第三の課題までの日々をルークは珍しくハリー、ロン、ハーマイオニーの三人と過ごしていた。ジニー、ルーナとは都合悪くすれ違う日が多かったし、ドラコとは当然過ごしようがない。
クレールとはどうしても気まずさが拭えず、彼女の姿を見るとつい逃げるようになっていた。向き合うべき問題だとわかっていたが、何をどうやってどこから話せばいいのか最早わからないのだ。
そんなこんなで、ルークがハリーたちと行動を共にするのは必然と言えた。
四人の仲はすこぶる良いが、これまでのホグワーツ四年間を振り返るとあまり多くの時間を一緒に過ごしたとは言い難い。──そんなメンバーで何をして過ごしているのかと言うと、もっぱら魔法の練習であった。
言わずもがな、来たる第三の課題に向けたものである。
少しでもハリーを優勝に近づけるため──というより、彼が無事に課題を終わらせられるようにの特訓だ。
場所には防衛術の教室を、マッド-アイ・ムーディの許可を得て使っていた。もっとも、教師役はハーマイオニーが担っていたが。
「──ボンバーダ!」
ドガァンと激しい音を立てて、訓練用の人形が砕け散った。魔法が掛けられているその人形は、すぐに何事も無かったかのように原型へと戻っていく。
「……これ、上手くいったって言える?」
「どう、かしら……」
「爆発呪文って言うより、粉々呪文って感じ」
「ルークの魔法って、総じて結構激しいよね……意外と」
「褒め、られてはないよなぁ……」
あはは、と乾いた笑いがルークの口からこぼれた。
自分が杖を振って呪文を唱えたところで、正確に発動してくれる魔法は少ない。
一ヶ月以上の訓練を続けた末に安定して効果を発揮できるようになった唯一が、この爆発呪文だ。
「まぁでも、身を守るにはいいんじゃないか? 粉々爆発呪文」
「危ないから人には向けちゃダメよ」
「さすがにわかってるよ……」
ハーマイオニーは姉と言うより母なんだよなぁ、と思わず笑ってしまう。
同い年のはずなのに、この四人でいる時は常に年下気分だ。
「ルークの場合、調合した魔法薬を持ち歩く方がよっぽど防衛になりそう」
「もうそうしようかな。痺れ薬くらいなら簡単に作れるし」
「課題の時に使えそうな魔法薬、なんか作ってよ」
「あらダメよ、課題はハリーの力で超えないと」
分かってるよ──ハリーが肩を竦めた。
もし実行して、また学校中から弟が言われのない中傷を受けるようなことになったら溜まったものじゃない。
「……もう一週間後だなんて」
ぽつりとルークがこぼした言葉に、シンと部屋が鎮まった。
三大魔法学校対抗試合──その最後の課題が、すぐそこまで迫っていた。
「正直さ、あんなことがあったから、無くなるかと思ってたよ」
あんなこと──ルークの言うそれが、対抗試合責任者としてホグワーツに来ていたバーテミウス・クラウチ氏の失踪事件を指していることは明らかだった。
最後の姿を見たのは代表選手の一人であるビクトール・クラム。彼はクラウチ氏の錯乱を証言していた。
「まぁ……そうだよね」
ハリーはもごもごと誤魔化すように適当な相打ちを打つ。
彼は校長室に置かれていた
クラウチ氏の息子が死喰い人──ヴォルデモートの配下として処分を下されていた過去、さらにもう一人の対抗試合責任者であるバグマン氏も、死喰い人に情報を流したとして処分を受けていたという衝撃的な事実であった。
ハリーはこれら知り得た情報を親友二人には共有していたが、相も変わらず弟には隠し通していた。
クラウチ氏の失踪事件にヴォルデモートの関与を匂わせれば、ルークは再び不安に駆られてしまうことだろう。
クリスマス・ダンスパーティー以降のルークのおかしな様子を、ハリーは対抗試合の課題への不安によるものだと信じて疑っていなかった。
「確か迷路の中で優勝杯を探す障害物競走みたいなものなんだよな?」
ハリーのそんな複雑な気持ちを察したロンが、すぐさま話題の転換を図る。
「うん……魔法生物と色んな呪いが障害物だ」
「対策は十分に出来たはずよ。N.E.W.Tレベルの防衛魔法もいくつか浚ったし……なにより貴方は守護霊の呪文が使える」
「それに実戦経験も豊富だしな」
励ますように笑ったハーマイオニーとロンに、ハリーも強く頷き返した。
「精一杯、やれる限りは尽くすよ。──ルーク、だから、心配しないで」
「うん……大丈夫。ハリーの実力は、誰より信頼してるから。応援してる。無事に帰ってきて──それで、終わったら寮でパーティしようよ」
「いいわね!」
「去年のクィディッチ優勝パーティみたいにね。朝まで騒いだってマクゴナガルはきっと何も言ってこないぜ」
「糖蜜パイとバタービールは必須だね」
多少の虚勢もありながら、四人は明るく笑い合う。
──まさかあんな事態になろうとは、誰も、予想だにしていなかった。