ビーデルがクリリンの弟子になった話   作:ゴクウ・

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第1話

 これは少しタイミングがズレた物語。

 とあるカップルが少しだけ早く夫婦になり、そして、少しだけ早く決断をした結果である。その理由は、とある老人のセクハラが原因か、それとも他の要因かはわからない。

 しかし、結果としてエイジ770年、本来なら2人が結婚するタイミングだが、この世界のクリリンと18号夫妻はこのタイミングでサタンシティのアパートに引っ越してきたのだ。

 

「ただいまー。」

 

 夜、クリリンは家に帰ってきた。

 ドアを開けるととても美味しそうな匂いが部屋を満たしていた。

 

「おかえり、クリリン。今日は早かったね。」

 

 エプロン姿の18号がクリリンを出迎えた。その姿にクリリンは身惚れそうになりつつ、照れながら答える。

 

「ああ、今日は何にも事件が起きなかったからね。平和なもんだ。」

 

 クリリンは警察官となっていた。武道家では食べていけない。確かに大会に出て無双して賞金を稼ぐ。クリリンならばあのミスターサタンを超える活躍は容易いだろう。しかし、そんな事は望まない。

 だから、武道家を引退して警官になったのだ。

 

「そりゃあ、クリリンがいるんだ。事件なんてそうそう起きないさ」

 

「いやいや……。まだ、新米のオレじゃ……」

 

 と、イチャイチャしながら家にはいる。家は決して広い部屋ではない。寝室とキッチンとリビングしかなく、かなり手狭である。しかし、それでも2人にとってはとても幸せな空間である。

 クリリンはなんとなくテレビをつけた。ニュースキャスターが今日のニュースを呼んでいる。それをBGMに2人は雑談をする。

 18号は料理をしながら今日あったことを話し、クリリンはそれを楽しそうに聞いた。そんなおり、テレビのアナウンサーが原稿を読み上げた。

 

『第一回、サタン・トーナメント開催が決定。………将来的には天下一武道会並の規模の大会となることを目指し……』

 

 そのニュースに18号は口を開く。

 

「………なぁ、クリリン。これで良いのかい?」

 

 リビングのソファに座るクリリンにキッチンで夕飯の支度をする18号はボソリとつぶやいた。

 その言葉にクリリンは言葉を詰まらせた。 愛する家族と共に過ごす、これが幸せでないなら嘘だ。

 

「……な、何を言っているんだ。18号さん。夫婦2人で平穏に過ごす、これの何が問題なんだよ」

 

「………………。確かにそうだけどさ、クリリン……。」

 

(少し、つまらなそうだ)

 

 と、18号は最後まで言えなかった。

 18号もこの暮らしは幸せだし、クリリンも幸せを感じていると思っている。だからこの選択は間違えて居ないんだ。

 それに、彼が武道家を引退することを決めるのに、きっと大きな葛藤があっただろう。彼が武闘家を辞めたのは自分と暮らすためだ。この幸せのためにクリリンは決断してくれたのだ。

 その事が分かっていたから、18号はその先を言えなかった。

 

「………………、あ、福神漬け忘れた。」

 

 18号の言葉にクリリンは「じゃあ買ってくるよ」と言って逃げるように家を出た。

 家を出たクリリンは18号の言葉を何となく分かっていた。今の暮らしは充実している。愛する妻と暮せているし、警察官という仕事も、親友のように地球を守るなんて出来ないが、人々の為に働けるのはやっぱりやり甲斐がある。充実しているのだ。

 

「武道家じゃ食ってけない。それに、オレじゃあ……。」

 

 悟空にベジータに悟飯、彼らの戦いを思い出す。そこには変えられない壁が存在する。それにもしかしたら悟天やトランクスにももう勝てないかもしれない。武道家として、親友として、かつてのライバルとして、その事実は耐え難い。結婚というのは彼にとって夢への幕引きとしてちょうどよかったのだ。

 

「ん?」

 

 近くのスーパーで福神漬けを買い、帰路につく。銀行の前を通るとクリリンは違和感を覚えた。直感と言ってもいい。ここまでいくつもの死線を潜り抜けてきたことにより身についた感覚だ。

 足を止めた直後、銀行が爆発した。出入り口が吹き飛び中から5人の男が現れた。5人ともアニマルタイプでそのうち1人がロケットランチャーを持っている。他の4人もそれぞれ銃火器を持っている。

 

「ま、待ちなさい……」

 

 銀行の中から少女の声が響く。5人は後ろを見るとそこには10代前半の少女がいた。少女はすでにボロボロで至る所を怪我をしている。彼女の近くには家政婦なのか、1人の女性が倒れている。

 

「ゆ、許さない。」

 

 少女は武術をやっているのか様になっている構えをとる。その様子に男たちはゲラゲラ笑いながら銃を向けた。少女は泣きそうになりながらも構えを解かない。瞬間、彼女は男に向けて駆け出そうとしたが、膝をついてしまう。

 

(……動きなさいよ!わたしの足!)

 

 今まで、たった1人で武装した男5人と戦っていたのだ。既に体力は底をつき、身体もボロボロだ。動けなくなっても仕方が無い。

 

「ハハ、ビビらせやがって……。ミスターサタンの娘だが知らないが、所詮、人間は銃には勝てねぇのさ!」

 

 男達は少女に銃を向けた。

 

(パパ……。)

 

 少女は怖くて目を瞑ってしまった。

 直後、乾いた銃声と浮遊感を感じた。が、いつまで経っても痛みは来ない。恐る恐る目を開けると、そこには坊主頭があった。

 

「え?」

 

 周囲を見渡すとそこは銀行の外で、自分は見知らぬ男にお姫様抱っこされていることに気がついた。そのことにパニックになっていると、男、クリリンは優しく言った。

 

「大丈夫か?ああ、よく頑張った。後はオレに任せてくれ」

 

 クリリンは少女を地面に下ろして構えた。その構えには隙はなく熟練のものだと、少女の目から見ても明らかだった。

 男が銃をクリリンに向けて引き金に指をかけた。その瞬間、クリリンは消えた。いや、目に見えないほど早く移動したのだ。

 

「はぁっ!」

 

 手前の男がクリリンに蹴り飛ばされた。

 それに気がついて男たちは銃を向けるが既にそこにはいない。2人の目の背後に回り込んだクリリンが首の後ろを殴り気絶させる。

 続いて、3人目を4人目ごと殴り飛ばした。

 

「た、助けてくれ〜〜」

 

 ロケットランチャーを持っていた男が逃げ出そうとした。それにいとも簡単に追いついて顎を蹴りとばして気絶させた。

 

「ふぅ、いっちょ上がりっと」

 

 そう呟くクリリンを見て少女は唖然としてしまった。彼女の父は武道家である。それも、世界チャンピオン、ミスター・サタンである。世界最強の男にしてセルを倒した救世主。そんな家に生まれ、育った少女は物心ついた頃から武術に触れていた。

 だからこそ、分かった。この男は強い。

 

(………もしかして、パパよりも?)

 

 そんな思考もよぎるが、そんな事はないだろうと首を振る。けど、それと同時に最近稽古をサボり遊びまくっている父ならば腕が鈍っていてもおかしくはない、と、結論づける。

 

(違う、そんなんじゃない。)

 

 少女はボロボロな身体に鞭を打ち立ち上がる。片足を引きずりながらクリリンのまとに移動する。

 

「あ、こら、まだ動いちゃダメじゃないか。今から救急車呼ぶからそれまで安静に……」

 

 心配そうに言うクリリンを少女は真剣な眼差しで見る。

 父は最近では稽古をサボっている。稽古をつけて欲しくても他の人に回されてしまう。父の弟子たちもはっきり言えばレベルは低く、おそらく目の前の男よりかなり弱いだろう。

 武道家として、もっと上を目指したい。そのために、

 

「あの、……わたしを!弟子にして下さい!」

 

「え?えええ?!」

 

 これがクリリンと少女、ビーデルとの出会いだった。

 

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