生意気な後輩を泣かしたい!   作:もっふもっふもふ

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14話 俺と性癖爆破

 

 俺には、所謂幼馴染という存在がいる。

 

 小中高と学校が一緒で、今現在もクラスが一緒なそいつ──日和は、親友と呼んでも何ら差し支えない大切な存在だ。

 

 ゲームもよく一緒にやったし、好きなアニメや漫画の話で何時間も盛り上がれるくらいには会話も弾む。好みのジャンルや感性も似ていたし、日和と過ごす時間は俺にとって癒しにも似た、かけがえのない一時だった。

 

 体育の時間で有りがちな『はーい、2人組のペア作って』のときは、よく一緒に組んだものである。

 日和は運動がからきしダメで、バトミントン等の繋ぎ前提のスポーツをしても全くラリーが続かなかったけれど、『楽しいな!』と屈託なく笑うものだから、俺も釣られてよく笑っていた。

 

 全体的にアイツは俺に対し距離感が近く、相談事があればいつも一番に俺のところまでやってきていた。

 周囲のヤツには警戒心の強い猫みたいな態度を取るのに、俺にだけは懐いてくれているみたいで、なんか何ともいえない気持ちを味わったのは一度や二度じゃない。

 

 これが普通の男なら、俺だって『そんなもん自分で考えろやボケが』と蹴飛ばすことが出来たのだが、如何せん日和に関してはそれは不可能だった。

 

 何故なら、アイツは物凄く可愛かったのだ。

 

 見た目や内心、そして所作に溢れる仕草までもが、俺の知る限りトップクラスに可愛かった。これに対抗できるのは、何回か見かけたことのある、一つ下のとある女子生徒くらいだろう。

 

 こんなことを言うとアイツは『せーくん、お前まで僕をそんな風に言うのか!?』とプンプン怒るから偶にしか言わないけど。

 

 ポカポカ殴ってきたりもするが、それがまた貧弱で可愛いんだよな……。あと、二人きりになると昔のように『せーくん』と呼んでくるのも可愛い。男になんて気色悪い感情を抱いているんだとも思うが、この段階まで来ると、コイツはもう仕方ないと割り切れるようにもなった。

 そもそもアイツ顔や身体付きも含めて男なのか怪しいと感じる部分結構あるし。

 

 小学校の頃から『あれ? ひょっとしたらコイツそこらの女子より可愛くね??』とちょくちょく感じることはあったし、年々その直感が正しかったと認識せざるを得なくなるんだ。

 

 

 

 

 ……特に、去年の文化祭はヤバかった。あれは、忘れたくても忘れられない。俺が明確に真理に気が付き、進化したあの一日は。

 

 俺と日和の所属するクラスは、皆で男子はメイド服、女子は執事服を着るといった、逆服装執事メイドカフェをする……ということに決まったのだが。

 

 執事の服を着てキャッキャと燥ぐ女子、メイド服を着て『おかえりなさいませご主人さま〜w』とふざけ倒す男子たち。正しく青春の1ページを刻むに相応しい彩り溢れる刹那の時間。

 

 そんな和気藹々と騒ぐ素晴らしい室内が、一瞬で無に帰る程のとんでもない事件が発生したのだ。

 

 

『ぼ、僕がこんな服着ても……皆気分悪くなるだけだろっ』

 

 

 顔を赤く染め、もじもじと恥ずかしそうにメイド服を纏った日和。それが全貌を顕にしたのである。

 

 元々美少女顔負けの整った顔つきの男子が、破壊神のように総てを破壊する表情で姿を現してきた。

 

 あの時あの場所あの瞬間。恐らく男女問わずそこにいる皆が思ったことだろう。

 

 ───あ、ヤバいと。

 

 壊れてはいけない、越えてはいけない大切な一線で反復横跳びをされているような感覚。それを、あの場にいた全員が味わった。

 

 勿論、俺も。

 

 俺は普通に女子が好きなノーマル男子高校生な筈なのに、本気で同性かつ親友の日和に胸がトキメキ爆発しそうになった。意中の女子相手にもこんな反応にはならないにも関わらず、だ。

 

 女装してないときでも若干ヤバい箇所は点在していたのに、女の格好なんかされたら本気で俺の精神が戻れなくなってしまう。

 

 心臓に激痛が迸り、俺の性癖はぶっ壊れそうになった。

  

 しかし、俺は耐えた。死に物狂いで耐え忍んだ。此処で耐えねば俺はアイツの親友などやっていけない。男らしい昔の思い出をフラッシュバックさせながら、俺は心頭滅却に努めきった。

 

 アイツは男、アイツは男。俺の友達大親友。可愛くなどない可愛くなどない決して可愛くなんてな───

 

『ど、どう、せーくん? そ、その……へ、変じゃないか??』

 

 かわいくなんて……。

 

『な、なんか言ってよッ。ほ、ほら……ちゃんとみろよっ』

 

 カわいく……。

 

『っ、や、やっぱしそんなに見んなバカ! 誰も何も言ってくれないし、マジで誰得なんだよこれ!!』

 

 カワ……。

 

『も、もう、せーくん! せめてなんか言ってよ!』

 

 ……。

 

 俺を見つめるその上目遣いの破壊力は、まるで天より降り注いだ神光のごとく輝いていて──……

 

 

 ア゙(尊死)。  

 

 

 

 こうして、俺は真理にたどり着き、性癖が完膚なきまでに破壊された。

 

 

 もう助からないゾ❤

 

 

 

◇◇◇

 

 

 僕には、幼馴染がいる。

 

 頼り甲斐のあって、話の合う友達だった奴が。

 

 そう、『だった』だ。現在のアイツは違う。

 

 今のアイツは何言ってるのか全然解らないし、僕を見つめながらニマニマ笑っているしで、ワケがわからない。

 

 いつもしっとり粘っこい目つきで見てくるものだから、『キモいからその目で見るんじゃねーよ!』と罵倒したのだが、アイツは満面の笑みで『ありがとうございます!!』と燥ぐだけだった。

 

 なんで罵倒したのに感謝されてるの? お前何時からそんな奴になっちゃったんだ。

 

 人の心は移ろいやすいとは言うけれど、変わりすぎていっそ別人なんじゃないかと疑ってしまう。マジで一時期心配になって、アイツの頬をペタペタ触って誰かの変装かどうかを確かめたことがある。しかし、触っている最中にアイツが『俺、死んでもいいや』と気色の悪い顔で抜かしてきたから、心配するのを止めた。

 

 何故か事あるごとに、僕に可愛い系のコスプレをさせようとしてくるようにもなったし、本気で何がシたいのかが解らない。解りたくもない。

 

 僕を舐め腐っている生意気な後輩といい、この気色の悪い阿呆といい……僕の周囲はヤベー奴ばっかりなのか? 

 

 昔はどっちも普通の奴……いや後輩は昔から別方面でヤベー娘ではあったのだけど、少なくとも今よりはウザくなかったのに。

 

 接する度タガが外れたかのようにどんどんヤバくなっていく。顔面偏差値はどっちも高いので余計に腹が立つなほんと。疲れるったらありゃしない。

 

「どしたん日和、陰鬱な顔して。お前は笑っている顔の方が可愛いぞ。my best Angel」

「それ……お前の意中の相手にいいなよ。つーか二度と僕に言うな。気色悪いから」

「ああッ……やっぱり効くなぁ、天使の罵倒は」

「僕は天使じゃないし、お前キモいからもう二度と喋んなッ」

 

 僕が睨み付けて言うと、ゾクゾクと恍惚とした表情を晒す気持ち悪いカス野郎。

 ほんとに何時からこんな奴になっちゃったんだ……接し方間違えたかな。

 

 後輩ほどではないにしろ、コイツも結構異性に人気があるのに一体何をどうしたらこんな方面に舵を切ろうと思えるんだ。

 

 コイツとは後輩の次くらいには一緒にいる時間が長いけれど……掛け値無しのキモさを一々ブツけられる僕の身にもなってほしい。

 

 そのキモいキャラは誰も得しないことにいい加減気がつけよ、この残念イケメンが。

 

「はあ、はあ……そ、そうだ。日和、今日はお前に頼みたいことがあったんだよ」

「頼みぃ?」

「ああ、お前にしか出来ないことなんだ」

 

 先程とは打って変わり、キリッとした真剣な表情で告げてくる残念イケメン。

 どうやら、今回はこれ以上悪巫山戯はなしらしいね。そのいつもよりも真面目な雰囲気に、僕も姿勢を正し聞く姿勢に入った。

 

 今はキモい奴でも、昔のコイツには色々な場面で助けられてきた。幼馴染かつ腐れ縁の情もあるし、あの頃の恩を返せるというのならば、僕としては嬉しい限りで──

 

 

 

 

 

「この魔法少女メーチャ・エーロインのコスプレをしてくれないか? 絶対お前に似合うと思うんだよ。勿論、金は払わせてもら───」

 

「死ね」

 

 親指で首を掻っ切るジェスチャーをし、僕は真顔で吐き捨てた。

 

 

 

 




 ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
 
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