転生したらホムンクルスだった件   作:見て見て、アッハが笑ってるよ!可愛いね

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セプテム(自称)のわくわく実験教室

 

 

 

 ボクが経験値を入手する方法は二種類ある。一つは自らが戦闘や訓練、制作や調理などを行う事。戦闘であれば、相手の強さに応じて貰える量は変わり、格上を倒せればそれだけ多く貰えるが弱ければ弱い程貰えなくなる。訓練や調理では微々たるものであり、制作するならその難易度に応じて変わる。

 もう一つの方法は、配下からの徴収だ。このシステムにおける主従関係において、全ての経験値は主の物となり、配下は働きなどに応じて強化などの恩恵を受ける。本来は、眷属となる事で主が無事な限りは不死となれるのだが、その恩恵は消え去っている。あくまでもこの適応がボクだけのものであり、生きている法則が違うこの世界の人間や魔物には適応されないのだろうと考えているが、詳しい事は分かっていない。

 

 この世界に来てから今日まで、ボクは自重しつつも魔物達を『使役』し続けて来た。種族などによって下した命令は違うけれど、森の中で活動するにあたって魔物達は戦闘は避けられない。ボクの持つ『眷属強化』などの恩恵もあって普通よりは強い配下達は、毎日のようにボクへと経験値を貢いでくれる。

 

 ある程度、経験値が溜まった。溜まったから、やりたい事が出来る。

 

 今回解放したのは『錬金』のスキルツリーだ。解放する為の前提条件を満たし、ついに現れた『錬金』は、有力なアイテムを作る事も配下を強化する事も可能の超有能スキル。

 一番作りたい『賢者の石』に関しては、残念ながらまだ素材集めの目処が立っていないので断念するが……作れるものは他にもある。

 

 

 

「それで、一体何をするんだ?」

 

 アルビニズムによって外では常にローブ等で肌を隠さなければならないボクの為に、比較的優先して建ててくれた我が家には、リムルさんとカイジンさん、シュナさんが集まっていた。大盛況である。

 

「どうしてこんなに集まったんだろうか……まぁ、良いけどね。錬金出来るようになったから、何を作れるのか実験しようと思ってね」

 

「おお、錬金術!」

 

「うん、多分想像してるのとは違うね」

 

 パン! と手を合わせるリムルさん、何を言いたいのかは大体分かってしまうのはそれだけ有名作だからだろうか。

 

「んで、嬢ちゃんは何を作ろうとしてんだ?」

 

「そうだね、一応作っておきたいのは一つあってね……ゴーレムなんだけど」

 

「ゴーレムだぁ?」

 

 『錬金』スキルツリーにある『大いなる業』で作れる物は、基本的にレシピが存在する。必要となる素材を見た事があればレシピの空欄を埋める事が出来るので、そうやって一つずつ作成可能な物を増やしていくのだろう。

 しかし原作において、ホムンクルスは『大いなる業』で作れても、ゴーレムについては言及されていなかった。

 ホムンクルスが作れるのならそれはそれで検証も出来るのでいいのだが、判明している素材は製作者の血液と魂と魔物の心臓しかなく、後何が必要なのかは解明されぬままアーティファクトで補完して作り出されていた。

 しかし、リビングアーマーやらホムンクルスが作れてゴーレムが作れないなんて、そんな話は無いだろう。遺跡にゴーレム自動生成機のようなアーティファクトもあったのだから尚更に。

 

「ゴーレムっつったらお前さん、精霊工学でも修めてんのか?」

 

「精霊工学? それについては知らないけれど、ボクがこれからするのはそう言った必要前提条件を全て無視して行う力技かな」

 

「んなもんどうやって……」

 

 さて、オーディエンスも大分温まってきたようなのでそろそろ始めようか。

 

「『哲学者の卵』」

 

 ゴッソリとMPを持っていかれ、巨大な水晶のような卵が目の前に現れる。説明によればこれはフラスコらしいが、中が空洞かどうかは一見しただけでは分からない。

 今回作ろうと試みるゴーレムは『大いなる業』のレシピには載っていないので、独力で探し当てる必要がある……もっとも、既に目星はついているが。

 

「大分魔素持ってかれたみたいだけど大丈夫か?」

 

「思ってた以上だったけど、まぁ大丈夫かな……それよりリムルさん、話していたマジカルな鉱石については心当たりあるのかな?」

 

 今回の実験に、オーディエンスが現れてしまった理由。話をしたリムルさんからボクが何かするらしいと広まってしまったのだ。

 

「ああ、これでどうだ?」

 

 突然リムルさんの手に現れた水晶のような鉱石。彼もボクの『インベントリ』と同じような収納系の能力を持っているようだ。

 後回しで良いだろうと思って『鑑定』は解放していないので、この物質について詳しくは分からないが……有識者が来ているのだ、聞いてみるべきだろう。

 

「この鉱石は?」

 

「こいつは魔鉱石って言ってな……」

 

 と、恐らく一番知識人のカイジンさんが説明をしてくれる。どうやら高濃度の魔素に晒される事で変質した鉱石で、鉄鋼より硬く柔軟な金属の素材となり、魔法との相性が良いらしい。なるほど、ミスリル的な立ち位置なのだろうか。

 手渡された魔鉱石を卵へと近付けると、卵の一部が変形し穴を生じさせて魔鉱石を飲み込んだ。どうやら正しく素材として認識されるようで、まずは第一段階突破と言えるだろう。

 

「さて、ここからか……」

 

 ホムンクルスの製造に魔物の心臓が必要だった理由は、恐らく肉体を作る為だろう。ホムンクルスは人体と作り自体は変わらないので、核となる心臓が必要だった。そして製作者の血液は文字通り血となり魂は中身だ。であるならば、後は肉体を構成する為の何かが必要だったのだろう。

 その推測に照らし合わせれば、ゴーレムの核となるのは今の鉱石で良いだろう。彼等は魔法生物的な存在ではあるが、リビングメイル等のように自我は希薄。怨念で作られるあれらから考えても魂は不要だろう。

 

「取り敢えずかさ増しとして土砂を入れるか」

 

 『インベントリ』から、開拓の時に押し込まれて使う事の無かった土砂を大量に注ぎ込む。なるべく岩石を多めにしておいたが、砂も岩も弾かれずに済んだので大丈夫だろう。

 このままでも行けそうだと直感したので、最後に一手間加えておく。

 

「何を―――」

 

 取り出した刃物を自らの手首に突き立てて、それを引き抜いた。シュナさんが焦った様な表情をしているが構わずに、流れ出る血液も卵へと注ぎ込む。

 

「あくまでも実験だし、これで行ってみようか……『アタノール』」

 

 宙に浮かぶ卵の下に、黄金のランプが現れる。その炎が揺らきながら卵を熱し始めた。少しの時間で、卵の中身が虹色に溶けてぐるぐると渦を巻く。

 

「一応は何か出来るみたいだね……『大いなる業』!」

 

 自分の残りMPが絞りカスになるほど持っていかれ、卵が金色の光を放つ。眩い光は数秒で消え、卵が独りでに割れる。

 

「……これは」

 

 中から出てきたのは、岩のような物だった。注ぎ込んだ土石の量からしたら、圧倒的に小さい岩。

 その岩は両手両足を持っていて、立ち上がってはバランスを崩して座り込んだ。

 

「成功したのか?」

 

 興味深そうに覗いてくる三人だったが、一見しては成功か失敗か分からないだろう。

 

「そうかもしれない……『ちょっと』待ってね」

 

 発動キーワードを変更しておいた『使役』を用いて、ゴーレム(仮)を配下へと加える。

 内容を確認すれば、表示されている種族名は『マナ・ゴーレム』となっており、一応はゴーレム作成に成功したらしい。

 

「うん、成功みたいだ……折角の一人目だし、このまま名付けを試してみたいところなんだけど……」

 

「やめとけ、マジで死ぬぞ」

 

「おやめ下さい。名付けは危険な行為です」

 

「もうろくに魔素も残っちゃいねぇんだろ? 悪い事は言わねぇから別の日にしときな」

 

「……まぁ、止められるよね」

 

 どうやら魔素とは、魔物の存在維持の為にも必要らしい。この身にもその法則が適応されるのかは不明だが、わざわざ試してみる事でも無いだろう。

 

「という事だ。明日にでも回復したら名付けをしてあげるから、それまでは待っていてくれ」

 

 まるで返事をするように、マナ・ゴーレムは右腕を上げた。

 

 

 

 どう言う意図で彼等が集まったのかは邪推となってしまうので置いておくが、シュナと名付けられた桃色の鬼人がこちらを心配するような発言は意外だった。

 第一印象が最悪とも言える出会いだったので、ベニマルと同じ様に敵意を向けてきても不思議では無かったので思う所は無いのかと確認してみたところ、彼女は「警備隊の方々へ先に手を出したのはこちらなので、仕方無かったと思います」と言って微笑んだ。

 京言葉的裏側真っ黒表現かとも訝しんだが、彼女にとっては酷い怪我とかを負わされた訳でも無く、さらに手加減されていたのだから何かを言うつもりも無いようだった。兄貴と比べて随分大人な事だ。

 

「……さて、みんないなくなったか」

 

 『真眼』に映る生命力は無い。現時点での唯一の索敵方法なので、もし生命反応を誰かが消す事が出来た場合はどうしようも無い。

 先程『使役』してみて、ボクはあったら嬉しいな程度の期待しかしていなかった望みを叶えられた事を理解した。

 

「あくまでも素材として使ったのはこの世界の物だけど……」

 

 『使役』した配下は経験値の獲得を出来なくなる。それは主へと献上されるからであり、経験値を得られなければ自分の強化を行えない。その代わり主は活躍の度合い等によって配下へと経験値を与え、主が配下を強化したり配下が自分で自分を強化したりする。

 重要なのは、配下の強化を主が出来る点だ。スキルを獲得するにはスキルツリーを、基礎能力を上げるならステータスを見る必要があり、主は配下とした者のそれらを確認し必要分だけ強化出来るのだ。

 

「この世界には存在しない種族だったからか、ボクの血を与えたからか、その両方か……」

 

 今までこの世界で『使役』してきた配下達は、みんなスキルツリーに関しては弄ることが出来なかった。彼等が獲得したこの世界のスキルが表示されるだけで、新たに何かを取得させたりする事は不可能だった。

 しかし、先程生み出したマナ・ゴーレムにはスキルツリーが存在していた。解放されているスキルは無く、種族特性は与えられた経験値に応じて身体が大きくなるというもの。

 この特性もそうだが、スキルツリーが存在するという事はボクと同じ法則が適応されていると言えるだろう。言ってしまえば、この世界における異物。かの黄金龍と同じ様に世界の侵略者と判断されてもおかしくは無い。

 

「けど、あの世界の法則が適応されていて、且つボクの配下であるのなら……君は、死んでもリスポーン出来るのかな?」

 

 ゴーレムとして相性の善し悪しはあれど、自分と同じ様に自由に育成出来る存在であり、もしかしたらボクが死なない限り一定時間で復活出来る眷属が生まれてしまったワケだ。

 まぁ、流石にゴーレムをガチ育成するつもりは無いのだが……。

 

「……もしかして」

 

 ホムンクルスであるボクの、本来とは違う特性として、配下に擬態する事が可能である。それは全体だけの話ではなく、部分的にも適応可能であり、例えば指先だけに蜘蛛の擬態をさせれば蜘蛛糸を指先から作り出せる。

 同じ様に鳥の羽を、ムカデの甲殻を、蝙蝠の声帯を、好きな部位に擬態させる事が可能だ。

 では今回のゴーレムで、可能になった擬態は何なのか。あの世界におけるゴーレムは環境への完全擬態が可能であり、擬態を解くまではそこにゴーレムが居るとどのような手段を以ってしても判別は不可能だ。

 普通に考えれば、ゴーレムになれるか身体の一部をゴーレムに出来る程度のモノだろう……が、生み出したゴーレムはマナ・ゴーレムと言う個体。

 

「これは……」

 

 書かれているのは『擬態:魔鉱』『擬態:ゴーレム』の文字。恐らく完全にゴーレムへ擬態すれば、さらに環境への完全擬態も出来るようになるのだろうが……。

 

「期待の擬態、というところかな? んふふ」




用語解説コーナー


『錬金』―――錬金術に関係するスキルツリーで、調薬とか属性魔法とか取ると解放されるやつ。『哲学者の卵』と『アタノール』と『大いなる業』が判明してて、主に賢者の石を大量生産するのに使われてる。でも中盤以降は便利なアーティファクトが出てきたのでそっちばっか使われた……まぁ目的が目的だから仕方無いけどね。転スラ世界にはアーティファクトとか当然存在しないので機能拡張されてるイカレスキル。今後きっと活躍する。
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