メジロアルダン短編集『to the MEJIRO ARDAN』   作:いずさわ

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夏がはじまる、君とはじめる。




COME IN SUMMER

神々しさすら感じる程に、熱く輝く陽の光。あまりの鮮烈さに入道雲すら姿を消して、本当に永遠に続きそうな程広がる青空だけが、僕の瞳を染め上げる。

 

七月初旬、バスの窓をくぐって吹き付ける、三十度をゆうに超える真夏の風に頬を撫でられながら、そっと耳を澄ます。波立つ海の音よりも、ひしめき合う蝉の声よりも、真っ先に僕の鼓膜を揺らしたもの、それは。

 

 

「まだ着かねえのかよぉーーーーっ!!」

 

 

「何時間乗ってればいいんだよーっ!早く俺らにも海見せろぉーーっ!!」

「ああ、担当が足りない……足りない……足りない……!!」

「マーチャンは今、絶対に寂しがってるんです!急いでください!!」

「お前のせいで出発遅れたんだろ!着ぐるみなんて無理やり持ち込もうとしやがって!」

「そうだぞ!せっかくタキオンのために作ってきた弁当が、ダメになっちゃうじゃないか!」

「お前もだよ!ビカビカ光りやがって!眩しいんだよ!お前のせいで何回警察に停められてると思ってんだ!!」

 

……風情の欠片もない、怒声、罵声。大の大人達が互いに互いを罵り合う、聞くに耐えない不協和音が、狭苦しい大型バスの中ひたすらに響きあっていた。

 

夏合宿、初日。合宿所を目指し悠々と出発したトレセン学園所有バス……で、あったが。道中の高速道路、40kmの渋滞に巻き込まれ、かれこれ1時間程立ち往生を強いられているのだった。

幸い、こちら側に乗っていたのは殆どトレーナー陣のみ、ウマ娘達を乗せたバスの方はやや早めに出発できたおかげで、既に合宿所に到着していると先程通達があったそうだ。この猛暑である、彼らの大切な担当ウマ娘達がこのような過酷な環境に晒されずに済んだことは、なにより喜ばしいことである。喜ばしいことであるの、だが。

 

「ウワァーーーッ!!カレンチャン!カレンチャンドコ!?ウワァーーーッ!!!」

「うっ……お兄さまはもう……ライス……幸せになって……ね……」

「み、皆さん落ち着いて!?樫本さん、ど、どうしましょう!?」

「───────」

「……樫本さん?お、おーい?樫本さん?ちょ、い、生きてますか!?樫本さん!?樫本さーーん!!」

 

……とまあ、ご覧の通りの地獄絵図である。

皆ご存知の通り、トレセン学園のトレーナー達は定期的に担当と顔を合わせなければすぐに正気を失ってしまう。普段ならまだまだ問題無い程度のはずなのだが、しかし今日はこの極限状態だ。発狂して奇声を上げ始める者、辞世の句をしたため始める者……窓から逃走を謀り、徒歩での移動を試みようとする者まで現れ始める始末であった。

 

「おいおい、こりゃちょっとヤバいんじゃないか?いつもの馬鹿共はまだしも、樫本さんまで再起不能となると誰にも収拾つけられないぞ?」

「そうだなあ……やっぱりたづなさん辺りに連絡して、知恵を借りるべきなんじゃないかな?」

 

隣の席のトレーナーと共に、この状況を仰ぎ見る。どうやらこのバスの中、正気を保っていられているのは僕ら三人だけのようだ。という訳で、この状況を打破するべく僕ら三人、ひたすらにうんうんと頭を捻りだした。

 

「と、いうか、お前は平気なんだな?正直、真っ先に狂い始めるのはお前かと思ってたんだが……」

「いやいや、流石にあれぐらい狂えるほどの元気は僕にはないし、それに……」

「それに?」

「それに、たまたま運良く、アルダンがこっちのバスに乗ってたからね。だから僕は平気。ね?アルダン?」

 

そっと、僕の隣に腰掛けるアルダンに目線を移す。その長く美しい髪が太陽の光に照らされててらてらと輝き、なんだか天国の情景を垣間見ているような、そんな不思議で浮ついた気持ちが僕の胸を満たしていく。

 

「……お前、誰に向かって話してるんだ?」

「え?今日の服?もちろん似合ってるよ、うん、すごくすごく、綺麗だよ、アルダン……えっ?えっと、こんな所で?もう、仕方ないな……」

「……やっぱ正気なの、俺だけかよぉーーーッ!!!」

 

 

──────────────

 

 

「オエッ……しんど……」

「まったく、忙しいヤツだな、幻覚見始めるわ急に車酔いしだすわ……」

「ああ、神様……どうして僕にこんな試練を……」

「そりゃこっちのセリフだ」

 

同僚トレーナーの肩を借りて、なんとか、おっかなびっくりバスから下りる僕。縦横無尽にひっくり返っていた胃の中が、新鮮な海風で満たされていく。

 

「しっかし、もう昼過ぎになっちまったか。俺は担当と合流して昼飯にでもするかな。お前は?」

「うん、僕もとりあえずアルダンと合流しないと」

「そんなら、もう少し顔色戻してから行くんだな。メジロアルダンに、ダサい所見せたくないんなら、な?」

「う、うん、ありがとう」

 

去っていく彼の後ろ姿を見送ってから、受け取ったスポーツドリンクを一気に飲み干す。ようやく聞こえてきた波立つ海の音、ひしめき合う蝉の声。なんだかすごくすごく、込み上げてくるものがあった。

 

「これが、夏合宿かぁ」

 

目の前に広がる、想像していたよりもずっとずっと広大な海と砂浜。ここまで来る道中なんだか色々とあったような気がするが、そんな些細なことなどどうだってよくなる程に、淡く、強く、煌めいていた。

 

 

「ちょっ!冷た!やったなー!このーっ!」

「あっはは!ちょ!やりすぎだって!」

 

「ポッケちゃ〜ん?あの海の家にぃ、美味しいシーフードオッチャホイがあるんだって〜」

「マジか!そんじゃ海の家まで走ろーぜ!そんで負けた奴が全員分オゴリな!」

「私にはこの弁当があるので遠慮す……ああ!しかし砂浜を走る君たちのデータは欲しい!と、言うわけで……」

「何をするつもりなのかは知りませんが、お断りします……」

 

「ふぃー……やっぱ海に来たら砂遊びだよねぇ。あんな波の中泳ぐなんて、絶対溺れちゃうし、海の家のご飯も美味しいし……ん?」

(カン! カン! カン! カン!)

 

 

「ほんと、みんな浮かれてるなぁ……」

 

夏合宿、初日。ほとんどのトレーナーはこの一日はウマ娘達の自由時間にする。浮かれ騒ぎたい気持ちを思う存分発散してもらい、明日からのトレーニングに集中してもらう為である。

と、言うわけで、ひとたび砂浜に足を踏み入れれば、あちらこちらから聞こえてくるはしゃぎ倒したウマ娘達の声。ほとんどが思い思いの、自ら選んだであろう見目麗しい水着を身にまとっていて、まさに今だけは、バカンスを謳歌している普通の女学生達といったところである。

 

「さてと、アルダンどこかな?」

 

もちろん例に漏れず、我が担当ウマ娘、メジロアルダンもそう。今日という一日は完全自由時間で、思う存分学友達とエンジョイしてもらう予定である。正直、今日ぐらいは顔を合わせない方が彼女も羽を伸ばせていいかもしれないが、まあ、体調を確認するくらいはしておかないと後が怖い。という訳で、彼女を探して砂の上をずんずん進むことにしたのだが……

 

「メッセージ、返信もないか。まあ、夢中で遊んでくれてるんなら何より……あれ?」

 

「フッ!ハッ!ハッ!ハッ!」

 

ただでさえ暑苦しい空気に、更に投入されていく燃えるような叫び声。あそこに一人、立っているのは……

 

「ヤエノムテキ?」

「フッ!ハッ……ハッ!?貴方は、確か……アルダンさんの、トレーナー殿、でしたか?」

 

こんな炎天下の中だと言うのに、道着を着込んで一人黙々と正拳突きを繰り返す彼女。アルダンの同期であり今年度の皐月賞ウマ娘、ヤエノムテキであった。

 

「何してるの?ていうか、暑くない?」

「ご心配なく、心頭滅却すれば火もまた涼し……この程度、私には問題ありません。日課である朝一番の鍛錬が本日は出来ませんでしたので、こうして今、行っているというわけです」

「今日は朝早かったもんね、しかし、友達と遊んだりしなくていいの?」

「それもご心配なく、これが終われば学友達と合流する予定ですので」

 

僕と話している間にも、指先まで集中を切らさずに突きを放ち続けるヤエノムテキ。このストイックさこそが彼女の強さ、その根源なのだと思い知らされる。このままじっくりと敵状観察を続けるのも良いが、それよりもまず、僕には会いたい娘がいるのだった。

 

「そうだ、聞きたいんだけど、アルダンを見なかった?」

「アルダンさんですか?ああ!それなら…………」

「……?」

 

ヤエノムテキの手が、ピタリと止まる。ぱちくりと目を泳がせて、なんだか、次の一手を決めかねている、追い込まれた武道家のようであった。

 

「……大丈夫?なんだか、顔が赤いけど、暑いなら無理しない方が」

「い、いえ!アルダンさんであれば、向こうの海の家の方におられましたよっ!」

「あっ、そ、そう?ありがとね?」

 

何だか、ぐるぐると目を回しながら教えてくれたヤエノムテキ。なんとも不思議な反応に少しだけ違和感を覚えたが、まあ、いいか。いつもより深めにお辞儀をして、僕は海の家の方を目指して歩きだした。

 

「あの、トレーナー殿?」

「ん?どうしたの?」

「その、できるだけ、できるだけ早く行ってあげて下さい。アルダンさんの元へは……」

「え?もちろんそうするつもりだけど、どうして?」

「それは……わ、私の口からはとても!」

「えっ」

「と、とにかく!早く!行った行った!」

「えっ、えっ、は、はいっ!」

 

 

──────────────

 

 

「なんだったんだろう、さっきの……」

 

ヤエノムテキに急かされて、じわじわと歩幅が伸びていく僕の足。なんとも違和感は残るが、まあいいか。サンダルの中が砂まみれになるのも厭わず、ただただ、砂浜を走……

 

「廊下は!走っちゃダメっスよぉーーー!!」

 

「うおっ!?えっ!?何っ!?」

 

……不意に耳を貫いて、脳髄まで響き渡るとてつもなく気合いの入った声、声、声。ずっこけそうになる身体をなんとか立て直し、声のする方に慌てて顔を向けると、そこには。

 

「……バンブーメモリー?」

「はいっ!バンブーメモリーっス!そこのトレーナーさん!廊下を走るのは校則違反っス!」

「えっ?でもここ廊下じゃないし、そもそも学校でもないよ?」

「それは…………」

「それは?」

「それは、そうでした!申し訳ございませんっしたァ!」

「あ、うん、うん、大丈夫。大丈夫だから、そんな近くで叫ばないで……耳が……」

 

バンブーメモリー、彼女もまたアルダンと同期のウマ娘。今現在は主にダートの短距離、マイルを主戦場としており、アルダンとぶつかり合ったことこそないが、やはり彼女も、飛び抜けた実力を持つウマ娘である。

 

「いやー!一本取られたっス!どおりでさっきから皆、アタシの事怪訝な目で見てたんスね!」

「あはは、気がついてくれたんなら良かったよ……」

 

なんともペースを狂わせられっぱなしだが、まあ、彼女の誤解を解けたのであれば、良しとしよう。

 

「ところで一つ、この辺でアルダンを見てない?」

「アルダン先輩っスか?ああ!アルダン先輩ならついさっきそこで見ました…………」

「………バンブーメモリー?」

「……あーーっ!もしかしてアンタが!アルダン先輩のトレーナーさんっスか!?」

「うっ……?そ、そうだけど……?」

 

突如、もう一段階ギアをあげた大声を間近で食らって、グラつく脳を立て直す。そんな僕の状態を気にする様子もなく、彼女はひたすら矢継ぎ早に言葉を繋いでいく。

 

「そうっスかそうっスか!なら早く行ってあげるベキっす!」

「行ってあげるべき?それってどういう……」

「いやー!ほんっと凄かったんスから!アルダン先輩、ものすっごく」

 

「はいストップ、それ以上はダメですよバンブー先輩?」

 

「モゴッ!?ちょ、シチー!?何するんスか!」

「君は……!」

「どーも、髪、ちゃんとセット出来てんね?やるじゃん」

 

……不意に現れたのは、ゴールドシチー。なんともセンス溢れる水着姿で現れた彼女は、そっとバンブーメモリーの口を塞いで、僕に目配せをしてきた。

 

「アルダン先輩ならさ、ほんとすぐそこ。海の家の目の前にいるから、さっさと行ってやんなよ?」

「あ、う、うん……ところで、バンブーメモリー。さっきなんか言いかけてた……」

「いいから!さっさと行く!」

「は、はいっ!」

「……ふふっ、まーじで見てらんないわ?」

 

 

──────────────

 

 

「へえっ……へえっ……アルダン……どこ……」

 

得てして、ウマ娘の言う『すぐそこ』は当てにならない。五分ほど走って、ようやく海の家の前まで辿り着いたが……もう足がガクガクで、アルダンを探しだすどころではない……

 

「あ、アルダン……?アルダン、いたら返事、して……」

 

せめて、向こうから見つけて貰えるよう、なけなしの体力で彼女の名を呼ぶ。なんだか、すごくダサくて、カッコ悪い気もするけど、それでも。

 

 

「トレーナー、さん」

「っ!アルダン!」

 

 

背後から聞こえてきた、聴き馴染んだ、けれども、なんだか久しぶりに聞いたような気がする、あの空よりも澄んだ、綺麗な声。

 

「う、動かないで下さいっ!」

「えっ!?は、はいっ!」

 

反射的に振り返ろうとした、その瞬間。彼女に静止させられ、なんとも不可思議なポーズで固まってしまう僕……ますますダサいことになってしまったが、まあ、仕方ない。

 

「……ど、どうしたのアルダン?」

「トレーナーさん、ええと、その。あの、特に、深い意味は無いのですが……」

「う、うん?」

「その、もし、もしもですよ?自分で決めて自分で選んだこと。なのに、いざその時になると怖くなって、勇気が出なくなってしまう……なんて、そんな時トレーナーさんなら、どう、しますか?」

「……アルダン」

 

メジロアルダンというウマ娘は、いつだって自分の道は自分で決めてきた。それが出来る、強いウマ娘なのだ。その強さに、その気高さに、僕はどれだけ救われてきたのだろう。

そんな彼女から発せられた、弱く、脆い、今にも崩れ落ちそうな言葉。僕のいない間に何があったのかは分からないが、それでも。

そんな彼女の言葉を全て掬って、それに応える。そんな義務が、責任が、僕にはある。それに、そんな自分でありたいという、『欲』は、僕にだってあった。

 

「そうだね、そんな時は……思い切って、やるしかないよ。思い切り、開き直って、そして、やれるだけやるしかない」

「思い切り、開き直って……」

「きっと、君は否定するんだろうけど、でもやっぱり僕は、君のトレーナーとして力不足を感じる瞬間が沢山、数え切れないほど、あるよ、今でも」

「……ええ、確かに否定したいところですけれども、ね?」

「ふふふ、でもって、それでもやっぱりここ一年、僕の実力を遥かに超えたことをやらなきゃいけないことは何度もあった。その度にやけくそになって開き直って、時には神にだって祈って、なんとかやってこれたんだ、僕は」

「怖く、なかったのですか?トレーナーさんは」

「全然、怖くなかったよ。君が、メジロアルダンがいてくれたからね」

「────」

 

少しだけ、ハッタリをかました。怖くないなんてことは全くない。けれども、アルダンがいてくれたからやってこれた。それだけは、間違いない。

 

「では、私はトレーナーさんからいただいていいですか?勇気、を」

「うん、もちろん、僕があげられるものなら、なんだろうと」

「ありがとう、ございます……トレーナーさん?」

「アルダン?」

「こちらを、向いて、いただけますか?」

 

彼女の神妙な声と共に、僕はゆっくりと振り返る。そこにあったのは、真夏の鮮烈な陽射しと、どこまでも拡がる青い空と、それと。

 

「─────ぁ」

「……いかがでしょう、トレーナーさん。『想像』、超えることは出来ましたでしょうか?」

 

───青い空も、海も、砂浜も。まるで世界中全ての美しいものを、全て『背景』にしてしまえるような、そんな彼女の姿が、僕の瞳の奥、脳髄の隅の隅まで、壮大に焼き付いてしまった。

 

「ああ、ああ、綺麗だ。すごく、すごく綺麗だよ、アルダン」

「……ふふ、良かった、です。貴方の為に選んだ、水着でしたから」

 

彼女の美しさを……全て、濃縮したような……深いエメラルドグリーンの……いや、ダメだ。

今の彼女の美しさはとても言葉では言い表せないし、それに、その必要だって、ない。彼女が他でもない、僕の、僕だけの為に選んでくれた水着なのだ。それを享受できるのだって、そうだ、僕一人だけで充分なのだ。そんな『欲』くらい、僕にだって、あるんだ。

 

「トレーナーさんを驚かせようと思って、早めに着替えて待っていたのです。けれども、トレーナーさん中々到着しなくって……」

「ああ、うん、それはごめんね……」

「そのうち、鏡で自分の姿を見る度に、少し不安になってしまいました。浮かれすぎているのではないか、トレーナーさんは……ここまで大胆なものは、求めていないのではないか……なんて」

「ううん、本当に……ほんとうに綺麗だ。その水着、すごくすごく、好きだよ、僕は」

「─────あ、ありがとう、ござい、ます……」

 

アルダンが、ぽふぽふと前髪を整える。少し日に焼けて赤くなった、健康的な素肌がやたらと目に入り込んできた。

 

「……それでは、気を取り直して、皆様にも謝りに行かなければなりませんね?」

「皆様?」

「ええ、きっと弱気になっている私を察知してくれたのでしょう。ヤエノさんやバンブーさんにシチーさん……皆様私の事を沢山励ましてくれましたので♪」

「あっ、ああ……なるほど、そういうことか……」

「そういうこと、とは?」

「いや、こっちの話」

 

七月初旬、海の向こう側から吹き付ける、三十度をゆうに超える真夏の風に頬を撫でられながら、そっと耳を澄ます。波立つ海の音よりも、ひしめき合う蝉の声よりも、はしゃぎ倒したウマ娘達の声よりも、真っ先に僕の鼓膜を揺らしたもの、それは。

 

「それなら、丁度みんな向こうの方に……あれ?誰もいない、どこ行ったんだろう?」

「あらあら、それではご一緒に探していただけますか?二人一緒に探せば、きっとすぐに見つかりますよ♪」

「……うん、そうだね?二人でゆっくり行こう。まだまだ、夏は始まったばっかり、だからね。」

「ふふ、ええ。ゆっくり、ゆっくりと参りましょうね♪」

 

他の音を全て消し飛ばすような、甘く、ほろ苦い君の声。ただ、それだけだった。

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