朝の10時半、アビドス砂漠の端の端、デッドエンド解体場の正門前に彼女、ゲヘナ最強の風紀委員長【空崎ヒナ】がいた。
「はぁ・・はぁ・・ここがあのデッドエンド解体場ね、アビドス砂漠の端っこだから遠いわ」
半分近く崩れ落ちたアーチ状の門、周りを覆う鉄柵はここからでも分かるほど錆びている。複雑に絡み合う線路、いくつかの表示部分が欠落している信号機に中が荒らされてることが分かる信号所。奥の工場らしき建物は電気の光さえなければ廃墟だと思うほど廃れてる。
「気味が悪いわね」
1歩施設に入ると、じとりとした砂漠にある施設とは思えない霧が地面を這いながら彼女を渦巻く。
ギィ・・ギィ・・ギィ・・ギィ・・
ガタガタンッ!!ガタガタンッ!!
歩みを進める事に不気味さが増していく、風がスクラップになってしまった物達に悲鳴をあげ、身体を震わせる。
「・・・・・」バッ
目線を感じ後ろを振り返るが、そこにあるのは屑鉄の山しかない。そもそもここに置かれているほとんどが赤錆に塗れ、スクラップになったものしかないが。
(おかしい、確かに今悪意を感じた)
嫉妬、殺意、怨み、どれも向けられていい気のしない感情だ。だがそれは人から向けられるものであって、そこら中に破棄されているスクラップから向けられことは無いはずの感情だ。
(何かいるッ・・!!)
「おーい、そんな所でキョロキョロ何を探しているんだい?」
「!?」バッ
「おいおい、天下の風紀委員長というものが、いきなり銃を向けるなんて失礼が過ぎるんじゃないか?」
(なっ?!・・いつの間に・・)
いつの間にか背後を取られていた。
驕りはあったかもしれない、でもさっきまで気を張っていたのにも関わらず、既にそこに彼女はいた。
「なんだァ?まるで幽霊列車でも見たかのような顔をして・・」
ゆらりゆらりと、まるで友達に話しかけるかのようにこちらに向かって歩いてくる。
「まぁ、こんな所だからよく現れるけどな」
少しづつ、霧が晴れてくる。視界をほとんど白色にしていたベールは剥がれ、彼女の姿が現れる。
「自己紹介をしよう。
ハイランダー鉄道学園、デッドエンド解体場所属の史哲サイモンだ。
どうぞよろしく願うよ」
数多の女性が羨むボンキュッボンで高身長なスタイル。ざっくばらんと短く切られた紺色の髪。
首には荒縄のように見える焦げ茶色のチョーカーが巻き付いている。服装は軽く着崩しているが、黒色の作業着だと分かる。
ゆっくりと微笑みながらこちらに笑いかけてきた。
「いやー悪いね、ここら辺たまに霧が出てくるんだ、人を迷わせるレベルのが」
「えぇ」
外の霧がどんどん濃くなっていく様はまるで、今いる解体場にしている工場を孤立させる海を思わせる。
ずっと前、ここに送られた前任者のことを調べてたら気になる記述を業務日誌に書かれていた。
それはただ一言『霧に気をつけろ』
霧の中に何かあるのか、それとも霧自体が危険なのか?
このことを書いた前任者はこの日を境に消息を絶っているせいでよく分からない状況なのだ。
「安心しな、お前の仲間らは全員あの貨車の荷台に縛って載せてある」
「便利屋は?」
「2階で作業のための講習中」
「講習?」
「そっ、解体するのに電動ノコギリやガス溶断使うからな」
ちなみに私がこのキヴォトスで1番驚いたことはこうゆう講習が全くないことだった。ヘイローによる頑丈さとロボットが普及されている弊害か、労災などは基本無縁らしい。まぁ、あるいは設定のガバかと考えたがどうでもいいことだろう。
「さて、ちょっとした雑談は終わり。
これから交渉の時間といこうじゃないか」
「交渉?」
「そっ、交渉。
君たち風紀委員が暴れてくれたおかげで少し収入が減ったからね、どっかで釣り合い取れてねぇと気が済まないタチなの私」
「・・・・・・」
「それで私があなた達、風紀委員に要求することはただ2つ。3日間そちらの人員を借りたいことと、便利屋の規制を緩めて欲しい」
「??、それだけ??」
「そっ、これだけ」
少し驚いた顔をしているが、実際それだけでいいのだ。金は持ってるし、今回の半分がダメになっても本当はあまり関係なかったりする。ただ、今は労働力が欲しいのでこのことは内緒だ。
「よし!、これで私の要求は以上だ、何か聞きたいことはそちらにある?」
「便利屋はなんで頼んだの?あなたとは依頼だけの関係だと思うのだけれど」
「なんでって・・・」
確かに私と彼女たちは依頼だけの関係だ。だけど前世の私にとっては一番星の推しだ。こんなこと言えるわけないが。
「彼女達の関係が尊いから」
「学園都市だから、青春を謳歌している彼女たちの助けになりたい。ただそれだけ。」
「そう・・・」
「ヨシッ、これでこの話と交渉は終わりだ。
・・・・チッ、霧がさらに濃くなりやがったな」
「???」
「空崎ヒナ、今日は泊まれ」
「えっ?いやまだ仕事あるから・・・」
「今日はもう霧が晴れない、それに今何時かわかってないだろ、今この部屋に置いてある時計と自分が持っている時計を全て見ろ」
「・・?!、え・・なんで??」
「今の状況を当ててやろう、『電子含む全ての時計が狂った時間を刻んでいる』、ここのクソッタレた特性だよ。後で副委員長に連絡した時に時間聞いておけよ」
窓の向こう側を睨む。
空崎ヒナが来た時はまだ薄っすらと周囲が見えるレベルの霧だったが、今では白い壁となって工場を覆い囲んでいる。
(やっぱり、
シュー・・・シュー・・・シュー︎・・・
耳をすませば外から微かに蒸気の漏れる聴こえる。目をこらせば窓にうっすらと蒸気機関車の影が横切る。
ここで私が運用している機関車如きの2両を除きここで走る鉄道車両、それも蒸気機関車は全て朽ちて走ることすら叶わない物ばかりのはずだ。
それにコール・オブ・ベンディ号とメアリー・スー号は、今は整備等の理由で工場内、それもさっきまで私が座っていた席から見れる位置に並べてあるのだ。
じゃあ、今外を走ってるアレはなんだ?
Pooo・・Po・・Pooo・・Po・・Po・・Po・・Pooo・・Po・・Po・・Po・・Pooo・・Po・・Po ・・
途切れ途切れの汽笛が嫌に耳に残った。
topic
【デッドエンド解体場業務日誌】
・ここに配属された先任達の記録。
・日付や年代がバラバラで、1番古い記録は文字がかすれて読めない状態の物も。
・中に書かれてることは大半がハイランダーへの恨み言が書かれているが、稀に役に立つ情報も。
・ただ警告文のみの真っ赤なページがある
・最後に記述されたのは軽く計算しても20年以上は昔になる。
・最後に記述した人を境に異常現象が起きるようになったらしいことが伺える。
史哲サイモン
・待っていたら霧が出てきてびっくりした。
・実はあまり霧が苦手
・業務日誌等はこまめにつけるタイプ
空崎ヒナ
・実は結構やばかった
・アコに連絡を入れたら暴走フルスロットルで反省文の追加を決定した
・ここの話は前の部署で聞いたことがあったがここまで酷いとは思ってもいなかった
・マコトから連絡が来たが内容が気遣う感じの内容だったため背筋が凍った
便利屋68
・研修BDを2階で見ていた
・ここの注意事項に怪奇現象が記載されており、絶賛白目をむいてる(アルちゃんのみ)
風紀委員一同
・気絶中
・起きたらヒナ委員長が珈琲を飲んでいて驚く
狂犬アコ
・領域侵犯、器物破損、便利屋に対する過度な規制がバレ始末書を大量に書くことに
・1年後に似た事故を起こす予定
・多分、今1番作者が扱いに困ってるキャラ
ヒナ「にしても、色々と文句を言ってくるマコトからあんな人を気遣う内容が送られて来るとは思ってもみなかったわ・・・」
サイ「マコトは色々と貸しをコチラに作ってるからな」
ヒナ「???」
サイ「あんな危険物の解体はもうやりたくない・・・」
外を走る謎の機関車
・霧の濃い日に現れ、どこかへ消えていく
・なんの目的があるのか、誰にも分からない
「コイツについて分かってることは見つけたら即逃げろ、対処は多分キヴォトス最強クラスが最低2人いる。
私は相性のおかげでなんとかなるかもしれないが・・」
「
「気をつけるに越したことはない、だから誰も霧の出てる夜中に外に出るなよ」