転生したらホムンクルスだった件   作:見て見て、アッハが笑ってるよ!可愛いね

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リザードマン!?大量入荷のご予定はありますか?

 

 

 

「なるほど、この糸で反物を作って欲しいと……」

 

「うん、出せる量には限界があるから何人分も用意は出来ないけれど、あと二人分くらいなら頑張るからさ」

 

「他の素材と上手く組み合わせて、なるべく消費量を抑えられるようにしてみますね」

 

「ありがとう。出来ればこんな感じで、腰の辺りが空いてる様な服が欲しいんだ」

 

「少し出し過ぎではありませんか?」

 

「まぁ羞恥心はあるけれど、これからの事だったり利便性を考えると……ほら、これをしようとするとどうしてもね」

 

「普段は上に白いローブを着ているのですものね。それならきっと大丈夫でしょう」

 

「素材としての利用価値が高い様なら、何とかして量産体制は整えようと思うから」

 

「ええ。これだけ上質な物ならば使い道はいくらでもありそうです。何卒お願い致しますね」

 

「すごいな、もう絹織物なんて出来たのか」

 

「リムル様! いらして下さったのですね」

 

 シオンさんに抱えられたリムルさんがやって来た途端、先程まで真剣な表情をしていたシュナさんは嬉しそうな表情で彼の方へと駆け寄っていった。何とか言うか、現金だね……同級生の女子とかも、人気者が見えた瞬間色々ほっぽり出してそっちへ行っていたし、まぁそういうものだろう。

 

 何かを少し話した後、青みがかったスライムボディへと彼女は頬擦りをしていた。ひんやりプルプルで感触も良いのだろうが、猫のマーキングのようにも見えてくるのは気の所為だろうか?

 

「リムル様、そろそろ参りましょう。お昼ご飯が冷めてしまいます」

 

「シオン、秘書のお仕事はちゃんと出来ているのですか?」

 

「勿論ですシュナ様」

 

「うふふ、わたくしがリムル様のお世話をしてもいいのですよ?」

 

「いいえそれには及びません。私がキチンとお世話を致します」

 

笑顔で牽制をしつつ、引き伸ばされるリムルさん。うん、モテる男は大変だね。彼は今無性らしいけど。

 水面下で争い合う二人を仲裁する為……のように見せかけ、実際に欲しかったのだろう。彼はシュナさんへと衣服の要望を出して、頼むぞと声掛けをする事でこの場を収めてみせた。自分で蒔いた種を収穫しただけとも言える。

 

 しかしまぁ、頼られて「お任せ下さいリムル様」と答えた時の彼女の表情はうっとりとしていて、間違いなく恋する乙女のそれだった。罪だねぇ。

 

「じゃあ行くか。せっかくのシオンの手料理が冷めちまうからな」

 

「えっ……」

 

「ではシュナ様、失礼します」

 

 にこやかなシオンさんに連れられてリムルさんは去って行った。最後に何かに気付いたかのような表情をしていた所を見るに、何か良くない事に思い至ってしまったのかもしれない。

 

「セプテム様……少し宜しいですか?」

 

「おっと、この流れでボクに来るのか。いいよ、言ってみなよ」

 

 シオンさんの手料理がヤバいという事は察せたとも。つまり何かしらのフォローを頼みたいのだろうが、どのような物を頼むつもりなのか。

 

「シオンの料理は、はっきり言って料理ではありません」

 

「同郷の仲間に対して結構言うね」

 

「万が一リムル様が食べられた場合、どうなってしまうのか分かりません。もう既に料理の用意はしてあるとの事なので、食べさせないようにするか、あの時警備隊の方達にしていたように解毒をお願いしたく」

 

 毒とまで言うか。何を作ろうとしても暗黒物質が出来るレベルとでも言うのだろうか?

 食べられないようにするとして、ただ防ぐだけでは料理をしたシオンさんが納得しないだろう。つまり本命は、食べたとしてそれが生命活動に危機を齎さないように解毒をする事か。

 それが毒であるのなら『解毒』は解除する事が可能である。中毒症状ですら毒なのだからいけるだろう。

 

 スケープゴートを用意する方が、手っ取り早いかもしれない。

 

「まぁ分かったよ。流石に主に害を為したとなれば、鬼人全体の立場が悪くなりそうだし……でも毒を食わせようとした時点でヤバいんじゃないかな? ああでも、リムルさんなら笑って許すか」

 

 多分彼は本気では怒らない気がする。当然配下とした仲間達を気に入っているからと言うのもあるだろうが、恐らくは他人の失敗に対して「しょうがねぇなぁ」と言いながら一緒に尻拭いをしてくれるタイプの人間だ。

 とは言えその優しさに、付け込ませる必要も無いだろう。

 

 光魔法による迷彩で姿を隠して食堂へ向かう。辿り着いた時、席に座ったリムルさんと後方で茶を啜っているベニマルに、気配を消しているハクロウとご機嫌の様子で料理を運んで来ているシオンさんと言う状況だった。

 

 多分後ろの二人は何かがあった時の為の対処要員だろうか。こうなると、わざわざボクが何か手を出す必要は無さそうだ。素直に食中毒になったら解毒する、くらいで行こうか。

 

「お待たせしました」

 

 そう言ってリムルさんの下へ出されたのは……何だろうか、あれ。料理名を付けるとしたら「善悪二元論〜地獄より恨みを込めて〜」とかだろうか?

 素直に驚かされた。料理が極限に下手だと言っても、普通はお出しされる品物は黒焦げの発癌性物質とかだろう。或いはそもそも食用では無い何かとか。料理と言う過程と、完成した品物と言う結果がどう考えても噛み合わないだろう。

 

 丁度「腹減ったっす〜」と言いながら歩いてきたゴブタに対して、リムルさんはその謎物質をすくったスプーンを無理矢理捩じ込んだ。

 口に含んだ瞬間に、彼はもがき苦しみ始め転げ回り、喉を抑えて激しい痙攣を起こした後に意識を失った。

 いや毒にしては即効性あり過ぎるだろ。一応『真眼』で見る限り生命力は三割程度しか減っておらず、すぐにでも『解毒』を掛けてあげれば助かるだろう。

 

 その後当然の如く、シオンさんには料理禁止令に近いものが出された。

 

 ゴブタに『解毒』を掛けてあげて、大事をとって医務室へと搬送されて行く様を見届けてから、件の生物破壊物質を眺めてみる。

 スプーンで掬う。何かしらの具材が姿を現し、悲鳴が幻聴となって聞こえてくる。そのままそれを口へと運ぶ。

 

《抵抗に成功しました》

 

 この世全ての食感と、ありとあらゆる不快感を詰め込んだ様な、料理の冒涜。襲い来る過多の情報が口内と脳内を蹂躙し、何かを理解するという事が不可能だ。

 

「―――ッおい! 何食べてんだよ!」

 

 今更ボクが食べた事に気付いたのか、焦った様にリムルさんが言ってくる。

 

「……ははは、凄いなこれ。口に入れた瞬間に何かをレジストしたよ」

 

 もう一口、食材の成れ果てを食べる。

 

《抵抗に成功しました》

 

 変わらず何かをレジストする。先程解毒が効いていた事からも、何かしらの毒と言う判定を受けているのだろう。

 

「おま、よく食えるな……」

 

「まぁ、流石に元は食材や調味料なだけあって、食えない事は無いよ。この上なく不快だけど……でも、泥よりはマシかな」

 

 元が食材かそうでないかは、結構重要な違いだ。まぁ逆に言えば、比較対象が泥な時点でお察しではあるのだが。

 

「レシピの確認、下拵え、調理手順、分量、工程に掛ける時間……うん、全ておざなりにしてるよねこれは。料理の冒涜だよ」

 

 愛情があれば、とか隠し味は愛情とか言うけれど。美味しい物を食べて欲しいと言う気持ちは、それだけ調理工程の丁寧さに現れる。つまりは、本当に相手を想う気持ちがあるのなら、下手でも見た目や形が汚くても、多少はマトモな味になるし、材料の間違いや大きなミスとかも子供であればするだろうが、それもまたアジとなる。

 

「まぁ、料理をしたいならしっかりと出来る人監修の元やって貰うしかないね、これは」

 

 使われた材料が無駄になってしまうので、何とか皿の物は片付けた。けれど恐らくは、鍋サイズくらいは用意してあるのだろうな……。

 

「気が重たい」

 

 この一件の後、シオン以外の殆どの人に尊敬の念を抱かれる様になった。

 

 

 

 後日、リザードマンが町へ訪ねてきたと報告を受けたので、ボクも向かう事にした。

 リザードマン……とても心が踊る響きだ。数に余裕があったり繁殖サイクルが短かったりしたら、そこそこの数を融通して貰えないだろうか? 転生先の種族も気になるし、融合をすればドラゴンも作れるかもしれない。

 いずれ自分が転生を果たした時、泊を付けられるような配下はやはり欲しい。それにドラゴンともなれば強いだろう。

 

 そんな、期待に薄い胸を膨らませながら向かったのだが―――

 

「我が名はガビル! お前らにも我輩の配下となるチャンスをやろう!」

 

 来たのはかなり個性的な奴だった。

 リムルさんとその配下達は、物凄く冷めた視線を向けている。と言うか、リムルさんは抱き締められた状態で力を込められている所為か二つに分裂しそうになっている。

 

「やれやれ、皆まで言わねば分からんか。貴様らも聞いておるだろう。オークの軍勢がこの森を侵攻中だと言う話だ。しからば我輩の配下に加わるが良い! この我輩が! オークの脅威より守ってやろうではないか!」

 

 貧弱なゴブリンでは、到底太刀打ち出来まい? と、言いながらチラリとこちらを一瞥するガビル。しかしこの場に集まったのは、スライムに鬼人、そしてホブゴブリン―――リグルドさんを始めとして、リムルさんに名付けられたゴブリン達は皆進化してホブゴブリンかゴブリナになっていたらしい―――で、何処にもゴブリンはいなかった。

 何と言うか、彼は見ていて面白い奴だ。天然なのだろうが、道化のような立ち回りをしているではないか。

 

「あー、ゴホン! 聞けばこの村には牙狼族を飼い慣らした者がいるそうだな。そいつは幹部に引き立ててやる、連れて来るがよい」

 

 偉そうなガビルの物言いに、リムルさん配下達は苛立っているようだ。実際に彼が偉いのかは知らないが、交渉役としてはあまり相応しくは無いだろう……もっとも、前提条件が貧弱なゴブリン村の勧誘のようなので、少なくともゴブリンよりは強いであろうガビルの態度はおかしくは無いのだが。

 たまたまこの集落が、メンバーや強さが頭おかしいだけだ。ガビルにとっての悲劇とも言えるだろう。

 

 話を聞いてやる、と現れたランガのサイズは今までよりも大きく、対面すればそれなりの威圧感があるだろう。実際ガビル以外のリザードマンは萎縮している。

 

 その後何やら話を聞くための条件として戦うとかなったようで、たまたまやって来たゴブタとガビルが模擬戦を行う事になった。

 

 『真眼』で見た限り、ゴブタとガビルの力量差は明確で、普通に戦えばゴブタが負けるだろう。しかし、結果は瞬殺。影移動なるスキルで背後を取ったゴブタの回し蹴りでガビルは一発KOとなった。

 種族やステータスとしての強さでは無く、その者の持つ技量差によっての決着と言えるだろう。ハクロウに可愛がられた意味はあったねと、これから待ち受ける彼の未来に少しだけ涙を流したくなった。

 

「さてと、今後の方針を立てないとな」




シオンの料理を食えたのはひとえに主人公の前世の死因が餓死だからです。餓死より先に脱水かな? まぁそんな事でマジで泥を啜って生き永らえようとしてた経験があるので、食い物じゃないものよりは元食い物の方がマシだと思えたんですね
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