卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第163話 勧誘戦争

 次の日、【ノーグッド】の【エリンの錬金工房】近辺にログインした途端、賑やかな呼び込みの声が耳に飛び込んでくる。

 

「うちの【加護】は強いよー!妨害(デバフ)を回復できる【キュアバレット】が自動装填されるんだ!」

「は?【免疫】システムがあれば妨害(デバフ)の回復なんていらないだろ。AGIを増加させるこっちの【加護】はあらゆる場面で活用できるよ!」

 

 そして【エリンの錬金工房】の周囲には、【祠】が密集する光景が広がっていた。

 

「昨日の今日でこんなになっちゃったんですか!?」

 

 急いでネットの情報を調べてみると、またしてもあかりちゃんさんのサイトに詳細な情報が載っていた。

 

 クエストの達成方法については、『卍さんが発見したよ』という一文と配信URLを明記した上で引用されており、ページの後半では【加護】の仕様や便利なスキルなどが事細かに説明されている。

 

 そのページの説明によると【加護】は『信仰』によって段階的に性能が強化されていくらしい。スキル一覧を見てみると【不死鳥の加護】も昨日とは違った効果に変化していた。

 

【不死鳥の加護】

[パッシブ][スイッチ][ブレッシング][炎属性][妨害]

効果時間:60s

効果:[炎属性][スキル]の[命中時][一定時間][キャラクター]に[継続的]に[ダメージ]を[与える]。この[効果]は[キャラクター]の[炎属性][耐性]を[無視]する。

 

 効果時間も伸びていますね。さらに妨害(デバフ)によるダメージが炎属性耐性を貫通できるようになっている。【サモン・フィーニクス】も相手の耐性を貫通できるので、大元になったスキルにさらに近づいた形だ。

 

 他にはどんな【加護】があるんだろう?周囲の【祠】を見て回ると、強力そうな【加護】がいくつもある。

 

【巨人の加護】

[パッシブ][ブレッシング][オート]

再詠唱時間:10m

効果:[カタパルト]を[発動]する。[回数]を[2回]として[扱う]。

 

 事前に詠唱しておけば、任意のタイミングで岩石を放てる優秀なスキル【カタパルト】。その優秀な効果を、詠唱なしで自動的に受けられるのがこの【加護】らしい。

 

 本家の【カタパルト】は12回まで撃ち込めるので、2回というのは控えめな回数ではあるが、利便性はかなり高い。魔法系職業(クラス)であれば間違いなく必須級となる優秀なスキルだろう。

 

「強いですね……他の【加護】も様々な(ビルド)の鍵になるようなスキルが多いですし、これは環境が大きく変わりますよ」

 

 プレイヤーが獲得できる【加護】は1つだけ。ボクは宗教上の理由で【不死鳥の加護】を外すつもりはないが、他のプレイヤーがどんな【加護】を使ってくるのか、チェックしておく必要がありそうだ。

 

 とはいえ、しばらくは対人戦のイベントに参加するつもりもない。後回しでも問題ないだろう。

 

 ボクは《ロールプレイング》を発動させ、『わたし』へと切り替えた。

 

「よーし、今日はわたしの配信パートだよ!屠神 荒罹崇のくーる&てくにかるちゃんねるへようこそー♥」

 

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>いえーい!

 

>冷静に考えると全く違う人格を再現するとか怖くない?

 

>再現してるだけで新しい人格というわけではないのでセーフ

 

>とがみん待ってました!

 

>とがみん好き

 

>とがみんの配信だから遠慮なく言うけど卍さんも応援してるよ

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「さて、今日はわたしが実況をお送りするわけだけど……。卍さんの昨日の配信が、再生数すごく伸びててずるい!これは負けるわけにはいかないよね♥」

 

 これに対抗するには、わたしも画期的な発見をしたり華麗なバトルを披露したりしなきゃいけない。けれど何もないところから発見は出てこないし、バトルといっても既存のモンスターを倒すくらいじゃふつーの配信にしかならない。

 

 それならわざわざ同じ土俵で戦う必要はないかな?ふつーの配信にしかならないなら、あえて今日はのほほんとしたふつーの配信に特化してもいいんじゃないかな、と思う。

 

 配信を沢山の人に見てもらえたらもちろん嬉しいけど、それよりも自分が楽しくなるようなことをやっていかなきゃね。

 

 本当は身体が2つあったらいいのになー。それなら方向性の違う配信をやってもなんにも問題ないし、時間に縛られずに自由に遊べるのに。

 

 そんなことを考えながらも、わたしはめりぃちゃんを呼んで一緒にほのぼのとお散歩したり、道行く異形さんとすきんしっぷを図ったりしつつ、何事もない配信をお送りしていく。

 

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>とがみんってやっぱり卍さんと好きなものとか違うの?

 

>明日香さんを受け継いでるし闘うのは好きそう

 

>卍さんは好きなもの配信と炎しかなさそう

 

>需要と供給が一致してるからセーフ

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「わたしは肉弾戦が好きかなー♥【サイキック】とか遊んでみたいかも。他の職業(クラス)も気になるよねー。みんなはどんな戦い方が好きなの?」

 

 そう問いかけると、無傷で相手を一方的に倒せる戦い方、とか舐めプで油断させておいて急に本気出して圧勝してエモーション連打、とか。ひねくれた答えばかりが返ってくる。あとは、他のVRMMOではモンスターの姿で戦うのが好きだったというコメントも。

 

 そういえば、【転生】なんてシステムがあったんだっけ。今はうさぎさんの姿になれるし、『ボク』との差別化も兼ねてそっちのレベル上げをやってみようかなー?

 

 善は急げと【メニュー】を開き、キャラクターチェンジの機能で【ジュエルラビット】を選択すると、視界がぴかっと光り、自分の身体が急激に縮んでいき、やがてロップイヤーのうさぎさんの姿になった。

 

「わっ、かわいい!」

 

 うさぎになったわたしの姿を見て、めりぃちゃんが大喜びで飛び跳ねる。

 

 モンスターの姿は職業(クラス)が1つしか獲得できない代わりに固有のスキルがあるんだったっけ。

 

 【ジュエルラビット】のスキルはなにがあるのかな?【メニュー】を開き、取得可能なスキルを見てみると、レアなボーナスモンスターらしくユニークなスキルがたくさん。

 

 一緒にいるだけで味方の全ステータスが上昇する【応援団長】。敵も味方も巻き込んでダメージを大幅カットする【癒やし空間】。さらに今まではNPCの固有スキルだった【支配領域】も獲得できるみたい。

 

【支配領域】

[パッシブ]

効果:[自身]を[起点]として、[エリア]を[形成]する。

 

【拡大領域】

[パッシブ]

効果:[自身]を[起点]として[形成]する[エリア]の[範囲]を[拡大]する。

 

【連結領域】

[パッシブ][スイッチ]

効果:[自身]の[形成]した[エリア]に[重なる][エリア]を[結合]する。

 

【幸運招来】

[パッシブ]

効果:[自身]の[形成]した[エリア]にいる[味方]が受ける[支援]の[効果]を[増加]させる。

 

【応援団長】

[パッシブ]

効果:[自身]の[形成]した[エリア]にいる[味方]の[全ステータス]を[増加]させる。

 

【癒やし空間】

[パッシブ]

効果:[自身]の[形成]した[エリア]における[ダメージ]を[半減]させる。

 

【退魔結界】

[パッシブ]

効果:[自身]の[形成]した[エリア]における[妨害]の[確率]を[低下]させる。

 

【ジュエルシールド】

[アクティブ][召喚]

消費MP:6 詠唱時間:2.5s 再詠唱時間:30s 効果時間:30s

効果:[自身]の[ステータス]に[依存]した[耐久]を持つ[障壁]を[召喚]する。

 

 

「基本的にはいるだけで効果があるスキル、って感じかな?自分が積極的に戦いに行く感じじゃないみたいだけど、こういうのもいいよねー♥」

 

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>寄生プレイが捗りそう

 

>支配領域があるのか。いいね

 

>これビショ以外選択肢なくね

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 『ビショ』——【ビショップ】と非常に相性がいいというのは間違いない。たった今紹介したほとんどのスキルは、『自身が形成したエリアの中で効果が発動する』という性能になっている。エリアというのは、例えば【フルバーニング】のような攻撃を行ったり、支援(バフ)を発動する場合に影響範囲を定義するフィールドのことで、スキル説明文に記載されていることが多い。

 

 そして【ビショップ】は、【ジュエルラビット】のスキルと同じように、形成したエリアの中でサポートするタイプの受動(パッシブ)スキルが多く存在している。

 

 つまり【ビショップ】は【ヒーリングエリア】のような継続回復(リジェネ)が行われるエリアを張ることによって、本来の効果に加えてエリア内の味方の攻撃力を引き上げることができる。そしてこれを主軸とした(ビルド)も当然あるんだけど……。基本的にエリアを形成するには能動(アクティブ)スキルを行使する必要がある。

 

 一方で【ジュエルラビット】のスキルには、【支配領域】という自身の周囲にエリアを張ることができる受動(パッシブ)スキルがある。このスキルが形成するエリアにはなんの効果も含まれていないけれど、【ビショップ】に存在する受動(パッシブ)スキルの起点にすることができるというわけだ。

 

 逆に【メイジ】とはやや相性が悪い。【ビショップ】の形成するエリアは基本的に支援(バフ)を目的とするものだけど、【メイジ】の形成するエリアはその多くが攻撃スキルだ。

 

 つまり範囲攻撃で相手を押しつぶそうとすると、自動的に【癒やし空間】が適用されて魔法の威力が半分になってしまう。

 

 さっそく【女神像】を【ストレージ】から取り出して職業(クラス)チェンジしようとして——気がついた。アバターが違うから【ストレージ】が共有されていないみたい。

 

 正確には【アイテムマスター】の影響で増設されていた容量の分が、現在【アイテムマスター】じゃないわたしには使えないという仕様らしい。

 

 仕方ないので一旦元の姿に戻って【女神像】を取り出し、うさぎに戻ってから改めて収納することで、いつでも取り出せるようにしておく。

 

「さて、コメットでレベル上げしてもいいけれど——せっかくこういうスキルなんだし【パーティ】狩りに参加してみるのもいいかもしれないね♥めりぃちゃん、どこ行く?」

 

「あ、じゃああたし、行ってみたいところがあるのー!」

 

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