転生したらホムンクルスだった件 作:見て見て、アッハが笑ってるよ!可愛いね
配下とした大蜘蛛から、気になる報告を受けた。
『百を超える大量のゴブリンが何処かへと向かっている』
実際に言葉として伝えられた訳では無く、そう言ったニュアンスの思念が飛んできたのだが、どう考えても異常な内容だった。
大蜘蛛や他の配下達から得たこの世界の常識において、ゴブリンは弱肉強食ピラミッドに於けるほぼ最下層に位置している。雑魚中の雑魚と呼んでも過言では無い。
とは言え持っている知性や数の多さなど、侮れない要素も勿論ある。ただ弱いだけならば淘汰されて絶滅しているものだが、むしろゴブリンは数が多い。それは生存能力が高い事を示している。
そんなゴブリンが、百を超える大名行列……?
考えられる事があるとすれば、元いた集落が住めなくなったので疎開だろうか?
「……最悪、それだけの数を賄える蓄えがあるか」
現象把握と状況確認の為、報告してくれた大蜘蛛の元へと自分を『召喚』する。
鬱蒼と茂る森の中、緑色の肌をした人間より少し小さい程度の集団が、まるで戦争による疎開のような陰鬱とした雰囲気を醸し出しながら歩いている。
「百、二百……所じゃないねこれは」
目測で数える様な特技は全く無いが、それでも二百じゃ済まない程度なのは理解出来る。まるで学校の全校集会が終了した後の長蛇の列である。
マンモス校とかの規模が大きい学校になるとどれだけ凄い事になるのだろうか……。
ともあれ、このゴブリンらしき集団が何処かへと向かっているのだけは確実だ。見たところ悪知恵が働くような様相でも無く、生存競争に敗れた弱者の群れだ。
つまり、これだけの集団を養える事が出来る強者へと庇護を求める……と言うのがこの行軍の目的だろうか。
どれだけの強者かにはよるが、少なくともご飯をたかる事くらいは出来るかもしれない。
ゴブリンの警戒範囲内に入らない程度の後方に付き、集団の後を着ける。
強化された聴力によって、ゴブリンの会話を拾って情報を集める。
曰く、ここはジュラの大森林と呼ばれているらしい。元々守護神とも言える強大な存在に庇護されていたのだが、ちょっと前に消えてしまって激しい勢力争いが起きたとか。
しかしとあるゴブリンの村を守護する存在が現れたらしく、牙狼族の襲撃を跳ね除けるどころかそれらすらも配下としたらしい。
魔物を配下とする事が出来る。その事実は非常に重要な情報だ。自分と同じ事が出来るとは限らないが、使役と似たような能力を持っている可能性はある。
使役スキルはこの能力の元ネタとも言える世界において非常に強力だ。屈服させた対象を自らの眷属とし、眷属達の得る経験値は全て主へと還元される。その対価として眷属は死んでもリスポーンし、デメリットも無く戦える死兵となれる。
残念な事に、この世界においてはリスポーンの能力は無かった。実験的な意味もあったとは言え、経験値を注ぎ込んで育てた蜘蛛が死んだ時には申し訳なさと悲しい気持ちでいっぱいになってしまった。
仮に自分のと違うとすれば、還元されるのも経験値という概念とは違うだろう。だが、何らかのメリットを受け取り見返りを渡すという構造はあるだろう。
既にそのゴブリン村と牙狼族とやらの生き残りを配下としているのなら、配下の数もそれなりには多いはずだ。主となる存在は自分と比べてもかなり強い可能性が高い。
最悪の場合、食糧だけくすねて逃げようか。
ゴブリンの集団は、やはり弱かった。しかしある程度システム化された狩りによって牛と鹿を合わせたような野生動物を殺し、集団の糧としていた。
能力だけを見れば遥かに自分の方が強くとも、生きる為の技術と言う点においては彼等の方が優れていた。索敵、罠、人員の配置、獲物の追い込み……果てには解体まで。およそ平和な世界で生きていれば関わり合いにならない自然の摂理がそこにあった。
バレない程度に後をつけ、取りこぼしを貰っている現状として、強化された視力での見取り稽古しか出来ないが、それでも学びにはなった。
生きるという事を、再度考えさせられる。
生き物に対する博愛精神とも言える、愛で慈しむ美徳。日本に生きていた自分としては大事にしたい感性なのだが、その日本においても屠殺を担う人々はいた。目の前で行われるこれらの行為は、全て今まで自分が目を背けてきたものだった。
可哀想だとは思う。けれど、食わなければ生きていけない。
この森に来て魔物と戦う事もあったが、その時はハッキリ言ってしまえば浮かれていた。与えられた自らの能力と、相手よりは強いという優越感を抱かせる自負。配下とした大蜘蛛と戦っていた時でさえ、勝つか負けるかと言う遊び感覚があった事は否定出来ない。
強ければ生きていく事は可能だ。人生は勝ち続ける事で歩める。
自らの根底にある思考は変わらなくとも、世界に対する姿勢は改めるべきだと思い知らされた。
大蜘蛛に対して、お前は遊んでたから負けたんだ、なんて優越感に浸っておきながら、自らも本気では無かったのだからお笑いだ。
そうして彼等の生態を観察し、自分を改める事が出来た行軍は、ボクが合流してから三日程で終わりを迎えた。
なんと言うべきか、辛うじて家という姿をギリギリ保てていないような集落だった。いや、縄文時代とか弥生時代とかの家と言われれば頷ける程度には出来が良い。恐らくだが、文明レベルは最低値に近いだろう。
しかし、ここの住民となるゴブリン達は大名行列のそれらとは大きく違っていた。
オスらしきゴブリンは体格も良く筋肉質であり、単体で雑魚ゴブリン十匹くらいは殺せそうだった。メスらしきゴブリンも肉付きが良く、人間の女性的な曲線美を持っていた。
全体に言えることだが、高い知性を感じさせる。ステータスで見ても、雑魚ゴブリンとはかなり違うのだろう。
つまりは、主にとってそれなりにお気に入りで力を入れられている場所かもしれないと言う事だ。
噂の牙狼族らしき者は見当たらないが、一体何処にいるのか。
「そちらの方、この村に何の御用ですかな?」
ゴブリン集団の会話を他所に観察をしていたボクへと、恐らくリーダー格らしきゴブリンが話しかけてきた。アルビノ特性を隠すために全身を布で覆っている不審者に対して、あまり警戒心を感じられない。
「ああ、どうも。実は食べる物に困っていてね……ゴブリンの彼等が訪れる場所ならば、食糧の蓄えもあるだろうと思って訪れたのだけど」
「なるほど、空腹の方でしたか! と言ってもこちらで用意出来るのは焼いた肉程度ですがよろしいですかな?」
不審に思うどころか持て成してすらくれるのか。
「……随分と優しいんだね、驚いたよ」
「ハハハ! 困ったらお互い様という事ですな。それに貴方はお強そうだ、主のいない間に何かされるよりは素直にもてなした方が良いでしょう」
「主が不在なのか、じゃあゴブリンの彼等も間が悪かったね……とは言え、もてなしてくれると言うなら素直に受け取ろう。なんせもう一週間も満足に食べてない」
果実やキノコなど、野生のものは無警戒に口に入れる訳には行かない。しかしその判別をゴブリンに任せれば、彼等は数百に及ぶ集団を保たせる為に食べ尽くす。獲物として狩った生物も同じだ。お零れなんて殆ど無かったし、お零れかと思われた木の実は食べたら腹を痛めた。
流石に空腹も限界だったのだ。好意は素直に受け取るべきだろう……と言うより、食えるのなら何でもいいから食わせて欲しい。
あれよあれよと言う間にもてなしの準備は整えられ、ゴブリン集団と一緒に食事にありつけた。焼いただけの肉ではあったが、空腹は何よりのスパイスであり肉自体も美味いもので、思わず涙を流しそうになってしまう。
粗方腹を満たせたので、先程のリーダー格のゴブリンへと感謝と共に話しかける。
「まずは食事を融通してくれてありがとう。それと聞きたい事があったんだけど構わないかな?」
「ええ構いませんとも。何をお聞きになりたいのですか?」
「さっきボクの事をお強そうだと言っていたけれど、何か判断材料でもあったのかな?」
見てくれだけならただの不審者だ。更に言えばゴブリンのお零れにあやかろうとしていたハイエナですらある。やっている事と見てくれから、強さの判断は出来ないと思ったのだが……『真眼』や『魔眼』のようなスキルがこの世界にもあるのだろうか?
「ああ、単純な事です。貴方の持っている魔素量が多いので、そこで判断をしただけです」
「……魔素量?」
「そうですとも。魔物は強さに応じて保有魔素量が変わります。リムル様などそれをお隠しになられる方もおりますが、基本的な強さの判断材料ですな」
魔素……ボクの知識で言うところのマナに当たるモノだろうか。『魔眼』のように視認は出来なくとも、魔物にとっては感じ取れるモノのようだ。自分を育てる上で、基本方針は遠距離からの魔法狙撃を目指している。その為保有魔素量にあたるであろうMPもそれなりに増やしている。
もしそれで大凡の強さの見当が付いていたのだとすれば、尚更無警戒過ぎやしないだろうか?
なんと言うべきか、ここまで配下の人が良いとなると、主となるリムル様とやらも余程の善人―――まぁ人では無いのだろうが―――なのだろう。
それから更に数日経って、ついにリムル様とやらと対面する事になった。
リムルとか普通に相手の魔素量とか見てるけどあれって鑑定とかなのかな?会話の相手はリグルドですけど、まぁなんか感じ取れたって感じでよろしくお願いします。
主人公君ちゃんは妖気を持っていません。ただ魔素量(MP)は結構あるので、ハイエナされてたゴブリン達は結構怖がってました。可哀想。