とある日、俺は友人に無理やり家から連れ出され美術館へと向かうこととなった。
まだ美術館に来るだけならいいんだが……
「―――うおおお!すっげぇ!お前もこっちこいよ!」
―――こんな騒がしい馬鹿がいなければ良かった。
とりあえずそっぽを向き他人のふりをしていると、肩をつつかれる
「ん?どーした?」
「無理やり連れ出しといてなんだけど……本当にゴメンね?」
申し訳なさそうな顔をしながら謝ってくるしっかり者。
「いや、別にいい。もう少しゆっくりと作品見れたらいいんだけどなぁ……」
「それなら別行動する?あの馬鹿は僕が殴っ……見張っとくからさ。
ゆっくり見てくると良いよ」
「マジか?それは嬉しいな。少しだけ見てくるよ」
いってらっしゃい、と俺を見送ってくれた。
のんびりと歩き出そうとした時何かを殴った音が聞こえたが気のせいだ。
別行動を取った俺は、作品を見ながらゆっくりと歩く。
こういう静かな場所で綺麗な作品を見るのは結構好きだった。
『深海の世』や『精神の具現化』などを見て、まだ見てない作品は後一つとなった。
―――――『絵空事の世界』―――――
「……」
こういう作品を見ると、作者―――ゲルテナ―――がどのような事を考えて書いたのかと
不思議に思う。
『絵空事の世界』は、正直言うとぐちゃぐちゃしていた。
まるで引き込まれるような―――
そう考えていたとき、視界が真っ暗になる。
真っ暗になると言っても一瞬だけだが……
「何だ?停電?」
一瞬だけの停電……こういうの瞬電って言うんだっけ?
いや、そうじゃなくて……
「―――話し声が聞こえた?」
ここで「人の気配が消えた……?」何て言ったらかっこいいんだろうなぁ。
残念ながら俺に気配を察知する能力はない。
美術館は、大抵おとなしく作品を見る場所だ。
だがずっと無言というわけではなく少なからず話し声は聞こえる。
その話し声が一切聞こえなくなる。
まぁ、人がいない寂しいとこまで来たのかもしれない。
そう思いながら『絵空事の世界』を離れる。
―――――
「……あれ?」
一旦受付まで戻って、もらい忘れたパンフレットを取ろうとしたが、
受付の人がいない。それどころか誰ともすれ違わなかった。
「これはいよいよ非常状態だぞ?」
それとも何か?もう閉館時間なのか?
「そんなわけないよなぁ……あいつ等どこだ?」
マナー違反だが、非常事態だ。携帯を使わせてもらおう。
ポケットから携帯を取り出し、友達に連絡をしようとするが……
「あれ?圏外……?」
アンテナが一本も立ってない。おかしいな……
―――バチッ
という音と共に、美術館が真っ暗になる。
瞬電ではなく停電だ。ずっと真っ暗だ。
「おいおい、冗談だろ!?」
いかにも何かが出てきそうだ……携帯のライトで足元を照らす。
「一回外に出よう、そうしよう」
出入り口まで行き、軽く押すが開かない
「ば、馬鹿だなぁー。このドアはひくんじゃないかー」
今度はこっちに引っ張るがビクともしない。
「最近の扉はきっと襖式なんだよな」
まず横に引けなかった。
「くっそぅ……このままじゃ餓死してしまう……!」
―――コツ、コツ、コツ
誰かが歩く音が聞こえる。
「だ、誰かいるのか……?」
俺の問いかけには―――応じなかった。
この時、俺の精神はボロボロだった。そのせいか……
「うわああああああああ!」
―――何故か、走り出した。
それもう全速力で、体力が切れるまで走り回った。
そりゃあ真っ暗な場所で足音だけ聞こえたら誰だって怖くなる……筈だ。
「―――――うぉわっ!?」
バシャン、と水?に飛び込んでしまったようだ。
美術館に水場なんてあったか……?
いや、おかしい。濡れた感触がない。
「…………え?」
目を開けると、そこは壁も床も天井も、青く染まった気味の悪い場所だった。