卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

142 / 577
第140話 Code:Rods from God

 【サバイバル杯】が始まり、ジャングルのエリアに飛ばされる。

 

 【マップ】を確認すると南エリアであることがわかった。南エリアは鉱石が多いんでしたね。

 

 【アイテムマスター】としてはポーションの確保が急務だ。急いで北に向かいたいところだけど、かといって現在地の有用な鉱石を見逃すのは非常にもったいない。途中でほかのプレイヤーに遭遇することも考えると、装備を整える必要がありそうだ。

 

 周囲を警戒しつつ、無造作に散らばっている石や鉄を拾い集めていく。どうやらほかのプレイヤーは近くにはいないようだ。

 

 そして鉄を加工して槍を数本と防具一式、それから【女神像】を作成する。

 

 【エアジャンプ】を駆使して木の上に登っていき、さらに高く跳躍してジャングルの上に出たところで【マクロ】を発動させた。

 

「«コントロール»«疾風迅雷»!」

 

 宣言した瞬間、一瞬にしてボクの体が最大限に加速する。制御不能な圧倒的なスピード。地上で使っていれば一瞬にして木々に激突してお陀仏になっているであろう。けれどジャングルの上で使えば、障害物はない。

 

 まっすぐに突撃する【マクロ】だから、重力による落下も考慮しなくていい。空中で使おうが何をしようが、まっすぐ果てまで駆け抜ける!

 

 ただし、このままでは【サバイバル】のエリア範囲外である赤い線を突き抜けてダメージを受けてしまいかねない。そんな暴走する最速をコントロールするのが、その名のとおりの【マクロ】«コントロール»。

 

 赤い線が見えた時点で«疾風迅雷»を強制中断するように【モーションアシスト】へ指示する【マクロ】を組んである。ほかにも障害物に当たる直前に中断するようになっているので、接触事故で死亡することはありえない。

 

 一瞬にして最北端まで駆け抜けたボクは【マクロ】の中断によって地上に自然落下し、多少の落下ダメージを受けながらも地面に着地。即座にアイテムを回収していく。

 

 いくつかのポーションを作りながら周囲を探索していると、プレイヤーを発見した。

 

「おっ、いいところにアイテム(プレイヤー)さんがいますね。あれも回収していきましょう。——不意打ちで。」

 

「聞こえてるんだよなあ」

 

 独り言の声が大きすぎましたね。配信している以上、仕方のないことではあるのですが。

 

 ボクの言葉を聞いて振り向いた男性プレイヤーの格好は試合開始時に配布される初期防具のみ。武器は現地調達しないといけない以上、【モンク】でない限りは基本的にこちらが優位だ。

 

 というより【サバイバル】のルールと【モンク】がマッチしすぎなので、もう全員【モンク】であることを想定して戦わないといけないレベルですね。

 

「バレてしまっては仕方ありません。目と目があったらバトル! 古来からの常識ですよ!」

 

「おk。ちなみに言っておくが俺は【モンク】じゃない。【メイジ】だ」

 

「おや? 言ってしまっていいんですか?」

 

 ボク自身が『近距離』型(ビルド)の【メイジ】を組んでいるとはいえ、基本的に魔法系職業(クラス)は接近戦において不利なはずだ。それでも【メイジ】を選んでいるというならば、想定される型(ビルド)は数種類に絞られる。

 

「いいぜ、だってもう準備ができているからな。〈魔の法よ、刃となりて敵を打ち滅ぼせ〉【マナブレイド】」

 

「——なるほどね。それならボクは《«ガゼルフット»》で行かせていただきますよ!」

 

 その詠唱を合図として戦いが始まる。彼の発動したスキルは魔法の剣を生み出すスキル。生成した剣による攻撃はINTに依存するため、INTのステータスを接近戦に活かした『近接特化』型(ビルド)のスキルといえるだろう。

 

「【イグニッション】!」

 

 相手の構成を把握したボクは【パイロキネシス】を放射しながら後方へ退く。

 

 おそらく彼は【テレポート】を主軸とした型(ビルド)だ。不意打ちには警戒しないといけない!

 

 推測どおり、ボクの放つ炎が当たる直前に男は無詠唱で【テレポート】を発動させた。そして、【パスファインダー】が真上から振り下ろされる魔力の刃を感知した。

 

「【イグニッション】!」

 

 そしてその攻撃を即座に【サイハンド】で迎え撃つ!

 

 強力なスキルならともかく、魔力の剣程度なら【空神の加護】込みでも【イグニッション】込みの【サイハンド】で打ち破れる!

 

 強引に攻撃を相殺して剣ごと男を殴り飛ばしたボクは、吹っ飛ばされる男を尻目に周囲の警戒を行う。ここは【サバイバル】の世界、いつどんな乱入があるかわからない。

 

「ちょっと待って、【イグニッション】はもう使ったんじゃないの? 再使用時間(リキャストタイム)は?」

 

「先ほどのはスキル名を叫んだだけですけど?」

 

 ダメージは与えたはずだけど、明らかにHPの減りが少ない。どうやら【魔力障壁】を持っているようですね。

 

「やっぱり付け焼き刃の戦術じゃあ、卍さんにはかなわないって感じ?」

 

 自嘲するように笑う男だが、自分の戦術が通用しなかった割には案外余裕の表情だ。まだ奥の手を持っている……?

 

 それなら相手に戦術を押し付けられる前に片づけるしかない。ボクは«疾風迅雷»によって一瞬にして男に肉薄し【サイハンド】の張り手を撃ち込もうとした——そのとき、男の体がぶれた。

 

 あっけなく攻撃を空振りで終えたボクに対して真横から魔力の剣による一撃が振り下ろされる。

 

 なんとか強引に体を反らして攻撃をかわしたけれど——今の動きはなんだ? 改めて男のアバターをまじまじと見つめると、そのからくりがすぐにわかった。

 

 あれは〈感受誘導〉か! 言ってしまえば恐怖をプレイヤーに浴びせるのと仕組みは同じだ。【モーションアシスト】によって位置関係を誤認させられたんだ。

 

 よく見直してみれば《『心眼』》も【パスファインダー】も、ボクが認識している男の位置とはまったく違う場所にプレイヤーが存在していることを告げている。

 

 情報を観測できる能力が2つも備わっていてなお誤認してしまうとなると、あれは間違いなく〈魂の言葉(ソウルワード)〉の域に達している。

 

「からくりは教えてくれないんですか?」

 

「内緒」

 

 軽く言葉を交わしてボクたちは再び接近戦に移る。«疾風迅雷»を使って先ほどと同じように瞬間的に距離を詰める。あえて〈感受誘導〉で生み出された幻影に向かって。

 

 種が割れていないと踏んだのか先ほどと同じように、ボクの横から剣を突き出す男。それを紙一重で回避しながら【サイハンド】の力を込めた回し蹴りを浴びせる。

 

 この攻撃は意図的に物質干渉力を低下させている。つまり、相手は吹っ飛ばない! 追撃として回し蹴りの勢いのまま脚で男を絡め取るようにして強引に引き寄せ、追撃のメガトン【サイハンド】を連打する!

 

----

>やべー動きしてて笑った

 

>足がぐにゃって動いてんぞ

 

>灑智ちゃんの再来か?

----

 

 そう、これは灑智がやっていた〘リアルステーション〙による本来不可能な可動域の操作と同じだ。あれは本人に体を動かしている感覚がないからこそできた技だった。これまでは人間としての動きのうえでの最適解という常識にとらわれすぎていたから。けれど、あのTRPGによる特訓によってボクは常識に則った動きという概念を克服したんだ!

 

 とどめに【イグニッション】【サイハンド】を顔面に叩き込むと、男は粒子になって回復アイテムに変換された。これでボクの勝利だ。

 

「初戦なのにとんでもない敵でした。試合の後にまたお会いしたいところです」

 

 ゆっくり一息つきたいところだけど、【ダブル杯】と違ってこの大会は常在戦場。常に次の戦いに向けての事前準備を行っていかなければ勝ち目がない!

 

 ここからはテンプレに従って行動する。周囲の木材を刈り取り2つの家を建築し1つをその場に設置、1つを【ストレージ】に収納する。周囲の薬草・毒草を刈り取ってポーションや付与(バフ)アイテムを大量生産。さらにお徳用ポーションにそれらを変換。ここまでの工程を【マクロ】によって手順を記録した最適解で終わらせた。

 

 そしてそのまま東に一直線で向かう。東には完成品のアイテムが多いんでしたね。

 

 例によって«疾風迅雷»を経由して一瞬で飛ぼうと思ったのだけど、ボクに近づいてくるプレイヤーが1人いることに気づいた。さりげなく〈ストリームアイ〉によって確認すると——知っているプレイヤーだ。

 

「ああああさん、ですか」

 

「……あのときはお世話になったっすね。その借りを返しに来たっすよ」

 

 かつて【ダブル杯】で〈改造行為(チート)〉の存在を世に知らしめたプレイヤー、ああああさん。腕を〘銃器〙に、足に〘ジェット噴射〙の機構を内蔵したガチ勢だ。

 

 そんなああああさんだが、以前と比べてもさらなる改造を施していることは見た目でもわかる。

 

 彼の後頭部に巨大なカードチップのようなものがぐさりと突き刺さっているのだ。

 

「借りを返してくれるんですか? ありがたいですね。アイテムとか?」

 

 もちろん、そんなわけはないだろうけど。

 

「——あんたをぶっ飛ばして、代わりにAIを破壊する。それが僕の礼っすよ!」

 

 その言葉とともに戦いの火蓋が切られる。ああああさんの初手はやはり銃弾による牽制。後方に下がって距離を取りながら弾を発射してくるけど、ここ最近の戦いでとうの昔に見慣れたタクティクスだ。

 

「ボクに今さらそんな手が通用するわけないでしょう!」

 

 襲い来る銃弾のすべてを片っ端から叩き落とし、相手にダメージを与えていく。このまま昔と同じような戦い方をするなら同じように仕留めるだけですよ?

 

「今のは小手調べっすよ」

 

 しかしダメージを与えたのにもかかわらず、減ったそばから一瞬にしてHPゲージが全回復した。アクションなしでの回復行為。それも自然回復のたぐいではない——間違いない、【オートユーザー】だ。ああああさんの第一職業(クラス)は【アイテムマスター】!

 

 「«疾風迅雷»!」

 

 職業(クラス)を察したボクは一瞬で相手の懐に潜り込んで張り手を撃ち込む! 自分自身が使い手だからこそ、【アイテムマスター】の危険性はよくわかる。速攻で潰さなければ!

 

 物質干渉力を下げた張り手によるコンボの連鎖。相手に後退(ノックバック)をさせないことによって連撃につなげていく。これによってああああさんのHPは大きく下降していくのだけど——そこで彼が動いた。ラッシュをくらいながらもああああさんは腕をゆっくりと空高く掲げようとしている。銃器である右腕ではなく、左腕。

 

 ダメージによる後退(ノックバック)をさせないということは、こちらの攻撃によって相手の行動が阻害されないということだ。奥の手を切られることを察したボクは【ブロールート】によって物質干渉力を大きく増加させ、ああああさんを大きく吹き飛ばした。

 

 ああああさんはくの字になって後方に飛びつつも左腕を天に向けて突き出し、宣言する——。

 

「——〘〚Code:Rods from God〛〙」

 

 その瞬間、頭上からボクをめがけてばくだいなエネルギーが放たれるのを感じ取る。これは【パスファインダー】の能力でも【プレコグニション】のスキル性能でもない。——《『心眼』》によって察知した〈魔導〉の発動予兆だ。

 

 即座に後方へバックステッポすると、先ほどまでボクがいた場所に紫色の光が何条もの光束になって降り注いだ。

 




テクニックその80 『フェイクブート』
スキル名を叫んだらスキルが発動する、そんなわけないじゃないですか! 日常会話で誤爆しちゃいますよ!
デメリットやリスクは特にないですが、スキル発動の演出を知っている人には気づかれます。

マクロその6 『コントロール』
«疾風迅雷»を緊急時にキャンセルするという【マクロ】です。
これさえあれば激突事故の心配は無し!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。