卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第186話 ミステイク

 めりぃさんや純白の翼さん、あかりちゃんさんも【女神】の出現と同時に大きく距離を取り、屋根から飛び降りる。アリンドさんは迎え撃つ方針のようで……。

 

「おまえらいったいなにがあったんだ!?戦況を教えてくれ!」

 

「やれやれ、こんな無様な生き物が私の選んだ勇者サマ?滑稽だわ。おまけに主人に反逆するいけない子……躾けてあげなきゃね?」

 

 狼狽えるアリンドさんを上から目線で見下しながら、ゆっくりと近づく【女神】。このままでは非常に危険な展開だ。しかし、《ロールプレイング》に詳しいボクはそのおどけた所作が【女神】を騙す()であることを理解する。

 

 ボクはチャットで【パーティ】にその意図を伝え、タイミングを待ち続けることを選択した。

 

 無防備に近寄る【女神】がアリンドさんに杖を突き付けようとしたところで——アリンドさんがスキルを発動させた。

 

「【アンカー】だ!」

 

 発動と共に無数の半透明な鎖が飛び出し、【女神】を縛り付けるように一点に集約する。実際はその鎖に拘束能力はなく【女神】の行動を阻害するものではない。ついでに言うならば現時点においてはそのスキルの影響力はほぼ0に等しく、何の意味もない効果だ。

 

【アンカー】

[アクティブ][自身][キャラクター][エリア][妨害][ガード]

消費MP:6 詠唱時間:0s 再詠唱時間:45s 効果時間:10s

効果:[自身]を[起点]として[エリア]を[形成]し、[範囲]の[敵][キャラクター]の[モーションスピード]を[低下]させる。[出力]は[自身]との[距離]に[比例]する。

 

 盾役(タンク)としての役割を果たすためにナイトが持つ4つのスキル。モンスターを引き寄せる【タウント】、攻撃を引き寄せる【アトラクト】、攻撃を遮る【カバーリング】。そして、最後の1つこそが、敵を引き止める【アンカー】。

 

 10秒ほどしか作用しないスキルではあるが、盾役(タンク)を無視して後衛を狙おうとするプレイヤーに強力なスピードに関する妨害(デバフ)を仕掛け、到達を遅らせる強力な効果だ。

 

 つまり、【女神】の目の前にアリンドさんがいる以上、その効果が発揮されることはなく、かと言ってわざわざ後衛を狙いに来る必要があるような状況でもない。

 

 しかし、それに続けてあかりちゃんさんがスキルを差し込んだ。

 

「【シフトチェンジ】!」

 

 【メイジ】の【テレポート】に類似した個性あふれるスキルで、その効果は味方キャラクターとの()()()()

 

 効果によりアリンドさんと位置を入れ替えたのはボクだ。

 

 座標の入れ替えによりアリンドさんから引き離された【女神】はモーションスピードが大きく低下する。

 

「あら——、なにこ——」

 

 そして【女神】の背後に出現した」さんが【ストレージ】から家をその場に配置する。これで準備は整った。後は全力で突っ込むだけだ!

 

「さあ、行きますよー!«疾風迅雷»!」

 

  ありとあらゆる付与(バフ)を重ねがけすることによってのみ達することができる、埒外のスピード。

 

 弾丸より速く、光より速く!旧人類であれば観測することすら許されない絶対的な速度と、それによって生み出される圧倒的な物質干渉力を持った最強のタックルが【女神】を跳ね飛ばす。

 

 彼女は後方に設置された家に接触し、盛大に弾き飛ばしながらもなお吹っ飛んでいく。

 

 一瞬にして壁に叩きつけられた【女神】はこれまでに与えた攻撃を上回る絶大なるダメージを受け、HPゲージを大きく下降させる!その減少量は——2ミリ!

 

「だーめだこれ!こんなのを続けてたら明日になっちゃいますよ!帰りましょう!」

 

「いくら勝てそうでもさすがにあかりちゃん、24時間戦い続けるのは無理かな〜」

 

「ふふふ、家畜の癖になかなかやるじゃない。そろそろ本気を見せてあげようかしら?」

 

「なんか第三形態っぽいこと言ってんね。やばない?」

 

「HP減少量合計3ミリで!?」

 

「」もおかーさんにおこられちゃうからこれ以上はむりかな」

 

 というわけでいそいそと散乱している家を回収し、【ギルドリターン】で帰還することに。第三形態の技なのか、空から雨のように槍を降らせるスキルを使い出して怖かったけど、とりあえず攻撃を受ける前になんとか逃げ切った。

 

「負けてないのに撤退するのってあたし、初めてだよー。こういうのってどうすればいいのかなー?」

 

 めりぃさんが軽く伸びをしながらみんなに問いかける。確かに、戦略で負けたとかそういう話じゃないのはいつもとは違う珍しいパターンですよね。

 

 HPという単純な熟練度(プレイヤースキル)だけでは対応しきれないシステムの絶対的な壁。これを超えるにはレベル上げをするか、火力を上げる装備を付けるか。ゲームにおいてはわりとオーソドックスな対策が必要になってくるわけだけど……。

 

「やっぱ家で殴るしかない感じ?まー2回も3回も通用はしないだろうケド」

 

「すまないな、俺が攻撃役(アタッカー)として削りに回れたら良かったんだが」

 

 確かに今回のPT編成は攻撃役(アタッカー)3人に盾役(タンク)回復役(ヒーラー)補助役(バッファー)と、実質的に人数が欠けた編成になってしまった。アリンドさんはNPC枠なので仕方ないにしても……ちょっと待って?

 

 

「いつの間にかアリンドさんを【パーティ】としてカウントしてたけど、そう言えば魔王戦ではアリンドさんを含まず6人でしたよね?」

 

 

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>草

 

>人数が少ない状態で戦ってて草

 

>初心者かな??

 

>やめろ、あかりちゃんさんをバカにするな。卍さんだけをバカにしろ

 

>それで戦闘自体は優位に進行してたの逆に凄いわ

 

>でももう1人増やしたからと言って同じ戦い方じゃダメージソース的には焼け石に水だからなー

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テクニックその89 『安価拒否』
本来なら後衛に到達するまでの時間と戦闘力を削り、盾役(タンク)と闘うことを強要するスキル、【アンカー】。しかし、あえて盾役(タンク)としての役割を放棄して自分から撤退することで、最上級の妨害(デバフ)として利用します。
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