仮面ライダーガヴ&ひろがるスカイ!プリキュア   作:仮面大佐

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第48話 酸いも甘いも焦がす程

 カブトダンシを悪用して、人々をヒトプレスにしていたル・ビートは、ソウマ達仮面ライダーと、ひろがるスカイ!プリキュアとキラキラ☆プリキュアアラモードによって倒された。

 そんな中、体調を酷く崩し、酸田の研究室を訪れた辛一。

 そこで彼が見た物は……………。

 

「ねえねえ、見て!眷属作れたよ!」

「チョコチップクッキー」

「(ゴチゾウの鳴き声)」

 

 2人のダークソウマと酸田が楽しげに話していた。片方のビターガヴの手にはチョコチップクッキーから作られた紫色のゴチゾウが握られていた。 

 更には、側にダークプリズム、ダークバタフライ、ダークウィング、ダークマジェスティの姿もあった。

 

「ねぇ見て、お父さん!」

「おいおい、俺はお前たちのお父さんじゃあない」

「あ、ごめんなさい。ご主人様…………」

 

 辛一が唖然としながら見ている中、ダークソウマがそんな風に言うと、酸田は笑顔を浮かべたまま冷たく言い放つ。

 酸田の言葉に2人のダークソウマはシュンとして落ち込んでしまう。

 今のやりとりだけでも、ビターガヴと酸田の間には確かな上下関係があった。

 すると。

 

「ソウマくん。ちょっと屈んでみて♪」

 

 ダークプリズムはそんな風に言って、2人のダークソウマを中腰にさせる。

 すると。

 

「よしよし。ソウマくん、よく出来たね〜♪」

 

 ダークプリズムは、頬を赤くしながらも、2人のソウマの頭を優しく撫でていた。

 2人のダークソウマは嬉しそうに柔らかく笑っており、その光景を他のダークプリキュアもニヤニヤしながら見ている。

 そんなどこか異様な雰囲気が漂う中、辛一は口を開く。

 

「お前……………どういう事だよ⁉︎」

「あ!シンチー来てたんだ」

「はぁ…………だから出てくるなって言ったんだ」

 

 辛一はそんな風に問いかける。

 すると、それに気づいたダークバタフライがそう言う中、酸田は声は荒げずに、静かにビターガヴとダークプリキュアを叱る。

 机に腰掛けていたが、降りると口を開く。

 

「あれ?随分しんどそうだね?だから黒チョコ(チョコルド)は預かっとくって言ったのに。あ、ちょうど良かった。今度これ使ってみて」

「(ゴチゾウの鳴き声)」

 

 酸田はにこやかな笑顔を崩さずに、指を鳴らすとビターガヴが作った紫のゴチゾウを見せる。

 そのゴチゾウは、チョコチップクッキーのゴチゾウであり、BREACOOKIE(ブレイクッキー)と書かれていた。

 そんな酸田に対して、辛一は。

 

「あんたがこいつら造ったのか?…………何で人間を襲わせた?あんたの目的はグラニュート退治じゃねえのかよ‼︎うっ………ハアハア…………ハア…………⁉︎」

「そんな一遍に…………」

 

 辛一は目の前の状況から導き出せた真実に混乱しながらも、酸田に詰め寄る。

 すると、胸の痛みが悪化したのか、その場に蹲ってしまう。

 酸田も辛一の剣幕に少し怯みながらも笑みは崩さずに口を開く。

 

「でも俺達さ、利害は一致してるでしょ?」

「……………はあ?」

 

 酸田は、蹲る辛一を見下ろしながらゆっくりと語り出す。

 それを聞いて、辛一がそんな風に反応すると、酸田は口を開く。

 

「グラニュートを退治する力が欲しい辛一君と…………グラニュートを倒せるだけの強い人間を作りたい俺。ねっ?」

 

 辛一はそんな風に語る酸田を見て、驚愕の表情を浮かべる。

 つまり、酸田はグラニュートを倒す為では無く、グラニュートを倒せるほどに強い人間を作ることが目的であり、最初からグラニュート退治などどうでも良かったと言うことである。

 その事実にようやく気がついた辛一は、一言も発することさえ出来なかった。

 すると。

 

「大丈夫!俺がもっと強くしてあげるから。ほらしんどいんでしょ?早く横になって」

「ううっ!」

 

 酸田はそう言って、辛一を休ませようとする。

 だが、真実を知ってしまった辛一は酸田の手を振り払い、研究室から逃げ出す様に出ていく。

 それを見た酸田は。

 

「ああっ!今さら怖気付いちゃって…………」

 

 逃げ出した辛一に、酸田は頭を掻きむしり、苛立ちを隠せない様にそう呟く。

 

「(荒い息遣い)」

 

 研究室から逃げ出した辛一は、痛む胸を抑えながら夜の街を彷徨っていた。

 辛一はある程度歩き、公園近くのベンチにたどり着いた。

 辛一はスマホを取り出して、あげはに助けを求めようとする。

 だが…………。

 

『ダメだ。こんなヤベェことに、あげはをこれ以上巻き込む訳にはいかねぇ………!』

 

 頭にそんな考えが過る。

 酸田の本性を垣間見て、あげはを巻き込んではいけないと思ったのだった。

 辛一は電話をかけられず、そのまま痛みのあまり、ベンチの前に倒れてしまう。

 辛一の手からこぼれ落ちたスマホからは、あげはからの着信が来ていた。

 その翌朝。

 

「ザクザ〜⁉︎」

 

 ある道路を通っていたザクザクチップスゴチゾウは、通ってきた軽トラックによって吹き飛ばされる。

 その軽トラックには、ソウマと陽香の2人の姿があった。

 

「引越しって夜中にもするんだね?」

「色んな事情ある人いるからねぇ〜。まあ、夜逃げってやつだよ」

 

 ソウマがそう言うと、陽香はそう答える。

 今回の依頼は夜逃げであり、2人は夜逃げを手伝って、帰路に着いていた。

 しばらく走っていると、ベンチの側に人が倒れているのが見えた。

 それを見たソウマは。

 

「陽香さん、止めて!」

「え⁉︎何?何?何?」

 

 ソウマはそんな風に叫ぶと、陽香は急ブレーキを踏む。

 止まると同時にソウマは軽トラを降り、倒れている人に駆け寄る。

 その人は昨晩に酸田の研究室からから逃げ出した辛一であった。

 

「ねえ、ウマソー?は!シンチー!どうした?」

 

 ソウマがいきなり降りた事に困惑したが、陽香も辛一が倒れているのを見て、状況を把握したのか、すぐに降りる。

 

「辛一!辛一!」

「頑張れ!今、救急車呼ぶから」

「待って!病院はダメなんだ」

 

 ソウマが辛一に必死に呼びかける中、陽香は携帯を取り出しながらそう言う。

 それに対して、ソウマは辛一の事情を知っている為、陽香をとめた。

 そんな中。

 

「ねえ、着信来てるよ?」

「えっ?あげはさん…………!」

 

 そこで側に落ちていた辛一の携帯から着信が鳴る。

 陽香がそう言うと、ソウマが辛一のスマホを確認すると、連絡者はあげはだった。

 ソウマは今の辛一の状況だけでも伝えようと思い、着信に出る

 

「もしもし」

『良かった、やっと繋がった!大丈夫、シンチー⁉︎』

「あげはさん?俺、ソウマです」

『あれ、ソウマくん⁉︎私、間違えてかけちゃった?』

 

 ソウマがそう言うと、かなり慌てているのか、あげははそう言う。

 ソウマの言葉を聞いて、あげはがそんな風に反応すると。

 

「ううん、間違えてないよ。実は辛一が倒れてるところを陽香さんと見つけて、あげはさんから電話があったから状況だけでも伝えようと思って」

『え、そうなの?それよりシンチーが倒れたって⁉︎』

「うん、ずっと胸を押さえて、苦しそうにしてるんだ。病院には連れていけないから………今から酸田さんのとこに連れて行くつもり」

 

 ソウマは、辛一が倒れていたのを陽香と共に見つけた事を伝えた。

 辛一が倒れたのを聞いて、ソウマは酸田の元に連れて行くと言う。

 すると。

 

『待ってソウマくん!あの人はやばい、これ以上シンチーに関わらせちゃダメだよ』

「え…………?」

 

 あげははソウマに対して、そんな風に言う。

 あげはは、酸田に対する自分が感じた不信感を拭いきれずに止めたのだった。

 すると、辛一もソウマの言葉が聞こえたのかソウマの腕を掴む。

 

「やめろ、アイツは………ヤバい…………!」

「シンチー!」

『シンチー、どうしたの⁉︎ 』

 

 辛一はそんな風に言い残すと、気絶する。

 陽香が辛一を心配する中、電話越しに聞こえた辛一の声に、ただ事ではないと感じたのか、あげはも慌て始める。

 

「あげはさん。これからデンテおじさんの所にましろちゃん達と一緒に来れる?辛一をそこに連れて行くから」

『デンテさんのところだね。分かった、ましろん達も一緒に連れて行くね!』

 

 ソウマは、あげはにましろ達と一緒にデンテの所に来る様に伝える。

 あげははそれだけ言って、電話を切る。

 陽香はソウマに話しかける。

 

「ウマソー。あげは何て言ってた?」

「陽香さん、一緒に行ってほしいとこあるんだ。後であげはさん達も来るから」

 

 状況がイマイチ飲み込めない陽香はソウマに尋ねると、ソウマはそう答えながら、辛一を背負い、陽香と共にデンテの元へ向かう。

 そんな中。

 

「あ…………スイクス!よかったら来てくれない?辛一が大変なんだ!」

『辛一が?分かった』

 

 ソウマはスイクスにも連絡をしていた。

 それからしばらくして、ソウマ達はデンテの洞窟に到着した。

 中に入ると。

 

「デンテおじさん」

「おお!できる限りの準備はしておいたぞい。今の様子は?」

「さっき電話で話したのと変わらない。ずっと胸を押さえて苦しそう…………!」

「うんうん。よしよし分かった!さあ、そこに!スイクス!おまえさんらも手伝ってくれ!」

 

 ソウマはデンテとそんな風に話す。

 それを聞いたデンテはそう指示をして、ソウマはデンテの指示通りに辛一をベッドに寝かせる。

 そこから、デンテは、スイクスとクリスと共に手製の機材で辛一の体を調べていく。

 

「(ゴチゾウの鳴き声)」

 

 近くのテーブルではゴチゾウが回し車の上を走って発電をしていた。

 途中で1匹が天に召され、それに気を取られたゴチゾウが回し車の中で大回転し、弾き出されていた。

 

「うん………?おお………。うん………ん⁉︎」

 

 そこからデンテは手製の機材で辛一の体を調べていく。

 ソウマは陽香の元に向かう。

 

「あれがウマソーの大叔父さん?」

「ごめん陽香さん。怖い?」

 

 陽香は、デンテを怯えながら見ていた。

 初めて見るグラニュートだからだ。

 ソウマが陽香を気遣ってそう聞くと、陽香は口を開く。

 

「正直全くってわけじゃないけど…………うん、大丈夫」

「ありがとう」

 

 陽香はそんな風に答える。

 グラニュートだからというのではなく、デンテ個人を見ようとしていたのだ。

 そんな陽香に感謝するソウマだった。

 すると。

 

「シンチー‼︎」

「皆…………!」

 

 そこに、あげはもソラ達と共に駆けつけた。

 ソラ達に気づいたデンテは。

 

「おお、お前さんら。もう少しで終わりそうじゃわい」

 

 デンテもプリキュアに軽く声をかけてから診察に戻った。

 

「あげは!それにみんなも‼︎」

「…………ソウマ君。何があったのか、詳しく教えてくれない?」

「うん」

 

 陽香はあげは達に声をかけると、あげはは陽香に反応しつつ、ソウマにそう問いかける。

 ソウマは、あげは達に詳しく今の状況を説明していく。

 

「そんな事が…………」

「でも、どうして…………?」

「大丈夫かな…………」

 

 説明を受け、ソラ達は辛一を心配する。

 そんな中、ソウマは辛一の上着を探っていた。

 

「あれ?」

「どうしたの?」

「辛一に渡してあったゴチゾウ達がいない。何があったのか聞こうと思ったのに………」

 

 ソウマがそう呟くと、ましろはそう聞く。

 ソウマはゴチゾウを探していたが、一向に見つからなかった。

 理由は、辛一が持っていたゴチゾウは、酸田が預かっているからだ。

 そんな時、辛一のズボンのポケットからチョコルドゴチゾウが出てきた。

 

「(ゴチゾウの鳴き声)」

「おお!ここにおるぞい」

 

 デンテがチョコルドゴチゾウに気付いて、ソウマに声をかける。

 ソウマはチョコルドゴチゾウを手に取ろうとすると。

 

「おおぉぉ⁉︎」

「あっ⁉︎」

「逃げました!」

「捕まえよう!」

 

 すると、チョコルドゴチゾウが逃げ出してしまう。

 しばらく洞窟内を逃げ回っており全員で捕まえようとするが捕まえられずにいた。

 仕舞いには、チョコルドゴチゾウはソウマ達を馬鹿にする様に笑っていた。

 

「もう…………!どこだよ…………!」

 

 陽香はそんな風に呟くと、目を閉じる。

 集中しているのだ。

 すると。

 

っしゃ!オラァァァァ‼︎捕まえたぞ…………!」

「すごい!」

「さすがです!」

「おお…………!」

 

 陽香はこれまでの依頼で培った集中力で、チョコルドゴチゾウを捕まえたのだった。

 それを見て、ソラ達やデンテが感心する中、ソウマはチョコルドゴチゾウを見る。

 

「黒いチョコレート?こんな子、初めて見た………」

「あれ?そのゴチゾウ…………ソウマ君が作ったんじゃ無いの?」

「うん。ねえ、君はどこから来たの?辛一に何があったのかな?」

 

 ソウマはチョコルドゴチゾウを見て、首を傾げる。

 あげはがそう聞くと、ソウマはそう答えつつ、チョコルドゴチゾウに問いかける。

 だが。

 

「……………」

「黙秘…………⁉︎」

「もしかして…………」

 

 チョコルドゴチゾウは黙ったままだった。

 それを見て、陽香がそう言う中、あげははある1つの考えが頭に浮かんでいた。

 

「だったら………貸して」

 

 それを見たソウマは、チョコルドゴチゾウをガヴフォンにセットする。

 だが…………。

 

「あれ?…………何も映らない」

 

 ガヴフォンには何も映らなかったのだ。

 それを見て、チョコルドゴチゾウが勝ち誇る様に笑うと。

 

「あなた…………怪しいですね!」

 

 ソラはそんな風に言いながらチョコルドゴチゾウを捕まえると、空の瓶に閉じ込めた。

 

「デンテさん、この子のことも調べられます?」

「おう…………やっとくぞい」

 

 あげははデンテにチョコルドを調べてもらえる様にお願いし、デンテは了承した。

 すると。

 

「みんな、辛一のことお願い」

「どこに行くの?」

 

 ソウマがそう言って、洞窟から出ようとすると、エルちゃんはソウマに聞く。

 ソウマが口を開く。

 

「やっぱり…………直接聞くしかないなって」

「もしかして、酸田さんのところに?」

「うん」

「だったら私も行く!ソウマくんまだ体調戻ってないんだから心配だもん!」

 

 ソウマは酸田の元に行く事を伝える。

 ツバサがそう聞く中、ましろはそう叫ぶ。

 不安だと。

 それを聞いたソウマは。

 

「ありがとう、ましろちゃん。じゃあお願いするね」

「うん♪」

 

 以前とは違い、ソウマは真っ先にましろを頼った。

 頼ってくれたことに、ましろは笑顔を浮かべて、ソウマとましろは2人で洞窟を出る。

 すると。

 

「本当に行くのかい?」

「え?」

「罠と分かっていても、行くつもりなんだね?」

 

 スイクスはそんな風に声をかける。

 それを聞いたソウマは。

 

「でも…………ほっとけないから」

「私も…………!」

「そうか」

 

 ソウマとましろはそう答えると、かけだしていく。

 それを見て、スイクスはそんな風に呟く。

 


 

 その頃、酸田の研究室では、酸田が鼻歌を歌いながら、パソコンを見つめていた。

 そこには、ビターガヴ、辛一、Kという赤ちゃんの絵のデータがあった。

 不意に階段から足音が聞こえてきて、酸田がその方を向くと、ソウマとましろが階段を降りて来ていた。

 

「「酸田さん」」

「あれ?ソウマくん、ましろちゃん。2人だけ?デートでこんなとこ来るとは思えないけど…………コーヒー飲む?」

 

 ソウマとましろが険しい表情を浮かべながらそう言うと、酸田はそんな風に言う。

 すると。

 

「辛一に何したの?」

「あ〜、そっかそっか。君たちのとこ行ったのか」

 

 ソウマがそう問いかけると、酸田はそんな風に言う。

 他人事の様に言う酸田を見て。

 

「何で辛一さんはあんなに苦しそうなんですか⁉︎」

「それにあの黒いゴチゾウは何⁉︎ 関係あるんだよね?」

 

 2人は酸田に詰め寄る。

 何故、辛一が苦しそうなのか、チョコルドゴチゾウが何なのかを。

 それを聞いた酸田は。

 

「ん?辛一君をもっと強くしてあげようとしただけだよ?それは辛一君の望みでもあるし………俺の望みでもあるから.。ただね…………辛一君ビビっちゃって。…………そうだ、ソウマくん、ましろちゃん…………君たちも手伝ってくんない?」

「えっ?」

「何を言ってるんですか………⁉︎」

 

 酸田はソファーに座りながら、そんな風に言う。

 何処となく出てくる得体の知れなさに、2人が動揺すると。

 

「おらっ!立てよ!」

「立ちなさい!」

 

 突然後ろからビターガヴとダークプリズムが変身した姿で襲いかかり、ソウマとましろを捕まえる。

 

「ビターガヴ⁉︎」

「ダークプリズムも…………⁉︎」

「ねえソウマ君、ましろちゃん………辛一君、元気かな?」

 

 ソウマとましろがそう言う中、酸田は笑みを浮かべながらそんな風に言う。

 だが、今の2人には、酸田の笑顔が恐ろしく見えたのだった。

 


 

 一方、ソウマとましろが酸田の研究室へ向かった後のデンテの洞窟では、未だに目を覚さない辛一を陽香、あげは、ソラ、ツバサ、エルちゃんが心配していた。

 

「シンチー………」

 

 あげははそう呟くと、辛一の手を握り、早く目が覚める様にと願っていた。

 

「「「「あげは(さん)………」」」」

 

 それを見ていた陽香、ソラ、ツバサ、エルちゃんもそんなあげはを心配していた。

 あげははこの中で1番辛一の近くに居たのに1番肝心な時に側にいてあげられ無かったことに後悔を募らせているようであり、思い詰めているのが目に見えたからだ。

 それを見ていたデンテは。

 

「心配なのは分かるが…………今日はもう夜も遅い。後はワシらに任せて、お前さんらは帰りなさい」

「そうだよあげは……………後はウチとデンテさんとスイくんとクリスんで診とくから、ソラちゃん達と帰りな」

 

 デンテと陽香はそんな風に言う。

 デンテと陽香は、あげは達にこれ以上辛一の側にいるのは酷なのではと考え、帰らせようとしたのだ。

 それに対して。

 

「ううん。私、シンチーの目が覚めるまでここに居る」

 

 あげははそんな風に言う。

 あげはにとって、それは譲れない様で辛一の手を更にギュッと握りしめる。

 それを見ていたソラ達も同じ気持ちだった。

 

「私も残ります。辛一さんは、私達の大事な仲間ですから」

「僕も残ります。辛一さんのこともありますが…………少しデンテさんとも話があるので」

「エルも残る!みんな一緒に居たい!もちろん辛一も一緒に…………!」

 

 ソラ達はそんな風に言う。

 そんな中、ツバサはデンテの方を少し向くと、デンテもツバサの意図を察したのか、頷いた。

 三人の意志は固いようで譲らないことが窺えた。

 それを見た陽香は。

 

「…………分かった。じゃあウチがヨヨさんに事情は話しておくから」

 

 陽香はヨヨさんに電話する為に、少し席を外した。

 ツバサは、デンテに話しかける。

 

「デンテさん。以前の話、そろそろ本格的に進めた方が良いと思うんです」

「その様じゃのぅ………。シンチーのことも心配じゃが、これ以上敵が強くなればソウマとお前さん達だけで対処できるかも怪しくなって来る」

 

 ツバサがそんな風に言うと、デンテは頷きながらそう答える。

 辛一の容体を見守る間に、以前から話していた計画…………ゴチゾウの力をプリキュア達にも使える様にする為のアイテムの開発を進めることにした。

 その後、陽香がヨヨさんからソラ達を預かる許可を貰い、今夜は全員でデンテの洞窟に泊まることになった。

 


 

 それから一夜が明けて、日が昇ってきた。

 すると、辛一は目を覚ましていく。

 辛一の視界に入ったのは…………。

 

「うん?おおっ、気がついたな!」

「グラニュート⁉︎…………?」

 

 辛一の視界に入ったのは、デンテだった。

 驚いた辛一はデンテを突き飛ばそうとするが、左手が動かせないことに気づく。

 すると。

 

「はい、ストップ!ストップです!」

「デンテさんはお医者さんの代わりに辛一さんのこと診てくれたんですよ?」

「えっ?」

「それにあげはが付きっきりで辛一の看病してくれたんだから。ほら」

 

 ソラが辛一を止めると、ツバサはそう言い、陽香が補足をして、左手を見る様に促す。

 すると。

 

「えっ?えっ⁉︎」

 

 辛一は驚いた反応をする。

 何故なら、自分の手があげはの両手で包まれていることに気づいたからだ。

 

「すぅー…………すぅー…………」

「あげは…………」

 

 あげはは手を握りしめたまま、ベッドに突っ伏して眠っており、辛一はあげはの手の温もりに顔が緩み、笑みを浮かべる。

 それを見ていたエルちゃんが口を開く。

 

「あげは、辛一のこと本当に心配してたんだよ」

「ありがとうな……」

 

 エルちゃんがそんな風に言うと、辛一はあげはの頭を優しく撫でる。

 すると。

 

「うぅん………ん?」

 

 あげはは目を覚まし、瞼を擦り、ゆっくりと目を開ける。

 そのまま、辛一が目覚めていることを確認する。

 すると。

 

「シ………シンチー………?」

「お……おう。おはよう………あげは」

 

 あげはは目を見開き驚きを隠せない様子だった。

 辛一は、恐る恐る挨拶をする。

 すると。

 

「ふっ!」

「ちょちょちょっと⁉︎あげは?」

 

 あげははいきなり辛一をギュッと抱きしめた。

 辛一は、いきなりのことに驚きを隠せずにいて、周りのみんなも驚いていた。

 すると、あげはが口を開く。

 

「よがっだ〜…………!ごべんね、じんぢ〜………!大変な時に…………側に居てあげられなくて…………!」

「あげは…………」

 

 あげはは泣きながらそんな風に言う。

 辛一が倒れた時に、側にいてあげられなかったことをずっと後悔していた様子だった。

 周りのみんなはそっと見守っており、あげははしばらくすすり泣き続けた。

 ようやくあげはが泣き止み、改めて現状を確認することになった。

 

「どうも!ソウマの大叔父です。中々甘酸っぱい物を見せてくれたのぉ、ホホホホホ!」

「「////」」

 

 デンテは若い2人のやりとりを見て、やけにごきげんだった。

 辛一とあげはも、恥ずかしいと思ったのか、少し頬を染めていた。

 すると、デンテは咳払いをしつつ、口を開く。

 

「んんっ!今、胸の痛みはどんなもんじゃ?」

「そういえば………だいぶマシだ」

「うん」

「ありがとうな………助かった。それと突き飛ばそうとして悪かった」

「まあえぇ、まあえぇ。おまえさんみたいな反応も慣れっこじゃ、ハッハッハッ!」

 

 デンテがそう聞くと、辛一はそう言う。

 デンテの処置により、胸の痛みが柔らいだのだ。

 辛一はお礼を言いつつ、デンテを突き飛ばそうとした事を謝った。

 それに対して、伊達に長生きはしていないのか、デンテは気にした様子も無く笑い飛ばしていた。

 辛一は口を開く。

 

「ソウマが運んでくれたのか?」

「うん」

「…………俺の体どうなってんだ?」

 

 辛一がそう言うと、陽香はそう頷く。

 そこから、辛一は自分の体の状況を、デンテに聞く。

 すると、デンテは口を開く。

 

「お前さん。人間には無いグラニュートの器官を体内に埋め込んどるな」

「えぇ⁉︎」

「そいつのおかげで、ヴァレンに変身しとる様じゃが…………こいつを使うと、その器官が活性化し過ぎて、心臓への負担が半端無いことになる様じゃ」

 

 デンテがそう言うと、陽香は驚いた。

 ソラ達は、あらかじめ聞いていたのもあって、驚いていなかった。

 デンテは瓶に閉じ込めたチョコルドゴチゾウを見せながら、辛一の不調の原因を説明する。

 辛一の不調の原因は、チョコルドゴチゾウによるグラニュート器官の過剰活性による心臓への莫大な負荷だった。

 

「そいつの所為………」

「やっぱりそうだったんだ………」

「おぉ?あげはちゃん。気付いとったのか?」

 

 辛一がそう言うと、あげはは薄々勘付いていたのか、そんな風に呟く。

 それを聞いたデンテはあげはに聞くと、あげはは口を開く。

 

「確信があった訳じゃ無いけど…………シンチーが不調になりだしたのって、そのゴチゾウを使い始めた頃からだったし。何より…………ソウマくんのゴチゾウじゃ無いって言うのが1番の決め手かな?」

 

 あげははそんな風に呟く。

 酸田があげはに話していなかったこともあり、チョコルドもソウマが生み出した物だと勘違いしていたのだ。

 その為、確信が持てなかったが、デンテに辛一の不調の原因を聞き、あげはの疑念が確信に変わった。

 すると、辛一は口を開く。

 

「だったら……………何で止めなかったんだよ?」

「あの時のシンチーは無意識にソウマくんのことを避けてた。そんな状態で辞めさせようとしたら最悪、私の話しを聞いてもらえなくなると思って…………言えなかったんだ」

「そっか…………確かに………あげはの言う通りだ」

 

 辛一がそう問いかけると、あげははそう答える。

 あげはは当時の辛一の気持ちを汲み取り、敢えて黙っていたのだ。

 その答えに辛一も納得していた。

 すると。

 

「でも…………こんなことになるなら…………無理にでも止めるべきだったんだ…………。ご………」

「それは違う!あげはは悪くねぇ!全部俺が自分で招いた結果なんだ‼︎…………むしろ、ありがとな…………俺のこと…………そこまで考えてくれて…………ありがとう」

「うん」

 

 あげははそんな後悔の念を吐露する。

 こんな事になるのなら、チョコルドゴチゾウの使用を止めた方が良かったのだと。

 すると、辛一はそんな風に叫び、あげはに深々と頭を下げる。

 あげはも納得した様で笑顔で頷いた。

 それを聞いた陽香は口を開く。

 

「今までは大丈夫だったの?」

「ああ………」

「ソウマのゴチゾウを使うのが、ギリギリのラインじゃろうな。ただ、落ち着くまではそれも避けた方が良え」

「それじゃ…………しばらく戦えねぇってことか?今すぐキレイさっぱり治せねえのか⁉︎」

 

 陽香がそう聞くと、辛一はそう答える。

 そこから、デンテはそう語る。

 チョコルド以前から、辛一は高いリスクを抱えていたのだ。

 デンテのドクターストップに対して、辛一はそんな風にデンテに詰め寄る。

 

「しばらく安静にして、落ち着くのを待つしか無いのう………。あっ!体内のグラニュート器官を摘出すれば治るぞい!」

 

 デンテはしばらく安静にして、落ち着くのを待つか、グラニュート器官を摘出する事を提案する。

 それを聞いた辛一は。

 

「それは無理だ!俺はグラニュートを…………ストマック社の奴らを絶対ぶっ倒さなきゃいけねえんだ。それ失ったら…………また無力な俺に逆戻りだ。だったら…………苦しいくらい我慢する」

「シンチー……………」

『……………』

 

 辛一はそんな風に叫ぶ。

 ストマック社と戦うには、ヴァレンの力が必要であり、その為にも我慢をすると。

 それを聞いた陽香とそら達は、辛一の覚悟を見て、何も言えなかった。

 すると。

 

「返してくれ」

「ちょっ…………これは辞めとけ!」

「はぁ?何でだよ⁉︎返せよ!」

 

 辛一はそう言うと、デンテにチョコルドゴチゾウを返して欲しいと頼み込む。

 それを聞いたデンテは、チョコルドゴチゾウの危険性を分かっていた為、返そうとしなかった。

 辛一とデンテが揉めていると。

 

「シンチー!シンチーの気持ちも分かるけど、私達の気持ちも考えてよ!私もみんなもシンチーが心配なんだよ⁉︎」

「辛一さんの覚悟は分かりました。それなら、ソウマさんのゴチゾウを使うのはダメなんですか?」

「それは……………」

「何?何がダメなの?」

 

 あげはがそんな風に叫ぶと、ツバサはそう聞く。

 それを聞いた辛一が言い淀むと、陽香はそんな風に聞く。

 陽香は、ソウマが辛一の母親の死に間接的に関わっていることを知らないのだ。

 その為、陽香は辛一が黙り込んでいる理由が分からなかった。

 すると。

 

「ソウマはましろと一緒に、辛一の為に酸田の所に行ったんだよ?危ないかもしれないのに!」

「え?」

 

 エルちゃんはそんな風に叫ぶ。

 それを聞いて、辛一が驚いていると、辛一の携帯が鳴る。

 辛一が携帯を確認すると酸田からであり、着信に出る。

 

「酸田!」

『ああ、良かった辛一くん出てくれた!』

「おい、ソウマとましろちゃんがそっちに………!」

『うん来てるよ。今ね、ビターガヴとダークプリズムが捕まえてる。はい何かひと言どうぞ』

 

 辛一が出ると、酸田はそんな風に言う。

 酸田の研究室では、酸田は受話器をソウマとましろにむけていた。

 

「ごめん辛一………油断してた」

「私とソウマくんは大丈夫ですから…………心配しないでくださいね…………」

 

 ソウマとましろはそんな風に言う。

 ソウマはビターガヴに、ましろはダークプリズムに体を押さえられていた。

 2人がそう言うと、酸田は口を開く。

 

「だって辛一君逃げちゃうんだもん。つうことで…………2人に会いたいんなら、ソラシド映画館の地下駐車場に来てくれる?見せたい物があるから」

 

 酸田は辛一に用件を伝えた。

 それだけ言い残して、酸田は電話を切った。

 すると、陽香は困惑した表情で口を開く。

 

「ちょっと…………どう言うこと⁉︎」

「ビターガヴとダークプリキュアを作ってたのは……………酸田。俺にヴァレンの力をくれた奴だったんだ」

「な、何と⁉︎」

 

 陽香がそんな風に聞くと、辛一はそう答える。

 それを聞いたデンテが驚く中、辛一は。

 

「嘘だろ?どうしてソウマとましろちゃんが……………」

 

 辛一はそんな風に言う。

 あの2人が捕まったことが未だに信じられないのだ。

 すると、エルちゃんが口を開く。

 

「ソウマ…………ずっと体調悪いんだよ?」

「はい。アイスしか体が受け付けなくなってしまって…………」

「原因は、メンタル的な物みたいです」

 

 エルちゃんがそう言うのを皮切りに、ツバサとソラもそう言う。

 それを聞いた辛一は、陽香とあげはに視線を向ける。

 それに対して、2人共頷いた。

 辛一の脳裏にはある光景が映った。

 それは、ここ最近のソウマとの確執だった。

 

「そう言うことかよ…………」

 

 辛一はそう呟く。

 辛一はソウマの不調の原因が自分だと分かってしまったのだ。

 すると、辛一はコートを手に取り、酸田の元に向かおうとする。

 

「おい!まだ安静に………!」

俺の所為なんだよ!行くしかねぇだろ…………!」

 

 デンテは止めようとしたが、辛一はそう叫ぶ。

 こんな事態になってしまった責任を取る為に、そんな風に言うと、ソラシド映画館に向かう。

 

「シンチー!ああ〜どうしよう…………!」

「私達も行きましょう!」

「はい!」

「ええ!」

「うん!」

 

 陽香が頭を抱える中、ソラはそう叫ぶ。

 ソラの言葉にあげは、ツバサ、エルちゃんは頷き、辛一の後を追った。

 それを見ていた陽香は。

 

「あげは達が着いてくっても、やっぱり心配だな〜…………そうだ!」

 

 陽香はそんな風に呟くと、電話をかけ始めた。

 電話の相手は、ラキヤだった。

 ラキヤは公園の遊具から周囲の景色を見ていた。

 

「ソウマとましろが?」

『そう心配なんだ。ねえ、ラキヤン行ってみてくんない?』

「はぁ…………分かった」

 

 ラキヤがそう聞くと、陽香はソラシド映画館に向かって欲しいと頼み込む。

 それを聞いたラキヤが了承すると。

 

『ん?ラキヤン?』

『知らない?グラニュートの…………えっと………仮面ライダーヴラム!』

『おお、あいつか!』

「お前、今誰と居るんだ?」

『もしもしラキヤン?ワシじゃ、デンテじゃ!お前とヴェロにやられそうになった。ハハハッ!』

「はぁ…………お前か、俺はラキヤンじゃない。ラキヤだ」

 

 デンテは、陽香に電話の相手を聞くと、陽香はそう答える。

 すると、デンテはラキヤの周りの子供達がびっくりする様な大声でそう言う。

 ラキヤがそんな風に言うと。

 

『あぁ、それより。ウンタラカンタラ駐車場に行く前に、ヴェロと一緒にこっちに寄ってくれんか?頼みたいことがあるんじゃ』

『えぇ⁉︎ちょっラキヤンと涼介に行ってもらおうと思ったのに…………!』

 

 デンテは、ラキヤと涼介に洞窟に来る様に頼み込む。

 陽香がそう叫ぶ中、ラキヤは通信を切る。

 そこから、別の人物に連絡をする。

 

『どうしたラキヤ?』

「あぁ涼介か?実はな…………」

 

 ラキヤは涼介に電話をかけ始めた。

 涼介は、河原で食べる為の石を探しており、そう聞いた。

 ラキヤは事情を話す。

 

『…………分かった。俺もいく。先に向かっててくれ』

「ああ」

 

 ラキヤから事情を聞いた涼介はそんな風に言う。

 そして、2人でデンテの元に向かうことにした。

 


 

 その頃、辛一は酸田の待つ駐車場に向かっており、壁に寄りかかりながら歩いていた。

 中に入ると、そこには酸田、ビターガヴに捕まえられたソウマ、ダークプリズムに捕らえられたましろ、他のダークプリキュアが変身した姿で待っていた。

 

「ほぉら早く」

「辛一!」

「さっさと歩いてよ!」

「辛一さん!」

「辛一君ごめんね、体調悪いこと」

「酸田…………テメェ!」

「シンチー!」

 

 ビターガヴとダークプリズムがそんな風に言ってソウマとましろを歩かせる中、酸田はそんな風に言う。

 それを聞いた辛一がそう叫ぶと、そんな声が聞こえてくる。

 そこにソラ達が追いついた。

 

「お前ら、何でここに?」

「ソウマさんとましろさんも心配ですが、やっぱり辛一さんを放っておけなくて」

「何とか間に合って良かったです!」

「もう!少しは私達を頼りなさいよ!」

「シンチー、そう言うことだよ。それに酸田さん…………ソウマくんとましろんは無事なの⁉︎」

 

 辛一がそう聞くと、ソラ達はそう答える。

 辛一が放っておけないと言う理由で来たのだ。

 あげはは、険しい表情で酸田にそう問いかける。

 すると。

 

「あぁ…………プリキュアのみんなも来たんだね?ちょうど良かったよ。離してあげて?」

「「はーいご主人様〜」」

 

 酸田はそんな風に言う。

 すると、ビターガヴとダークプリズムは、ましろとソウマの2人をあっさり解放した。

 

「どう言うつもりだ?」

「いったい何が目的なの?」

「いや言ったでしょ?見せたい物があるって」

 

ベイクマグナム!

 

 酸田の思惑を図りかねたのか、辛一とあげはがそう聞くと、酸田はそう言って、ある物を取り出す。

 それは、持ち手の部分はヴァレンバスターと同じだが、銃身の部分が恐竜や獣を思わせる見た目の銃と、ブレイクッキーゴチゾウだった。

 

「それは…………⁉︎」

「シンチーのヴァレンバスターに似てるけど…………⁉︎」

「辛一君にあげたバスターのバージョンアップ版と、ビターガヴで作った新しい眷属。ええっとこうして…………」

 

SET(セット)

 

「こうか」

「(ゴチゾウの叫び声)」

 

チェンジング!

 

 それを見た辛一とあげはがそんな風に言うと、酸田はそう説明する。

 その銃…………ベイクマグナムは、ヴァレンバスターの運用データを元に、強化・改良した物なのだ。

 酸田はそう言うと、ベイクマグナムにブレイクッキーゴチゾウを装填して、クリムゾンジャッキを三回操作する。

 そんな音声が鳴る中、酸田は口を開く。

 

「…………で、何だっけ?え〜…………あっ、そうだ。変身」

 

 酸田はそんな風に口にする。

 変身の掛け声は、ソウマ達が何かの思いを込めているのに対して、酸田は感慨も何もなく、指を鳴らしながらそう言う。

 すると、ベイクマグナムをソウマ達に向けて、トリガーを引く。

 

ファイヤー!

 

「危ない!」

「うっ⁉︎」

 

 すると、ベイクマグナムからベイクマグナムの銃身の様なエネルギーが発射される。

 ソウマ達が回避すると、そのベイクマグナムの銃身の様なエネルギーは酸田の頭上に向かうと、酸田の周囲を囲む。

 すると、ベイクマグナムの銃身の様なエネルギーが離れると、今度はオーブントースターのヒーターの様なエネルギーに変換される。

 

ビヨンドバイオロジー!ベイク!

 

 その音声が鳴ると、酸田にクッキーの生地が覆われる。

 そのクッキーの生地が焼き上がると、それらが砕けるようにしてアーマーに変化する。

 酸田は、仮面ライダーベイク・ブレイクッキーフォームに変身した。

 

「はー…………なるほどね。こんな感じなんだ…………」

「何で………お前、自分も改造したのか⁉︎」

「えっ⁉︎」

 

 酸田は変身した自分の姿を見ながらそう呟くと、辛一はそう聞く。

 辛一の言葉に、ソラ達は驚きを隠せずにいて、酸田は口を開く。

 

「辛一君が実験台になってくれたおかげで、ある程度安全性が担保されたのよ。ありがとね」

 

 酸田はそんな風に言う。

 辛一の実験データで担保された安全性を基に、自身にもグラニュート器官の移植手術を施していたのだ。

 すると、酸田は口を開く。

 

「…………で、俺が証明しようと思って。これを使えばソウマくんより強くなれるってさ!」

 

バン!

 

「おい!」

 

 酸田はそんな風に言うと、ソウマの足元に向かってベイクマグナムを発砲する。

 辛一がそう叫ぶと、酸田は口を開く。

 

「悪いんだけどソウマくん、早いとこ変身してくれる?ね?俺と戦おうよ」

「そんな…………」

「後さ、プリキュアのみんなも変身してくれる?それでさ、調整したダークプリキュアと戦ってよ?黒ソラ、約束はこれで果たしたからね?」

「ええ、もちろん。これでやっと借りを返せます」

 

 酸田は、ソウマに変身するように促す。

 ソウマが困惑していると、酸田はソラ達にも変身する様に促していく。

 すると、黒ソラがそんな風に言いながら現れた。

 

「黒ソラ…………あれだけのダメージを負っていたはずなのに………⁉︎」

「ああ、あの後、酸田さんに頼んだんですよね〜。ダークプリキュアにアンダーグエナジーを更に分ける代わりに、回復させてって。おかげでこの通りですよ」

「まさか、こんなことになるなんて…………!」

「さあほら。俺を倒すつもりで!」

 

 ソラが困惑しながらそう言うと、黒ソラはそう答える。

 ソラとの勝負に負けた黒ソラは、酸田にアンダーグエナジーを提供することと引き換えに、治療をしてくれる様に交換条件を持ちかけたのだ。

 全てはソラに負けた借りを返す為に。

 酸田がそう言うと、ダークプリキュアと共に襲いかかってくる。

 ソウマ達が回避すると。

 

グミ!

EAT(イート) グミ!

 

『スカイミラージュ!トーンコネクト!』

 

 ソウマはガヴにポッピングミゴチゾウを装填して、ソラ達はスカイミラージュにスカイトーンを装填する。

 ソウマの周りにグミの袋の様なバリアが現れて、酸田の攻撃を防ぐ。

 ソウマがガヴドルを回転させると。

 

「変身!」

「ひろがるチェンジ!スカイ!(プリズム!)(ウィング!)(バタフライ!)(マジェスティ!)」

 

 六人はそう叫んで、変身を開始する。

 

ポッピングミ!ジューシー!

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

「降り立つ気高き神秘!キュアマジェスティ!」

「レディ…………!」

『ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!』

 

 ソウマがガヴ・ポッピングミフォームに変身する中、ソラ達はそんな風に名乗りをあげる。

 それを見た酸田は。

 

「ふふっ!来たね、来たね!さあ、張り切って参りましょう!ハハハハッ!」

 

 酸田はそんな風に言いながら、ベイクマグナムを発砲していく。

 辛一は、その光景を見ていた。

 


 

 その頃、デンテの洞窟では、ラキヤと涼介の2人が到着していた。

 

「これで良いんだな?」

「俺達のベルトとゴチゾウで何をするつもりだ?」

「おお、助かるぞい!」

 

 2人はそう言うと、ラキヤはヴラスタムギアとどっプリンとぷるゼリーのゴチゾウを、涼介はヴェロドライバーとうるおいジュースとカンカンコーヒーとモーモーミルクのゴチゾウをデンテに渡す。

 それを受け取って、デンテが机に向かうと、陽香は問いかける。

 

「そのベルトとゴチゾウがどうしたの?」

「これらはニエルブが作った物なんじゃ。あの子が作った物なら、ワシにも作れるかもしれん。シンチーが使える新しいベルト………そしてゴチゾウが」

 

 陽香がそう聞くと、デンテはそう答える。

 このベルトとゴチゾウ達はニエルブが作った物で、ニエルブの師匠でもあるデンテなら今の辛一が使える様に、改良を加えたベルトとゴチゾウが作れるかもしれないと。

 デンテは辛一の願いを叶える為に、新しいベルトとゴチゾウを作ることにして、その為に2人を呼び出したのだ。

 


 

 一方、ソラシド映画館の地下駐車場では、戦闘が行われており、ソウマは酸田と、ソラ達はそれぞれのダークプリキュアと応戦していた。

 

「はい、集中集中!しっかり見て!」

 

 酸田はそんな風に叫ぶと、ソウマに向かって銃撃をする。

 ソウマはベイクマグナムの銃撃を回避する為に、車の影に隠れる。

 

「あれ、ちょっとソウマくん。隠れるのはズルイな〜…………。そう言うの良くないよ。時間もったいないじゃん」

 

 車の影に隠れたソウマに対して、酸田はそんな風に呟く。

 ソウマが隠れている車の横を歩いていくと。

 

「…………なんて。ハイ見っけ!」

「うわっ!ううっ…………⁉︎ううっ…………!」

 

 酸田はそんな風に言うと、車の下の隙間からベイクマグナムでソウマを銃撃する。

 それを受けたソウマは、左腕の装甲が弾け飛び、移動を開始する。

 一方、ソラと黒ソラは。

 

「はぁっ!はっ!」

「ふっ!はっ!」

 

 ソラと黒ソラは両者共に、拳と蹴りの格闘戦を繰り広げていた。

 

「ハアァァァァァァ‼︎」

「テリャァァァァァ‼︎」

 

 ある程度の打ち合いが続いた所で、ソラがパンチを出せば、黒ソラが手の平で受け止めて、拳を繰り出す。

 ソラがその拳を躱せば、黒ソラが膝蹴りを出す。

 ソラがもう片方の手で受け止めると黒ソラは肘鉄をソラの首筋に打ち下ろす。

 

「グハァ!」

「どうしました?その程度ですか!」

「グワァ‼︎」

 

 肘鉄を受けて、ソラが怯んだ所で黒ソラの渾身の回し蹴りがソラの脇腹を捉える。

 それを受けたソラは大きく蹴り飛ばされた。

 

「フフッ…………!ハハハハッ…………!」

 

 一方、酸田はソウマを追いかける様にベイクマグナムで銃撃していき、車の窓ガラスを破壊する。

 銃撃の度に駐車されている車を巻き込んでいる為、被害は甚大だった。

 ソウマは回転しながら、銃撃を躱していく。

 

「ほら油断しない!」

「うわっ⁉︎」

 

 酸田はそう叫ぶと、出てきたソウマにベイクマグナムの銃撃を当てて、ソウマを倒す。

 すると。

 

「あっそうだ!こんなのも…………ありかな!」

 

 酸田はそんな風に言うと、近くに停めてあった車を引っ張り出すと、思い切り蹴る。

 

ベイキング!フルブラスト!

 

「ううっ…………うわぁ⁉︎」

 

 酸田は車を目隠しにしつつ、ベイクマグナムのクリムゾンジャッキを二回操作する。

 そして、チャージしたエネルギー弾で車を撃ち抜く。

 エネルギー弾は車を貫通して、ソウマはダメージを与えて、車によってソウマは吹き飛ばされる。 

 一方、ましろとダークプリズムは。

 

「はっ!ハァァァァァ!」

「ふっ!はっ!」

 

 ましろとダークプリズムは光球と闇球を打ち合って牽制を行いつつ、徐々に距離を詰めていた。

 すると。

 

「ねぇ、そろそろソウマ君とチューぐらいなしたの〜?」

「うぅっ、そこまではまだしてないよ!でも私なりに好きになってもらえる様に努力はしてるもん!」

「ふ〜ん?涙ぐましいね〜。でもね、あんまり待たせるとソウマくんも可哀想だよ?ソウマ君って、性格は子供っぽいけど、顔はかっこいいし、体だって立派な大人なんだから、周りの女の人がほっとかないよ〜。モタモタしてると誰かに取られちゃうよ〜。だったら取られる前に責任取ってもらえる様に赤ちゃん作っちゃえば良いのに〜。ソウマくんなら絶対に責任取ってくれるもんね〜?」

「う、ううう…………!」

 

 ダークプリズムがましろに揺さぶりをかけるべく、そんな風に聞くと、ましろはそう叫ぶ。

 キスくらいでは動揺しないと悟ったのか、どんどん揺さぶりを過激にしていく。

 ましろは考えない様にしていたが、可能性が頭を過り、集中力が少しずつ削がれてきていた。

 すると。

 

「隙あり!ダークプリズムショット!」

「はっ…………キャァァァァァ!」

 

 ましろに出来た僅かな隙を見逃さず、ダークプリズムは大技を喰らわせた。

 それを受けたましろは大きく吹き飛ばされた。

 一方、酸田は。

 

「フフフッ…………!盛り上がって参りました!」

「うわぁ!」

「ビンゴ!フフフッ!」

 

 酸田はそんなふうに言うと、チョコチップクッキー型の弾丸を3発放つ。

 放たれたチョコチップクッキー型の弾丸は、ソウマのアーマーの右縦3つを撃ち抜く。

 酸田は面白そうに笑っていた。

 一方、ツバサとダークウィングは。

 

「はぁっ!」

「ふっ!」

 

 ツバサとダークウィングはこの狭い駐車場内では、自慢の飛行能力は活かせないので、接近戦を行いつつ低空飛行で加速して攻撃を続けていた。

 すると。

 

「ハッ、ハッ、ハアッァァァァ!」

「フッ、フッ、ハアァァァァァァ!」

 

 ツバサは低空飛行からの加速力を乗せたボディーブローを繰り出す。

 それに対してダークウィングは受けた瞬間に脱力し攻撃を受け流し、ダメージを減らして、逆にツバサにダメージが返っていくカウンター戦法を繰り出していた。

 

「ウワァァァァァ!」

「フフフ。早いだけが強さではないんですよ!」

「くっ⁉︎」

 

 ツバサがカウンターを喰らってしまい、怯んでしまう。

 そこに、ダークウィングが追い打ちの前蹴りを放ち、ツバサは吹き飛ばされる。

 酸田は、ベイクマグナムを周囲に向かって撃つ。

 すると、『サクッ』というチョコチップクッキー型のエフェクトが現れる。

 

「あっ、こう言う風になるんだ。これを………こうか!」

「うっ⁉︎」

 

 酸田はそんな風に言うと、『サ』の文字を蹴り出す。

 ソウマが回避すると、その『サ』の文字は爆発する。

 

 

「さらに…………こうっ!」

 

 次の『ク』の文字は、左手でパンチする様に放つ。

 それに対しては、ソウマはガヴガブレイドを天井に刺してぶら下がって躱す。

 

「こうだ!」

「…………うわっ⁉︎」

 

 最後の『ッ』の文字は、ベイクマグナムで飛ばした。

 ソウマは回避して、文字は途中で柱にぶつかって砕ける。

 だが。

 

「うわぁぁぁ⁉︎」

 

 砕けた文字の破片がソウマの目の前で爆発した。

 そのエフェクトには、時間差で爆発する特性があったのだ。

 一方、あげはとダークバタフライは。

 

「フッ!ハァァァァァ!」

「はっ!よっと!」

 

 あげはとダークバタフライは互いの攻撃をバタフライバリアで防ぎながら、互いに隙をつくヒットアンドアウェイを繰り広げていた。

 

「ダークバタフライキッス!」

「バタフライバリア!」

 

 ダークバタフライのダークバタフライキッスを防いだ際に砂煙が立ってしまい、視界が一気に悪くなってしまう。

 すると。

 

「あっ、ましろんが危ない‼︎」

「え⁉︎」

「うっそ〜。ダークバタフライキッス」

「きゃぁぁぁ⁉︎」

 

 ダークバタフライはあげはの前に姿を現し、あげはにの斜め後方を指差しましろの危機を伝える。

 それを聞いたあげはは、咄嗟に指さされた方を向いてしまう。

 だが、そこには誰も居なかった。

 その隙をダークバタフライに突かれ、ダークバタフライキッスの直撃を受けてしまい、吹き飛ばされた。

 一方、酸田は柱に寄りかかりながら、右肩の装甲が弾け飛び、左肩の装甲が破損したソウマに対して、口を開く。

 

「どうしたのどうしたのソウマくん。もっと頑張って反撃しなくちゃ!」

「うわぁ!………ううっ…………⁉︎」

 

 酸田はそんな風に言うと、ベイクマグナムでソウマを銃撃する。

 すると。

 

「ほら何?キャンディとかケーキとかマシュマロとかもっと色々あるでしょ!」

 

 酸田はベイクの強さを証明する為に、ソウマに本気を出させようとして、フォームチェンジするように言う。

 そして、ベイクマグナムで銃撃したり、パンチやキックを繰り出す。

 それに対して。

 

「だぁっ‼︎………グッ!ウウッ…………!」

「ちょっと…………危ない危ない…………!せこいよ」

「ぐわぁ⁉︎」

 

 ソウマは酸田の足を掴んで動きを止めようとする。

 だが、酸田はそんな風に呟くと、ソウマの足を撃ち、転倒させる。

 そこから、ソウマの押さえつけると、柱を足で蹴る。

 そこから、スライディングする様にベイクマグナムを至近距離から撃っていく。

 ソウマは何発かは受けてしまうが、ガヴガブレイドを盾にして、凌ごうとする。

 すると。

 

「こいつ…………邪魔だね!」

「だあっ⁉︎ぐはっ⁉︎」

 

 酸田はそう言うと、足でガヴガブレイドを抑えて、ソウマを投げ飛ばし、無防備のソウマに銃撃する。

 一方、エルちゃんとダークマジェスティは。

 

「ハァァァァァ!」

「フッ!はっ!」

 

 エルちゃんとダークマジェスティは、お互いにスピードを活かした高速機動と打撃と手刀をメインとしたランアンドガン戦法を繰り広げていた。

 

「ハアァァァァァァ‼︎」

「テヤァァァァァァ‼︎」

 

 エルちゃんとダークマジェスティが何度目かの激突の瞬間、ダークマジェスティは手刀を繰り出す寸前にエルちゃんの手刀を繰り出そうとしている方の腕を掴む。

 

「ハァァァァァ!」

「きゃっ⁉︎」

 

 ダークマジェスティは、一本背負いの要領でエルちゃんを投げ飛ばした。

 咄嗟のことにエルちゃんは反応が遅れてしまい、態勢が崩れてしまう。

 その隙をダークマジェスティが見逃さず訳も無く、追撃の右ストレートを顔面に叩き込んだ。

 

「ぐっ⁉︎」

「ウフフフフフフ!」

 

 エルちゃんは顔を歪ませる中、攻撃を決めた時のダークマジェスティはそれはご満悦そうなサディスティックな笑みを浮かべていた。

 そして、エルちゃんはそのまま吹き飛ばされてしまう。

 

「ソウマ君が本気出してくれないと、この新システムの強さが辛一くんに伝わらないじゃない。ダークプリキュアの方は調整の成果がちゃんと出てるみたいだけど」

「本気なんか出せない………!あなたが何考えてるのか…………もっと知らないと…………!」

 

 酸田はそんな風に言うと、ガヴガブレイドをソウマに投げ渡す。

 それに対して、ソウマはそんな風に答えながら、ガヴガブレイドを掴む。

 酸田はグラニュートではなく、人間である為、酸田の考えを知ろうとしており、本気を出せないと。

 すると。

 

『うわぁぁぁぁぁ⁉︎』

「え!ソラちゃん、ましろちゃん、ツバサくん、あげはさん、エルちゃん⁉︎みんながどうして…………⁉︎」

 

 そこに、ダークプリキュアに重い一撃をもらって吹き飛ばされたプリキュアの5人がソウマの周りに集まる。

 5人共、かなりのダメージを負っていた。

 ダークプリキュア達が並び立つ中、酸田は口を開く。

 

「おいおいマジか…………。ああ、なるほど。そう言うあれだ。俺が人間だからだ。ソウマくんは人間を守るグラニュートだもんね。だから俺を倒したくないと…………。志が低いなあ。目的があるなら何を犠牲にしてでも果たさなきゃ…………でしょ」

「ううっ!ああっ…………⁉︎」

「ソウマくん!…………もう、もうやめ………!」

 

 酸田は、いつまでも本気を出さないソウマに対して、呆れる様にそう言う。

 そして、酸田はソウマを蹴ると、ましろはソウマに近寄る。

 酸田に『やめて欲しい』と言おうとすると、酸田は口を開く。

 

「俺はやったんだよ?1、2、3…………ええっと…………あれはあれだから…………8人か。いや、もうちょい居たな」

 

 酸田はそんな風に呟く。

 それを聞いたソウマは、ある事を察した。

 

「それって…………今まで…………人間を…………⁉︎」

「えっ…………⁉︎」

「人の命を奪ったの…………⁉︎」

 

 ソウマがそう言う。

 酸田は、実験台の命を奪ったのだ。

 それを聞いたソラ達も驚く。

 すると、酸田が口を開く。

 

「そりゃ、そうでしょうよ。辛一君を変身させたり、ソウマ君やプリキュアの偽物作ったり。そんな事が一朝一夕で出来るわけないじゃない。これは、20年以上に及ぶ研究の成果」

「20年以上も…………⁉︎」

「そんな…………⁉︎」

 

 酸田はそんな風に言う。

 さも、何を当たり前の事を言っているんだと言わんがばかりに。

 ツバサとエルちゃんが驚愕の表情を浮かべる。

 すると。

 

「それでね、色々と考えてる事があるんだ」

「考えてる事…………?」

「うん。ビターガヴとプリキュアで子供を作ろうと考えてね。その為に黒ソラからアンダーグエナジーを貰って、ダークプリキュアを作ったんだよね。まあ、黒ソラからは断られちゃったからね〜」

「ビターガヴとダークプリキュアの子供………⁉︎」

 

 酸田はそんな風に言う。

 それを聞いて、辛一がそう呟くと、酸田はそう語る。

 ビターガヴとダークプリキュアの間に子供を産ませようと考えていると。

 それを聞いて、ソウマが驚いていると。

 

「でさ、ダークプリズムちゃんとビターガヴくんは子供作る気満々でね〜。これは嬉しい誤算だったよ。まさか、ましろちゃんがソウマ君のこと、そこまで好きだったとは夢にも思わなくてね」

「えっ………⁉︎」

「お互いに好きあってる方がデキやすいからさ。どうやってくっつけようかな〜って考えてたんだけど………ありがとうね、ましろちゃん。ソウマくんのこと好きになってくれて。おかげで手間が省けて助かったよ〜」

「えっ…………⁉︎そんな………⁉︎」

 

 酸田はましろを見ながら、そんな風に言う。

 酸田はましろがソウマに好意を持っている事を知り、子供ができやすくなっているのを知り、そんな風にお礼を言う。

 それを聞いたましろは、床に崩れ落ちる。

 その目には、大粒の涙が浮かんでいた。

 ましろは、自身の恋心を便利な道具みたいに言われて、あまりのショックに泣き出しそうになっていたのだ。

 

「プリズムの純粋な恋心を便利な道具みたいに…………!」

「許せない…………!」

「っ…………!」

「酸田…………!てめぇ!」

 

 それを聞いて、ソウマ達は怒りの表情を浮かべた。

 ましろの純粋な恋心を踏み躙る様な真似をした酸田に対して。

 そんな非難の視線に対して、酸田は気にする事なく口を開く。

 

「まあ、それでも保険は用意してたんだよ」

「保険?どういう意味だよ?」

「もしね、辛一くんが戦えなくなったら、ダークプリキュアの誰かと子供を作って辛一くんの子供に頑張って貰おうと思ってたんだけど………ちょうど良いところにあげはちゃんが来てくれたからさ」

「私?」

 

 酸田がそんな風に言うと、辛一は首を傾げる。

 すると、酸田はそう言い、あげははそう反応する。

 

「そうそう、落ち込んでた辛一くんを慰めてくれてさ。辛一くんが頑張ってくれやすくなったからね。それに、もし辛一くんがあげはちゃんの依存してくれたらさ、ダークバタフライにあげはちゃんの代わりになって貰えば、辛一くんも長持ちするし、ついでにストックで子供も作れるからさ。辛一くんも嬉しいでしょ?こんなに美人でスタイル良くて優しい彼女出来たら。しかも元とは言えモデルだよ?男の子ならそう言う娘好きでしょ?」

「は…………?はぁ⁉︎」

「ひ⁉︎」

 

 酸田はそう語る。

 辛一があげはに依存すれば、ダークバタフライに依存させる事が出来、子供も作れると。

 それを聞いて、辛一は酸田のあまりのデリカシーの無さに、言葉を失ってドン引きし、あげはは酸田の言葉に悪寒を感じたのか、自分の体を抱きしめる。

 それを見た酸田は。

 

「あ、もしかして辛一くん。年上好き?なんだ早く言ってよ。だったら、あげはちゃんのお姉さんとかどう?現役の人気モデルの早乙女姉妹だよ?若い子に人気なんでしょ?ダークバタフライに髪の毛取って来てもらったらクローン作ってあげるから。プリキュアじゃないのは残念だけど。そこは辛一くんの子供に期待するから」

「ひっ⁉︎」

「お姉ちゃんまで…………!」

 

 酸田は、辛一が年上好きだと思ったのか、そんな風に言う。

 それを聞いて、ソラ達は驚愕を通り越して、鳥肌を立たせていた。

 あげはは、自分の大切な姉達を巻き込もうとしている酸田に怒りの視線を向けていた。

 すると。

 

「それにね…………ツバサくんとエルちゃん。君たちも興味深いんだよね」

「僕とプリンセス…………?」

「どういう事?」

 

 酸田は、ツバサとエルちゃんを見ながらそう言う。

 それを聞いたツバサがそう言う中、エルちゃんは首を傾げていた。

 すると。

 

「君たち異世界の…………スカイランドだっけ?そこの生まれなんだよね?しかも、ツバサくんは鳥の姿から人間の姿になれて、エルちゃんに至っては、昔のプリキュアのえーと………キュアノーブルのエルレインだっけ?それの生まれ変わりなんでしょ?そんな昔の人間が赤ん坊になって生まれ変わるなんて………正におとぎ話みたいじゃない。だからさ、君たちのダークプリキュア同士で子供を作ったら、本当に強い子になるのかって検証したいんだよね」

「えっ………⁉︎」

 

 酸田はそう語る。

 ツバサとエルちゃんが、酸田の視点からしたら、特殊な存在である事を知り、その2人を元にしたダークプリキュア同士で子供を作ろうと画策している事を。

 それを聞いて、ツバサが驚愕していると。

 

「ツバサくんはエルちゃんのナイトなんでしょ?おとぎ話でもナイトとお姫様は結ばれるのが鉄板だからね。そんなのをこの目で見られるのかと思うと純粋にワクワクしたねー。ツバサくんも嬉しいでしょ?この子、このまま育ったら美人になるのは間違いないからね。おじさんうらやましな〜」

「っ…………!」

「エル、なんか嫌い!」

 

 酸田はお気楽にそう言う。

 それは、ツバサにとって、純粋なエルちゃんへの忠誠心を侮辱されたようなものであり、悔しさと怒りが混じった感情に支配され拳を握りしめる。 

 エルちゃんは、イマイチ理解出来てはいないが、本能的に嫌悪感を感じ自分を抱きしめつつ、そんな風に言う。

 すると。

 

「あぁ。それとソラちゃん。君には特に感謝してるんだよね〜」

「えっ?私ですか?」

「だって、君が居なきゃ、黒ソラは生まれなかった訳でしょ?黒ソラが居なきゃアンダーグエナジーも手に入らなかった。でなきゃダークプリキュアも作れなかった訳だからね」

「はっ………?はぁ⁉︎」

 

 酸田は、ソラに感謝の言葉を言う。

 それを聞いて、ソラが首を傾げると、酸田はそう言う。

 酸田の言葉に、ソラが驚く中、酸田は口を開く。

 

「君がいなかったら。俺のこの計画も何も始められなかったからね。だから君には感謝してるんだ。ありがとうね、黒ソラを作ってくれて」

「あっ…………⁉︎ああ…………⁉︎」

 

 酸田はそんな風に言う。

 その言葉は、酸田にとっては純粋な感謝だったが、ソラは驚愕の表情を浮かべる。

 ソラにとって、その言葉は全ての元凶がソラにあると突きつけられた様な物だった。

 すると、ソラは膝から崩れ落ちそうになるのを必死に踏み留まり、酸田を睨みつける。

 

「……………どうして!どうしてそんな非道な事ができるんですか⁉︎」

 

 ソラは酸田に対して、そんな風に叫んだ。

 すると。

 

「心外だなぁ。君と同じだよ」

「私と…………?」

「どういう事⁉︎」

「いやね、黒ソラを介して、君の記憶を見させて貰ったけど…………君だって、憧れのシャララ隊長みたいなヒーローになる為に鍛錬に明け暮れて、女の子らしい事や友達を増やす事を犠牲にした。俺も、グラニュートを倒せるだけの強い人間を作る為に、実験台の皆に犠牲になって貰った。同じでしょ?さっきも言ったけど、目的があるのなら、何を犠牲にしてでも果たさなきゃって。同じ事をやってるだけなんだよ」

「えっ…………⁉︎」

 

 すると、そんな風に酸田は言う。

 ソラとましろが困惑しながらそう言うと、酸田はそんな風に言う。

 ソラがショックを受けて、膝から崩れ落ちる。

 酸田に同類だと言われたそのショックから。

 すると、ましろとソウマが口を開く。

 

「ソラちゃんはあなたとは違う!」

「そうだ!長い間…………たくさんの人を犠牲にして、平然と…………!」

「待ってよ。平然としてないって。実験台の皆には、心から感謝してるよ。ああ、勿論………」

 

 ましろとソウマがそう言うと、酸田はそんな風に言う。

 すると、酸田は辛一を見ながら、口を開く。

 

「…………餌になってくれた人にもね

 

 酸田はそんな風に言う。

 それを聞いた辛一は、何かを察した。

 

「……………餌?ハァ……………ハァ…………⁉︎」

 

 辛一がそう言うと、辛一の中で色々と繋がっていき、息を荒くして、頭を抱える。

 

「おい……………まさか…………⁉︎」

 

 辛一はそう呟くと、腰が抜けた様に地面に座り込む。

 残酷な現実が見えてしまったのだから。

 

「師匠も…………俺を釣る為に…………お前が…………⁉︎」

「えっ⁉︎」

「師匠って…………塩谷総司さんだよね?」

「まさか…………⁉︎」

 

 辛一がそう言うと、ソラ達は驚愕の表情を浮かべる。

 すると、酸田が口を開く。

 

「あれ?嘘でしょ辛一君?えっ⁉︎気づいてなかったの⁉︎まあ…………あれは俺っていうか、ニエルブ君に相談したからだけど…………」

「えっ…………⁉︎ニエルブ…………⁉︎」

「ストマック社とも繋がってるんですか⁉︎」

 

 酸田が気付いてなかった辛一に驚きながらそう言う。

 ソウマとツバサがそう言うと、酸田は口を開く。

 

「うん。いやね、実験台に出来そうな有望な人材を見つけたんだけど…………あっ、辛一君のことね。どうやって体を弄らせて貰おうかな〜って思ってたとこに、ニエルブ君が、『僕に任せて』…………ってさ」

 

 辛一が涙を流す中、酸田はそんな風に言う。

 塩谷総司が殺害されたのは、辛一を焚き付けて、改造をする為だったのだ。

 塩谷総司殺害の裏で、渦巻いていた悪意が、辛一に襲いかかる。

 それには、辛一も涙を流しながら呆然として、ソウマやソラ達も愕然とする。

 それを見た酸田は。

 

「ああ〜…………皆、そんなにショックだったかぁ…………なんか、ごめんね。じゃっ、一旦研究室に戻ろうか」

「は〜い!」

「はい、早く動く!」

 

 酸田はショックを受けるソウマ達を見て、そんな風に謝る。

 興が削がれたのか、酸田はビターガヴとダークプリキュアに辛一を連れていく様に命令する。

 すると、ビターガヴはソウマに攻撃する。

 

「辛一く〜ん。ほら立って、立って〜」

「シンチー。一緒に行こ?」

 

 ビターガヴとダークバタフライはそんな風に言いながら、呆然としている辛一に歩み寄る。

 すると。

 

「っ!やめろ!」

「早く…………うわっ⁉︎」

 

 ソウマはガヴガブレイドのブレイポンを押して、ガヴガブレイドを壁に突き刺す。

 すると、砂煙を巻き上げられ、ビターガヴとダークプリキュアは怯んだ。

 

「辛一!皆!今は逃げよう!」

「はい…………!」

「そうだね…………!」

 

 その間にソウマは辛一とましろ達と一緒に駐車場から逃げ出した。

 ビターガヴとダークプリキュアが追いかけられずにいる中。

 

「あ〜あ…………何やってんのよ」

 

 ソウマ達に逃げられたことにビターガヴとダークプリキュアに注意してから、酸田は変身を解除する。

 ブレイクッキーゴチゾウが昇天する中、酸田は右手を見つめる。

 すると、凄まじい勢いで右手が乾燥していく。

 

「おっさんの体には負担がデカいか………」

 

 酸田は急速に乾燥し、ミイラ化していく右手を見つめながら、そう呟く。

 そして。

 

「やっぱり、辛一くんに頑張ってもらわないと」

 

 酸田は己の右手が乾燥、ミイラ化したのを他人事の様に見つめながら、改めて、己の野望の為に、辛一を実験台として確保しようと企んでいた。

 こうしてソウマ達は、酸田とダークプリキュアに完全敗北してしまった…………。




今回はここまでです。
今回は、仮面ライダーベイクの初登場です。
酸田の本性も顕になりました。
そして、ビターガヴとダークプリキュアで子供を作ろうと画策していた。
それには、ソラ達も憤ったり、ドン引きしたりしました。
辛一の師匠の殺害された経緯を聞いて、辛一は呆然とする。
渦巻いていた悪意が、辛一に襲いかかる。
次回はいよいよ、フラッペカスタムの初登場です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
ギルティ・パルフェ、すごい人気ですね。
神作でしたからね。
この小説でも、ギルティ・パルフェの話はやる予定です。
今後の展開などでリクエストがあれば、活動報告から承っております。
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