卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
「流石なのです!«自動戦闘»があれば卍さんを倒せるかと思ったのに、全然だったです」
練習試合が終わって、ボクたちはまた【マクロ】の話し合いを始めた。
たしかに«自動戦闘»には欠点もあったけど、それでもモンスターを自動で狩るぶんには、まったく不自由はなさそうだ。«ガゼルフット»のような半自動サポートとは役割が違うだけで、用途さえ間違えなければ十分実用範囲だろう。
というわけで今回の戦闘を参考に、次は補助を重視した【マクロ】を考えてみることになった。メグさんと2人で意見を交換していく。
「普段は動作しないけど特定の条件のときに勝手に動いてくれる【マクロ】。やはりそちらの方面が便利そうですよね」
「なのです。«自動戦闘»の欠点を克服できるのです」
メグさんもうんうんと首肯する。
あるいは«疾風迅雷»で壁に当たらないように調整できる【マクロ】である«コントロール»のような特殊なパターンもあるけど、そちらの路線で何かあるかな?
「視聴者さんの方々は何かあるです?」
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>オートユーザーの起動に条件をつけることができるね
>攻撃を受ける直前に起動してタブレットを使うとか?
>でもタブレットくらいは自分の判断で使えるでしょ
>簡単すぎるとマクロ使うまでもないのが悩みどころだな
>感知に使うってのはどう?
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「感知?」
コメント欄を流し読みしていると、その中にちょっと面白い発想が紛れ込んでいた。話を聞いてみると、モンスターを視界で観測したら自動で合図を行うことによって存在を認識する、というようなイメージらしい。
堂々と歩いているようなモンスターと相対するときには意味がないけれど、なるほど、無意識のうちに視界の端で見逃してしまうような
「でも、自分も気づいていないものを条件に【マクロ】を始動させることはできるんでしょうかね?」
「このコメントの場合は無意識で気づいたらってことじゃないです? さすがに気づいてないものに反応するのは無理だと思うです」
「ですよね。そんなことができたら2度と不意打ちなんて通じないじゃないですか」
「たしかに【モーションアシスト】は相手の最適解を読み取ったり、自分の知らない情報を踏まえて最適解を提示してくれるけど、それ以外の情報は流石に無茶……なのです?」
というわけで早速試してみることになった。メグさんが目を瞑っている間にいろんなアイテムをばらまいて、その中から小さい【鉄鉱石】をどれだけ拾い集められるか実験する。
小さいと言っても普通に気づく範疇の大きさなので、時間をかければ拾い集めていくこともできる。だがこの【マクロ】が成立するならば、本人の主観では気づけなかった場所に勝手に近づいて拾ってしまうだろう。第三者から見れば、何をしているのかまったく伝わらない実験だけど……即興でお手軽に試すなら、まあこんなものだ。
「さあスタート! 拾ってみてください!」
「わかったのです! よいしょっと」
そう言うとメグさんは、ひょいひょいと次から次へと【鉄鉱石】を拾い集めていく。ダミーとして似たような色の鉱石もばらまいたけど、それも無視して正確に目標物だけを回収していった。
それからめぼしい【鉄鉱石】はすべて拾い集めて、次にメグさんは地面を素手で掘り出す。
「あっ、そこは……」
掘った地面の下から現れたのは、ボクが仕込んでいた【鉄鉱石】だ。それをメグさんは【ストレージ】に入れて、すべての回収が完了した。……と思ったら、なぜかメグさんが急に明後日の方向へ駆け出した。
「ど、どうしたんですか!?」
「わかんないのですー!」
メグさんのあとをついていくと、気づけば街を抜けて外のフィールドまで来ていた。そしてメグさんは、そこでしゃがみ込んで【鉄鉱石】を拾った。
「……」
「……」
「メグさんには『鉄鉱石ハンター』の二つ名を進呈しましょう」
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>鉄 鉱 石 ハ ン タ ー
>久々に二つ名進呈回が来たな!!
>技能士じゃなかったのかよ
>デュアル二つ名ホルダーとかうらやましい
>いらなすぎて逆に面白い
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「いやいや!【マクロ】を使えば誰にでもできるですから!」
結局そのまま【マクロ】を使い続けると地の果てまで【鉄鉱石】を拾いに行きそうなので、一旦中断。
ボクもこのとき初めて気づいたけど、まさに灯台下暗しというやつだ。別に【マクロ】を経由しないで直接【モーションアシスト】に命令しても同じことができるわけですし、もっと早く活用してる人もいたでしょうね。
普通に【モーションアシスト】を使うときって、「目の前にある
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>じゃあ不意の攻撃を防ぐこともできるし、なんなら卍さんのところに行く!って宣言したらオートで卍さんのいる方向に走ることができるわけだよね?
>ガチでRPGでもなんでもないだろこれ
>モーションアシストに全人類が支配されそう
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「……さて! この情報を活かしてみなさんもどしどし【マクロ】を作ってくださいね!」
「……パンドラの箱を開いてしまった気がするのです」
と言ったところで配信は一旦終了。次は〈
というわけでメグさんに早速聞いてみることに。
「そういえばメグさん。このゲームをプレイしてなにか最近調子が良くなったなーって思うことはありました?」
「急になんです? そうですねー……あっ。そういえば最近、すっごく感覚が鋭敏になった気がするのです」
「感覚が?」
「そうそう。私は街中で他の人の話を盗み聞きするのを趣味にしてるのです。そしたら最近はひとりひとりの声がちゃんと聞き取れるようになった気がして……」
「聖徳太子かな?」
耳が良くなったっていうのもありますが……どちらかというと、言葉の処理能力が進化した感じでしょうか。
「まあ、ずっと同じことをやってたらだんだんそういうふうに慣れてくかなー?と思ってそのときはなんとも思わなかったですけど、参考になったです?」
「なるほどなるほど……メグさん、ちょっとお願いがあるのですけど、大丈夫ですか?」
「大丈夫なのです! ……私のできることなら。いったいなんなのです?」
即断で赤丸の
「よし、それじゃあこれからボクと一緒に、病院に行きましょう!!」
テクニックその85 『全知のアシスト』
本人が知らない情報であっても【フォッダー】を統括する【モーションアシスト】様は知っています。
«オードジャッジ«»を起動しているなら自分が気づいてない攻撃を回避することもできますし、隠されたアイテムを拾いたい!と思えば思いもよらないところからアイテムを拾ってくれる。
そもそも○○をドロップする敵のところに行きたーい!なんて指定でも簡単に従ってくれる辺り、当たり前の話ですね。