卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

190 / 542
第184話 バニッシュ

 最大火力を込めたボク達の連携プレイも【女神】には歯が立たず。しかし、耐性などによって減衰されたわけでもない。

 

 これは恐らく【女神】のHPが単純に桁外れに大きいことによって絶対値では削れたものの、ゲージという相対値の中で変化が発生するダメージにならなかったということだ。

 

「では、次は私から行かせてもらいましょう」

 

 反撃が来ることを察しためりぃさんが精霊とHPを共有し、攻撃に備える。本来なら相手の攻撃宣言に対して悠長に待機せず、削りに徹したほうがいいのかもしれないけど……。この圧倒的HP量から察するにかなりの長期戦が見込まれる。それなら万全の状態で【女神】の攻撃を受けて戦闘パターンを先に把握しておいたほうがいいだろう。

 

 【女神】が高く手を掲げると、周囲の空間から出現した粒子がその手に収束していく。そして小さな棒のような形をとったかと思うとほんの一瞬、世界を闇に染め上げるかの如き黒い波動を発する。それによって辺りの光は一瞬にして消滅し、視界が完全に失われた。

 

 《『心眼』》によって【女神】を観察すると、先ほどの粒子の棒は黒い波動の発現と共にワンドに変化したらしい。ごてごてした成金じみた装飾が施された金色の棒で、先端には黒いハートマークが取り付けられているのだけど……当然ながら視界は使えないので特殊な技能を持つプレイヤーにしか観測できない。その形状をチャットを通じて【パーティ】メンバーと配信にも共有する。

 

「みなさん、この状態で戦闘を行う手段はありますか?」

 

「風を読めば位置把握くらいはできるよー!」

 

「あかりちゃんもおっけ!心配しないでいいよ」

 

「ククク……この期に及んで視界を奪われた程度で動揺していてはこの世で生きることなど出来ぬよ」

 

「」もだいじょぶー」

 

「え、おまえらどうやってこの状況で戦う気なんだ?いや、【ヒーロー】だったときは感知スキルがあったんだけどな?」

 

 アリンドさん……残念すぎる……。

 

 そんな感じで確認を取っている間に【女神】は創造したロッドを振り下ろし、スキルの発動を宣言する。

 

「〈消えなさい〉【バニッシュ】」

 

 ロッドからは半透明の稲妻のような攻撃がジグザグに不規則な軌道を描きながら宙を駆け、盾役(タンク)として一番先頭にいためりぃさんの精霊を狙う。

 

 威力を確かめるために特に回避することなく受け止めた精霊さんだけど……攻撃が命中した瞬間に、ぱぁんと弾けて消滅してしまう。

 

 一撃でやられた!?ってことはHPを共有しているめりぃさんも……と、めりぃさんを確認したが、彼女は無傷。HPもまるで減少していない。

 

 つまりこれはダメージで殺されたんじゃない。()()()()()()()()()スキルということ……!

 

「めりぃさん!精霊を散らしてください!共有は必要ありません!」

 

 ステータスの共有をせずにひたすら精霊の召喚を続ける作業に入るめりぃさん。問答無用の一撃技は厄介だが、逆に言えば召喚モンスターで受けてしまえば最低限の被害で抑え込むことができるということ。めりぃさんを呼んだのはベストな選択肢でしたね。

 

 そして【バニッシュ】発動後の隙を狙って、」さんがすかさず最強の近接魔法、【グランドグラビトン】を遠距離から撃ち込む。

 

 〈改造行為(チート)〉によって改造された人差し指から放たれる弾丸は素手として扱われる。つまり、発動条件が接触であるこの魔法を遠隔攻撃として放つことができるということだ。

 

 弾丸には自身へのダメージ判定が残るというリスクはあるけれど、それでも本人が近づいて攻撃するよりは圧倒的に低リスクだ。隙を狙って攻撃したこともあってか【グランドグラビトン】は妨害されることなく無事に発動し、【女神】に対して多大な重力による圧力が加わる。

 

 しかしそんな重力攻撃も【女神】様には通じない。やっぱりダメージ自体は入ってるみたいだけどHPの桁が違いすぎる。

 

「ほう、私のHPをここまで削るとは。餌にしてはなかなかやり——」

 

「はい、【カタパルト】連射〜!あかりちゃんをよろしく〜!」

 

 【女神】の台詞を遮って【カタパルト】が高速で連射される。それと並行して更なる【カタパルト】の詠唱を始めるあかりちゃんさん。

 

 【カタパルト】は詠唱で弾丸を装填した後に好きなタイミングで撃てるスキルだから、詠唱しながら攻撃することができる!

 

 調子に乗ってガンガンと岩石砲を撃ちまくるあかりちゃんさんに合わせてボクも【ブレイズスロアー】でも撃ち込んでみようか?そう思った矢先、戦況に変化が訪れる。

 

 【女神】がロッドを動かしてくるりと正面に丸い円を描いたのだ。すると半透明の壁が軌跡に従って出現し、一方的に放たれるばかりだった岩石砲が壁に触れたと同時に180度向きを変えて跳ね返る!

 

 おまけに跳ね返ったスキルの軌道まで操れるらしく、連続して放たれる後続の【カタパルト】に相殺されないよう、大きく回り込む軌道で旋回してあかりちゃんさんを狙う。

 

 そこにめりぃさんが立ちふさがって攻撃を受け止めるけれど、明らかに普通の【カタパルト】のダメージ量じゃない。跳ね返された攻撃は自在操作可能でさらにダメージ倍増、ということか!

 

「じゃあ、うしろからならどう?」

 

 」さんがログアウトとログインを行使し、【女神】の後方上空に瞬間移動し、【モンク】のスキル、【浸透】を組み合わせた銃弾を発射する。

 

 それと同時にボクは«疾風迅雷»で急速接近!障壁を突き破る勢いで駆け抜けると、壁はなんの物理的反発を起こすことなくボクの身体をすり抜け、【女神】に肉薄する。物理、あるいはアバターは遮断できないというわけですか。

 

 そのまま杖を突き刺すように押し当て、【ソウルフレア】をぶちかます!それに対して【女神】は乱暴に自身のロッドを叩きつけようとするが、その速度は遅い。《«ガゼルフット»》を使うまでもなく、バックステッポで軽く後方に下がることで回避。直後に」さんの【浸透】ロケットパンチがヒットした。

 

 現状は終始優位に立ち回っているけれど、ここまでやってHPゲージが減ったのは1ミリ以下。減らないわけではないということがわかったのは朗報だけど、これじゃリソースが持たないですよ!?

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。