5枚全てが手札に揃った時、デュエルに勝利する。ただし運命力により初手で5枚揃うものとする   作:ロイヤルソイミルクインスタントコーヒー

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第4話 目と目は合ってないけど真面目にカードバトル (前)

 今、このC.S. サジンには、『サモンエンゲージ』のバトルフィールドが展開されていた。

 リンカーテーブルを掲げて向き合うのは2人。

 

「今更だけど、倍秒ルールにしなくてもよかったのかい?」

 

 1人は、カードゲーム世界らしいカラフルな髪色の中でもそこそこに目立つ薄めな金色の髪を軽く整えた、顔の悪くない男、五辻 紀一。

 

「まさか、そんなのはいらねーよ! オレだって、もう結構、実戦を積んでるんだ!」

「実戦、ねぇ……。じゃあ、その実力を早く見せてくれないか?」

 

 相対するのは若々しく声を上げる少年、遊条 楽斗だ。

 

 楽斗少年の、オレンジに近い明るい茶髪という色はそんなに目立ちはしない。が、なぜか雷のようにジグザグに見える金色のメッシュが加わり、さらに影のように後ろ髪が藍色となる、三色ミックスカラーともなればかなり目立つ。

 ぶっちゃけ、五辻の金色がもはや没個性だ。

 黒髪の私なんてその辺の石ころくらいかもしれない。まあそれを補って余りある美少女だから問題ナシ! ……空気を読んでメッシュくらい入れた方がいいのかな。

 

 しかし、不思議だ。本気であの髪型を再現するなら、プロの美容師がカツラで作っても数時間かかるだろうけど、彼がそんなに美容院通いしてるはずもないだろうし、まさか地毛と寝癖であの髪型が完成するのだろうか。

 他の知り合いでも、あるいは街中を歩いているときでも、ラクト君と似たタイプの謎ヘアーの人がいるけれど。私が知らないだけで、この世界の整髪技術はああいう髪型を表現することに特化した、斜め上の方向に進化していたりするのかもしれない。

 今度、一度お願いして見ようかな。

 

 

 

「どうした? 動かないのか? 相手のフィールドはガラ空きだぞ?」

「その手にはのらねーぜ! 前それで動いたらすぐさまカウンターでボコボコにされたからな!」

「いい傾向だ。前とは違う結果が望めるかもしれないね」

 

 余裕そうに会話を進めていた2人だけども、内実は読み合いのはずだ。

 なにせ、『サモンエンゲージ』は()()()()()()()カードバトルなのだから。

 

 『サモンエンゲージ』のルールは非常に簡単にいえば、遊○王の1ターンを30秒というリアルタイムの時間にしてしまったようなものだ。

 それゆえに、先攻後攻の概念すら存在しない。ルールに則って互いにどのタイミングでもカードを発動、召喚することができる。

 

 だからこそ、五辻が煽っていた時から、私が美容院で謎ヘアーに挑戦することを決意した時も、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 その上で、両者が選択したのが、動かず"(ケン)"に回るという行動だったというだけ。

 

 五辻のオッサンはともかく、ラクト君はそう見せかけて実は何も考えてないなんて、そんなことはないよね。いやまさか。

 

 

 

 そうして、もうすでに1ターン目、30秒が経過するかというその瞬間、楽斗少年が滑り込ませるように『ユニットカード』をセットする。

 

「そのまま動かないのかと思っていたよ」

「へっ! それこそまさかだね!」

 

 そりゃあそうだよね。

 知ってた知ってた。

 ウンウン。かわいいチカちゃんは1ミリも、1ピコメートルも疑っていませんでしたとも。

 

 

 『サモンエンゲージ』の基本的なルールとして、カードは大きく2つの種類、『ユニットカード』と『スペルカード』に分類される。

 モンスターやクリチャーといった概念にあたるのがユニットカードであり、魔法などに当たるのがスペルカードだ。

 

 そして、これらのカードの召喚や発動後には5秒間の待機時間、『インターバルタイム』が必要となる。この5秒間に相手は優先権が与えられ、対抗するカードを発動することが可能だ。

 

 もっとも重要なこととして、このインターバルタイムの間、カードを発動した側のターンの経過時間だけが停止する。そのうえで、カード効果の処理までも停止時間として加わってくる。

 これにより、両者がカードを発動するたびに、お互いのターンの経過時間、すなわち『ターンタイマー』がずれていくこととなるのだ。

 

 

 

 今回、ラクト少年がユニットを召喚したのはちょうど25秒時点。

 5秒後の30秒時点では召喚のインターバルタイムは終了することとなり、五辻のターンが終了してドローのタイミングが来るのは、ユニットの召喚が成立してからだ。

 つまり、五辻は初手札の中で対応しなければならない。

 

 一方、楽斗少年側のターンタイマーで考えれば、五辻がこのインターバルタイムでカードを発動してもしなくても、ドローを迎え6枚目での対応も可能。

 

 

「妨害はなし、か。ならそのまま【ヴォルテックス・ドラゴン】を召喚!」

 

 五辻はカードを切らなかった。

 そのため、楽斗君のインターバルタイムが終了し、ユニットの通常召喚が成立する。

 

 インターバルタイムは発動者側の待機時間と考えるよりも、体感的には発動された側に5秒間のターンタイマーボーナスが与えられる、と考えた方がわかりやすい。お互いの了解のもと、ターンタイマーの経過処理を行なってスキップも可能だ。

 むしろそれをせずにダラダラ5秒待つのはマナ悪である。

 おしゃべりで5秒を過ごした五辻もマナ悪である。

 

 

「〈速攻〉の効果を持つ【ヴォルテックスドラゴン】はそのまま攻撃できる! ダイレクトアタックだ!」

 

──────────◇──────────

【ヴォルテックスドラゴン】

光属性 竜種 コスト0

BP: 1000

HP: 400/400

●速攻:召喚後の攻撃猶予時間を0秒にすることができる。

●このカードがHP全損により墓地に送られた時、フィールド上のユニットカードを1枚選択する。そのカードに1000HPの回復する。

──────────◇──────────

 

 【ヴォルテックスドラゴン】なるユニットカードは、幾度となく楽斗君が使っているカードなので、その能力は私も五辻もよく知っている。

 〈速攻〉は、ユニットカード召喚後20秒間のいわゆる召喚酔いによる攻撃猶予時間をスキップできる効果だ。通常であれば、召喚と攻撃によるインターバルタイムが5秒ずつで合計30秒、1ターンの攻撃猶予となる。

 

「それは塞がせてもらおうかな。【ヴォルテックスドラゴン】の召喚完了時、ユニットの召喚を行なっていた」

「『先行入力』か!」

 

 『先行入力』とはサモンエンゲージのテクニックの一つだ。

 インターバルタイムはあくまでも対抗札の発動時間で、この間にそれ以外の起動効果の発動やユニットの召喚は発動できない。

 しかし、インターバルタイムにスペルカードやユニットカードをセットしておくことで、最速で発動が可能となる。このテクニックが『先行入力』と呼ばれている。

 

 この世界ではサモンエンゲージの方がゲームの発明よりもだいぶ前なので、ゲーム由来の言葉とかじゃあない。

 セットのことは別に入力なんて呼ばないのに、何でこの言葉ができたんだとか、そういう疑問を持ってはいけない。イイネ?

 

 

「召喚するのは【iCPU ベーシックサーキット】」

 

──────────◇──────────

【iCPU ベーシックサーキット】

光属性 機械種 コスト0

BP: 700

HP: 1000/1000

擬形:以下のカード名のカードとして参照することができる。

・【iGPU クレイジーサーキット】

●召喚に成功した時、手札からスペルカードをトラップとしてセットすることができる。

■このカードを含む【iCPU】もしくは【iGPU】カードがHP全損によりフィールドから離れた時、墓地の好きなスペルカードを手札に加えることができる。

──────────◇──────────

 

「また、そいつかよ。相変わらず陰気臭ェカード使ってんな!」

「陰気臭いプレイングもまたサモンエンゲージだよ。そして、知っての通り、このユニットの召喚時処理としてスペルカードのセットが行える」

 

 どこぞの誰かと違ってマナーの良い楽斗君は、口調とは裏腹にキチンとスキップを行ったらしく。【iCPU ベーシックサーキット】の召喚は滞りなく行われた。

 

 五辻が言った通りの効果処理として、五辻のフィールドのスペルカードゾーンにカードがセットされる。

 

 攻撃表示で召喚された【iCPU ベーシックサーキット】は【ヴォルテックスドラゴン】で破壊可能だ。

 ただし、目に見える妨害札が1枚。しかもそれは、まさにこの【ベーシックサーキット】の効果で伏せたカードだ。罠である可能性は高い。

 しかし、攻撃しないということは【ヴォルテックスドラゴン】の〈速攻〉の効果を腐らせることとなってしまう。楽斗君には1ターン目にして大きな選択が来たと言えるだろう。

 

 

 そしてこのタイミングで、両者にドローの権利が与えられた。

 カードをセットするという時間があったからか、一瞬だけ五辻のドロータイミングは遅い。

 

「攻撃表示なんて安い誘いにはならないぜ! オレは〈続闘〉の効果を持つ【剣宝士 アンバリックナイト】を召喚!」

 

──────────◇──────────

【剣宝士 アンバリックナイト】

土属性 戦士種 コスト 0

BP:800

HP:1000/1000

●続闘:召喚権を回復して、召喚を行うことができる。

〈続投〉の効果の再使用には30秒間を要する。

■他のユニットカードを選択するスペルカードが発動された時、その対象をこのカードに変更することができる。●その後、このカードを破壊する。

──────────◇──────────

 

 楽斗少年は引いたカードをそのまま掲げ、召喚を宣言した。

 

 〈続投〉の効果により、【剣宝士 アンバリックナイト】は召喚権復活までの30秒間を待たずに召喚を行うことができる。

 本来なら〈続投〉はコスト、つまり自分フィールド上のユニットを取り除いて召喚するような大型ユニットに多くつけられている効果だが、このユニットはコスト0。無条件で召喚が可能だ。

 

 この世界では速攻(アグロ)タイプのグッドスタッフはよくある構成だが、その好例である楽斗少年のデッキを象徴するようなカードである。

 逆に言えば、いまのところそれほどオリジナリティもないということでもあるけれど。

 

 

 そうして、召喚された【剣宝士 アンバリックナイト】は味方ユニットを守る効果を持つカードだ。

 その防御も万能というわけではなく。正直、全体除去やユニットの効果による除去など、通せる効果は割と多い。

 しかし、楽斗少年は五辻がセットしたカードの対処ができていれば十分と判断したのか、【ヴォルテックスドラゴン】による攻撃を行った。

 




随分、遅れてしまいました。
カードゲーム系小説はルールの設計やカードの設定が大変ですね。まあルールのほうは私が複雑にしただけなんですけども……。

大まかなルールの紹介ができたということで、今後は感想の返信などもしていくつもりです。あと後書き欄の活用も。

第1話時点で頂いていた感想の返信を後回しにしたら、返信を始めるタイミングを逃したとか。小説以外で何か手ごろな書き物が欲しかったとか。補足説明とかしたいなと思ったのはいいものの、後書きを使い始めるタイミングがなかったとか。
そういう理由ではございませんよ。ホントダヨー
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