5枚全てが手札に揃った時、デュエルに勝利する。ただし運命力により初手で5枚揃うものとする   作:ロイヤルソイミルクインスタントコーヒー

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第1話 強靭☆無敵☆最強の初手札

「ヘッヘッヘ! もう後がねぇなぁ嬢ちゃん。泣いて許しを乞うってンなら考えてやってもいいぜぇ」

 

 下卑た男の笑い声がエンゲージフィールドに響いた。

 たった今、直接攻撃を許して私の敗北が決定したところではあるが、私は再び左腕に装着したリンカーテーブルを胸前に掲げる。

 

 この世界を席巻する謎のカードゲーム『サモンエンゲージ』 ──実を言うとゲームというのはふさわしくないのだが──は、ありがたいことに多くの場合でBO3制、2本先取制を採用している。

 

 みんな大体律儀にそれを守ってくれるので、わたしは安心してこの"2軍"でカードバトルを楽しむことができると言うもの。なにせ"真なるカードバトル"などと呼ばれる、裏社会のやくざ者のバトルでもこのルールには従っているのだ。

 そうでなければ、私はきっとチキンにも、チート臭い、どころかチートそのものであるこの"1軍"を毎度のごとく使い倒していただろう。

 

 私は影でリンカーテーブルに収められたデッキを、スッと1軍に入れ替えた。別にバレたところでどうと言うことはないけれど、気分の問題だ。突っかかられるのは、回数が少ない方がいい。

 

「なんだよ。まだやンのか。ま、考えてやるってだけだったけどなぁ! やるならさっさと終わりにしようぜぇ! サモンエンゲージ、スタンバイ! ドロー!」

「ドロー」

 

 相変わらずこの不躾な対戦相手の男は、自分本位で無理矢理にゲームをスタートさせた。

 多分、仮に負けたとしても、バトルカメラのデータを提出すれば法廷でバトルの無効の沙汰が下ることだろう。ま、真なるバトルともなると、それができればと言う話にはなるのだが、それは別の話だ。

 

 私が1軍を使う以上、負けはあり得ないのだから。

 

「ほんっと、もう。心配性なんだから……」

 

 最初に配られるカードを順々に引いていくと、当然のようにいつもの顔ぶれが揃っていく。

 

「俺は、カードを2枚セット、さらに攻撃表示でモンスターを召喚──」

「その必要はないわ」

 

 そうして私は、隠して然るべき手札のカードを相手に見せる。ちなみに時は止めてない。

 

 初手に配られた最初の手札5枚。その内訳は、

『封印の魔神 ゾアーク』

『燃え盛る火の封印の要』

『凍えたる水の封印の要』

『吹き荒ぶ風の封印の要』

『揺れ蠢く土の封印の要』

 の5つ。

 

 明らかに何か揃っている風のカード群ではあるけれど、実際その通りだ。

『封印の魔神 ゾアーク』の効果は以下のよう。

 

──────────◇──────────

戒限: このカードはデッキに1枚しか加えることはできない。

●このカードと『燃え盛る火の封印の要』『凍えたる水の封印の要』『吹き荒ぶ風の封印の要』『揺れ蠢く土の封印の要』 の5枚すべてが手札に揃った時、自分はデュエルに勝利する。

──────────◇──────────

 

 まあ、いわゆるエ○ゾディアである。

 

 

「な、なんだ……そのカードは!」

 

 脅迫でもしようかという大声をあげた男は、リンカーテーブルの機能で表示される相手カードの情報を見ていたのだろう。

 お互いに強カードを持っていることが前提で構築を競っていた前世と違い、真の意味でトレーディングなカードゲームが行われているこの世界では、初見のカードというのは珍しくない。

 もっとも、カード効果の照会申請なんて、普通は突っぱねるところだが、私はこのカードたちに限っては許可することにしていた。

 

 

 ただ、声を荒げたくなるのもわかる。

 こんなん私が相手にされたら発狂ものだ。そのうえカードバトルに賭けるものがあればなおさらである。

 

「まさか……、勝利を決定するなんてカードが、この世に存在するってのか?!!」

 

 【封印】の5枚のカードは、例によってこの世界では超激レアカードだ。

 というか、たぶんこの1枚ずつしかないんじゃないだろうか。

 特殊勝利なんていう現象自体も、私と相対して初めて経験するケースがほとんどかもしれない。

 

「そんなの、まるで神じゃァねぇか……!!」

 

 いや神なんだけどね。封印の魔"神"だし。

 

 

 とはいえ、この【封印】の5枚。ゾアークには悪いけど、実のところそんなに強いわけじゃない。

 

 まずは当然、ゾアーク以外の4枚も、共通のデメリット効果「このカードはデッキに1枚しか加えることはできない」というのを持っていて、それ以外の効果はなし。

 

 専用サーチカードなんてもちろんないから、汎用のカードでガンバって引くことになるわけだけど、『サモンエンゲージ』というカードゲームのとある事情もあって、サーチやサルベージといったそこら辺のカードは少々扱いづらく。

 しかも某本家様と違って属性もバラバラなのも劣化点だ。なんならゾアークは【神】とか言う名前がかっこいいだけの謎の属性付きで、各属性系の汎用サポートカードの援助さえ受けることができない。

 

 その上、本家様同様の対策の容易さも変わらない。

 普通に使えば、先ほど言った通り2本先取制では、そこそこできるカードバトラーなら2戦目以降は対策できてしまうのが実情。もちろん対策札があればの話だけど。

 

 

 と、ここまで言うと、なんでそんなカード使ってんの?って話だが。

 ここにきて、一つこの世界特有の強みが悪さをする。

 ええ、それはもう、マジでぶっ壊れの悪さを。

 

 カードゲーム世界あるあるの話だけど、「デッキが答えてくれる」みたいな言い回しを聞いたことはないだろうか。

 まさにその通りで、この世界のカードバトラーはある程度、自分の望むカードを引くことができるのだ。

 

 

 あとはもう、わかりますね。

 ディスティニードローで、初手にゾアークを揃えるだけです。

 

 

 ──……なんだこのクソゲー。

 

 

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