メジロアルダン短編集『to the MEJIRO ARDAN』   作:いずさわ

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クローバー


「ううむ……ここにもありませんか……」

 

 

「ん?あれ、アルダン?」

 

日曜。憂鬱な休日出勤を何とかこなして、気分転換にと飛び出した近所の自然公園。空と花々のグラデーションが複雑に交差する美しい景色の最中、時計塔の針は既に十二時を回っていた、そんな頃合いで。

 

「どうしたんだろう、何か落し物でもしたのかな?」

 

視界の端、50M先くらい。偶然見つけたのは……間違いない。我が担当ウマ娘メジロアルダン、日光を反射し煌めく、彼女の眩い水晶色の姿だった。

何かしらの困り事だろうか。あんなに美しい周りの光景に目もくれず、しゃがみこんで足元の草むらを黙々と漁る彼女。急いで僕は、彼女へ真っ直ぐに駆け寄ろうとする、が。

 

「どうですか、アルダンちゃん?」

「ええ、こちらにも……」

「……『四葉のクローバー』、なかなか見つかりませんね」

「すみません。私が探してみたいと言ったばかりに……」

 

 

「……っと、危ない危ない。友達と一緒だったのか」

 

不意にひょっこりと顔を覗かせたのは、スーパークリークにヤエノムテキといった、おなじみの彼女の友人たち。慌てて僕は、近くにあった大きな花壇の影に身を隠した。

 

「あははっ!気にしなくてもいーよ!アルダンさん!」

「ええ、せっかくのアルダンさんの提案なのです、メジロ家総出だろうと、見つけ出してさしあげますわ?」

「……ほわぁ?あら〜?ご覧ください姉様達?」

「おっ!どうしたのブライト?もしかして見つかった?」

「ええ〜、とっても愛らしい……てんとう虫さんですわ〜?」

「ぶ、ブライト?貴方本来の目的はおわかりで?」

「……ふふふっ?パーマーもマックイーンもブライトも、ありがとうございます♪」

 

二人に続いて、続々と顔を出し輪を作りだす彼女の友人や後輩達。一様に足元の草むらを漁り微笑む……普段はG1や重賞の大舞台でしのぎを削りあっている仲だとはとても思えないほど牧歌的なその様に、思わず僕も一人、苦笑いを浮かべてしまう。

しかし、一体どんな経緯で始まったのかは分からないけど、四葉のクローバー探しかぁ。懐かしいな、僕も子供の頃は……

 

「なんか、子どもの頃思い出しますね?こうやって公園で皆で遊んだり」

「あら、シチーさんにもそのような時期があったのですね?」

「あはは、当たり前ですよ?誰にでも子どもの頃って、あるでしょ?」

「ふふっ、確かに懐かしいなぁ……うちはヴィブロスが気になったものにすぐ飛びついちゃうから、僕も姉さんも、いつも気が気でなかったけど……」

「あらまあ、ご姉妹がおられると賑やかそうで羨ましいですね……アルダンさんは?お姉さんとの思い出など、何かございますか?」

「え、えっと、スティルさん……そう、ですね」

「ふふふ、あのお方の子どもの頃の姿など想像もつきませんので。せっかくですし、是非ともお伺いしてみたいのですが……」

 

 

「…………!」

 

子供の頃、か。

純粋な期待の眼差しを向けられ、僅かに伏し目がちになる彼女の、我が担当ウマ娘メジロアルダンの姿。僕は思わずその輪の方へとつま先を向け、腰を持ち上げる。

 

「……別に、言いたくなければ言わなくてもいいのではないかしら?」

「アヤベさん?」

「子どもの頃の話なんて、話したくても大半は思い出せないものですしね?まあ私は皆さんより、子ども時代自体が遠いからかもしれませんが……その分将来どうなりたいのかは、沢山語れますよ!」

「……ふふっ、そうですね?流石ライトハローさんです。アヤベさんも、お気遣いありがとうございます♪」

「わ、私は別に……」

 

……皆からのやさしい言葉を受けて、彼女のえくぼも、再びやさしく刻まれる。対して僕は持ち上げかけた腰をそっと下ろして、あいも変わらず、その場に息を潜め続ける。

そうだな、たとえ皆に語れるような子どもの頃なんて無かったとしても、彼女だっていつまでも、誰かに護られた子どものままじゃないのだろう。

 

「あ、も、申し訳ございません……少し、嫌なことを聞いてしまいましたか?」

「ふふ、良いのですよスティルさん?確かにあまり、よい想い出ばかりではありませんが……」

「けれどもそれもまた、今の貴方を形作る大切なもの。ということでしょうか?アルダンさんの……私たちのやさしいお姉さんだった貴方の、『そうでなかった』瞬間の記憶、というのは」

「ふふっ、流石マックイーン♪そうですね?確かに姉様や皆とは、外で遊んだりなんて殆どできませんでした。まあ、私の体質では当然のことですね?」

「…………」

「変に気を使わせてしまっては誰も楽しくないでしょうし……やはり『外の世界』というのは、私の居場所ではありませんから。きっと私なんて居ない方が、世界は綺麗に回るものなのだろう、と」

「……アルダンちゃん」

「けれども姉様は、あちらから私の部屋によくいらしてくれました。一緒に本を読んだり昼寝をしたり、寝癖で乱れた髪をやさしくといてくれたり。あのやさしい感触は、今でも鮮明に覚えています。外の世界に出ていけなくとも、私たちはそれで良かったのだな、と……」

 

彼女は一息、誰にも見えない小さなため息をついた後、見惚れるほどしゃんと背筋を伸ばして、皆の前に堂々と両の足で立ち上がる。

 

「……改めてですが、皆様今日は私のわがままにお付き合いいただき、誠にありがとうございます。まあ、クローバーは相変わらず見つかる気配はありませんが……」

「あはは、ほんと、こんなに見つかんないもんなんですね?」

「ふふっ?けれどもとても良い想い出になりました。私などの為に、こんなに時間を作ってくださって……」

 

「『貴方の為』なんかじゃありませんよ、アルダンさん」

 

「……?」

 

そんな彼女の前に、まるでパドックで火花を散らし合うかのように立ち塞がったのは、ヤエノムテキであった。こんなのどかな情景の中でさえ、燻る炎を宿したかのようなその姿。釣られるように周りのウマ娘達もその場に立ち上がり、一様にアルダンの姿をその瞳に映し始めた。

 

「私だって今日はずっと、ずっと楽しかった。『貴方が居たから』、楽しかったのですよ、アルダンさん」

「……!」

「うふふっ!ヤエノちゃんの言う通りです!パドックごっこもおままごとも、なんでも新鮮に目を輝かせて楽しむ貴方がいたから、私たちも童心に返って楽しむことができたんですよ?」

「アタシもそうだけど、行く先々で会う人みんな巻き込んじゃってさ、そんな芸当できるの、アルダン先輩だけですよ?」

「は、はい……!顔見知りしてる僕をずっと気使って話しかけてくれて……貴方の誘いじゃなかったら、僕きっと今ごろ、どこかに逃げちゃってましたから……!」

「私だって……あんなに影の薄い私を見つけてくれた事、本当に感謝しています。やっぱり貴方は、凄いお方です……」

「……まあ、なんだか巻き込まれちゃったけど。私も、悪くない気分だったわ」

「まさか学生じゃない私にまで声をかけてくださるなんて思いませんでしたが……ふふっ?まさしく貴方は、人を惹き込ませるプロですね?本当に素晴らしいです!」

 

三者三様、まるでシャツの間から吹き込む夏風のような言葉を浴びて、彼女は僅かに肩を震わせる。太陽は、まるで世界の中心を指し示すかのように、真上から彼女達のその麗しい姿を照らしていた。

 

「貴方が、私たちの世界を回してくれているのですよ。貴方がいて初めて成り立つ……ここは『貴方の世界』です、アルダンさん」

「っ……!ええ、ええ、ありがとう、ございます……ヤエノさん、皆さん……!」

 

「……ふふっ、偉そうなこと言っちゃうけどさ。アルダンさん、凄く立派に成長したよね?」

「ええ、昔はただひたすらにやさしかったアルダンさんが、あんなにも凛々しく逞しくなってしまうだなんて……」

「ふふ、本当に愛らしいこと……ところでパーマー、これは一体なんの集まり、なのかしら?」

「はははっ!やだなあラモーヌさん!これはアルダンさんが……え?」

「え?」

「?」

 

唐突に変わった風向きに、一様に困惑が広がる輪の中。と、ついでに遠く離れた僕の心臓の中。あれは、頭からつま先までピンと伸びた、あのなんとも読めない後ろ姿は、まさか……

 

「ラッ!?ララララ、ラモーヌさん!?ななっ、なんでこんなところに!?」

「うふふ〜、つい先程、私がお呼びしたのです〜」

「ブライト!?な、なにゆえにそのような事を?貴方ラモーヌさんがどれだけお忙しい方なのかお分かりで!?」

「あらぁ?おかしな事をおっしゃるのですねマックイーンお姉様は〜?『メジロ家総出だろうと、見つけ出してさしあげる』とおっしゃったのは、お姉様の方でしょう〜?」

「それはっ……!それは、確かに、言いましたがっ……!」

 

「ね、姉様……!」

「……あら。アルダン、後ろを向きなさい」

「えっ?後ろ、ですか?」

「髪、乱れていてよ……本当、貴方は変わらないのね」

「…………!」

 

現れたのはもちろん、『メジロラモーヌ』。言うまでもなく、アルダンの実の姉であるウマ娘。

ただひたすらに狼狽える周囲にまるで見向きもせずに、彼女は手にしたサイドバックから樫の木の櫛を取り出し、アルダンに声をかけた。いつも通りの暖かくも冷たくもない、けれども何故だか、やさしさだけは伝わってくるような、そんな声色だった。

 

「……いいえ、姉様。この髪は、この乱れはあの頃のものとは、違うのです」

「あら?」

「この乱れは、寝癖ではない。ここにいる皆様と全力で遊び回って付いた……私が『外の世界』に飛び出せた、その証なのです」

「……ふうん?」

「だから、この髪はもう少しこのままで……代わりに、その、姉様に、お願い、したい、ことが……」

「ええ、何かしら」

 

「ご一緒に、四葉のクローバーを探しませんか?……いえ、一緒に探しましょう。それが『今』の私が一番望むことです♪」

「ふふっ、よろしくてよ♪」

 

背を向けず、堂々と正面に立って。あのメジロラモーヌすら自らの輪の中に引っ張りこんでみせた、アルダン。眩く輝く太陽までもスポットライトにしてしまうほど凛々しく、麗しく燃え盛るその様に。

 

「……本当に、成長したね、アルダン」

 

僕は、心の底から見蕩れていた。トレーナーの手を借りなくても、きっかけさえなくても、強く、強く立ち上がった彼女の姿。僕の目頭にもまた、熱量が宿る。

 

「押忍っ!それでは最高の味方ができたところで……」

「ええ、クローバー探し、再開しましょうね〜♡」

 

「では、私はアルダンについて行きますから。パーマーはあちら、マックイーンはあちら、ブライトはあちらの方……お願いいたしますわね?」

「えっ?あ、は、はいっ!」

「は、はいですわ!」

「は〜いです!ラモーヌお姉様〜!」

「ふふっ♪しかし、かれこれこの大人数で一時間ほど探して見つからないとなると……四葉のクローバー、本当に存在するのでしょうか?」

 

 

「……さてと、邪魔しちゃわないうちに、僕はとっとと帰ろっかな」

 

熱を帯びた目頭を指先で冷やして、くっきりクリアになった視界の先の世界。そうだな、やっぱり間違いなくあの世界は、僕の居場所ではなさそうだ。僕はその輪の方へとかかとを向け、腰を持ち上げ、抜き足さし足その場から立ち去……

 

「ん?あれって……?」

 

……ろうとした、その瞬間。クリアになった僕の視界の端に映りこんだのは。

 

「……あっ!?あれ、『四葉のクローバー』じゃん!?」

 

間違いない、僕の潜む花壇の目と鼻の先。数多生える草むらの中にしゃんと立つ一本の、四葉のクローバーが、そこにはあった。

 

「えっ、ちょ、アルダ……!あ、ああー……えと、えっと……!」

 

 

「ふう……ここまで探してもないとなると、やはりこの場所には存在しないのかもしれませんね……残念ですが、皆さん……」

 

 

「えっ!?嘘!?あ、あるよ!ここにあるって!気付いてアルダン……!」

 

ま、まずい!なんか明らかに諦めムードに入ってる!?なんとかしてアルダンに気付かせないと……ええと、何か使えそうなもの、使えそうなもの、は……

 

「……あら?」

「ん?どうなされましたかアルダンさん?」

「いえ、なんでしょう……あの辺りの草むら、妙に光っている、ような……?」

 

 

「よ、よし!気付いたか!?」

 

僕は咄嗟に、持っていた携帯のライトを使って件の草むらの辺りを照らし出した。明らかに不自然な状況だけど……まあ、背に腹は変えられないか……!

 

「ええと……ええっと……えっ?」

「アルダンさん?何か、そちらに……」

「───見つけた」

 

 

「……もうそろそろいいかな?よし、じゃあ僕は今度こそ退散、と」

 

近付いてくる足音を感じ取って、僕はライトを消し、ほふく前進で今度こそその場を後にする。さて、帰ったらまた仕事の続きか。名残惜しいけど、まあ、彼女が幸せなら僕はそれだけで……

 

ガシッ

 

「ぐえっ!?え、えっ?」

「ふふ、ようやく見つけましたよ?珍しくなかなか姿を現さないと思っていたら、そんなところに隠れていただなんて。予想外にも程がありますよ?ね、トレーナーさん♪」

 

……閉じかけた物語のページを無理やりこじ開けるように。地面に突っ伏す僕の首根っこを堂々掴んだのは、他でもない、我が担当ウマ娘メジロアルダンであった。

 

「あ、あはは……バレちゃったか……」

「一体いつから隠れていたのですか?というより、そもそも何故にそんなところに隠れていたのです?ずっと居たのなら、堂々と出てくれば良いものを……」

「そ、そんなに長い時間じゃないよ?十分前くらいにたまたま君たちを見かけて……それで」

「それで?」

「まあその……皆凄く楽しそうだったからさ?僕なんて居ない方が、ウマ娘たちだけでのびのびうまく回るのかなー、なんて……」

「………………」

「……あ、ははは」

 

なんて、みなまで言い切る前に、彼女の頬がふっくらと丸まっているのに気がついて。僕の語尾は、情けなく風に溶けていく。

 

「いいですか、トレーナーさん」

「は、はい」

「またしても、『考え過ぎ』。貴方の悪い癖です」

「は、はい……」

「……貴方が居ないことでうまく回る世界なんて、そんなもの、ありえません。ありえませんし……もしそんな世界があるのならば、そんな場所に、私は居たくなどありませんよ、トレーナーさん」

「…………!」

「それにほら、皆さんを……ここに集まってくれた人たちのこと、よーくご覧ください?」

「えっ?ええと……?」

 

彼女が指差した先、空と花々のグラデーションが複雑に交差する美しい景色の最中集った、なんともまとまりのないウマ娘たちの姿。学年も立場も、きっと主義主張もバラバラな、実に不可思議な、その集まり……

 

「ええと、『君の友達たち』が、どうかしたの?」

「分かりませんか?皆さん、『貴方の友達たち』でも、ありますでしょう?」

「……あ」

「私から貴方へとご紹介した方もいれば、貴方から私にご紹介いただいた方だっている。どちらにしても、貴方の顔を知らない人なんて、この場にはいませんよ?」

 

ヤエノムテキにスーパークリーク、メジロパーマーにゴールドシチーにアドマイヤベガ……友達かどうかは置いといて、言われてみれば確かにそうだ。なんだかんだ僕は、こんなにも沢山の人々に囲まれて生きてきたんだ。

 

「ふふ、心配なされなくても皆さん、トレーナーさんのことは深く敬愛なされていて……」

 

「アルダンさん?先程からどなたとお話されていて……うわっ!?アルダンさんのトレーナー殿!?」

「うわっ、出た……まーたなんか変な事してるし……」

「貴方って、どうしていつもそう薄汚れてるのかしら……」

 

「……敬愛、されてるこれ?」

「ふ、ふふふ……ああそういえば先程などは、トレーナーさんが今日はどこから現れるのか皆さんで予想しあってましたね?ですよね?マックイーン?」

 

「そ、そうですね?私などはその……おやつ時に、匂いに釣られて現れるものだと思っておりましたが……」

「私は、なんかそのー……池とか土の中とかから出てくると思ってました!」

「うふふ〜、私はウシさんかトナカイさんに乗ってやってくるかと思っておりました〜」

「現れ方までつまらないのね、貴方」

 

「ねえ僕、皆からなんだと思われてんの?」

「ふふふ、ふふふふ……」

 

まあでも、こういうのもまた今の僕を形作る大切なもの、だったりするのかもしれないな。そして、何より……

 

「ま、でも僕の影響力なんてせいぜいこんなもんか……いてもいなくても、対してみんな変わらなさそうだね?」

「ふふ、まあそうかもしれませんね?皆子どものように、目の前の楽しそうな事を探すのに夢中なのですから♪」

「……まあ、君だってそうだもんね?」

 

……何よりこうして彼女の隣に立っているとわかる。やっぱり僕は、ここがいい。皆に囲まれてほのかに笑う、彼女の隣にずっと居たい、その為に。

たとえここに僕の居場所がなかったとしても、その時はまた一つずつ出来ることを探して、自分で居場所を作りあげればいい。僕の敬愛する、強くてやさしい彼女のように、また、何度でも、成長して……

 

「まだまだ、日々精進……ん?探す?あっ!?そうだアルダン!あそこ!あの辺!」

「えっ、なんですかトレーナーさん?」

「いいからほら!あの辺、探してみて!」

「は、はい…………あっ!?」

「あら?アルダンちゃん?って……」

「ま、まさか、それって!?」

 

 

「「「「「「「「四葉のクローバー!」」」」」」」」

 

 

彼女がそっと抜き取って、そうして天高く掲げあげたのは……他でもない、先程僕が見つけた、四葉のクローバー。長らく探し回った末の突然の出逢いに、彼女達のテンションも一気に湧き上がる。

 

「まさか、その花壇の影から見つけていたのですか?ふふ……やはりその眼の良さは、相変わらず健在のようですね?流石トレーナーさんです♪」

「あはは……まあなんか抜け駆けしたみたいでちょっと複雑だけど……けどまあ、見つからないまま解散にならなくてよかったよ、ほんと」

「……では、この四葉のクローバーは最初に見つけ出したトレーナーさんのものですね?ふふ、きっととびきりの幸運が舞い込みますよ?」

「え?い、いやいや僕はいいよ。元々君が欲しかったものなんでしょ?それにその綺麗なクローバーは、絶対に君の方が似合うからさ?」

「……いいえ。私はもう、クローバーよりもずっとずっと沢山の幸せを運んでくれる……そんなものを、見つけましたから」

「……?」

 

「あの二人、またやってる……」

「またやってますわね……」

「毎度毎度飽きないなぁ……」

「つまらないのね」

 

「あ、それにほらっ!トレーナーさんが一番に見つけたのですから、優勝はトレーナーさん、ですよっ♪」

「……ん?あれ、いつの間に競走なんてしてたの?」

「あら?なんでしょう?なんだか『誰か』に、そんなことを言われた……ような……?」

「うーん?まあそうやって君が大切に覚えてるって事は、きっとその誰かも、君にとって必要な誰か、なんじゃない?」

「……ふふ、まあ、そうですね?」

 

三者三様、まるでシャツの間から吹き込む夏風のような表情を浮かべ、笑い、呆れ合う輪の中。そして中心で笑みを浮かべる、太陽のような彼女の笑顔。

……その一端に、何故だか過ぎ去る季節の切なさが宿っていた……ことも、できるだけ覚えておこうと、そう、思った。

 

「あ、ところでトレーナーさんは?子どもの頃、どんな遊びが好きでしたか?」

「ん?子どもの頃に好きだった遊び?」

「うふふ〜?実は今、みんなの子どもの頃好きだった遊びを聞いて、それをひとつひとつやってみてるんですよ〜?アルダンちゃんのトレーナーさんも、よろしければ……」

「なるほど、それで四葉のクローバー探しを……そうだなあ?僕が好きだったのは……」

「わくわく……」

「ああ!そういえばガンプラとか作るの好きだったなぁ!」

「がん……ぷら……?」

「ああ、あとライダーごっことか……あとスマブラとか友達とめちゃくちゃやってた!」

「らいだー……ええと」

「す、すま……?」

「……やっぱ僕、浮いてない?」

「だ、大丈夫です!大丈夫ですから!そんな悲しそうな顔しないでくださいトレーナーさん!」

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