転生したらホムンクルスだった件   作:見て見て、アッハが笑ってるよ!可愛いね

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修羅の生き様桶狭間

 

 

 

 人間を捕食したリムルさんは、彼にとって待望の人間の姿を手に入れた。

 八歳程度の少女が素っ裸でいたのを見た時、自らが転生して来た時の事を思い出して可哀想に思ったので、蜘蛛糸で作った布を被せてあげた。

 その時のリムルさんの姿は、まるで干したてのシーツで遊ぶ様な無邪気な少女……等では無かったが、今までの自分がどう見えていたのかを客観視する事が出来た。うーん、やっぱり不審者。

 

「なんか、人間への擬態はスムーズに出来るんだよな。元が人間だからかな?」

 

「スライムの擬態については知らないけど、変化速度に個体差があるのか……イメージのしやすさとかでは無いかな?」

 

 ボクが擬態をする場合、それを念じるだけで数秒も掛からずに変化する。人間態へ戻る時も同様で、そこに時間差などは感じられなかった。

 これは予め決められた形だからこその変化速度であり、もしかしたらスライムの場合は頭の中の情報から脳内で姿形のイメージを作り上げ、それに沿って身体を変化させているのかもしれない。

 その場合、元は人間であったのだから人間の設計図はノータイムで用意出来るが、知識に無い種族なら構成情報から設計図を作り上げる手間が掛かるのかもしれない。

 

「なるほどな……まぁ擬態に関してはそんなに使ってないし、やっぱりメインで使うのは人間の姿だろうから、気にしなくてもいいか」

 

「自分の能力への理解をそこそこに出来る胆力は素直に賞賛するよ」

 

 リムルさんに関して面白いのは、人間に擬態していても名付けをした魔物達からは正しく認識されていたという事だ。やはり使役と同じ様に、主と眷属の間に繋がりが生まれているのだろう。ドワーフ四人組はリムルさんを見て誰だか分からず慌てふためいていた。

 

 かく言うボクも、幼いシズさんと言った見た目の裸の少女を見た時には驚いたが。

 

「俺には『大賢者』がついてるからな」

 

「ああ、そう言えば言ってたねそんな事」

 

 リムルさんの持ついくつかのスキルの内の一つである『大賢者』は、何でも頼りになる先生で聞いたら大体の事を答えてくれるらしい。Wikipediaとか百科事典かな? ともあれ、その大変使い勝手の良いユニークスキルに自身のスキルなどの管理を任せているらしい。

 信頼と取るべきか、怠慢と取るべきか。けれどそれは紛れもなくリムルさんの持つ能力の一つなので、上手く活用して無駄なタスクを減らしていると言うべきだろう。

 

「ともかくおめでとう、これでリムルさんは人間の感覚を手に入れた訳だね」

 

 この集落に来てから、事ある毎に「美味いか?」と尋ねられてきた。飲まず食わずでも生きていける生命体であっても、元は人間だったから食事……と言うよりは美味いものを食べる事が羨ましかったのだろう。

 

「人間の感覚……? そうか、つまり!」

 

 こうしちゃ居られない、と走り出したリムルさんの後ろ姿を眺めながら「今気付いたのか……」と思わず溜め息を吐いた。

 

「シズさんの遺してくれた贈り物なんだから、ちゃんと使ってあげなよ」

 

 

 

 自分の持っているスキルと経験値、そして現在解放出来るスキル達を確認している最中の事だった。

 

<ボス、森の中で荒ぶる魔素を確認しました。このまま行けばゴブリンの警備隊とかち合うかと思われます>

 

 思念伝達によって、配下の女王アリから報告が飛んできた。

 

<荒ぶる魔素? 力量はどの程度か判別出来るかい?>

 

<……ゴブリン警備隊及び嵐牙狼族よりは強力かと>

 

<なるほど、強敵だね……他の配下は近付けないように。現場にはボクが向かう>

 

<ご武運を>

 

 仮にも世話になっている相手だ。怪我をさせるのも偲びない。それに力量が高い相手なら、有効な使用方法はいくらでも思い付く。実際に対面してみないと何とも言えないが、計画をいくつか進められそうだ。

 

 自らを女王アリの元へと『召喚』すれば、周辺にいたアリ達が一斉に頭を垂れた。

 

「衝突予定地点はこの先かな?」

 

<はい、どうやらたった今ぶつかったようです>

 

「なるほど、時間が惜しいね。君達は戦闘に巻き込まれないように退避して、それから今まで通り警戒と探索を続けてくれ」

 

<畏まりました>

 

 ローブのフードで顔を隠し、全速力でその地点へと向かう。最後に全力で走ったのは大蜘蛛との追いかけっこだったか、そこまで昔でも無いがあの頃と比べてもステータスは上げてあるし、更に言えばブーツを手に入れた事によって何も気にする事無く走れるようになった。

 

 そうして走って行けば、何か鉄がぶつかる様な戦闘音。開けた視界には、殆ど倒れ伏したゴブリン達。ランガと確かリグルとゴブタと言う名のゴブリンが、和風な装いの人間らしき者達と戦闘を繰り広げていた。

 

《抵抗に成功しました》

 

 システムメッセージ!? 何らかの干渉を受けたのか! 精神魔法かデバフか、何かの影響を受けた事だけは間違いない。状況的に、近接戦闘を得意としてそうな四人と、守られる様に後方に控えている一人とあれば、後衛が魔法使いだろう。

 

「『防御結界』」

 

 刀で斬られそうになったリグルの前へ結界を作り出し、白い老人の一太刀を受け止める。

 

「新手か!」

 

 赤い男が気付いたようにこちらへ振り向いた。人間のような見た目はしているが、額から角が生えている辺り鬼か何かだろう。あれも魔物に分類……はされるのだろうな、配下が魔素を検知していたし。

 

「セプテムさん! 助かりました」

 

「感謝はいいよ、それより状況は?」

 

 彼等を庇う様に前に立ちながら聞いてみれば、どうやら倒れたゴブリン達は眠らされた様子。となれば魔法使いは睡眠系の状態異常へと陥らせたのだろう。あの時抵抗したのも恐らくそれだ。

 

「倒れたゴブリン達を回収しておいて。下手したら巻き込んで―――」

 

 どうやらこの鬼達は戦い慣れているようだ。目の前で悠長に会話している隙を逃さず、青い鬼と黒い鬼が挟む様に攻撃を仕掛けてきた。

 

「『解放:糸』」

 

 部分擬態によって指先から糸を作り出し、黒い鬼を糸で縛り上げ青い鬼へとぶつける。なるほど、人間ほどの質量があればモーニングスターとしてもかなりの武器に出来そうだ。

 そして今の一合で判明したが、上がっているAGIのお陰かボクの戦闘スピードには白い老人以外はついて来れなそうだ。

 

 逆に言えば、あの老人相手には気が抜けない。隙を見せれば一手で命を刈り取られる事も大いに有り得る。

 

「まぁ制圧するだけなら簡単だけどね……『自し―――っぶな!」

 

 魔法を使う隙を、与えてくれすらしない。急に前方に現れた老人の神速の一閃が、あわやボクの首を捉えるところだった。仰け反ることで辛うじて躱し、適当に放った前蹴りはしっかりと防がれつつも距離だけは稼げた。

 

 恐らくは『縮地』と剣技の合わせ技。使い勝手の良いコンボも、使われれば困ると言う実体験。

 

 あの老人がいるだけで、こちらの対応は常に後手だ。精神魔法で制圧をする為にはその隙を作り出す必要があり、それをするには老人を抑える必要がある。

 何かをすると、見せれば先の先で潰される。であるならば、何かをすると見せかけなければ良い。

 

「『力よ』『魔よ』『疾く』『恐れよ』これぞ我が『肉体』の『業よ』」

 

 呟く程度のモノに、彼等は訝しむだけだ。恐らく彼等の常識に強化魔法は存在しないか、あるとしても使い手が少ないか使い勝手が悪いモノだ。冒険者のエレンは後衛の魔法使いでありながら、味方への支援などはしていなく、鬼の後衛も同様だ。

 

 知らなければ、対処は不可能。

 

「さて、捻り潰してあげよう。かかって来るが良い」

 

 肉体に湧き上がる快感。上昇したステータスによって一種の興奮状態になったボクは、指先を動かす事で挑発を行う。

 

 紫の鬼が金棒を振りかぶり、赤い鬼が叫びながら突撃、白い老人は再び姿をくらませた。見える、感じる、分かる、対応出来る。高INTによって爆上げされたステータスが、己の活路を容易に切り開く。

 

 金棒を素手で受け流して紫の鬼の顔を掴み、刀を振りかぶる赤い鬼へと投げつける。背後から首を撥ねんと抜刀する老人の肘を押さえ付け行動を阻害する。

 

「『自失』」

 

 そして最後に精神魔法を発動すると、その場にいた全員が支えを失った様に崩れ落ちた―――そう、全員が。

 

「あ……」

 

 リムルさんの配下達も効果範囲内に居たのだから、当然影響を受けるだろう。やってしまったか、と青ざめるがどうやら無事だったゴブリン二人とランガは、辛うじて堪えているようだった。

 

 その時、ある意味最悪のタイミングでリムルさんが駆けつけた。彼は辺りを見渡してから、近くで震える子鹿のようになっているリグルへと駆け寄った。

 

「状況を説明してくれリグル、警備隊に何があった」

 

「面目ありません……強力な妖気を感じて警戒をしていたのですが、オーガに出くわして……」

 

「主よ……申し訳ありません、我がいながらこのような……」

 

 こちらこそ正に産まれたての子鹿のようなランガが、面目ないと耳と尻尾を垂れ下げていた。

 

「あー……えっと、申し訳ない。簡単に制圧する為に精神魔法を使ったんだけど、効果範囲内に皆いてね」

 

 彼等とは何の繋がりも無く、自分の配下でも無い。であるのなら、巻き込んでしまう事は想像に容易かった。にも関わらず、安直に精神魔法での制圧を試みたのはやはり鬼達が強力な個体だったからだ。

 出来るならば無傷で屈服させたい。そう欲をかいたからの結末だ。勿論下手な加減は出来ないので、しっかりと戦っていれば一人二人は殺してしまっただろうが。

 

「仮面の……魔人! おのれ……かなわずとも、一矢でも報いさせてもらうぞ……!」

 

 精神魔法の効果時間は基本短く、数秒もすれば効力は失う。しかし与えた影響は現実で考えれば早々に抜けるものでは無い。にも関わらず、地べたに伏しながらも立ち上がろうと力を込める赤鬼は、相当な精神力を持っているようだ。

 

「……まぁ、話を聞いてみるしかないな」

 

 どうやらフレンドリーファイアに関しては不問にして貰えそうなので、後ろに下がって成り行きを見届ける。眠らされているゴブリンとテンペストウルフ達については、サービスで『解毒』をかけておいた。あらゆる毒状態を解除すると言う大変イカれたスキルである『解毒』はこの世界でも大活躍だ。

 

 麻痺毒に神経毒など、毒と一口に言ってもその種類は多岐に渡る。対象にとっての毒であると判定されるのならば、それを回復させてしまえるようだ。強制的に相手を眠らせるという魔法も、睡眠毒であると判定されたらしい。

 

 自失状態から回復して立ち上がろうとしつつある鬼達ではあったが、次第に殺伐とした空気が霧散していく。どうやらリムルさんは上手い事話をつけたらしい。彼等にも何かしらの事情があったようだし、恐らく戦闘を仕掛けてきたのも彼等だったから、その鬼達が矛を収めれば戦闘も終了となるだろう。

 

「よし、じゃあ全員で町に戻るか」




用語解説コーナー

『自失』―――精神魔法の一つ。大体『使役』を使う為の前準備で使われる。

『解毒』―――その名の通り毒状態を解除するスキル。神経毒や麻痺毒等の、様々な毒状態を解除出来るイカレスキルだけど、黄金の経験値において殆ど毒状態が出てこないのでその有用性が発揮された事はほぼ無い。疫病が強過ぎた。
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