卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
視点を変えて明日香さん。明日香さんは寿美礼さんとは逆に、逃げも隠れもせずに縦横無尽にジャングルの木々を駆け抜けていた。
スライムの姿で。
ぽよぽよと跳ねながらも弾丸の如き速度で動き回る明日香さんはきゅーとで可愛らしい。
そしてプレイヤーを見つけると全力タックルで派手に吹っ飛ばしつつ、毒をばらまいていく。
自分で仕留める方針ではないようで、当て逃げしたあとは即座に別の場所へ向かう。ただ、この当て逃げと同時に付与される毒が厄介だ。
【サバイバル杯】においてはアイテムの持ち込みができないため、必ずしもプレイヤーが【解毒薬】の類を確保できているとは限らない。となると、明日香さんに体当たりされたプレイヤーは、手を下さずとも少なくない割合がそのまま毒で倒れる。
おそらく本戦では今回の模擬戦を教訓として素材を採取し、
眺めていると、スライム明日香さんは時折《SANチェック》を使用しているようだ。触手も出てこないし、そこまでの恐怖感も襲ってこない。それでもプレイヤーはビビっているから効果はあるみたいだけれど、やはりあの力の本領は
やがてプレイヤーは次々と減っていき、明日香さんが勝利したところで模擬戦は終了。参加プレイヤー全員が観客席まで飛ばされてきた。
「やっぱり【サバイバル杯】独自の戦術視点ってのが必要みたいですね。どんな感じでしたか?」
感想を聞いてみると、他のプレイヤーを討伐したときに得られる回復アイテムや強化アイテムが重要で、積極的に狩りに回っていたという人もいた。一方で、リスクを負うよりは終盤まで潜んでいたほうがいいと考えた人も。みんな、それぞれの視点と戦術で戦っていたようだ。
回数を重ねていけば定番の戦術なども固まっていくのだろうけれど、まだ始まったばかりのルールならこんなものだよね。ボクも本番に向けて練習をして、より良い戦い方を模索していかないといけない。
そんな中で面白い戦術を取っていたのが『技能士』ことメグさん。
彼女は【マクロ】機能の伝承者なだけあって、やはりそれを存分に利用していた。
現地で木々を伐採して素材を集め、【ホーム】を建築していたのだ。それも、すべて【マクロ】で。
たとえば、周囲から【木材】に該当するアイテムを収集する【マクロ】。普通に考えたら【マクロ】はモーションを記録する機能なので、そういった【マクロ】はまったく同じ地点でしか再現できないと考えていたのだけれど、実際には違った。
彼女は【モーションアシスト】に対する『命令』を記録しているんだ。
木々を伐採する動作をそのまま記録してもまったく同じ動作しかできないけれど、『付近の木々を伐採する』と【モーションアシスト】に指示を送る部分を記録すれば、必ずしも同じ状況を再現せずとも状況に合わせて最適解を導き出してくれる。
もちろん【マクロ】を使わずとも同じ命令を送れば同じように伐採できるのだけれど、それでも事前に準備しておいた作戦を再現するのは、その場その場で考えるのに比べて手早さが段違い。彼女は瞬く間に家を建築してしまっていた。それで勝てるかどうかは別問題だったようだけど。
つまり【マクロ】機能は、状況を忠実に再現するだけでなく、応用の幅を利かせたファジーな行動パターンも記録できるということ。面白いですね。
と、ボクがメグさんを褒めちぎっていると、他のプレイヤーさんたちが«家建築»の【マクロ】を購入しに集まってきた。ボクも一番乗りで購入させてもらってからその場を離れ、明日香さんたちのもとへ。
「おめでとうございます!毒の使い方がぱーふぇくとでしたね!」
「でも、《SANチェック》を最大出力で扱えないのは残念ですわ。本番ではどちらのキャラクターで参戦しましょうか♥」
《SANチェック》の本領を発揮せずとも、〈装飾表現〉の使い手である明日香さんは、攻撃を巧みに回避しながら毒をかけて逃げ回るだけで勝ってしまったわけだけどね。ぷにぷにの体でぴょんと跳ねながらボクの肩に乗ってきたので、そのままなでなでしてあげる。
「さすがよね、私の銃弾がぜんぜん当たらなかったわ。これに関してはサイズの影響もありそうだけどね」
はぁ、とため息をつく寿美礼さん。試合としては一方的でしたからね……。
確かにスライム形態の明日香さんは体格が小さい。それに加えて、どこに跳ねるのかが動きから予測しづらいのだ。
これが人間のアバターだったら寿美礼さんの弾が命中していたはずだ。なにせ寿美礼さんは【スナイパー】の
【スナイパー】
・あなたは遠距離武器のエンチャントを強化する
・あなたは遠距離攻撃の威力を増加させる
・あなたは遠距離攻撃の威力を軽減できる
・あなたは遠距離攻撃の射程を増加させる
・あなたは遠距離攻撃の弾道を操作できる
【A−YS】によって【フォッダー】にもたらされた新たな力である
「さて、それではボクも参加しますよ!今からログアウトまでは練習漬けです!」
【サバイバル杯】に向けてボクができることはぱーふぇくとな戦略の構築のみ!そのためにも練習を繰り返していきましょう!
【START!!】
試合開始の合図と共に木々の生い茂るジャングルの中に転移させられたボク。すぐさま周囲を確認したけれど、どうやら誰もいないようだ。ボクの持つ
マップを確認するとこの場所はジャングルの最北端。エリアの境界線のすぐ近くだ。時間経過で活動可能なマップが狭まっていくことを考えると、早めに素材を採取して別の場所に向かわないといけない。
とりあえず近くにあった木の枝を拾い、【ドローイング】によって木刀に加工。そのまま【マクロ】で周囲の木々を伐採して家を建築し、【ホーム】として登録して【ストレージ】に収納する。
「家は必須ですからね。ないと話になりませんよ!」
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>瞬く間に家ができてて笑える
>マクロやべーな
>サバイバルなら家は必要だよな!
>サバイバルなら家は必要(戦闘的な意味で)
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次に行うべきはアイテムの確保。【アイテムマスター】にとってアイテムの在庫は武器であり盾。あらゆる状況に対応するためにも、事前の採集と生産は欠かせない!
《『心眼』》と【パスファインダー】の併用により、周囲を警戒しつつも全力で素材採集を始めた。
テクニックその76 『オートマクロ』
これさえあれば自動狩りができる!?【モーションアシスト】に手順を念じて記録することで、その場の状況に合わせた行動を可能にする素晴らしい技です。ただ同じ動作を繰り返すだけではない、応用性の高い【マクロ】が実装できますね。
マクロその4 『ホームクリエイト』
家を建築するための最適な手順書。状況に応じて素材の採取を臨機応変に行えます。