《GGO》で剣聖   作:全智一皆

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ぶっちゃけ助けた人の数より、殺した悪人の数の方が多いオリ主。


第十話 強者/同類(イレギュラー)

 

■  ■

 《ホワイトフロンティア》。それが、アキツ達一行が向かったマップの名前であった。

 これまでの荒野や森林とはまた異なる、雪原の世界。熱ではなく冷、暑いではなく寒い。熱い風と砂で鬱陶しい気分になる事が殆どだったGGOのマップにおいて、それはとても珍しいものだった。

 だが、それだからと言うべきか。その暑さに慣れてしまっていたからと言うべきなのか。

 

「うぅ―――うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……………………!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! さ、寒いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 現在、ホワイトフロンティアのダンジョン入口前にて。

 ガタガタガタガタ!!!!!!!!! と、顎をそれはもう凄まじく振るわせながら身震いするクレハを筆頭に、女性陣はその寒さに追い詰められていた。

 

「ま、まさか、ここまで寒いとは思ってなかったわぁ……」

「雪原だもの……少し考えれば分かる事だったわ…! あぁ、本当に寒いっ。ジャケットを羽織った程度でどうにかなる寒さじゃないわよ、これ!」

 

 クレハもツェリスカもシノンも、その服装は雪原地帯に行く格好と言うにはあまりにも薄着で、自殺しに行くんですかと言われても文句は言えなかった。

 そんな彼女達とは対照的に。

 ハンティングジャケットの上にコートを着たアレフと、和服と洋服が良い具合に混ざった様な格好『ヨミビトシラズ』を着るアキツは特に寒そうにしている訳でもなく、平然としていた。

 アレフに至っては、サプレッサーが付けられたスナイパーライフル―――H&K PSG-1の動作確認を済ませ、ボルトハンドルを半分に引いてプレスチェックを行っている始末だ。

 

「砂漠に廃墟に砂漠に森林、そして次のマップは一面雪景色か……ふむ、GGOは殺風景なマップしか無いとばかり思っていたが、此処は中々に綺麗だな。見上げればオーロラまで見える、まさしく絶景と言えよう」

「……そうだな。俺も、此処は綺麗だと思っている。個人的には『忘却の森』も捨て難いが」

「あぁ、あの森か。確かにあの森も良い、これまでとは違い神秘的で、穏やかな場所だ。敵さえ居なければ、ピクニックでも出来たのだがな」

「ピクニックか……GGOではあまり考えられないな。何処に行っても戦場だ」

「それもそうか。だが、悉くを薙ぎ払えば万事解決だ。邪魔立てするなら斬る、謀るなら斬る。それだけの事だ。その後、ゆったりとすればいい」

「……見敵必殺(サーチアンドデストロイ)か。なるほど、理に叶っている」

 

「アンタ達ちょっと無関心過ぎない!?」

 

 クレハのツッコミが鋭く刺さる!

 というか実際、全く以てその通りである。

 うら若き―――一人だけ若いかどうか怪しい人が居るけれど―――乙女達が寒さに苦しんでいるというのに、それに何ら関心を示さないとは何事か!

 

「こっちは寒さで世間話してる暇なんかないってのに…!」

「……そうだな、すまない。配慮が足りなかった」

 

 PSG-1を収め、コートを脱いでそれをツェリスカへ、自分が着ていたハンティングジャケットのジッパーを降ろし、脱いだそれをクレハへと手渡した。

 

「俺のものですまないが、ダンジョンに着くまではそれで我慢してくれ」

「あ、ありがと……これ、結構暖かいのね。アンタが着てたからってのもあるけど」

「これをナチュラルにするから、流石よね〜」

 

「何を見せられてるのかしら、私達……」

「余程仲の良い間柄と見える。長い付き合いなのだろうか?」

「……はぁ。アンタもあれくらい出来たら良いんだけどね」

「すまないが、ヨミビトシラズは着脱不可だ。あと、体格的にシノンには合わないと思うぞ」

「…………」

「何故無言で蹴る。地味に痛いのだが」

「別に?」

「むう……暖を取れるかは分からないが、手を繋ぐか?」

「あ、アンタねぇ……なんでそうも距離の詰め方が極端なのよ!」

「詰め…? 別に距離は殺していないが。シノンと戦う訳でもあるまいに」

 

 もう本当に何なのこの天然剣士。

 シノンは友人のあまりの天然具合に、いよいよ頭痛を抑えられなくなってきた。会話が成立している様でこうも噛み合っていない場面も中々ないというものだ。

 まぁ、上着を貸すとかではなく手を繋いで暖まりましょうとか発言してくるアキツが悪いと言えば悪いのだが。クールとは言え彼女もまだ女子高生、花の高校生だ。

 気の知れた男子から突然そういう事を言われるのには慣れていないのだ、仕方ない仕方ない。

 

「はぁ……もういいわ。このまま立ち尽くしてても始まらないもの、早く行きましょう」

「うむ、了解した」

「そ・れ・と! もう絶対に一人で動かないでよ!? また前みたいになるのは御免よ、私は」

「むぅ……そうさな、善処する。俺も迷惑は掛けたくないからな、出来る限り努力する」

「ならいいわ。……私も、出来る限り貴方とは逸れない様にするから。貴方の事も大体分かってきたもの」

「そうか。それは嬉しい限りだ」

 

 友人とは、大切なものだ。

 自分の事を知ってくれる。それはとても喜ばしく、嬉しい事だ。人によっては、それに羞恥や嫌悪を示すのだろうけれども、アキツにとっては喜ばしい事だった。

 ()()()()で、純に人柄を知り、理解する事は―――あまりにも難く、苦しいものであったが故に。

 

 まぁ、閑話休題(それはともかく)

 

 アレフ・クレハ・ツェリスカ・アキツ・シノンと五人は、長い道程を経て―――途中でモブを倒しながら―――漸く目的地となるダンジョン『アイシクルプリズン』へと到達した。

 広々とした空間は全体的に色素が薄く、天井はガラス張りで灰色の空がよく見える。前方はかなり広く、オートマタとドローンが銃を構えてスタンバイしている。

 いよいよダンジョン。こうも広いと時間も掛かりそうではあるが、それは皆承知の上だ。

 

「……攻略開始。俺とアキツで前衛を務める、クレハとツェリスカは中衛、俺達の援護射撃。シノンは後方支援を頼む。前方中央の扉をマークしておいてくれ」

「了解。期待させてもらうわよ、前衛二人」

「承知した。期待に応えられる様、働くとしよう」

「……行くぞ」

 

 そう宣言してから、約数秒。

 ―――瞬ッ! と、各々で銃と剣を構えた二人の青年が、瞬速で色薄い鋼鉄の世界を駆け抜ける。

 思わず、アキツは横目でアレフを見た。

 

 速い。剣士として相手との間合いを詰める為、AGIにもポイントを振り、それなりの速度と持ち前の走法を合わせる事でGGOでもかなりの速度を誇るアキツだが、アレフはそれに追従している。

 身のこなしも上々。腕の振り、足の上げ方、蹴り方、どれを見ても上手く隙が見当たらない。剣術家であるアキツから見ても、アレフのそれは戦場でも通用する精度を誇っていた。

 

「……」

 

 ドォンッ、ドォンッッ!!!!! と、轟音が重なる。

 GGOでも数少ない架空の大型自動拳銃―――『ロングストローク』。情報だけがリークされていたものの、それまで誰も手にした事がないレアアイテムであるそれの威力はかなりのものなのだろう。

 走りながら照準を合わせ、此方へと銃口を向けたオートマタの弾道予測線(バレット・ライン)がアレフの胴に当たる前に、一発が放たれる。

 ヘッドショット。頭が弾け飛び、敵はポリゴン体となって粉々に消滅した。

 二発。間髪入れずに、二発。拳銃とは言え大型、大口径の弾丸を使用したそれは当然の様に撃った際の反動も普通の拳銃とは比べ物にはならない。

 だが、アレフは連射した。間髪入れる事なく、まるでそれが極自然な流れであるかの様に反動を制御し、即座に隣のオートマタへと撃ち込んだ。

 

『―――』

「……」

 

 空の敵が敵意を刺す。それを予知したかの様に、アレフは空いた左手を腰に指したもう一丁の銃に添え、それを真上へと向け引き金を引く。

 バシュンッ! と、銃口から引き伸ばされた翡翠の鋼糸がドローンを引っ掛け、そのプロペラを破壊し引き摺り降ろす。

 UFG―――アルティメットファイバーガン。それは文字通り、どんなものにも粘着し、離れない繊維を飛ばす銃。強固な繊維は粘着し、そして使用者が引き金を離すまで決して離れる事もなければ消える事もない。

 それ故に移動にも搦手にも、攻撃にも用いる事が出来る。GGOにおけるレアアイテムの一つだ。

 

(―――これは、中々の逸材だな)

 

 アキツもアキツで、奥義を見せてまで倒し、その果てに苦労して手に入れたクサナギG8で敵を斬り捨てていた。

 そんな中で、アキツはアレフの方へと視線が移っていた。

 冷徹かつ淡々。容赦も躊躇もなく、殺意も敵意もない。その動きには無駄がなく、ただ敵を倒す―――否、確実に殺せる部分だけを狙っている。

 

 ―――アレは、まだ上がる。今はまだ成長途中だ。今はまだ未熟だ。もし此処で彼等を裏切り、この剣を向けたのであれば、抵抗の間を与える事なく斬り捨てる事は出来る程度には、まだ弱い。

 まだ、彼にはハッキリとした強さを得る切っ掛けがない。だが、何か切っ掛けを得たならば、あの青年は遥か高みの領域へと駆け上がる。

 かつてのゲームを経て―――()()()()()()()()()()()()()()()()を経て、アキツはその領域を越えた。

 

「冷徹に戦場を見定め、淡々と敵を薙ぎ払う……まさしく()()の如き戦い方だ。事が終わってから、一戦頼んでみるも一興か」

 

 命のやり取り。殺し殺されの剣戟。一つの過ちが己の命を儚く散らす戦場での斬り合いの数々を経験し、アキツはこの現代社会において『■■』と呼ばれる程の実力を手にした。

 何も憚らずに言うのであれば―――殺し合いだ。それを経験したならば、それを積み重ねたならば、この青年はさらに上の世界へと入り込む。

 こんな殺し合いもクソもない様な世界において、凄まじい逸材を見付けたアキツは、世界は広いのだと実感せざるを得なかった。

 ダンジョン攻略が済み次第、ライキリを手に入れたならば彼に一戦を申し込もう―――アキツはそう心に決めた。




「忘れられねぇさ―――アイツの事は、絶対に忘れねぇ。あれこそサムライってやつだろ? あの剣技もあの眼も、焼き付いて離れねぇ。何せアイツ一人で討伐隊を置いてきぼりにして半壊させたんだからな。俺達を敵とすら思っちゃいない、ただ動くだけの藁にしか見えてない眼―――忘れろってのが無理な話だろ?」

―――ポンチョで身を包んだ殺人鬼より、人斬りへの感想
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