転生したらホムンクルスだった件   作:見て見て、アッハが笑ってるよ!可愛いね

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名付けと言う行為

 

 

 

「お帰りなさいませリムル様!」

 

「おうリグルド、ご苦労さん。俺が居ない間に問題は無かったか?」

 

「特に問題はございませんでしたが……」

 

 俺達を出迎えたリグルドとの会話もそこそこに、視線で促されたのは総勢五百名にも及ぶ小鬼族の群れだった。

 

「リムル様の噂を聞き、庇護を求めて近隣の小鬼村から集まってきたそうです」

 

「へ、へぇ……」

 

 どう見ても今の村のスペースでは受け入れ切れないし、お引き取り願おうとも考えたのだが、コイツらを追い返した場合どうなるのかを大賢者へと聞いてみると―――

 

《解。ヴェルドラの消失によりジュラの森は知性ある魔物達の覇権争いが始まっています。進化前の小鬼族達では淘汰されるでしょう》

 

 ―――との事だった。ヴェルドラの消失ともなれば原因は俺であり、責任も俺にある事になる。

 

「……分かった、来たいものは付いてこい! その代わり裏切りは許さないからそのつもりでな!」

 

 そんなこんなで新たなゴブリン達への名付けを行おうと思っていたのだが……なぁんか一人だけおかしいのがいるんだよな。

 

 白い布で全身を覆っているが、輪郭などから恐らく人型だと思われる。しかし、魔力感知で感じ取れる魔素量はランガと比べてもかなり多い。流石に垂れ流していた頃の俺ほどでは無いが、それでもかなり強い部類には入るだろう。

 

「ああ、あちらの方は食事を求めて来たそうです」

 

 俺の視線に気付いたのか、リグルドが気を利かせて説明をしてくれる。

 俺達も大所帯になり、これから名付けも行わなければならないとなれば後回しにも出来ないだろう。

 

「こんにちわ、俺はスライムのリムル=テンペストと言う。うちの食事はお気に召したか?」

 

 どんな魔物なのかは分からないけれど、なるべくフレンドリーに接してみる。すると、その魔物は頭部を覆っている部分の布を退けて素顔を晒した。

 美しい顔立ちをした少女だった。色素が抜けたのとは違う真っ白な長髪に、睫毛や肌も白く、けれど瞳は真っ赤なもの。見た目だけで種族を判断するならば、吸血鬼だろうか?

 

《解。対象の解析鑑定の結果、種族名はホムンクルスとなります。ホムンクルスは人造的に作られた人間であり、魂を持たない入れ物として扱われる人間ですが、この個体は特殊個体の魔物のようです》

 

 魔物であるホムンクルスって事か? 種族を逸脱してるって感じじゃないか。

 

《より詳しく解析鑑定をする為には名付けなどによる魂の回廊を繋ぐ必要があります》

 

 名付け、ね。これから五百人のゴブリン達にも名付けをしないとならない事を考えると少し憂鬱になるな。

 

「素材の味ではあったけれど、何より空腹というスパイスがあったからね。ゴブリンの彼には伝えたけど改めて感謝を伝えよう。ボクには現在名前は無いけれど……そうだね、セプテムとでも名乗っておくよ」

 

 名乗りを上げてから、大半の男どころか女性ですらも堕とせそうな綺麗な笑顔を浮かべた。なるほど、ボクっ娘か。悪くない。

 そんな興奮する気持ちを隠して「よろしくな」と手を伸ばせば彼女はそれに応えてくれた。

 

 どうやらあまり顔を晒していたくないらしく、彼女は再び布をフードのようにして頭部を隠してしまった。

 

「それでセプテムさんはどうするんだ? ゴブリン達は庇護を求めて来たみたいだけど、貴方はそうじゃないんだろ?」

 

「そうだね……一先ず食事にありつきたくてここまで来たけど、特に喫緊の用事は無いし、一宿……はしてないけれど、一飯の恩義は返しておこうかな」

 

 一宿一飯の恩義なんて言葉、この世界にもあったのか。もしかしたら彼女もまた俺と同じように転生して来たのだろうか?

 

「なあ、もしかしてだけど……セプテムさんも転生者か?」

 

 そう簡単に同郷の人間と会えるとは思っていない。しかし、何処か懐かしい空気感を感じてしまった。何を言ってるんだと思われるかもなと考えながら訪ねると、布に隠れてはいるが驚いたような様子を見せた。

 

「も、という事はリムルさんもかな? まぁボクに関しては、転生と呼ぶような状況なのかは判断に困るんだけれど」

 

「やっぱりか! こっちに来て初めて同郷と会えたよ」

 

 まだスライムとして生まれ変わって月日はそれ程経ってないが、それでも同郷の人がいるとなれば心強い。

 色々と出身地の事や転生する事になった経緯など、話したい事は山のようにある。しかしやらなければならない事もまた多い。

 

「良ければだけど、俺達と一緒に来ないか? 食事の面倒はこっちで見るから、色々と力を貸して欲しい」

 

 転生者であるのなら、彼女もユニークスキルを何個か持っているかもしれない。保有魔素量からも考えて実力は高そうだ。強い仲間がいれば外敵から身を守る事もやりやすくなるだろう。

 

 セプテムさんは少し考え、そして頷いた。

 

「お試し期間のようなものを設けたい。思想や目的は個人で異なるだろうし、いつまでも仲良しこよしで手を繋いでいられるとも限らないからね……それでも、折角出会えた縁もあるし、良き隣人となれると嬉しいかな」

 

 こうして俺達の村に、五百名のゴブリンと一人のホムンクルスが加わる事となった。

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 見たところ貧弱そうなただのスライムが、ゴブリンと狼の群れの主であるのも驚いたが、ボクと同じ転生者である事にも驚かされた。

 もし『魔眼』や『真眼』と言ったスキルを獲得していたのなら、見え方も違ったのだろうが、何処からどう見ても弱そうなスライムなのだ。しかしまるで神を崇めるかのように、周りのゴブリン達は「リムル様! リムル様!」と持て囃すではないか。

 

 恐らく使役スキルを使ってもこうはならないだろう。彼の人徳と実力の鳴せる業だろうか……?

 

 と言うか、一体死に際に何を考えればスライムとなるのだろうか。あー来世はクソ雑魚なスライムになって勇者に蹴散らされてーとか考えたのだろうか? まぁ流石にそれは無いだろうが、人間からスライムに変化したとなれば、きっと混乱も大きかっただろう。

 

 と、リムル=テンペストについての考察を行いながら、現在行われている名付けとやらを観察している。

 一見すると行列を作ったゴブリン達に、適当な名前を与えていっているだけに見える。

 しかし配下とした大蜘蛛等に名付けについて聞いてみれば、どうやら上位存在が相手に名付けを行う時に、自分自身の魔素を一緒に渡しているのだそうだ。

 そして受け取り手は与えられた魔素によって強化され、その時にパスが繋がり使役関係のようなモノが生まれるらしい。

 

 つまりあのスライムは、デメリットが大きい使役をバンバン使っている事になる。五百のゴブリンに対して。

 

 その目的や思考を色々と考察してみたが、恐らく何も考えてないのでは無いだろうか?

 この無償奉仕の精神とも呼べるものが、もしかしたら彼の配下達のよいしょに繋がっているのかもしれない。損して得取れ、と言うやつだ。

 

 しかし、彼はあれだけの相手に適当に名前を与えて、果たしてしっかりと覚えられるのだろうか? 自慢では無いが、ボクには無理だ。同じクラスの生徒とかなら流石に覚えられるが、別クラスとなればそもそも名前を知らないし、知ったとしても顔と名前を一致させられない。

 

 うーん。どうやらリムルさんは優れた才能の持ち主、という事だろう。凄いな彼は、いや本当に。

 

 大蜘蛛を使役した時、鳥の魔物を使役した時、蝙蝠の魔物を使役した時、毎回毎回名前を付けてあげようと思いつつ、自らのネーミングセンスが壊滅している事を思い出しては名付けを見送っていたが、今思えばそのセンスの無さに感謝をしたいくらいだ。

 

 ボクが下手に名付けをすると、MPをコストとして支払う訳では無く最大値を減らしてしまう可能性がある。勿論糧となる経験値さえあればまた増やせるけれど、それなら配下を直接強化してやれば良い。

 

「しかし、進化か……」

 

 総勢五百名にも及ぶ名付けが終わった頃、ゴブリン達は皆が眠りへと落ちた。ついでにリムルさんも落ちた。

 

 一晩空け、名付けられたゴブリン達は、与えられた膨大な魔素によって進化を果たしていた。貧弱でヒョロガリだったオスゴブリンが筋肉質な姿へと変貌する様は異様としか言い様が無い。

 

「何か気になるのか? 嬢ちゃん」

 

 ボクの呟きを聞き取っていたらしいドワーフが、律儀に返答してくれる。しかし、嬢ちゃんか……まあ少女の肉体なのだから仕方ないか。

 

「いやね、ボクも魔物に分類される訳だけど、こうして進化するのは初めて見てね……魔物の進化には条件があるのかなって考えていたんだ」

 

 恐らくボク自身は、進化という法則は適応されないだろう。進化にあたるのは転生だが、ホムンクルスという種族である以上特殊な条件を満たさなければ転生も出来ない。そしてボクの配下である魔物達には、この転生は適応されないだろう。

 

 進化と転生、呼び方が違うだけで同じである……とは言い切れない。

 

「さてな、実際に魔物が進化する様は初めて見たが、そうポンポンとするようなもんじゃねぇはずだ」

 

「まぁそうだろうね」

 

 一つ、ホムンクルスでは使ってもあまり意味は無いが、他の種族なら転生をさせられるアイテムに心当たりはある。そしてそれを使えば、魔物の進化を引き起こせるだろうとも思う。

 

 まぁ、配下の強化を迫られた時には使えるように、素材だけは集めておくべきだろうか。

 

「ところでドワーフの人、ホムンクルスに対しては嫌悪感とかないのかな?」

 

「あん? んなもん今更だろうが。俺達はリムルの旦那についてきて魔物の集落に来てんだからよ。嬢ちゃんが人であれ魔物であれ、わざわざ何らかのリアクションをする必要もねぇだろ」

 

「なるほど確かにね」

 

 設定元となった世界では、ホムンクルスは人類からバレたら敵とみなされ、魔物からも攻撃対象となる四面楚歌の種族だ。

 だからこそ、ドワーフの人の反応から情報を得ようと思ったのだが……無駄な質問であった。ただこのドワーフの人が良い奴だと分かっただけだった。

 

「そう言う嬢ちゃんは、何でそんな怪しい格好をしてんだ?」

 

「まぁ、怪しい見てくれだって自覚はあるけどね。アルビニズム……アルビノって知ってるかな?」

 

「詳しい事は分からんが、日の光に弱いんだっけか?」

 

「そう。肌を日光に晒しちゃうと火傷とかしちゃうんだ。だから隠すしか無くてね」

 

「なるほど、そいつぁ難儀だな」

 

 耐性を付けたり、LPを増やしたりすれば何とかなるだろうが。現状得ている経験値だけでは心許無い。先天的な特性を打ち消すよりも得るべき能力は多いのだ……と、何だかんだと理由を付け加えてはいるけれど、結局の所ボクがこの先天的特性を気に入っているのだ。例えデメリットしか無くとも、そのデメリットは僅かばかりな初期経験値へと還元されている。

 

 ほんの僅かな経験値だとしても、その価値は計り知れない。

 

「まぁ、後はこの森で生まれたから大して外見を気にしてないというのもあるけどね」

 

「ははぁ、確かにな。人間と関わり合いにならないなら怪しい見た目だろうが関係無いからな」

 

「後は素っ裸は流石に恥ずかしかったから、取り敢えず隠せるようにしたってのもあるけれど」

 

 ブフォッと、飲んでいた水をドワーフは噴き出した。

 

「……嬢ちゃん、悪ぃことは言わねぇからそういった事は言わねぇ方がいいぞ」

 

「ふふ、からかっただけだよ。とは言っても、しっかりとした服が欲しいと言うのは切実な願いでもあるけどね」

 

 まるで、と言うより事実として現状のボクは殆ど露出狂だ。知性無い魔物を相手にしていたり、森の中であった事もあってあまり気にせずにはいられたが、元人間や人類に分類されるドワーフがいるとあっては流石に気になってしまう。

 

 別にお洒落をしたいとは思わないから、最低限の下着と服が欲しい。

 

 ふむ、と何やらドワーフの人は考え込み始め「おい、ガルム! ちょっとこっち来い」と別の場所にいたドワーフを呼びつけた。

 

「嬢ちゃんの布、元になった繊維は何だ?」

 

 少しいいか、と断りを入れてから彼はボクの羽織っている布の端を触る。

 

「これは配下の蜘蛛糸から作らせたモノだね」

 

 実験的な意味も込めて死なせてしまった配下の遺品だ。触り心地はまるでシルクのように滑らかで、肌に直接触れているけれど心地良い。耐久性に関してはどれだけ優れているのかは分からないが、少なくとも前世の世界の衣服よりは遥かに頑丈だ。

 

「この糸を大量に用意出来んなら、だが……かなり良い服を用意出来るぜ?」

 

ガルムと呼ばれたドワーフと、カイジンと紹介されたドワーフは、まるで悪い事でも思い付いたかのように良い顔をしていた。




用語解説コーナー

『使役』―――黄金の経験値において眷属を作る為のスキル。汎用的な使役であれば屈服した相手等を眷属とし、種族毎にある使役では種族の縛りや使役する際にデメリットが発生したりする。一例を挙げれば吸血鬼の使役は対象をアンデッドにしてしまう。

『転生』―――黄金の経験値における種族進化の事。転生をする為には条件を満たす必要があり、基本的には賢者の石を使用するか転生の祭壇を利用しなければ転生は出来ない。転生をする事で大幅に能力が強化され、レイドボス級になる時には大量の経験値を要求される。

主人公は自称としてセプテムを名乗りましたが、多分セプテム様がその事を知ったらブチ切れると思います。セプテム様は勝手に名前とか使われる事嫌ってたので。主人公迷惑系厄介オタクかよ。
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