転生したらホムンクルスだった件   作:見て見て、アッハが笑ってるよ!可愛いね

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ムスペル・インパクト

 

 

 

 オーク軍とリザードマン達の決戦は既に始まっており、数で圧倒しているオーク軍に対してゴブリン・リザードマン混合部隊は少数による速力を生かした機動戦闘を仕掛けていた。

 

 リムルさんの町に訪ねてきたガビルが反旗を翻し、リザードマン首領を幽閉し、遅滞戦闘を行っていた軍の方針を一転し、敵の数を確実に減らす方針を取ったらしい。

 しかし『飢餓者』のスキルを持つオークロード配下のオーク達は、喰えば確率で力を得る能力を持っており、死体を出せばそれだけ相手に塩を送る事と同義であり、本来であればホームで優位に戦闘を進められるハズのリザードマン達は劣勢へと追い込まれていた。

 

 リムルさんは助けた首領の側近を首領代理と認め条約を締結、直ちに援護活動を開始した。便利スキル『影移動』を持つソウエイさんを首領の救援へと向かわせ、残りの部隊で決戦地帯へと赴いた。

 

 俯瞰視点で見た戦場は、詰みの盤面と言えるだろう。ゴブリン・リザードマン混合軍はオーク軍に囲われ、チェスで言う所のチェックメイトだ。後はどう調理するかの段階に移る所であり、ガビルとの一騎打ちを演じて遊ぶ程の余裕がオーク軍には見受けられた。

 

 そこへゴブタとランガを始めとしたゴブリンライダー部隊を救援へと向かい、ガビルは窮地を脱したようだ。

 

 そして今回の戦争を、一番待ち望んでいたとも言える鬼人達。ベニマルの範囲高火力で群れるオーク達を消し炭にし、ハクロウが無双の剣術で微塵切りに、シオンが逃げ出すオークを力任せに何匹も纏めて両断した。

 

 ランガも良く分からない竜巻を大量に発生させオーク達を一気に殲滅する勢いで、果たしてこれは戦争ではなくて蹂躙だっただろうか、と思わずにはいられない。

 

<お前は戦わないのか?>

 

 ボクが持つのとは違う思念伝達のスキルで、ベニマルからそう問われる。

 

<正直出る幕も無さそうだなとは思ったけど、働かないワケにも行かないか……どこら辺の集団を潰して欲しい?>

 

<なら中央から見て南西の、かなりの数が纏まっている地点を潰してくれ>

 

<避難勧告は出しといてね。味方であろうとも諸共に殺しちゃうから>

 

「さて、働きますか……『解放:翼』」

 

 着ていた白ローブをインベントリへと収納し、翼の特性を部分擬態させる。腰の辺りのドレスの空いた部分から真っ白な翼が現れて、全長三メートルにも及ぶその両翼が開かれる。

 翼を解放状態でのみアクティブとなるスキルがある。

 

「『飛翔』」

 

 鳥系の魔物とかが基本的に持っている、翼などを使わずとも飛ぶ事が出来るスキルだ。それを用いて、ボクは一気に空へと飛び上がる。

 加速、加速、加速、加速。複雑な軌道を取る必要が無いのなら、ただただ上へと最速で飛ぶだけだ。先程までいた湿地帯が小さく見える程飛んで尚飛び続け、雲すら突き破って晴天の中で佇んだ。

 

「太陽光がモロだから、あまり長居は出来ないけれど」

 

 しかし、前世を含めて初めて見たがなんと言う絶景か。眩い程の太陽と深い青をした広大な空、そして下方には一面の雲。まるで自分一人だけの世界、取り残された中で虚しく遊泳している様な虚無感。

 

「まぁ、晴れた空なんて嫌いなんだけどね」

 

 やはり天気は曇天くらいが丁度いい。

 

<避難は完了した。いつでも始めてくれ>

 

 さて、これで友軍を巻き込む事は無いだろう。相手はオークではあるが、恐竜を絶滅へと追い込んだ絶望をくれてやろう。

 いくらステータスが高かろうと。

 いくら意味の分からない耐性などを持っていようとも。

 破壊力とは、速度と質量によって成されるのだ。

 なればこそ、膨大な位置エネルギーをそこに加えてやるだけで壊滅的な被害を齎せる。

 

 超高所から繰り出される質量爆撃。あまり膨大な被害を出せば味方すら巻き込む以上数を打てないが、逆に一発だけに絞る事でそれは隕石のような天災とも呼べるだろう。

 

「『召喚:ムスペル』」

 

 初めて錬金で作り出したマナ・ゴーレム。名前を与え、VITにのみ経験値をそれなりに与えた。ムスペルのサイズは今や三階建ての建造物程はあるが、それでも与えた経験値自体はそこまで多くは無い。

 

 召喚によって現れたムスペルは、滞空する手段を持たないので当然のように落下する。重力加速度を一身に向けてその速度を上げるムスペルは、ものの数秒足らずで雲を突き破る。ここから降りる時間が手間になるのでボク自身をムスペルの下へと召喚すれば、赤熱した超巨大な岩石がもう間もなく湿地帯へと突き刺さる瞬間だった。

 

 泥が、まるで噴火のように天へと昇る。

 ムスペルが突き刺さった地点は、その勢いと衝撃の分だけそこにあった大量の泥を巻き上げた。その中には直接的被害を免れた大量のオーク達もいたが、初撃を運良く生き延びられたところで、この後に待ち受けるのは落下死と言う絶対的な運命だ。

 

 たった一瞬の出来事で、出来上がったのは超巨大なクレーター。本来その周辺にいた大量のオーク達はその全てが潰れたトマトのようになり、水と泥の茶色が占めていたその地帯は今や赤茶色へと変貌し、泥の雨が数十秒にも渡って降り注ぐ。

 

「……流石に死んだね、ムスペル」

 

 オークとの戦争があると分かっていたから、ムスペルは敢えてあまり強化しなかった。オークがどれだけ強いかにもよるが、経験値効率が良くなるからだ。

 今回ボクがした事は、ただムスペルを召喚しただけであり、あくまでムスペルが命を賭したボディプレスで大量のオーク達を引き潰したと言う結果が残る。

 力量差のある相手を、大量に殺したのだ。

 

「今回の褒美として、強化してあげたいんだけど……あまりサイズが大きくなると、今度は普段居てもらう場所に困るんだよね」

 

<……まさか本当に潰すとはな>

 

<インパクトもあったし、オーク軍は大分戦意が削がれたんじゃない?>

 

<味方ですら相当驚いてるからな……いや、本当に良かったよ味方で>

 

 さて、これで一応仕事はした事になるだろう。上空から戦場の把握をし、思念伝達でベニマルへと情報を送る役目を担っているリムルさんへと視線を向ければ、彼は開いた口が塞がらない様子だった。

 

 初めての錬金以降、色々とやれる事はしておいたのだ。ゴーレムの製造と素材の吟味、名付けなど。

 ゴーレムを作る際に魔鉱石を貰わずとも、核となる物を用意出来ればゴーレムは製造出来た。ムスペルを除いてまだ四体ほどしか作れていないが、余裕がある時に作れるだけ作っておきたいのが本音だ。

 また、何体かの配下へと名付けも行った。ムスペルとそれ以外では微妙に違いがあり、ムスペルは名を与えても名前を得た以外の変化は無かった。けれど大蜘蛛や女王アリなどに名前を与えた時、ボク自身のMPが何割か持って行かれ、勝手に経験値としてステータスに分配され更にはスキルも複数手に入れていた。

 念の為、テンペストラプターと言う名前は格好良いのに魔物としては弱いので監視要員や俯瞰視点用としている内の一体に名付けを行い、実験として死なせてみた。一時間の後、彼の死体は消滅し別の場所で復活した事が確認出来た。

 

 これらの事から、ボクが名付けをした場合『使役』している眷属ならば、眷属の最大のメリットであるリスポーンが可能だと言う事が判明した。

 ただし、ゴーレムなどの完全にボクと同じ法則の存在ならデメリットは無いが、それ以外は復活時に大きく保有している魔素量が減少しているらしい。

 つまり、ゾンビアタックに使えるのはボクが一から作り出す眷属となるだろう。

 

「さて、恐怖心を喰われていると言うのは本当の様だね」

 

 名付けるならばムスペル・インパクトだろうか。あの質量破壊兵器をその目で見て、それなのにその破壊跡地へと向かってくる大量のオーク達。マトモな感情を持ち合わせていればまずしない行動だ……実際、オークの瞳にあるのは激しい生への渇望のみだ。望みを満たす為に進む、ただそれだけを考えている姿。

 

「来ると言うなら相手をしてあげようか。でも経験値効率を考えるとボクが相手しても大した経験値が貰えないからね……稼がせて貰うよ。『召喚:フォビア』」

 

 現れるのは真っ黒な大蜘蛛。八つある瞳と身体に走るラインのみ血のように赤く、その姿は相手に恐怖心を与える。

 蜘蛛恐怖症から与えた名前に相応しい働きをして貰おう。恐怖を知らないオークと、恐怖を与える事が得意なフォビア。

 

「好きに蹴散らしていいよ。食べても良いし、死体を確保しても構わない」

 

<了解しましたボス>

 

 種族名『クイーンヘルスパイダー』。彼女は自らの子を産み出す事を可能とし、数での制圧を得意とする。彼女自身の性能も相当に高いが、ボクが持つ『眷属強化』とフォビアの持つ『眷属強化』の、その二つの影響を受けた子蜘蛛達は、産まれながらにして強い。

 そんな子蜘蛛を『召喚』と『産み分け』を駆使して真っ黒な濁流を作り出し、相手は単体ですらそれなりに強い蜘蛛達の波に飲まれる事になる。アラクノフォビアってこういうのじゃ無いと思うけど、まぁ間違いなくトラウマにはなるだろう。

 

 数が多いオーク軍と子蜘蛛達が正面からぶつかり合う。オークロードの『飢餓者』の影響か、その配下のオーク達が敵種族を食べる事でその特性を得る事が出来るらしいが、例え子蜘蛛を喰らった所で尻から糸を出すのが関の山だろう。ただ、わざわざ相手に餌を与えてやる必要も無い。

 

 相手の勢いを止めた子蜘蛛達は散開し、オーク軍を包囲する。そこから大量の糸を放出して相手の行動を阻害し、続けて火属性魔法で焼き尽くす。

 

「産まれたてでも魔法を使えるのは良いね……森では使いにくいだろうに、どうしてあの森にいたんだろうね? フォビア、わざわざ喰われてやる必要も無い、油断も隙も見せるなよ」

 

<心得ております>

 

 子蜘蛛達の魔力が尽きたのか、火炎放射が終了する。残っているのは香ばしいと言うには黒焦げ過ぎる猪人間の残骸だけだった。

 受け持った方面は、これで殲滅完了だろうか。

 

 何やらいよいよ敵の本陣も動くようだし、こちらはこちらで死体漁りをさせて貰おうか。

 

「フォビア、後は骨格が無事な死体を集めてくれ。リザードマン、オーク、ゴブリン、種族は問わない。子供達の餌として必要な分は食べて良いよ」

 

 了解したとばかりに頷いて、フォビアと子蜘蛛達は散り散りに動く。

 今回の戦争の稼ぎとしては上々だろう。後はリムルさんとオークロードの決着を見届けるだけか。

 

 ボクを配下とするならば、それに相応しいだけの実力を見せてもらいたいものだ。




用語解説コーナー

『眷属強化』―――文字通り眷属を強化するスキル。使役主のステータスに応じて眷属にもプラス補正を与えるスキルであり、これがあれば配下が強くなる、凄い。ちなみに黄金の経験値ではこんなスキルがあります!お陰で強いです!くらいの紹介のされ方で、これがあったお陰でどうのこうのみたいな展開とかは無かったと思う。
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