転生したらホムンクルスだった件   作:見て見て、アッハが笑ってるよ!可愛いね

7 / 13
鬼人の貴人(激うまギャグ)

 

 

 

「オークがオーガに仕掛けただって!? んな馬鹿な!」

 

「事実だ。武装した豚共数千の襲撃を受け里は蹂躙されつくされた。三百いた同胞は、もうたったの六人しかいない」

 

「信じられん……有り得るのか、そんな事が」

 

 リムルさんの歓待を受けて集落へとやって来たオーガと言う種族の者達。リムルさんが味覚を得た事へのお祝いとして開かれている盛大なお祭りの最中に、端の方で情報共有が現在行われていた。

 

 なるほど、命からがら逃げ出した状況だったのか。となれば、好戦的で話を聞く余裕も無かったのに頷ける。ボクが制圧した後ですら、リムルさんの話に最初は耳を傾けようともしなかった。

 危険の可能性を考えずに、なりふり構わぬ姿は賢いとは言えないが、追い詰められた状況だったのなら思考の余裕すら無かったのだろう。

 

「そんなにおかしい事なんすか?」

 

 と、カイジンやリグルド達集落の首脳部とも言える者達とオーガ達との会話に、ゴブタが入ってきて疑問を呈する。

 

「当然だ、オーガとオークじゃ強さのケタが違う。格下のオークが仕掛けること自体有り得んし、ましてや全滅させるなど―――」

 

「―――全滅では無い、まだ俺達がいる」

 

 壊滅ではあるけどね、とは流石に言わない。

 

「なるほど、そりゃ悔しいワケだ」

 

「肉はもういいのか? リムル殿」

 

 ちょっと食休み、と串を爪楊枝のように使いながら現れたリムルさん。どうやら人間の味覚を手に入れて大層食事を楽しめたようだ。リムルさんよりも、彼の配下の方が喜び様は凄かったが。

 

 本題に入る前のアイスブレイクとして、魔法を使っていた桃色のオーガなどを話してから、彼等の今後の方針について尋ねる。

 ただ、逃げ延びて来ただけの彼等にそこまで考える余裕も無く、力を蓄え報復を行うと言う何ともずさんな計画を語られた。

 

「提案なんだけどさ、お前達全員俺の部下になる気はあるか? ま、俺が支払うのは衣食住の保証のみだけどな。拠点があった方がいいだろ?」

 

 彼がゴブリン達にここまで心酔されている理由がこれだろう、と聞いていて思う。恐らくはポンポンと名付け出来るのも理由にはあるのだろうが、それでも彼のこれはあくまでも善意から来る提案だ。

 

「しかしそれでは、この町を俺達の復讐に巻き込むことに」

 

「まぁ別に、お前達の為だけって訳じゃない。数千の、しかも武装したオークが攻めて来たんだって? そりゃどう考えても異常事態だ。この町だって決して安全とは言えないだろうな。そんな訳で、戦力は多い方がこちらとしても都合が良い」

 

「……なるほど」

 

 しかし、この大森林とも呼べる規模の中に、数千もの武装したオークの集団がいるのか。武装しているなら裸のおっさん姿では無いだろう事に安堵出来るが、それほどの大群がいるのなら配下達の警戒網に入っていても不思議では無い。

 

 思念伝達の効率も考えて、そろそろ配下に名前を付けて上げる必要があるかもしれない……ネーミングセンス無いんだけどなぁ。

 

「……悪いが少し考えさせてくれ」

 

 そう告げて、リーダー格の赤オーガはこの場を離れていった。

 

「……もう少し、気持ちを汲んでやるべきだったかな?」

 

 頬を掻きながらリムルさんが呟いた。

 

「気持ちはどうであれ、彼等にとって時間は敵だよ。選択に常に迫られて生きていて、たまたまこの時に選択を突き付けられただけだ」

 

「……セプテムさん」

 

「本来は、彼等に選択の余地は無い。でもそれを与えたのはリムルさんなんだから、後は彼等の気持ちに応えてあげるしか無いんじゃないかな」

 

 例えどちらの選択を選んだとしても。彼等に選べるのは実質一択で、リムルさんの手を取らなければ待ち受けるのは死地だ。

 

「聞いてたんだな」

 

「さっきからずっと居たよ」

 

 光魔法の迷彩で姿を隠していたから誰も気付かなかったらしい。最近知ったのだが、魔物に分類される者達は妖気とやらを常に纏っていて、それが相手の強さの判断基準となるとか。しかしボクはそれを持っていなく、さらに姿も隠したとあれば存在を隠蔽出来るようだ。

 

 保有魔素量がどうたらと最初の頃言われたが、あの時は多分いつでも戦闘態勢に移行出来るようにしていたから、それで見抜かれたのだろう。

 

「一応あいつらを助けてくれたんだろ? ありがとな」

 

「巻き込んじゃったからプラマイゼロだと思うけどね」

 

 どうやらゴブリンライダーの彼等とランガには、そこまで気にされていないらしく怒られずに済んだ。それどころかあの程度で膝をついてしまうなど、と申し訳なく思っていたそうだ。

 

 そうしてリムルさんは食事へと戻り、飲めや踊れやのお祭り騒ぎは長い事続いていった。

 

 

 

 翌朝、リムルさんの家へとオーガ達六人が召集され、少しの間を置いて「リムル様!?」との慌ただしい声が聞こえてきた。

 どうやら六人のオーガへ名付けを行ったリムルさんはスライムの姿を保てない程に疲弊したらしく、地面に落としたトマトのような姿へと変貌していた。

 前回のゴブリン五百への名付けと、同等の事がこの六人で行われたのだろう。

 

 慌てる彼等に対して、ゴブリンキングとやらのリグルドさんと一緒にリムルさんの眠りについて説明をした。その後すぐに彼等も眠りへと落ちた。

 前回の流れを思い返すに、このオーガ達も進化を果たすのだろう。魔物の進化条件緩すぎないか?

 その翌日、鬼人へと進化した元オーガ達は目を覚まし、女性二人が眠りこけるリムルさんの面倒を見て、他の四人が町を見て回るようだ。

 

「お前は……」

 

 そうして出歩いていたらしい鬼人四人と、ボクは偶々出くわした。

 

「やあ、昨日も会ったね。無事に進化したようで良かったじゃないか、随分と強そうになった」

 

 昨日までの暴力性を押し出した見た目と違って、より人間へと近付いたようだった。強さがどの程度変化したのかは感じ取れる手段を持ってないので分からないが『真眼』で見た限り、生命力はかなりのモノだった。

 今日解放したばかりのスキルなので、進化前と比較する事は出来ないけれど。

 

「今ならお前にも勝てるかもしれない」

 

「おお、随分と強気な発言だ。余程一昨日の負けが堪えたと見える」

 

 しかし、羨ましいなリムルさんは。恐らくこの森の中でも上位の強さを誇るオーガを全員配下にしてしまえるなんて。素直に言えば、一人か二人くらいボクも欲しかった。

 まぁ、ボクの配下とした場合進化などはしなかっただろうから鬼人の彼等からしても、リムルさんの配下になれて良かったのだろう。

 

「なんなら今すぐにでもリベンジをさせてもらうが」

 

 赤鬼は闘志に溢れた表情をしている。恐らくは進化した肉体の性能を確かめたいのかもしれないが、下手にリムルさんの配下を傷つけるワケにもいかないだろう。

 

「近いうち、訓練として手合わせをしようじゃないか。ボクとしても近接戦闘の経験は積んでおきたいしね」

 

 ビルドはあくまでも魔法主体だが、ボクの魔法はそれぞれにリキャストタイムが発生し、魔法のリキャストタイムが残っている状態で別の魔法を扱えば、その分が上乗せされる形となる。本来想定される魔法使いの立ち回りがボクには出来ない以上、近接戦闘なり魔法以外の遠距離攻撃なりを出来るようにしなければならない。

 前世の経験から、肉弾戦闘は出来るだろう。しかしそれは、あくまでも前世の経験でしかない。

 

「あんたは名前を持っているのか?」

 

「セプテム、と名乗ってはいるよ。名無しだけどね」

 

 果たして名付けが自分に適応されるのか、それについては分からないが自らの名前を持っていない事だけは確かだ。

 

「覚えておこう。俺はリムル様よりベニマルの名を与えられた」

 

 元オーガの若様はベニマル、青鬼がソウエイ、黒鬼がクロベエ、白い老人がハクロウと、それぞれ名付けられたらしい。

 

「一つ聞いてみたかったんだけど、名前を与えられるのは嬉しいものなのかい?」

 

「自らが認める相応しい主に与えられたのなら、光栄以外の何物でもない。それに主との繋がりを得て、その存在を確かに感じられると言うのは存外悪くない」

 

「なるほど、参考にさせてもらうよ」

 

 しかし、ベニマルはオーガの里の族長の息子的な立ち位置だったのか。今では鬼人となったから、鬼人の貴人という事に。

 

 んふっ、と誰かの笑いを堪えるような声が聞こえた気がした。

 

 

 

 その二日後、リムルさんは目を覚ました。彼の采配の下鬼人達もそれぞれの仕事を得る事になった。

 シュナと名付けられた桃色の鬼人は服飾関係に、シオンと名付けられた紫の鬼人はリムルさんの秘書に、ソウエイは諜報活動でクロベエが武器制作、そしてハクロウが剣術指南役と。若様ことベニマルについては何をしてるのかボクには分からなかった。多分参謀本部のお偉いさんみたいな感じだろう、知らないけど。

 

 ゴブタを始めとしたゴブリンライダー達と、ベニマルとリムルさんはハクロウの下で修行を開始した。と言ってもベニマルは元々彼の弟子だったとかで、ハクロウの生徒が途端に爆増したとも言える。

 近接戦闘能力を磨きたいとは常々思っていたので、ボクも参加させてもらった。

 

「ご鞭撻の程、よろしくお願いします」

 

「ほほほ、武器は持たなくて宜しいのですかな?」

 

「まぁ、これが一番慣れてるので」

 

 そのうち『魔の剣』を解放出来れば、刃のついた武器を創造出来るようになるが、少なくとも今は拳で行きたい気分だ。

 

「『疾く』」

 

 キーワードを変更した『AGI強化』を使い、自身の体感速度と身体操作速度を向上させる。

 ふぅと息を吐いて脱力、身体を沈み込ませてから一気に全身。ただでさえ武芸において圧倒的な強者であったハクロウは、鬼人へ進化して恐らくはその身体能力も大いに向上した事だろう。迎撃するように振るわれる木刀をスレスレで避け、右の拳を腰において踏み込みを―――

 

「―――っぶね」

 

 兜割りをせんと迫っていた木刀に左手を添えて受け流し、改めて踏み込むが既に拳の間合いからハクロウは離れていた。

 

「……手加減されてこれかぁ」

 

 多分、本気なら三回くらいは殺されていたのでは無いだろうか? 確証は無いが野性的な直感がそう告げていた。

 

「手加減はお互い様では無いですかな? 何故無策で突っ込んで来たので?」

 

「ちょっと、死にかける程度の絶望が欲しくてね」

 

 武器は弱いと誰かが言っていた。剣、刀、槍、斧、弓に銃。刃物には刃渡りと言う絶対的な、銃や弓には射線という明確なキルスペースが存在する。

 全ては間合い。間合いを管理し、間合いを制した者が戦いに勝利するのだと。

 

 まぁ普通に考えればそれぞれの武器使い達は如何に間合いを詰められないか、逆に間合いを詰めるのかを研究し、技として引き継がれているのだから弱い筈は無いのだが。

 大体どの武器もゼロ距離には絶死の一撃を放てない―――まぁ銃はゼロ距離でも多分強いけど―――ので、拳は間合いさえ潰せれば最強になる筈なのだ。普通に武器使いながらゼロ距離なら拳使えばいいと思うけど。

 

「宜しい。では存分に叩きのめして上げましょう」

 

 まるでオーガだった時の意趣返しとでも言う様に、徹底的にボクは叩きのめされた。せめて縮地を使っていればもう少し勝負になったのだと、心の中で負け惜しみを言っておいた。いや負けてないが?




鼻水が止まらなくて用語解説は大変なので触れる程度に。
強化魔法は簡単に言えばステータスへのバフを掛ける魔法で、STRやVITにDEX,AGIなんかがあります。
今回使われたAGI、つまりアジリティは移動速度や思考速度等にかかるモノで、これが上がれば上がるだけ物理法則を無視して行動の高速化が行えます。神経伝達速度どうなってんだろってのはファンタジー作品に言っちゃいけないか
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。