ見ないでいただけると……」

 

「うん、わかったよ。できるだけ見ないようにするね」

 

「おねがいします……」

 

 

 

「わ、話題を変えようか……ミズキはさっき、壁を通り抜けてきたけど……つい流してしまったけど、あれは何?」

 

「え、あれですか?幽霊らしく、壁抜けです!」

 

 ……まぁたしかに、壁を通り抜けてくるのは幽霊らしさはあるかな……?

 

「頑張ったらできました、ぶい♪」

 

 にっこりと笑ってVサインを作るミズキ。

 

 ミズキの顔はどちらかというとクール系なんだけど、結構表情豊かだ。どうやら幼いように見えるし、丁寧語で大人びた話し方をしていても滑舌が足りていないことも多い。

 

 ……いったい何歳なんだろう、そう思ったが……幽霊に聞くのはあまり良くないだろうな。

 

 

 

 そうして話しながら仕事をこなし、日付が変わった。

 

「ね、ねぇミズキ……あと1時間……」

 

 私の目の前には、まだ手をつけていない30cm程の書類の山が。

 

「だめです!ちゃんと寝てください!」

 

 しかし、ミズキはそれを私が終わらせることに反対した。なぜか彼女は日付が変わった後の残業は許してくれないのだ。

 

「ど、どうしてそんなに日付が変わったら毎日寝かせようとするの……?」

 

「健康にわるいからです!わたししってますよ!せんせいはいつも朝7時くらいに起きてるって!」

 

「うぐっ」

 

「睡眠時間が6時間以上とれてないのはあんまりよくありません!ちゃんとねてください!」

 

「で、でも仕事が……」

 

「わたしがやっておきますから!あしたの朝かくにんしてください!ほら、お風呂入ってください!」

 

 ミズキが椅子をポルターガイストによって操作し、ドアの方へと私を連れて行こうとする。

 

「み、ミズキ待って!?ちゃんと自分の足で行くから、下ろして!?」

 

「……しかたありませんね、止めてあげます」

 

 なかなかに早くて少し怖かった……

 

「じゃあ、お風呂入ってくるよ」

 

「はい、いってらっしゃいです。わたしはお仕事を進めておきますね」

 

 

 

 ゆっくりとお風呂に入りながら、考え事をする。

 

「……ミズキは、生前はどこの学校にいたんだろう」

 

 名前と容姿以外の情報が一切ないのでは、調べようにも……いや、リンちゃんなら何か知っているかもしれないね。今度聞いてみよう。

 

 そんなことを考えながらお風呂を上がり、ミズキのところへ戻った。

 

 

 

「ではせんせい、ゆっくり休んでくださいね」

 

「うん。ミズキもしっかり休んでね?」

 

「ふふ、私はお昼に休んでますからね!」

 

「そうだった……」

 

 ついつい一緒に夜に仕事をしているせいで忘れそうになるが、ミズキは昼間は眠っているのだ。私とは違ってしっかり休めているようだし、よかった。

 

「じゃあ、おやすみ」

 

「はい、おやすみなさい」

 

 そうしてミズキが電気を消すと同時に、私も眠りに落ちていった……

 

 

 




「か、感想と、高評価、くださいっ!」
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