転生したらホムンクルスだった件 作:見て見て、アッハが笑ってるよ!可愛いね
オークロードを相手取る事が確定し、相手の軍勢が二十万にもなるとなれば、リザードマンとの同盟は必須と言えるだろう。
しかし交渉人としてやって来たのが面白キャラのガビルであった為、彼等と話すよりは直接首領と交渉をした方が良いだろうと決まり、ソウエイさんが出向く事となった。
そうして会議は終わり、いよいよ名付けと言う事になった。
「あんまり、同じ境遇の人に名付けをして配下にするなんてしたくないんだけどな。同格……とかもやり方分からないしな」
「まぁ気にしなくていいよ。まさか大人なリムルさんが変な事を命令したり、セクハラしたり覗きをしたりなんてするとはこれっぽっちも思ってないからね」
「そ、そうだな……」
彼の視線はめちゃくちゃ泳いでいた。まぁ、自覚があるようなのでこの忠告は刺さるだろう。
「取り敢えず、名付けは行う。ただそれは、今回のオークロードの討伐を終えた後だ。これから準備もしなきゃいけないし、同盟に向けて出発もしないとだしな」
「まぁ、リムルさんの好きなタイミングですると良いよ」
ボクとしては名付けを受けるメリットよりもデメリットの方が大きい以上、受けなくても構わないものでしかない。しかしそれではトレイニーを始めとしたドライアドがボクの危険視をやめないだろう。
板挟みにされたリムルさんは、きっと人間であったのなら胃が傷んだ事だろう。
「それより、俺としても色々と聞きたい事があるんだが」
まぁ、あれだけ情報を小出しにされたのなら気になるなと言うのも無理な話だろう。全部を教える程の信頼関係は築いていないが、ある程度なら答えるべきだろう。
わざわざ名付けをして危険分子を味方に迎え入れようと、そう示したリムルさんへの誠意も込めて。
「物による、とだけは先に言っておくよ」
「トレイニーさんはトレントを探してるって話をしてたけど、それは何でなんだ?」
多少の期間同じ町で過ごした事で、リムルさんのスタンスは嫌でも分かってしまう。人間だろうが魔物だろうが皆で仲良く、である。意図してトレントを傷付けようとしている場合、彼は止めようとしてくるだろう。
「別に危害を加えたい訳じゃないよ。この前見せたと思うけど『大いなる業』で作れる物に賢者の石があるんだ。その材料の一つにトレントの灰があってね……他の材料に目処がついたら、トレントに枝を分けてもらったりと交渉しようと思ってたんだ」
一番簡単なのは『使役』する事だが、聞いた限りではドライアドの庇護を受けているか共存をしていそうだ。下手な手出しは争いの火種となるのなら、平和的に交渉するしかない。
力で無理矢理従えるのも、まぁ悪くは無いのだが。
「配下がいるって言ってたけど、セプテムさんも名付けしたのか?」
「いいや、名付けは殆どしてないよ。ボクの扱えるスキルにそういうのがあってね。魔物達と協力関係を築いているんだ」
「なるほどな。何処から来たか不明だってトレイニーさんは言ってたけど、まぁいきなり転生して来ましたって言っても信じて貰えないし、納得はして貰えないよな」
結局の所、殆ど不可能に近い無罪証明を行うか、ドライアドを敵に回してこの森との戦争を行うか、大人しくリムルさんの配下に収まったので無害ですよと主張するしか手は無かったのだ。
「そうだ、正式にリムルさんの仲間になるにあたって言っておかないといけない事があるね」
「ん?」
この町へ滞在するのに、ボクはあくまでもお試し期間だと言っていた。リムルさんからすれば既に仲間、みたいな認識をされていた可能性もあるが、ボク自身の認識としては食客みたいなモノだった。
あくまでも、同郷であるリムルさんと食事のお礼として働く、そういうある程度離れた距離の関係性だ。
けれど、完全に味方であるとするならば、自分のスタンスとこれからの事を話しておかなければならないだろう。
「リムルさんのスタンスは、人間とも魔物とも仲良くしていこうって感じのモノだったよね?」
「ああ、そうだな。元人間としては人間とやり合うなんて考えられないし、魔物にも良い奴は大勢いるしな。この町を第二の故郷に出来るように発展させて行きたい」
「その思想は素晴らしいと思うし、実際その発展の恩恵にあやかっている以上文句も無いよ。けれど、ボクは人間が心の底から嫌いだよ」
「……嫌い?」
「うん、凄くね。だからこれから先、人間との交流も増えてくるとなればボクはそれなりに居心地悪くなるだろうね」
少し悩む様に考えてから、リムルさんは口を開く。
「エレンやカバル、それにギド。会ったことあるこの世界の人間は少ないけど、アイツらの事も嫌いか?」
「交わした言葉自体は少ないけれど、焼肉している時の様子と火柱を見て駆けつけた様子。それらから判断するなら彼等は善い人達だと思うよ。でもそれはミクロとマクロの違いだよ。ミクロの視点で見れば人間社会に善い人はそれなりにいると思うよ? でもマクロの視点で見た時、人間は総じてゴミだと思ってる」
「ゴミ……か。まぁ俺もそこそこ生きてたから良い奴も悪い奴も知ってるけどな」
性善説と性悪説というのがある。人間は産まれた段階では善性を持っているのか、逆に悪性なのか。ボクの考え方では中立よりの性悪説だ。
人間は産まれた段階では多少の悪性しか持っていなく、その後の環境で人間性が構築されると言うもの。
ただ今回の話はあくまでも好き嫌いの話であり、善し悪しはそこまで関係ない。
ただボクが、これと言った説明出来ない理由で人間と言う種族を嫌っているという、ただそれだけの話だ。
「まぁあくまで、大した人生経験も積んでない若造の、そこまで長くない時間に形成された考え方だから、あまり深くは捉えないで欲しいんだけど……少なくともボクは、人間に対して最初から友好的に接する事は出来ないって、それだけは伝えておきたかったんだ」
だからお試し期間が必要だった。そしてボクと彼とでは向いている方向が違う事が判明した。
うーんと唸ってから、リムルさんは笑う。
「別に良いんじゃないか? そもそも人間だった頃だって、最初から相手を信じる事なんて出来なかったんだし。それに遠回しに俺がお人好しって言われてる感じがするけど、なら逆に仲間に疑り深い奴が居るくらいが丁度良いだろ。ほら、釣り合いが取れてさ」
そう言って、人好きそうな笑顔を浮かべた。
「それにさ、俺達の町が居心地良いって思ってくれたんだろ? なら、好きなだけ居てくれれば良いさ」
外見効果は勿論あるのだろう。しかし彼自身が本来持つ人の良さが見て取れた。ああ、なるほど。きっと彼の本質は人たらしだ。
彼の配下達は、その人の良さに惚れ込んだからこそ仕え、望みを叶えるべく行動するのだろう。
名付けや『使役』とも違う関係性の構築だ。
「まぁ諸々は、この戦いが終わってからだね」
「そうだな。負けるつもりは無いが最善を尽くすしかない」
町の広場の方では、何やら設営が完了したようだ。もうそろそろリグルドさん辺りがリムルさんを探しに来るだろう。
「おっと、そろそろ準備が出来たみたいだよ? あの恥ずかしい台座に乗って演説してきなよ」
「なるべく考えないようにしてたんだよなぁ!」
スライム形態となったリムルさんは、神輿とも台座とも言えそうなよく分からない物に乗せられて、これからの対応を話し始めた。
決戦は湿地帯で行われる事。もし敗北した場合この町を放棄してトレントの集落へ落ち延びる事。統治者として、敗北の可能性も考えつつ味方を鼓舞しながら、戦闘部隊に加わる者たちの発表を始めた。
今回の討伐戦に参加するのは鬼人組からベニマル、シオン、ソウエイ、ハクロウの四人。ランガ、そしてゴブリンライダー百組とボク。総大将としてリムルさん。
鬼人組の二人は武具の準備などが主な仕事となり、万が一の町の守りともなるようだ。
スタメン発表から翌日、それぞれの装いを新たに町を出発する事となった。
「おお……望み通りの出来栄えだ」
シュナさんへと頼んでいたボクの服も完成していた。身体のスリムさを強調する様な黒のドレスで、骨盤の脇辺りが出る様な衣装となっている。心は男性であっても結構恥ずかしいデザインではあるが、これは必要な事なのだ。
「この衣装を作るにあたって想像力が刺激されたので、お礼を言いたいのはこちらの方ですよ」
ニコニコと笑うどころか、どこかツヤツヤとしているシュナさんを始めとした女性陣。なるほど、昨日リムルさんを着せ替え人形にしていた様だが、彼のあの惨劇の一端を担ったのはボクらしい。
「はは……まぁ、前にも言った通り残りの糸は好きに使っていいよ。もう使っていたとしても構わない」
この糸から作られた衣服が、どれだけの性能を有しているのか……『鑑定』を解放して確かめてみたいところだが、それは後の楽しみとしておこう。
本来『錬金』では正しい組み合わせでしか融合を行う事は出来ない。けれどこの世界には、無理矢理の融合を可能とするアーティファクトが無いからか、余分にMPを持って行かれるが無理矢理の融合が可能だった。
配下の糸製造部門蜘蛛達に、リムルさんから譲って貰った魔鉱石を融合し、彼等に『魔鉱』の特性を付け加えた。それにより、ボクが出せる様になった糸を、彼等にも出して貰えるようになり、極めて少ない生産量ではあるけれど、継続的な供給を可能とした。
魔鉱石を用いて作った剣が、持ち主に合わせて成長するのだとしたら、この『魔鉱糸』で編まれた衣服も、持ち主の魔素を吸収して成長するのだろうか。
その後リムルさんの新たな装いもお披露目となり、討伐隊は歓声の中出発した。
三日程の移動を経た頃に、ついに戦況に動きがあった。
本日の野営予定地に到着し、その準備をしている最中斥候として周辺警戒に出ていたソウエイさんが、リザードマンの首領の側近とオークの集団の戦闘を見付けたとの事で『影移動』を使えるリムルさんとソウエイさんが先行し、部隊全員でそちらへと向かう。
黒い鎧を来た猪人間と、普通の鎧を着た猪人間……恐らく彼等がオークなのだろう。良かった、裸のおっさんみたいなのじゃなくて。
「それにしても、普通オークって鎧を着ているものなのかい?」
「ワシらの里に攻め込んできたオーク共も着ておりましたが、普通ではありませんな」
「つまり、結構な数の武具を何処からか仕入れて来たんだね」
背後に魔王の手の者の魔人がいるとトレイニーは言っていた。つまりその魔王は、それだけの資金力を有している事になる。エレン達冒険者から仕入れた程度の情報では、それぞれの魔王がそれなりの領域を支配している。
そこにある国や街などを支配しているのなら、資金にも余裕はあるだろう。
つまり、このオーク達の進行を魔王の計画であるとするならば、それなりに手の入った計画であると言う事。
守る為とは言え、手を出したのなら魔王に目をつけられる事になるだろう。
念の為、情報収集に力を入れるとするか。
最近続き書けてないからストックがやばい
誤字報告助かります。とても感謝、ありがとうございます。