卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
「はい、みなさんお待たせしましたー! 装備を整えてきましたよー。どうです? ボクのきゅーとな魅力が溢れ出る優秀な装備じゃないですかー?」
恥ずかしがっていても仕方がない。ボクは視聴者さんに新装備のデザインを自信たっぷりに紹介してみせた。
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>卍さん死ね。ゆうたの画像なんかいらね……うおおおおおおおお!!
>ありがとうございます!ありがとうございます!
>えっっっっっっっっっ
>痴女かな??
>VRのアバターなんて好き勝手いじれるんだから無意味なんだよなぁ
>何言ってんだ。卍さんは電子の妖精だから中の人なんていないぞ
>普段は卍さんの事をディスってる癖に調子のいい奴らだ
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罵声と歓声が入り混じるチャット欄を眺め、ボクは肩をすくめつつも口元を緩めた。
「そしてここは【闘技場】! 以前にゆうたさんと戦った場所ですね! おっさんにもすでに来ていただいています。改めて自己紹介をお願いしますね」
装備の紹介を終えて、配信の視点をおっさんへ向けた。
「やあやあ、視聴者諸君。今日は俺が華麗に活躍する姿を目に焼き付けてくれよな?」
コメント欄には、帰れだの引っ込めだのといった、おっさんに対するラブコールが溢れ出した。人気があるようでなによりです。
さて、そろそろ模擬戦を開始しましょうか。
ボクたちは戦闘エリアの中央で、一定の間隔を空けて待機する。そしてバトル開始の申請を行うと即座に承認される。数十秒の待機時間を経て試合が始まるだろう。
「さて、さっきはあんなことを言ってましたけど、簡単に負けてしまわないようにしてくださいね?」
「はっはっは。冗談はよしこちゃん。俺が負けるわけがないだろ?」
試合前の煽り口上の応酬が続く。もちろん本気で言っているわけではないが、パフォーマンスとしては必要不可欠なものだ。
「【フォッダー】界最強の【メイジ】はボクですから」
【5】
「自爆しかできない炎属性がほざくねぇ」
【4】
【3】
「では、そういうあなたはなんの弱小属性使いなんでしょうね?」
【2】
「知りたいか?」
【1】
【START!!】
「〈終末の劫火に身を焼かれ〉……」
「【開眼】――〈神風の祝福を〉【フェアリーブレス】だ!」
ボクが【ブレイズスロアー】を詠唱しはじめた時には、すでにおっさんが魔法を唱え終えていた。おっさんが翳した右手からキラキラと煌めく風が渦を巻き、床の砂埃まで巻き上げながらボクに向かって吹き荒ぶ。
それと同時におっさんの身体を薄緑色に輝く光が包み込みはじめた。
これは風属性魔法……っ! 速さに特化した手数のスキル……!
おっさんを包み込むあの光はAGIに対する
あわせて発動した【開眼】は【モンク】のスキルだったか。武器を装備していないことを条件として攻撃を強化する特異な
【フェアリーブレス】
[アクティブ][投射][風属性][攻撃][支援][魔法]
消費MP:6 詠唱時間:0.625s 再詠唱時間:10s 効果時間:20s
効果:[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。[命中時]、[自身]の[AGI]を[増加]させる。この[効果]は[5回]まで[重複]し、[効果時間]は[リセット]される。
【開眼】
[アクティブ][自身][支援][条件:素手]
消費MP:2 詠唱時間:0s 再詠唱時間:30s
効果:[キャラクター]が次に使う[攻撃]は[攻撃側]の[乱数値]を[最大]として[扱う]。
「〈永遠の安寧に抱かれよ〉【ブレイズスロアー】!」
唱え終えた魔法をお返しとばかりに前方へ撃ち放つも、おっさんは俊敏な動きで横へ躱した。明らかにAGIの上昇が効いているようだ。
「【車輪】――〈吹け〉【ラピットガスト】!」
それだけでは終わらない。追撃としてさらなる魔法がおっさんの手から放たれる。威力を犠牲にした手数の魔法……。少々喰らったところで問題はないけど、相手のペースに乗せられてはいけない。
「〈火花を散らせ〉【フラムブレット】!」
ボクが使う炎属性魔法の中でも詠唱時間が最短の魔法をおっさんに向けて放ち、即座に
案の定、おっさんはその俊敏さで【フラムブレット】を避けた。しかし、その回避先はボクの【アンプルアロー】が狙っている!
おっさんに当たった矢はがしゃんと音を立てて破壊され、中に込められていた薬液がおっさんの身体に撒き散らされる。
【アンプルアロー】に込められていたのはスピードダウンの成分を持った毒薬だ。これにより、おっさんの
この隙を見逃すはずがない。即座に
「【ソウルフレア】!」
ただでさえ装備の新調で威力が上がった火力魔法だ。耐久力の低い【メイジ】相手なら、これが通れば一撃で倒せる! おまけに【アンプルアロー】も撃ち込んでダメ押しだ。
杖から放たれた白く輝く炎がおっさんの身体を燃やし尽くさんとする。しかし、彼は炎をまといながらもバックステッポでボクとの距離を取りつつ、【フェアリーブレス】を放ってきた。
焼けつくような白炎が視界を真昼の太陽色に染め、軋む金属の匂いが鼻を刺した。
予想外の耐久に虚を突かれ、突風をまともに受けてしまう。
同時に、おっさんの身体はさらに緑色の輝きを増しはじめる。
「危なかった。【魔力障壁】がなければ即死だったぜ」
「【魔力障壁】程度なら
【魔力障壁】
[パッシブ][スイッチ]
効果:[受ける][ダメージ]を一部[MP]で[肩代わり]する。
「ただでさえ耐久が足りないんだから、うまく避けるのは当然さ――隙あり!【秘孔】――【フェアリーブレス】!」
話の途中で不意打ち気味に魔法を撃ち込んでくるおっさん。
そして、1枚の板を【ストレージ】から取り出し――。
「【エアジャンプ】! 【エアジャンプ】!」
足裏でばしばしと道路を叩きながら高度を上げていく。地表はみるみる豆粒のように小さくなっていき、ボクは片手に持った杖を何度も振るう。
これによって、杖から放たれた無数の【アンプルアロー】が地上に降り注ぐ!
「どわー! 降りてこい!」
「はっはっは! 【エアジャンプ】! 絨毯【エアジャンプ】爆撃です【エアジャンプ】よー!」
地上から風の魔法が飛んでくるが、いかんせん距離が遠すぎる。軽く方向転換して躱しつつも矢を連射する。
だが距離の問題はこちらも同じこと。手数によってある程度のカバーはできるが、結局はほとんど当たらない。
このままでは千日手にもならない。ジャンプ1回ごとにMPを2消費し続ける以上、こちらが間違いなく不利だ。
しかし勝敗は決した。空中で矢を降らしながら
なんとかうまくいきましたね……。割とせこい勝ち方ではありますが……この勝負はボクの勝ちです!
『ゲームセット WIN:卍荒罹崇卍 LOSE:おっ』
「いやー、完全に負けたぜ子猫ちゃん。いや、強いから子虎ちゃんかな?」
「どちらにせよ子どもであることに変わりはないんですね……。しかし、今回はそちらの凡ミスですよ?」
試合の中盤に【ソウルフレア】を当てたとき、杖を振るったついでに毒薬を当てておいたのだ。場合によっては治療の隙を狙って攻撃できると思っていた。けれど、毒を放置したまま長々と会話をしていた時点で完全に察した。
この人、【解毒薬】を持っていない。
「子虎ちゃんが単【メイジ】のときだったら間違いなく相性勝ちしてたんだよな。だからいけると思ってたんだけどね」
「まあ、あの戦術なら
ボクは近接戦闘に対応できる【メイジ】、
となると、いかにして相手へ近づいて魔法を当てるかが問題になるわけだけど、おっさんの戦闘スタイルは明らかに
今回は相手のAGIを下げて強引に【ソウルフレア】を当てたわけだけど、これですら
「【ソウルフレア】を使ってきた時、ちょっぱやじゃなかったか?あれはなんだい?」
「ああ、〈装飾表現〉を使ったんですけど、それ以外にもドーピングを」
「ドーピング?」
「奥歯にAGIを上昇させるポーションを仕込んであるんですよ」
「……なるほどね。完全に【アイテムマスター】としての戦いに翻弄されたわけだ」
「あくまでメインは【メイジ】のつもりですけどねー。炎属性とはひと味違う搦手も面白いものです」
テクニックその18 『絨毯爆撃』
〈ロードウィング〉の派生テクニックです。
基本的に〈ロードウィング〉を使用している間はスキルを連続的に発動し続けなければならない以上、詠唱の必要なスキルを使うことはできません。
また、片手も道路を叩きつけるために塞がれます。
それなら他に何ができる? そう、アイテムをばら撒けます!
今回は【アンプルアロー】を撃ちこみましたが、普通にポーションを投げるだけでも問題はなさそうです。
欠点としては、数撃ちゃ当たる方針で根気よく投げないと当たらないこと。MPの関係上、常に飛んでいることはできませんから使い時は見極めないといけませんね。
テクニックその19 『仕込み薬』
奥歯に薬を仕込み、いざというときに噛み砕いて効果を適用します。
【タブレット】は
注意点としては奥歯の違和感がすごいこと。
あとは複数仕込んだときには噛む薬を間違わないように、とかですかね?