転生したらホムンクルスだった件   作:見て見て、アッハが笑ってるよ!可愛いね

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異世界人って二つ名をカッコよく思ってるのかな

 

 

 

 冒険者達へ焼肉を振る舞った後に、覗き魔スライムはシズさんを連れてデートと洒落込んでいた。

 特にする事の無かったボクは、カバル達三人組にこの世界における人間の一般常識や、大体の国などの位置関係や勢力図等を教えて貰った。

 

 先天的特性である「美形」の効果か、或いは少女程度の体躯からか、法術士エレンに抱き着かれた状態での会話であったが、役得であったと言わせて貰おう。

 女性特有の香りと柔らかさと温もりは、例え種族性別が変わろうとも良いものであった。

 

 聞き取り調査の結果、十大魔王とは言っても全員が特定災害生物「魔王」では無く、魔物に分類される者達の中でも選ばれし者がなったという事が分かった。

 災厄等の呼び方は無くとも、魔王等の普通とはかけ離れた力量を持つ者達は災禍級やら天災級などの分類を持っているらしい。大体災禍級以上で魔王だとか。分類ガバガバ過ぎないか?

 

 本当に良かった。心の底から安堵できる。魔王陛下が十人いらっしゃいますとかだったら勢力争いやばそうだし、何で人類生きていけてんだよって思うところだった。

 

 しかし、この世界の魔王は当然単騎でイカれた強さを持っているが、それはそれとして支配域も持っていて配下も多いらしい。名付けシステムを考えれば、まぁ強い奴の下に配下が多いのは納得だが、デメリットも大きくて易々と名付け出来ないのでは無かったのか? 一体どうなってんだ。

 まぁ、名付けシステムに関しては、ド変態覗き魔スライムと言うイカれた例外を目の前で見ていたので、多分消費する魔素量を調整すれば上手い事最大値を減らさずに回復出来るとか、そんな所なのだろう……えっ、五百のゴブリンへと魔素を分け与えて、回復出来るの?

 

 多分、リムルさんは世界のバグか何かだろう。考察のノイズにしかならないので考えない事にする。

 早い話、自分でも試してみるべきなのだろうが……リスクとリターンを考えると、やはりやる必要性を感じない。

 

 

 

 ある程度の聞き取りを終えた辺りの事だった。

 急激なエネルギーの爆発と、実際の爆発に近しい音を感じ取る。

 警備を担う一人として状況把握をする為に外へと出れば、森から火柱が上がっているでは無いか。

 

「森林では火気厳禁だろ!」

 

 何を思ったのか表に出てきた冒険者三人組は、火柱の方へと走り出したのでボクもその後を追う。

 

 意外と近くに、先程の火柱の元凶はいた。

 

「おおい! リムルの旦那! なんかすげぇ火柱が見えたけど……げっ!」

 

 炎を纏うように立つのは、仮面を何処かへとやったシズさん。それと対峙……している訳では無いが、困惑した様子を見せるリムルさん。

 

「あれ、シズさんか? 何がどうなって……」

 

 ん? とギドが疑問の声を漏らし、それにエレンが問い掛ける。

 

「どうしたのギド?」

 

「シズ……シズエ? シズエ・イザワ? え、まさかあの……?」

 

 まるでギドの思考を妨げるかのように、シズさんが指を振る。ボコ、と地面が動く音を聞いて咄嗟に彼の首根っこを掴んで引き寄せる。次の瞬間には、先程まで彼が居た場所に灼熱の火柱が立ち上っていた。

 

「ま、間違いありやせん! 彼女は爆炎の支配者シズエ・イザワ! イフリートを宿す最強の精霊使役者でやす……!」

 

「イフリート!? めっちゃ上位の精霊じゃねぇか!」

 

「冗談でしょ!? 伝説的英雄じゃない!」

 

 凄いな彼等。直前まで焼き殺されかけてたのに元気じゃないか。まぁ伝説だとか最強だとか精霊の使役だとか、気になる事は多々あるけれど。

 

「あんたらさっさと逃げ―――」

 

「そんな訳には行かねぇよ。あの人が何で殺意剥き出しにしてんのか知らねーが」「俺達の仲間でやすよ」「ほっとけないわ!」

 

「ハナ……レテ……オサエキレナイ……ワタシカラ……ハナレテ」

 

 頭を抱えるシズさんは何かを抑えているようで、纏うように漂っていた炎は彼女の背後で何かを形作りつつある。

 

「心配するなシズさん。あんたの呪いは俺達が解いてやる……任せろ」

 

 お願い、と消え入りそうな声の懇願が、強化された聴力で確かに聴き取れた。

 

「勝利条件はイフリートの制圧とシズさんの救出だ」

 

「はは……まさか過去の英雄と戦う日が来ようとはね」

 

「人生何が起こるか分かりやせんね」

 

 冒険者三人組はそれぞれ武器を構え、炎に浮かされるシズさんへと向き直る。

 

「行くぞ」

 

 

 

「念の為に聞くぞイフリート! お前に目的はあるか!?」

 

 リムルさんの問い掛けに対するイフリートの回答は、炎弾による雨だった。

 ランガという個体名を与えられた狼に乗って軽々と回避するリムルさんとは対象に、三人組の回避は危なっかしい。

 

 この場に居合わせてしまった以上、ボクも働くべきだろう。

 ボクの獲得出来るスキルには、本来含まれないようなモノも何個かある。例えば『思念伝達』だが、こんなものはボクの知識には無い。恐らくはフレンドチャットの代わりとして取れるようになったモノだろう。そうした、世界に対する辻褄合わせのようなモノで取れるようになったスキルの内、魔法の種類も増えていた。

 その名も『結界魔法』、属性の魔法と精神魔法しか無いはずのスキルツリーに、そんなモノも追加されていたのだ。恐らくは、この世界に結界という防御手段が存在するのだろう。そしてこのスキルの元となった世界には存在しなかった。だから、捩じ込まれたスキルツリー。

 

「『防御結界』」

 

 トリガーとなる言葉を発すれば、魔法は正しく発動されその効力を発揮する。

 三人組と自分の前に張られたその結界は、降り注ぐ炎弾の雨を軽々と弾いてみせた。使用者のINTに応じて防御力を増すのだろう。この程度の火力なら、割られる心配をするまでも無さそうだ。

 

「すまねぇ助かった!」

 

 カバルが感謝を告げる傍らで、リムルさんはイフリートへ水の刃を放っていた。が、それは相手に届く前に蒸発して消えてしまう。

 どうやらランガの説明曰く、精霊には物理攻撃が効かないらしい。つまり先程の水の刃は魔法とかではなく、純粋にウォーターカッターだったと言う事だ。

 

「つまり魔法は通じるという事だね……けど、ボクの魔法じゃ周囲に被害が出過ぎるか」

 

 一番弱い魔法辺りを使えば周辺被害も大して出さずに方を付けられそうではあるが、チョロチョロと動き回っているリムルさん達を巻き込んでしまいそうだ。

 と、足踏みをしている間にイフリートが分裂する。

 

「水氷大魔槍!」

 

 五体程現れた分裂体の内の一つを、エレンが生み出した魔法が貫いて消し去った。

 それを見たリムルさんは、続けて出したエレンの魔法を捕食した。

 

 よし、このタイミングであれば手伝えるかな!

 

「『ダーク・インプロージョン』『イヴィル・スマイト』」

 

 生み出した小規模なブラックホールのような空間の歪みが分裂体の一体を、手のひらから放たれた黒い衝撃波がもう一体を消し去った。

 イフリート本体へ放つには、ボクの魔法は火力が高過ぎるかもしれない。もしそうであった場合、依代であるシズさんごと殺してしまうだろう。

 

「なにそれぇ!」

 

 驚きの声を上げるエレンと、アレンジした魔法を放って残りの分裂体を消し去るリムルさん。

 

「残りはテメーだけだ、イフリート」

 

 そう宣言したリムルさんだったが「炎化爆獄陣」とやらに囚われて焼き尽くされ……無かった。

 炎は効かないらしいリムルさんは、吐き出した糸でイフリートを捕らえ、そして包み込むようにイフリートを捕食した。

 

 

 

 思ったより、大した事の無い相手だったな……。最強の精霊使役者としてなら、もっと強かったのだろうか?

 相当に強い精霊のようにカバル達は言っていたが、これは相手が悪かっただけなのだろうか?

 

 ともあれ、上手い事イフリートだけを捕食したらしく、シズさんも無事に救われてハッピーエンド……とは、ならないのだろう。

 話をしていたシズさんの雰囲気は、自らの死期を悟った生物特有の穏やかさを持っていた。

 察してはいた。そもそも空襲の時代からの来訪者ならば、決して若くはないだろう。寿命を迎えてもおかしくは無い。

 

 ありがとうと、途切れ途切れではあったが確かに彼女は告げていた。そして世界は眠りへと落ちる。

 

 

 

 

 

 

 不思議な感覚だった。

 

 浮いているようで、しっかりと地に足ついているような。

 

 炎だ。

 

 世界を埋めるのは、轟々と燃え上がる炎。

 

「辛い事ばかりだった」

 

 呟くのは、火傷を負った黒髪の少女。

 

「炎は呪いだった」

 

 彼女の手には、元が何かも分からない炭化した物体。

 

「良い出会いもあった」

 

 炎の中に浮かび上がる、一幕の幸せの光景。

 

「憎くて憎くて、でも恨む事も出来ない」

 

 炎が燃やすのは何なのか。世界を燃やさんと猛る炎は、しかしこの小さな箱庭に抑え込まれているようで。

 

 少女は涙を流すが、炎がそれを蒸発させてしまう。

 

「……ボクは語れる言葉をあまり持たないけれど」

 

 向き直る。少女へと。

 

「一度死を迎えた先達として、それでも言わせて貰おうか」

 

 少女の火傷の痕を撫でて、しっかりと彼女の目を見詰める。

 

「貴方が生きた人生は、苦難の連続で辛くて苦しいモノだったのかもしれないけれど……」

 

 どうしてこんな所にいるのか、何故会話の機会を得たのかは知らないが。言葉は告げられる時に告げるしかない。

 

「それでも貴方は生き抜いた。生き抜いてみせたんだ」

 

 途中で挫折することも無く、夢半ばで倒れる訳でも無い。生きていれば心残りなんて無限にあるものだ。彼女の人生は、やり遂げたモノなんだと声を大にして言いたい。

 

 だからこそ告げるのだ。

 

「胸を張っていい、誇りに思っていい。ボクや彼には到底出来なかった事を、貴方は確かに成し遂げたんだ」

 

 女性の瞳は驚きに開かれて、そして一筋の涙が流れ出た。その一雫は、炎の熱などまるで感じていないように零れ落ちた。

 

「……ありがとう。誰かに認めて貰えるのは、やっぱり嬉しいね」

 

 女性は満ち足りた笑顔を浮かべ、そして世界は燃え上がる。迸る業火は彼女の世界を焼き尽くした。

 

 

 

 シズさんがイフリートから解放されて一週間後、彼女はリムルさんに捕食される形で息を引き取った。




呪術廻戦で言う空港。
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