ビーデルがクリリンの弟子になった話   作:ゴクウ・

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第3話

 

 その日、クリリンは海上を飛行していた。向かう先は師匠である武天老師、亀仙人の住む孤島だ。しかし、その顔は暗くブツブツ文句を言っていた。

 

「オレが師匠かぁ……。18号さんも自分が教えれば良いのに……」

 

 本人の目の前で言ったら殺されかねない不満を漏らす。しかし、クリリンは半分忘れているが、18号は人造人間である。確かに元は人間だったが、その強さは造られたものだ。人に教えることは苦手である。

 と、そんなブツクサ言っているとあっという間に目的に辿り着いた。

 

「あ、クリリンさん。お久しぶりです。」

 

 島に着地するとしゃべるウミガメが出迎えた。彼はここに住む亀仙人のペットであり、大切な家族である。

 

「武天老師様に会いに来たのですが…」

 

「中に居ますよ。」

 

 ウミガメに礼を言って玄関の前に立つと、中から何やら変な笑い声が聞こえた。少し気になってクリリンは開けっぱなしの窓から中を覗くと、昼間から寝そべってエッチな本を読んでいる老人がいた。

 その様子にクリリンは変わらない安心感と、情けなさを同時に覚えた。

 

「あ、あのー。武天老師様? 今、お時間よろしいでしょうか?」

 

 その声に老人、亀仙人は振り返った。

 

「おおーー、クリリンか! よく来た。ほら入った入った。」

 

 突然の訪問なのに亀仙人は快く迎え入れた。その様子にクリリンは実家のような安心感を覚えながら家に入った。

 

 

 机を挟んで向かい合うように2人は座った。クリリンはとある事を相談しに来たがどう切り出したら良いか分からずに考えていると、亀仙人は口を開いた。

 

「その様子じゃと。何やら相談しにきたようじゃな」

 

「はは、さすが、お見通しですね……。」

 

「伊達に長く生きておらんよ。ほら、言ってみなさい。」

 

 亀仙人に促され、クリリンは弟子を取ることになった経緯を亀仙人に語った。それを聴いて亀仙人は少し考えて応えた。

 

「クリリン、おぬしは何故、師匠になりたくないんじゃ?」

 

 サングラスごしに2人の目があった。クリリンはその何もかも見透かしてそうな目に射抜かれ、少し鳥肌が立ってしまった。戦闘力で勝り、きっと単純なパワーなら負けない相手なのに、なぜかありとあらゆる面で勝てる気がしない。

 

「そりゃ……。俺なんかに師匠の資格なんか無いからですよ。悟空に勝てないと諦め、武道家さえ引退したオレが教えられる訳ないですよ……。」

 

 クリリンの本音である。間違いなく本音だ。しかし、その裏の言葉を亀仙人は見抜いていた。だからこそ、亀仙人には珍しく冷たい言葉をかけた。

 

「ふむ。なるほどな……。なら、断ればよかろう。おぬしが強く言えば18号も反対せんじゃろう。」

 

「それは………。」

 

 その言葉にクリリンは言葉を詰まらせた。武道への未練、師匠が出来るのかという不安、自分の弱さを突き付けられているかのようだ。

 その様子に亀仙人はゆっくりと応える。

 

「………何も言えないか……。それも答えじゃ。クリリン……。断れないのならやって見るのも一つの手じゃ。」

 

「っ!無責任じゃありませんか……?」

 

 その言葉に亀仙人は少し、いや、かなり強い言葉をかけた。

 

「…………。お前さんはワシに何を求めている? まさかこの武天老師に顔も知らぬ娘の面倒を見ろと言っているのか?」

 

 珍しく怒りを見せる亀仙人にクリリンは慌てて頭を下げた。昔から厳しい師匠だった。しかし、それ以上に気さくで接しやすく優しかった。そのため、ここまで怒った場面なんて見たことがなく。クリリンはただただ恐怖した。

 

「いっ、いえ!そんなこと考えておりません!! ボクはただ、ビーデルのことをどうしようかと、ご相談したかっただけで!」

 

「ふむ、では、もう、答えは出ているだろう。断れぬのなら、師匠をするしかあるまい。」

 

「………それは、はい……。分かりました。ありがとうございました。」

 

 その言葉にクリリンは何も言い返せなかった。そしてトボトボと孤島を後にした。その背中を見送ると亀仙人は1人、優しく呟いた。

 

「お前さんなら大丈夫じゃ。」

 

 

 そして、ついにクリリンはビーデルに武術を教える初日となった。

 時刻は早朝、学校が始まるまで数時間はある。場所は人の少ない荒野で、ビーデルやクリリンが拠点とするサタンシティからだいぶ離れているが、ブルマから貰った飛行機があれば一っ飛びだ。

 

「………ビーデル。オレが教えられることはそう多くない。誰かに勝つ方法も、強くなる為のことも分からない。オレが教えられることはただ一つ、亀仙流だけだ。」

 

「………亀仙流……?」

 

 ビーデルは首を傾げた。そこでふと、今クリリンが着ている山吹色の道着に見覚えがある事に気がついた。しかし、そんなことは今は関係なく師匠の話に集中しないと、と、思考を切り替えた。

 

「ああ、オレが入ってる流派……のようなものだ。………よく動き よく学び よく遊び よく食べて よく休む、武術を学んで出来た余裕で人生を面白おかしく張り切って過ごせってのがモットーなんだ。」

 

「は、はぁ」

 

 予想の斜め上の教えにビーデルは何も言えなかっな。武術の教えはもっと、カッコよく、弱きを助け強きをくじく、みたいなものをイメージしてしまう。彼のいう教えにはそういうものはない。それどころか強さを感じさせるものなど何一つ無かった。

 そのことはクリリンも分かっているのか笑った。

 

「ま、そりゃ、そう反応になるよな。けど、修行はすげぇキツいから。嫌なら辞めて良いからな。」

 

 成り行きで断れなかったからとはいえ、師匠になったからにはクリリンは手を抜くつもりはない。だからこそビーデルが着いて来れるか不安ではあった。

 クリリンは慣れた手つきで飛行機をカプセルに戻して胸ポケットにしまう。そして、宙に浮いてみせた。

 

「え? 飛んで……」

 

 ビーデルは驚きのあまり目を見開いたが、クリリンはそれを無視して話を進める。

 

「これは舞空術、元々は鶴仙……。亀仙流とは別の流派の技だけど、今度、教えるよ。今は基礎修行だ。」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!人が空を、トリックじゃ……」

 

「そう思うなら辞めていい。どうだ? オレはお前が辞めるといえばいつでも辞めても良いんだぞ。」

 

 クリリンの問いにビーデルは黙り、そして、切り替えた。

 

「いいえ、続けます。」

 

「そうか、じゃあ、今日の修行は登校だ。ここから学校に行ってくれ。オレも出社するから!遅刻するなよ!」

 

 そう言うとクリリンは空に消え去り、荒野に1人ビーデルがポツンと残された。

 

 

 

 







多分、悟飯よりマシ
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