卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第11話 モーションアシスト

「というわけで【ユズレス大森林】までやってきました。メインクエスト用の最初のダンジョンですからね。ちょうどいいでしょう」

 

 明日香さんの『魔物を惨たらしく虐殺したい』という願いを叶えるためにダンジョンにやってきたボクたち。アリンドさんも当然ついてきています。

 

 【パーティ】を組めばメインクエストを一緒にこなすこともできるようなので、一石二鳥ですね。

 

「ちなみに職業(クラス)は何にしたんですか?」

 

「えっと……【サイキック】……? というのにしてみました……」

 

「【サイキック】ですか。なかなか玄人向けの選択ですね。」

 

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>そんな職業もあるのか

 

>サイキックはいいぞ

 

>基本的にサポート向けのクラスだからメインで選ぶ人は少ないな

 

>はっきり言ってゴミ

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「【サイキック】はほぼすべての能動(アクティブ)スキルに再詠唱時間(リキャストタイム)が存在しないという特徴を持つ職業(クラス)です。効力は抑えめですが、その分、小細工を駆使して立ち回るイメージでしょうか」

 

「はい……私……実は運動が苦手で……それをサポートしてくれるスキルが……あるみたいなので」

 

「【プレコグニション】ですね。確かにあれは便利ですよ」

 

 【プレコグニション】は視界内で発生するあらゆる攻撃の予測軌道を表示する受動(パッシブ)スキル。高速で飛翔する投射スキルはもちろん、不意の一撃にも対応できる優秀なスキルだ。

 

「ただ、運動が苦手というのはVRMMOでは関係ないですよ! 確かに運動神経の高いプレイヤーが優位であると考えられがちですが、VRMMOの実態は精神競技(マインドスポーツ)ですから」

 

精神競技(マインドスポーツ)……?」

 

「ふふっ、見てください。ちょうどあちらに【ゴブリン】さんがいますよ。戦ってみましょう」

 

 視線の先には暗い緑色の肌をした二足歩行の生物、【ゴブリン】がいた。右手には棍棒を持っていて、周囲をきょろきょろと見回している。

 

「え、でも……」

 

「だいじょーぶですよ。ほら、【ゴブリン】さーん、ちょっと来てください!」

 

 ボクの声を聞いた【ゴブリン】さんは、こちらに気づくなり駆け寄ってきた。そして明日香さんに近づくと、その手に持った棍棒を振りかざす。

 

「ひゃっ! ……()()()()()!」

 

 その瞬間――運動音痴という話はなんだったのか、そう突っ込みたくなるほど俊敏な動きで、明日香さんは横に避けた。

 

 【ゴブリン】さんは思いっきり攻撃を空振ったことで体勢を崩しかけたが、棍棒を構え直すと、今度は横薙ぎに振るいながら明日香さんに追撃を加える。

 

 しかし、それも明日香さんはバックステッポで軽くかわしてしまった。

 

「あれっ……なんで……?」

 

 攻撃を避けたはずの明日香さん本人が、自分の機敏な動きに困惑している。しかし、これこそがVRMMOが精神競技(マインドスポーツ)たりうる要因である【モーションアシスト】機能なのだ。

 

「相手に攻撃されたとき、受け手は当然こう考えますよね? 『かわしたい』『受け止めたい』――多くのVRMMOではそんなプレイヤーの意思を反映して最適な行動をアシストしてくれる機能があるんですよ」

 

 そう説明しながらも【フラムブレット】で【ゴブリン】を撃破しておく。

 

「これがなきゃまともな戦いなんて一般人には到底無理な話ですよ。あって当たり前の機能です」

 

「でも、それだと場合によっては……決着がつかないんじゃ……」

 

 回避したい、そう考えただけですべてを回避できるなら、いつまで経っても戦いは終わらない。そりゃそうですよね。でも、実際にはそうはならない。

 

「そこからがプレイヤーの腕の見せどころですね。物理的に回避できない状況、あるいは回避行動自体を取らせないような不意打ちであれば、攻撃は当たります。そうやって戦況をじわじわと動かしていく――詰将棋みたいなものですよ。それに――明日香さん、先ほどは()()()()()と考えただけですよね?」

 

「そうだけど……」

 

「それだけではどのように回避のアシストが行われるかは定まりませんからね。上級プレイヤー同士であれば()()()()、あるいは()()()()()()()――こういった思考が重要になるわけです。これが俗に言う熟練度(プレイヤースキル)を左右するんですよ」

 

「――なるほど……。参考になります」

 

 こころなしか、先ほどまでのたどたどしい話し方が少なくなってきている気がする。敵の攻撃を回避できて、少しは自信を持てたのかな? それなら次はご待望の戦闘ですね。

 

「それではあちらにいる【ゴブリン】を倒してみましょうか。はい、剣をどうぞ」

 

 【ストレージ】の肥やしになっていた剣を明日香さんに手渡した。彼女は両手で剣を受け取ると、しばらく抱えて眺めていたが――大きく息をつくと【ゴブリン】を見据えて剣を構える。

 

 空気が、ふっと変わった気がした。

 

「やってみます」

 

 その言葉を合図に、明日香さんは凄まじい速さで【ゴブリン】に向かって駆け出していく。

 

「はやっ!?」

 

 アドバイスをしたとはいえ、いくらなんでも速すぎる。もちろん先ほどの解説の通り、動作だけであれば【モーションアシスト】によって熟練者と同じ挙動を行えるというのは事実だ。

 

 ただし、実際にはDEXやAGIによってアシストに上限値が定められている。このゲームの初心者である彼女のステータスでは、アシストされる動きにも限度があるはず。

 

 ――それなのに、まるで()()()()()()()で【ゴブリン】に迫る彼女の姿は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 恐るべき速度で迫る明日香さんの姿を目にした【ゴブリン】はキーキーと甲高い奇声を発する。すると、その声を聞きつけ、2体の【ゴブリン】が姿を現す。

 

 1体だから大丈夫だと思っていたのだけど、どうやら待ち伏せていたらしい。どうしよう? サポートしたほうがいいのかな? そう考えているうちにも、戦況は移り変わっていく。

 

 瞬く間に【ゴブリン】に肉薄した明日香さんは、胸元を目がけて鋭く剣を突き出す。しかし、序盤の雑魚モンスターとはいえ【ゴブリン】も手慣れたものだ。突き出された剣をその豪腕で強引に掴み取る――

 

――次の瞬間、【ゴブリン】が勢いよく仰向けに転倒した。

 

 攻撃を受け止められたと察した彼女は、骨の砕ける甲高い音とともに、【ゴブリン】の胸部へ鋭い蹴撃を叩き込んだ。

 

 確かに【モーションアシスト】は考えるだけで達人の動きを再現できる。しかし、そもそも()()()()()()()()()()()()()()()()()というハードルが残っている。

 

 まだ戦闘に慣れていないはずの初心者が、あそこまで的確な行動を選択できますか、普通!?

 

 そして、彼女の行動はまだ終わっていなかった。

 

 倒れた敵を見るや否や、即座に次の行動に移る。剣に全体重をかけ、【ゴブリン】に突き立ててとどめを刺したのだ。

 

「あはぁっ♥」

 

 敵を倒した直後に艶めかしい声をあげる彼女に、ボクは思わずぞっとした。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()最適解を打ち続ける彼女の姿に思わず背筋が寒くなり、全身の毛が逆立つ。なんですかあの人は!? 殺し合いのプロかなにかですか!? 怖い!

 

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>ホラー映像流さないでください><

 

>放送事故かな?

 

>こんなやべー奴映すなよ! BANされるぞ

 

>でもエロいぞ

 

>音声だけなら実用性あるよ

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 そう考えたのはボクだけではなかったらしい。

 

 増援に駆けつけた2体の【ゴブリン】のうち、1体は実力差を悟り、愚かにも逃走を図る。もう1体の【ゴブリン】は無謀にも戦闘を続けるつもりのようだ。

 

 しかし、数の有利を崩すべきではなかった。万に一つの勝機をつかむためにも、2体がかりで戦うのがこの場の唯一の最適解だったはずなのに。

 

「あははっ、逃しませんよぉ……♥」

 

 恍惚とした表情で獲物を追う彼女の手から逃れられるものはいなかった。

 

「えっと……聞きたいことがあるんですけど」

 

「なんですかぁ? あはっ♥」

 

「えっと、なんかキャラ変わってませんか?」

 

「そうですかぁ? 突き抜けるような快楽をその身に感じて……頭がイっちゃったのかもしれませんねぇ……まあ、そのうち治りますよ♥」

 

「えっと……VRMMOが初めてで、運動も苦手だとお聞きしていたのですが」

 

「あぁ……それですか。おねえさまのおかげですわぁ……♥ おねえさまの素晴らしいお話をお聴きして、似たようなゲームをやったことがあると気づいたんです♥」

 

「おねえさま!? ……え、えっとVRゲーム以外でですよね? それってなんでしょう」

 

「ふふ……♥ この世界って、T()R()P()G()に似ていると思いませんか?」

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