転生したらホムンクルスだった件   作:見て見て、アッハが笑ってるよ!可愛いね

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魔王種への進化

 

 

 

 戦況が変わったのは、良く分からない存在が乱入して来た時だった。

 どうやらゲルミュッドなる名前を持つ魔人らしく、戦場の只中にあって随分と騒ぎ立てていた。

 恐らくは、あれが今回の件で確認されていた魔人だろう。あんなモノと仲間だと疑われたこと自体が不快ですらある。

 

 自分の力を過信しているのか騒いでいるゲルミュッドだが『真眼』で見た限り生命力はそこまで多くない。リムルさんは言わずもがな鬼人よりも少なく、近くにいるデカいオークの方が多い。

 まぁ、明確な仇が現れたとなれば鬼人組のボルテージはマックスだろう。囲んで嬲る弱いものイジメのような構図となった。

 

「……何と言うか、戦争と言うよりお遊戯会だねこれは」

 

 オーク達からすれば、生き残りを賭けた生存競争なのだろう。 何処からこれだけ集まったかは知らないが、これ程までの軍事行動はそうは起こせないし起こすとすればそれだけの理由がある。

 が、そのオーク達を利用して何らかを画策する者達からすれば、これはただのボードゲームでしかない。本来あのゲルミュッドもプレイヤーの一人であった筈なのだが、負けそうになったから盤をめちゃくちゃにしようとして返り討ちにされている。

 茶番と言うか、出来の悪い劇と言うか。一体何を見せつけられているのだろうか。

 

 しかし、事態はゲルミュッドがゲルドなるオークロードに助けを求めた事で一変する。オークロードはゲルミュッドを殺し、その死骸を喰らう。

 

《確認しました。個体名ゲルドが魔王種への進化を開始します》

 

 システムメッセージとは違い、頭に聞こえてくる謎の声。NPCに届くシステムメッセージはもしかしたらこのようなモノなのかもしれないが、だとしてもボクは『霊智』系統のスキルは解放していない。

 だとするならば、周辺一帯にいる全ての生物への強制告知だろうか。

 

 黒い何かが溢れ出したオークロードはそれに包まれ、姿が見えなくなる。念の為『真眼』で確認してみると、持っていた生命力が溢れんばかりの勢いで増えていく。

 

「『状態異常結界』『防御結界』」

 

 黒い繭のようになったオークロードから何かが溢れてくるのを確認し、それを閉じ込めるように結界で包み込む。内側から状態異常を起こすモノを阻む結界と、物理的な防御力を持つ結界と二層構造で貼ったが、状態異常結界の方を溢れた煙らしきモノはすり抜けた。

 

「離れろ! 奴から溢れる妖気に触るな!」

 

 一瞬遅れてリムルさんからの警告が飛び、周りにいた彼の配下達は飛び退いた。

 

「これは……」

 

 防御結界の方が、少しずつ削られている。何か大きな力を加えられているのではなく、毒で侵食するかのように細かに削られる。結界内を埋め尽くす程に満たされた妖気とやらは、満遍なく結界を削り続け―――

 

 ―――ガシャン! とガラスが割れる様な音と共に結界が決壊し、まるでドライアイスから出る二酸化炭素のように地面を這って妖気が溢れ出た。

 

「んっふ」

 

 オークロードの近場で死体となっていたオークは、煙に巻かれるとドロドロに溶けて消え去った。触れたモノを侵食し、溶かしてしまう毒のようなモノか。状態異常耐性が効かない所を見るに、物理的破壊力と認定されるようだ。

 

 そして黒い繭が破れ、中から『ゲルド』が姿を現す。

 

《成功しました。個体名ゲルドは豚頭魔王へと進化完了しました》

 

「俺の名はゲルド。豚頭魔王ゲルドと呼ぶがいい!」

 

 そこに居るだけで感じる圧倒的な威圧感。近場にいたオーク達はみなゲルドへ向かって膝を着いた。

 自信に溢れた表情のゲルドと、畏怖と尊敬を持って頭を垂れる配下達。彼等にとっては、壁を超えた瞬間であり希望に溢れた展開なのかもしれないが……彼等は、いいやここに居るボク以外は誰一人として知らないだろう。

 

 生まれたての災厄級など、たかが知れていると言う事を。

 

 逆に言えば、この場でゲルドを処理出来なければこの森の生存競争はオーク達が勝つ事になるだろう。晴れてゲルドは世界の覇権争いへ参戦し、十大魔王とやらの仲間入りをして十一大魔王になる。

 

 シオンがその膂力で斬り掛かるが、ゲルドの持つ肉切り包丁のような物で容易に防がれる。シオンは両手でゲルドは片手な事からも、ステータスの差は相当だろう。

 そのままゲルドはシオンを吹き飛ばし、追撃をせんと迫るが、その背後からハクロウが神速の一太刀でもってゲルドの首を撥ねる。

 本来ならばそこで終わりだが、首を失ったままゲルドはハクロウへ攻撃を仕掛ける。狙いの雑な攻撃はそのまま回避されてしまうが、頭部を元ある場所へと戻すと再生が始まって数秒も経たずに元通りとなった。

 

 ―――いやいや待て待て待て待て! ちょっと今信じられない頭のおかしい事あったけど!?

 

 断たれたんだぞ? 首を。死ねよ!

 

 まず首を断たれた場合何が起こるかと言えば、命令が脳から身体へと行かない。当然身体の方からすれば五感の内四つも死ぬし、命令が行かないのだから身体だって動かせない。脊髄か? 脊髄でモノを考えて動いてるのか?? 首をもがれたトンボじゃないんだぞ!

 もしかしてオークディザスターにはアンデッド要素が入っているのだろうか?

 

「首を断たれてなお動きよるか!」

 

 いやもっと驚こうよ。なんで普通に受け入れてるのさ。

 

「操糸妖縛陣」

 

 首領の救出から合流してきたソウエイさんが糸でゲルドを繭でも作るように縛り上げ、ベニマルが黒炎獄と名付けられた技をぶつけ、炎が消えそうになった時にランガが黒い稲妻を落とした。

 

 流石に、アレを何の対処もせずに受けたのならボクも死ぬだろう。勿論縛られた後でも回避する手段は用意してあるが、耐久力だけで見た場合どうしようも無い。

 

 そんな、リムルさん配下の強者達の連携攻撃を受けてなお、ゲルドは倒れすらしなかった。

 よく見れば大怪我だ、生命力は二割程しか減っていないが。そんなゲルドは自らの腕を捕食して再生を行っていた。自分の腕では足りないのか、傍に侍ったオークの一人を喰らい再生を加速させる。

 

 言いたい事は色々あるけれど、実質配下の数だけ残機があるとしたらかなりの長期戦になってしまうだろう。

 

「効かないとは思うけど、数だけは減らしておこうか……『グレイシャルコフィン』」

 

 ゲルドを範囲内に含んで、近くで頭を垂れていたオーク達を一斉に氷漬けにする。ゲルドだけは効いていないようで内側から氷を割って出てくるが、他のオーク達は絶命していた。

 氷属性の範囲即死魔法。抵抗に失敗すれば死ぬのだが、成功率は低めの魔法だ。しかし、使い手側で参照するのはINTであり、ボクの高INTならばある程度の相手は殺せる。

 もっとも、わざわざ即死魔法なんて使わなくても大半の魔法は必殺級の威力を持つので、撃つ必要自体は無いのだが……即死魔法で殺す事が解放条件のモノがある。

 

「さて、もう少し削っておこうか?」

 

「いや、構わない」

 

「そうか、なら見せてもらうよ」

 

 いつの間にか隣に来ていたリムルさんは、いよいよ自ら戦う事にしたらしい。

 喰らう者と飢える者、どういった勝負になるかは不明だが、ボクの主となるつもりなら圧勝してもらいたいものだ。

 

 

 

 リムルさんとゲルドの一騎打ちが始まった。リムルさんはクロベエの作った刀で斬り掛かるがゲルドの攻撃を回避するのに手一杯で、反撃に繋げる取っ掛りを掴めない様子だ。

 振るわれる包丁が仮面を掠めそれが飛び、続けて回避した為距離が空く。その間合いを活かしてゲルドがデスマーチダンスなるエネルギー弾の連射を行った。降り注ぐエネルギー弾の雨の中、不意に立ち止まったリムルさんだったが、急加速する事でその場から姿をかき消した。

 

 次の瞬間、右腕を切り離されたゲルドの表情が驚愕に歪む。しかも切り口には黒い炎がまとわりついており、再生の阻害を行っているようだ。

 先程までの拙い戦闘行為とは違う、肉体の扱い方を完全に理解した最適行動。舐めていた、と言うよりは観察していたのか。

 

 急速に間合いを詰めて斬りかかり、黒い炎を纏った刀はゲルドの肉切り包丁を両断とまではいかずとも溶かして使い物にならなくする。そのままゲルドの膂力で吹き飛ばされるのに逆らわずに間合いを空けるが、ゲルドの背中から生えた触手のようなモノに攻め立てられる。

 冷静に攻撃を見切り回避をしながら再度距離を詰める最中に、ゲルドは再びエネルギー弾の雨を降らせる。今度は狙いも何も無く大量に無差別な攻撃のようで、成り行きを見守っていたリムルさん配下達の方へも降り注ぐ。

 

「『防御結界』」

 

 主にゴブリン達の頭上へと結界を張ってやれば、巻き添えを喰らう事になる者は現れずに済んだ。

 一方でゲルドは自らの肩口を引きちぎって捕食する事で、腕を生やす事に成功しそのままリムルさんを掴んだ。あの体格差であるならば、まず拘束を脱する事は出来ないだろう……が、掴まれたのはわざとだったようだ。

 それどころか逆に離されないように、自らの一部をスライム化させてまとわりついた。

 

 かつてイフリートが使ったのと同じ、範囲内の敵を焼き尽くす炎の技。このまま焼き続ければいずれは勝てるだろうが……さて。

 『真眼』で見る限り、確実に生命力は減らせている。が、途中で極端に減りが悪くなった。

 

《確認しました。豚頭魔王ゲルドは炎熱攻撃耐性を獲得》

 

 へぇ、耐性ってそんなポンポン獲得出来るモノなのか……。

 

 少しの時間をおいて、イフリートの技が解かれる。炎から現れたのは何の痛痒も感じていなさそうなゲルドと、完全に溶けた姿のリムルさん。

 一見リムルさんが敗北したようにも見えるが、生命力を見るにそうでは無い。つまり意図してスライム体となりゲルドを覆ったのだ。

 

 後はひたすらゲルドが暴れながらリムルさんから逃れようとするが、それを逃がさないようにまとわり続ける。

 徐々に、徐々に、生命力は減り続ける。お互いの生命力が減り続けるが、その割合はゲルドの方が多い。

 

 災厄……いや、準災厄級にも及ぶゲルドではあるが、この状況を打開する手段は無いらしい。

 詰みの盤面であり、準災厄同士の戦いに割入る事が出来る戦力はオーク側に存在しないようだ。まぁ近付けば問答無用で溶かされるか喰われるのだから、無理も無いだろう。

 

 最早骨だけの存在となったゲルドは、間もなくリムルさんに吸収されて消えた。後に残ったのはリムルさんのみであり、人型へ戻った彼は静かに告げた。

 

「俺の勝ちだ。安らかに眠るがいい」




覇権争いを派遣争いって誤字してたんだけど、熾烈な派遣争いって低レベルすぎんか?
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