転生したらホムンクルスだった件   作:見て見て、アッハが笑ってるよ!可愛いね

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会議だぞ、踊れよ

 

 

 

「はぁ? 二十万? 二十万のオークの軍勢がこの森に侵攻して来てるってのか?」

 

 は……と、リムルさんの疑問にソウエイさんが静かに答える。二十万もの軍勢とは、大国間での戦争のような数字に、現実味は持てないだろう。

 どうやらオーガの里を襲った数千の軍勢は別働隊だったらしく、本隊は大河に沿って北上し、予測される別働隊との合流地点はここから東の湿地帯であるリザードマンの支配域であるとの事だ。

 

「オークの目的ってなんだろうな」

 

「ふむ……オークはそもそもあまり知能の高い魔物じゃねぇ。この侵攻に本能以外の目的があるってんなら、何がしかのバックの存在を疑うべきだろうな」

 

 例え『使役』を使えたとして、二十万もの軍勢を用意出来るかは疑問が残る。元々オークの中に王、もしくは統率力の高い特殊個体がいるのなら、彼等を配下にする事である程度の数は揃えられるだろう。

 

「例えば魔王……とかか?」

 

 会議室に集められた全員が黙り込む。確かに魔王の地位に居る程の実力者ならば、それだけの事は出来ても不思議では無い。けれど、ただ通り道を全滅させるような行軍をさせる意味は分からない。

 森を手中に収めるにせよ掌握するにせよ、本隊と別働隊をそれぞれ一つだなんて頭が悪過ぎる。

 何か違う目的があるか、魔王とオークの狙いが噛み合ってない可能性があるだろう。

 

「……なんてな。ま、何の根拠もない話だ。忘れてくれ」

 

 ポテチで嘴を作る遊びをしながらリムルさんは言い捨てた。椅子でギィギィとやるのは危ないからやめた方が良いと思うよ。

 

「……魔王とは違うんだが。オークロードが出現した可能性は強まったと思う。二十万もの軍勢を普通のオークが統率出来るとは思えん」

 

「前に話してたあれか、数百年に一度生まれる特殊個体だっけ」

 

 オークの王か。そんなのが居るなら確かに統率力は高そうだ。

 

 その後偵察中のソウエイさんの分身体に、ドライアドが接触してきたらしく、会議室に呼ぶ事となった。

 

 一枚の葉が入り込み、風が巻き起こる。何かしらの出現に、リムルさんの配下達が主を守らんと前に立った。

 

「初めまして『魔物を統べる者』及びその従者たる皆様。突然の訪問相すいません、わたくしはドライアドのトレイニーと申します。どうぞ、お見知りおき下さい」

 

 現れたのは植物に侵食された様な人間……と言うよりは妖精に近いだろうか? 『真眼』で見える生命力はそれなりで、ある程度強者の位置にいるのだろう。

 

「俺はリムル=テンペストです。初めましてトレイニーさん」

 

 会議室、その窓の外、そこら辺にいるゴブリン達が湧いていた。どうやらドライアドとは姿を見せる事が珍しい存在らしい。

 

「ええと、トレイニーさん? 今日は一体何のご用向きで……」

 

「本日はお願いがあって罷り越しました。リムル=テンペスト、魔物を統べる者よ。貴方にオークロードの討伐を依頼したいのです」

 

 

 

 依頼されたとは言え、はい分かりましたと二つ返事を出来る訳でもない。リムルさんは一旦保留にして、会議を続ける事にした。

 その過程で良い事を聞けた。どうやらトレントの集落があるらしい、配下に探させていたけれど、今まで痕跡すら見付けられなかったのに。この情報は大きい。

 

 トレイニーさんは定かでは無かったオークロードの存在を認め、オークロードがいるとなれば軍勢の目的も見えてきた。

 その特殊個体は『飢餓者』なるスキルを持つらしく、リムルさんの『捕食者』に近い性質らしい。

 そこから考えられるのは、オーク達は上位種族達を喰らい、その力を奪う事を目的としている。

 

「となるとウチも安全とは言い難いな。嵐牙狼族に鬼人、ひょっとしたらホブゴブリンもか? オーク達の欲しがりそうなエサだらけだ」

 

「一番奴らの食いつきそうなエサを忘れてやしませんか?」

 

 ただのスライムであれば無視されそうではあるけれど、リムルさんが力の一端でも見せればオーク達の目は変わるだろう。

 もっとも、何も知らない状況からわざわざスライムを求めてここまで来る事は無いだろうが。

 

「……他人事では無くなったのでは? それにこの度のオークロード誕生の切っ掛けに魔人の存在を確認しております。貴方様は放っておけない相手かと思いますけれど―――何故ならその魔人は、いずれかの魔王の手の者ですので」

 

 どうやらリムルさんには魔王に因縁があるようだ。相手の事情を利用して断れなくしてしまう交渉テクニックだ、リムルさんの表情を見る限り依頼を断る事は無いだろう。

 

 それと、とトレイニーさんは話を続ける。明確にボクを見据えて。

 

「一つ明らかにしておきたい事がございます。先程も申し上げた通り、この件には魔人が関わっております……そして、この場にも一人魔人がおりますね?」

 

 魔人とは、知性を有した強力な魔物を指すのだったか。つまるところ、トレイニーさんはボクを魔人と認識しているらしい。

 

「名前は持ってないけど、会話が不便そうだからボクの事はセプテムと呼んでいいよ」

 

「そうですか、セプテムさん。わたくしの聞きたい事は一つのみです……貴方は、その魔人と関わりがあるのではないですか?」

 

 さて、どの魔人だろうか。相手を知らなければ関係性も言えないだろう。それに、関係が無い事を証明するのは悪魔の証明とも言えるだろう。いつ何処で何をしたかなど、確かな記録を残していなければ誰にも証明は不可能だ。

 

「……ふむ、否定したいところだけど出来るだけの材料は持ち合わせていないね。一応どうしてそう思ったのかを聞かせて貰っても?」

 

 反証を重ねていけば、いつかは疑いを否定出来るだろう。

 

「テンペストヘルスパイダー、アーマーセンチピード、テンペストラプター、ソルジャーアント……これらの魔物の名前に聞き覚えは?」

 

 なるほど、ボクの配下の種族か。

 

「聞き覚えは無くとも想像は出来るね、それらは恐らくボクと関わりのある魔物達だろう……それで?」

 

「この内テンペストラプターとソルジャーアントの二種族はとある行動を行っています……森の中を、何かを探す様に組織的に活動しているのです」

 

「なるほど、違う種族が似たような行動を取ってるのだとしたら、それはまぁ不思議だね」

 

「誤魔化されそうなので単刀直入に聞きましょう。これらの魔物はセプテムさん、貴方の配下ですね?」

 

 何処からか情報を得ていたのだろう。そもそも自分も来たばかりで、それこそ最初は初期ステータスの状態で放り出されたのだ。いくら警戒していたとしても、より上位の存在に監視をされていては気付けないだろう。

 トレイニーさんは、しっかりと確証を得てこの話に望んでいるのだろう。ならば、誤魔化すだけ無駄であるか。

 

「そうだね、ボクの配下達だ。彼等には森の情報収集を任せて、そのついでに捜し物もさせているね」

 

「多くの魔物を支配下に持ち、何らかの目的を持って配下達に情報収集をさせている……しかも、捜し物とはトレントですね?」

 

「……まぁ、そうだね」

 

「セプテムさん、貴方の目的は定かではありませんが、その魔人と通じる事で情報提供をしていると捉えられてもおかしくありません。貴方が疑われるこの状況、その理由は理解出来ましたか?」

 

「なるほど……まぁ、言いたい事は分かったよ。けれどそれは、君の頭の中の空論でしか無いだろう?」

 

「ええ、貴方の行いに考えられる可能性は幾つかあります。森に存在を確認されてからこの町へ来るまでの期間、町に居座ってからの行い……暗躍をするにはあまり余裕は見られません。しかし、問題は次の二つです」

 

 トレイニーさんは二本の指を立てる。

 

「貴方が何処から来たか分からない以上、いずれかの勢力の手の者である可能性がある……これが一つ。貴方が配下を増やして続々と勢力を増やしていっているその目的が不明……これで二つ。わたくし達は森の監視者として多くの情報を得ていますが、貴方に関して分かっている事はあまりにも少ないのです」

 

 お茶請けとして出されていたポテチを優雅に食べて、彼女はお茶を飲む。

 

「そこから考えるに、貴方は森にとって有害な侵略者であるか、無害な侵略者か、この二つしか考えられないのです。どちらにせよ、貴方と言う存在が疑わしい事は間違いありません」

 

「なるほど、言いたい事は理解した。それで、君は何を望んでいるんだい?」

 

「貴方の扱う魔物を支配する手段の説明、そして行動の目的と身の潔白……その証明をしていただけなければ、わたくし達ドライアドは貴方を敵と看做して実力行使をさせてもらいます」

 

 つまり、自分の持つ力とこれまでの行い、目的などを全て納得出来る形で提示して、その上で沙汰を待てと彼女は言っている。

 オークロードとやらの森への脅威、その背後にいるらしい魔人……それらに関わりのあるかもしれない疑わしい存在。どうやら森の守護者とか言われている彼女達は、疑わしきは罰せをしようとしているのだろう。

 

「……考えられる可能性は幾つかある、問題は次の二つ、二つしか考えられない、間違いありません。なるほど、意識して聞いてみるとこうも強調されて聞こえるモノなんだね」

 

 ボクは決して頭は良い方では無い。馬鹿では無いつもりだが、それでも頭が良いとは間違っても言えない。だが、頭の良い奴らの会話を知っていると、多少なりとも聞こえ方は違ってくる。

 

「選択肢を狭め、可能性を狭め、相手を言いくるめる事で言い分を認めさせようとする。なるほど、君の考える仮説はもしかしたら的を射ているのかもしれない……が、今までの話、ボクに何かを認めさせたり言質を引き出したりと言う目的では無いね? いや、本来の目的では無いと言うだけで、あくまで引き出せたら理想程度のモノか」

 

 この場で、リムルさん達へとオークロード討伐の協力を求めてきたこの場面で、わざわざその話をしに来たのは理由があるだろう。

 

「例えここでボクが上手く誤魔化したとしても、或いは言いくるめてこの状況を脱したとして、リムルさんを含めた強者達はボクへ疑念を抱く事となる……危険分子であるボクを緩やかに締め上げる為の警戒網の構築か、素直にこの森からの放逐か、君の目的はそんなとこだろう?」

 

 図星だったのか、トレイニーさんは表情に出さない様に口を絞る。視線も動かずこちらを見たままだ。

 

「一番の目的がそれで、二番目が情報の引き出し、三番目にボクが如何に危険かの確認か……随分と狡い事をする。ボクがボク自身の情報を何もかも開示したとしても、疑いなんか拭えない。得られるだけの情報を搾り取ってから消し去りたいんだろう」

 

「……証明が不可能だとしたら、どうするのですか?」

 

「流石に今のボクで森の全てを敵に回すのは厳しいから、今は君達に手を出す事はしないだろうね。でもそれは、この森を最後に回すだけになる……まぁ、敵対するとしたらの話で、それは一番の悪手には違いない」

 

 なら、どうするか。

 トレイニーが欲しているのは安心であり、ボクを殺すか森から追い出せれば安心出来ると思い込んでいる。いくらでもやりようはあるが、残念ながらこの町に受けた恩は返す度に積み重なっている。

 では、平和的に解決するしかない。

 

「君の信用と信頼を利用させて貰おう。ボクがリムルさんの名付けを受ければ、ボクの立場は彼の配下となって彼の望みにそぐわない行動は取れなくなる。それが君にとっての一番だろう。そしてもしリムルさんがそれを拒むなら、この町への恩は返しきれていないがボクは森を去る事にしよう。これが君にとっての次善だ」

 

「俺!?」

 

 と突然の指名に驚きを見せるリムルさんだが、主を複数立てる訳にもいかない以上適任はリムルさんしかいないだろう。

 

「それしか解決策は思い付かないかな……まぁ、あくまでもトレイニーさん視点でのハッピーエンドだけどね―――ああそれとも、トレイニーさん達ドライアドは、ボクとコトを構える事がお望みかな?」

 

 恐らくトレイニーとしては、ボクより優位にいるつもりなのだろう。この町の戦力を味方とし、同じドライアド達を集めれば、配下を含めたボクの戦力を上回れるだろうと、想定しているのだろう。

 確かに『真眼』で見える彼女の生命力はそれなりだ。けれど、それなりなのだ。

 やりようは幾らでもあるし、時間はこちらの味方だ。

 

 トレイニーは視線でリムルさんへと確認を取る。彼女の表情は溢れていた自信が翳ったのか曇ったモノになっていた。

 

「……はぁ、分かった分かった。俺がセプテムさんに名付けをするよ。それで正式に俺達の仲間になってもらおう、これでいいか?」

 

「異論は無いよ」

 

 正直な話、これは賭けだ。リムルさんに名付けられ、ボクのシステムの使役が適応されてしまった場合、ボクがこれ以上強くなる事も成長する事も無くなるだろう。

 勿論拒否が出来たり抵抗出来たりすればその限りでは無いが、力関係だけで見た場合リムルさんは格上だ。

 

「では、改めてオークロードの討伐を依頼します。暴風竜の加護を受け牙狼族を下し、鬼人を庇護する貴方様ならば、オークロードに遅れを取ることは無いでしょう」




作者より頭の良いキャラクターは書けなくても、頭良さそうな雰囲気くらいは書けたりする。

久しぶりに一次創作の意欲出てきて少し困っちゃう
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