転生したらホムンクルスだった件   作:見て見て、アッハが笑ってるよ!可愛いね

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ようこそリムル様至上主義の集落へ

 

 

 

「おお……」

 

 リムルさんを主と崇め奉る魔物の集団は、今までの拠点では立地が悪いとかで引越しを開始した。

 当然何処へ行っても森の中である事には変わらなく、移転先となる場所もまず開拓を必要とした。

 

 主に労働力となるのはカイジンと言うドワーフとリムルさん配下の力自慢ゴブリン達。斧を扱い地道に森を切り拓くその姿はまさに原始的、如何にして人類が生存権を築け上げて来たのかを理解出来るモノだった。

 

 成り行きで着いて来た身の上ではあるけれど、食事を融通して貰っている以上は恩返しも必要だろう。という事で当然ボクも手伝った。スキルで取らされる事になった『インベントリ』だが、その圧倒的なまでの利便性はもはや語る必要も無いだろう。場所を取らず物を持ち運べるその力を遺憾無く発揮して、ついでにステータスの暴力による木々の薙ぎ払い等でも仕事へ貢献した。

 

 ある程度の働きを認めてくれたからか、提供した糸から作った服をガルムと呼ばれるドワーフから貰った。

 古代エジプトで着られていたような白いドレスらしき衣服と下着、そして皮で作られたブーツ。外出時に着られるように、元々羽織っていた布もしっかりとしたローブへと変貌を遂げていた。

 

「良い、とても……完璧だ」

 

 黒いスーツやドレスになる前ならばこれだろうと、思い描いていたモノがそこにあるでは無いか!

 

「ありがとうカイジンさん、ありがとうガルムさん……ありがとう死にかけながらも糸を出してくれた配下の蜘蛛……感謝、圧倒的な感謝」

 

「そ、そこまで喜ばれると職人冥利に尽きるな」

 

 開拓村を作るに当たって、優先的に建てられたのはリムルさんの家と、職人の工房だった。主が全てに優先されるのは当然で、防具にしろ細工にしろ、職人の工房も生活に欠かせないモノだ。

 

 そこから上下水道の整備等も作られて、もはや集落どころか本格的な街作りが行われている。

 専門的な事は門外漢なので、素材の運搬や警備といった形で貢献はしているが、まるで現代的な建設が進められているような光景に、ある種の恐ろしさすら抱いてしまう。

 

 彼は、ゴブリン達が住まう為の村を作るのでは無いのか? まぁ、現代日本の快適さを知る者として、目指すべき完成形は理解出来るのだが、何足飛びで推し進めるのだろうか。

 こればかりは全員が一丸となって同じ方向へと進んでいるから出来る事だろう。

 

 警備隊となったゴブリンライダー達とは別にボクも警備をしては、有用そうな魔物等を定期的に『使役』して配下を増やす。

 出来ればそう遠くない内に養殖場を作りたいのだが、リムルさんの拠点である以上この森以外で用意すべきだろうか。そうなると必要となるのは足の速い移動手段だ。出来れば飛べる魔物が望ましいだろう。

 

 鳥型で、しかも速度が出せるのが好ましい。現状ボクの配下には「テンペストラプター」と言う種族がいる。しかし彼等は、魔物に分類されるが野生動物より少し強い程度しかない。経験値を割いて強化をした所で、そもそものサイズが烏程度。乗るのには向かない。

 養殖場を作らなければ経験値の安定収入は望めず、養殖場を作る為には遠出をしなければならない。それをする為には足が必要になるが、現状足のアテが無い。

 

 『錬金』のスキルツリーを解放していけば、この世界の魔物も融合する事で強化個体を生み出せるかもしれないが、スキルツリーの解放の経験値を何処から捻出するか問題が発生する。

 

 取れなくは無い。ああ、必要になるスキルは大体解放出来るだろう。しかし、蜘蛛糸として貢献してくれた子達へも還元してあげなければいけない事を考えれば、余裕は無い。

 

「後回し、か……」

 

 中々上手く行かないモノだ。だが、そこまで焦る必要も無いだろう。折角の二度目の生なのだ、ゆっくりと楽しんで行けば良い。

 

 アンロック出来ていないスキルツリーにある『魔の理』という文字を眺めながら、ゆっくりと息を吐いた。

 

 

 

 開拓地へと移ってから、三週間くらい経った頃だろうか?

 リムルさんとして念願の、初めての人間のお客様がやって来た。

 どうやら森の中で蟻に襲われている所をリムルさんが助けて、行き倒れ―――とまでは言わないが、大変腹を空かせていたらしい彼等を歓待した。何処かで聞いた事のあるような訪ね方だ。

 

 シズと言う仮面の女性、エレンと言う法術士、ギドと呼ばれる斥候役に、カバルと呼ばれるリーダー。その四人は俗に言う冒険者とやらで、いつだかゴブリンから盗み聞きした守護神の消失の件についての調査で訪れたらしい。法術士って何だろうか?

 

 どうやら焼肉で持て成すらしく、肉やら鉄板やらを運んでいる最中シズと言う仮面の女性が話しかけてきた。

 

「こんにちわ、セプテムさん」

 

「どうもこんにちわ。話は聞いてるよ、森の中で蟻の大群に襲われてたんだって?」

 

「一緒に来てた人達が蟻の巣をつついちゃってね……」

 

 仮面越しに、彼女は「あはは」と苦笑いを浮かべた。

 

「状況は違えどシンパシーは感じるよ。ボクもここへは空腹で辿り着いたからね」

 

「そうだったの?」

 

「何が食べられるかの知識が無くてね、流石に初見で魔物を食べようって勇気も持てなくて……まぁ、多分あと何日かしてたらチャレンジしてたと思うけど」

 

 余裕があったから様子見が出来た。余裕が無ければ自分のステータスの暴力的な耐性を信じて何でも食べていただろう。

 結果として美味い物を食べられたのだから、まぁ良かったと言えるが。

 

「……セプテムさんも、転生して来たんだって?」

 

 何故、わざわざ自分へ話しかけてきたのか。疑問に思っていたが、なるほど大っぴらに話せる内容では無かった。

 

「シズさん、でしたっけ。貴方も転生したので?」

 

 ううん、と彼女は首を振る。

 

「後から教え子に聞いた話なんだけど、東京大空襲って呼ばれるのに巻き込まれてた時に、こっちに召喚をされたの。だから、私達みたいなのは転移者って呼ばれてるね」

 

「転移……」

 

 死なずとも、こちらの世界へ来てしまえるのか。それは何とも悲しい話ではないか。

 

 東京大空襲が知識としてあるのなら、それは確実に終戦後だ。シズさんと比べれば間違いなく平和な時代からの来訪者だろう。

 本来享受出来ていた筈の幸福を奪われて、弱肉強食の世界へと叩き込まれる。或いはそれに対して上等だと笑える者もいるだろうが、誰もがそうではない。

 

 幸か不幸かで言えば、きっと不幸だろう。

 

「どうかしたかい?」

 

 仮面越しではあるけれど、マジマジと見詰められている事は理解出来た。何か気になるようなモノがあっただろうか……顔立ちに関しては、どうやら先天的特性で「美形」を持っているようで、とても生前の自分とは似ていないが。

 

「あ、ごめんなさい。ただ何処からどう見ても人間だなって思って」

 

 ああ、なるほど。魔物に分類されるのが不思議なのだろう。厳密に言えば、ホムンクルスは人類でも魔物でも無い第三の分類に含まれるのだろうが、リムルさんの知識等から考えるとこの世界においてボクは魔物に分類される。

 リムルさんの転生の経緯などから考えるに、人間や魔物の区別は個体の発生条件によって分類分けされているのでは無いか? と思っているが、正確な事は分からない。

 

「ボクしかいない種族かもしれないけれど、ホムンクルスには特性があってね?」

 

 ホムンクルスの持つ擬態能力、それを彼女の目の前で使ってみせる。折角作って貰えた服を破く訳にはいかないので、人間よりも体積の小さい……テンペストラプターへと擬態する。

 

 かの世界において、ホムンクルスは可能性の塊とも評されるモノだった。そう言われる理由になったのは、ホムンクルスへと特性を与えると、転生先にその特性の元となった種族が現れる事にある。

 

 恐らくはその特性が、この世界に適応する形に落とし込められたのだろう。配下とした存在の特性を獲得し、その種族へと部分的、全身で擬態出来る。

 だから、やろうと思えば自らで蜘蛛糸も作る事は出来た。出来たけど、ちょっと自分の体液を人に触らせたり常に触れたりするようで嫌だった。

 

「こうやって他の種族に擬態出来るんだ」

 

「わあ、凄いね! それ飛べるの?」

 

「勿論……練習すればね!」

 

 パタパタと羽を動かしてみるが、まるで飛び方が分からない。

 

「白くて綺麗な鳥……あ、瞳も赤いね」

 

「多分アルビノ特性が引き継がれているからだね。元になった種族は黒くて黄色い目だったよ」

 

 見た目は完全に烏だった。多分細部とかは違うのだろうが、対して詳しくないので大体同じに見えた。

 

「まぁ元々人間の姿だから、こんな能力を持った人間……とも言えるけどね」

 

 擬態状態を解いて人間へと戻る。当然全裸状態へとなってしまうが、周囲に人が居ないのは確認済みだ……ぞわりと鳥肌が立つ感覚があったが、きっと何も無かっただろう。

 

「まぁ、大きな姿になったりしたら服が破れるし、小さな姿になれば服が脱げちゃうから考えものだけどね」

 

 服を着直す傍ら、折角なので聞いてみたい事を聞くことにする。

 

「ところで、ホムンクルスって種族に聞き覚えはあるのかな?」

 

「確か、サリオンの方で外出用の素体とかで使われてるって聞いたよ」

 

「なるほど、やはり種族としては無いんだね……となると、ボクだけが唯一個体とかなのかな。人間社会でも馴染めると思うかい?」

 

「感じ取れる魔素量さえ誤魔化せれば、人間としか見れないんじゃないかな」

 

「魔物からは基本的に敵と認識されるのは、まぁ弱肉強食の世界だから分かるとして、人間から敵対されないのなら、大分生きやすくはあるかな……全種族から敵対されたら、流石に大変だから助かるね」

 

 もしそうなったとしたら、覚悟を決めて色々使役する必要もあったが、そうでないのなら緩く生きていけるだろう。

 

「ああ、これは聞いとかないと……この世界に教会とかってあるのかな? 神のお告げを聞く的な」

 

「それなら西方聖教会のルミナス教があるよ。魔物の殲滅を教義にしてるから、この町は目の敵にされそうだけど」

 

 やはり教会系の組織は存在するか。問題となるのは、そこの教主などが『霊智』系のスキルを持っているかどうかだろう。

 

「神のお告げとか、神託的な物はあるのかな?」

 

「うーん、ごめんね。そこまで詳しくはないかな」

 

 流石に、関係者でも無ければ……或いは立場が上の者でも無ければ知らないか。これに関しては一種の博打となるだろう。

 自分が順当に転生を果たし、『霊智』に連なるスキルを持つ者がいた場合、その者達がお告げを受ける可能性がある。教義と判断によっては、その勢力どころか多くの国すら敵になる事だってある。

 

 ああ、判断する材料はあったか。

 

「魔王とか精霊王だとか真祖とか、そういった存在はいるのかな?」

 

 仮面の裏側で、シズさんの表情が曇ったのが分かる。

 

「少なくとも、十大魔王はいるよ」

 

「え、魔王が十人も!?」

 

 なんでそんな偏って……いやいや違う、常識が違うのだから、種族が魔王とは限らない。

 

「んんっ……その魔王が現れた時とかは、告知とかされたりするのかな?」

 

「そう言うのは無いかな」

 

 なら、差し迫った驚異にはならないだろうか……しかし、魔王が十人か。一口に災厄と言っても、その実力はピンキリだ。取り敢えず、その魔王達の支配域については早急に知る必要があるだろう。自分の実力が及ばない内に手を出して怒りを買えば、何をされるかわかったものでは無い。

 

 もっと色々と聞いておきたいところだったが、食事の用意が出来たと言う事で会話は終了となった。




用語解説コーナー

『霊智』系スキル―――NPCとPCがとあるワールドアナウンスを聞く為のスキル。これを持っているとレイドボス発生時に、その存在が使役された存在で無ければ運営が教えてくれる。よりスキルを解放していく事で詳しく知れる様になる。

『災厄』―――黄金の経験値においてレイドボス級の存在の事。元は六大災厄として人類が驚異と認識していた事から使われるようになった。真祖、蟲の王、黄金龍、海皇、大悪魔、大天使が知られていた。ただ実際の所人間達が知っていたのはそれだけで、数自体はもっといた。人類に友好的な存在の精霊王なども災厄級と評される。



ちなみに今回セプテムちゃんが手に入れた服は漫画版黄金の経験値のレア様二番目装備をイメージしてください。
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