卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第194話 ウェポンモンク

 【アンカー】の効果時間が終了し、【女神】様が動き出したところで、アリンドさんも戻ってくる。

 

「どうやら通常のワールドマップとは別IDだったようだな。何もない真っ暗な空間に飛ばされちまったぜ」

 

 なるほど。そりゃあ、仮にも異世界っぽいマップから、さらにポータルを通じてやってきた特殊なエリアだ。マップIDが違って当然だ。となると、自宅の座標に飛んでもそこには何もない——というわけですね。

 

 【女神】は【テレポート】で上空に移動し、杖の形状を変化させる。変化後は銃火器——それも巨大なロケットランチャーのような形だ。武器を肩に背負った【女神】は、およそその形状ではありえないような戦術を取り始める!

 

「連続発射!喰らいなさい!」

 

 ロケットランチャーからマシンガンの如き勢いで次々と弾が発射されていく!弾速は遅いけど、雨のように隙間なく放たれる弾幕はまるで疑似的な壁のようだ。〈トンネル避け〉がなければ間違いなく防ぎ切ることができない。

 

 けれど——逆に、ただ弾幕が飛んでいるだけなら、これまでとまったく同じ戦法で回避できるということだ。なにかを企んでいる……?

 

「神である我にその程度の攻撃が通用すると思ったか!」

 

 空から落ちる弾幕の雨へ向かって高く跳躍する神様。当然のように回避できる前提、ということだろう。ロケット弾に接触する直前、念のため、純白の翼さんが指令(コマンド)で防御力を増加させる。

 

「【エゴトランス】【アトラクト】——死になさい」

 

 飛んで火に入る夏の虫。ロケット弾をすり抜けようとした瞬間、【アトラクト】の効果が神様に適用される。【アトラクト】の効果は『投射攻撃を自身へ集約させる』。つまり、【エゴトランス】によってその効果は『投射攻撃を神様へ集約』に変換され、量子単位の回避を無視してすべての攻撃が集約されて——。ロケット弾が次々と誘爆を引き起こし、とんでもない爆発音が鳴り響く。

 

 おまけにロケット弾の追加効果である爆発もまた分類上は投射に含まれる。本来なら周囲に撒き散らすように炸裂するはずの爆発が神様に一点集約され、圧倒的なインフレダメージを叩き出した。【女神】ならまだしも、一介のプレイヤーである神様がこのダメージを受けきることができるわけがない。一瞬にして爆裂四散していく。

 

「……やべーですね。【エゴトランス】で全クラスのスキルを弄れるってのは想像以上に厄介ですよ」

 

 神様が爆散したからといって攻撃は止まらない。再び雨のように撃ち放たれるロケット弾。【エゴトランス】は再使用時間(リキャストタイム)が長い。一見すると同じコンボは使えないように見えるけれど、再使用時間(リキャストタイム)を踏み倒すスキルはいくつか存在している。それらを使って、再びこちらを確殺する気だろう。

 

「精霊さんーおねがいー!」

 

 めりぃさんが召喚した精霊をロケット弾に向かわせる。遅れてあかりちゃんさんも【エアジャンプ】を駆使して追従する。

 

 のこのこと獲物がやってきた。にやりと笑う【女神】だったが、その思惑は直後に崩れ去る。

 

 まず先行した精霊が、ロケット弾へ向けて自分に【アトラクト】を発動したまま突っ込むことで、弾を強制的に起爆させる。隙間なく攻撃を放ったことが仇となり、本来の攻撃対象ではない相手に対して最大ダメージを叩き出してしまう——これがこの戦術の欠点だ。

 

 それでも次から次へと弾を乱射する【女神】。確かに、大量のロケット弾はすべて起爆してしまったが、そもそもプレイヤーを倒すだけであれば過剰火力にも程がある。新しく放った弾だけで十分に仕留められる、そう考える【女神】の余裕は揺るがない。

 

「【カタパルト】発射〜!」

 

 そんな【女神】に対してあかりちゃんさんは岩弾を連射し、【女神】のロケット弾を的確に起爆させながら接近していく。

 

「ちょっと!こっちに来るな!」

 

 調子よく【カタパルト】で牽制しつつ、放たれた瞬間の岩弾でロケット弾を起爆して【女神】を巻き込みながら距離を詰めるあかりちゃんさん。だがここで【カタパルト】の装填が尽きる。

 

 その隙を突いて【女神】は【ダブルバレット】を発動させる。さらに確定即死コンボである【エゴトランス】【アトラクト】を重ね合わせ——そこであかりちゃんさんが瞬時にその場から消え去る。代わりに現れたのはボク。そう、【シフトチェンジ】の効果だ。

 

 あかりちゃんさんと位置を入れ替えたボクは当然ながら【アトラクト】の効果を受けていない。驚くほど簡単に弾丸をすり抜けて躱し、【女神】に肉薄する。

 

「さあ、潰しに来ましたよ?」

 

「——っ!【オリジンフォールショット】!」

 

【ショットダウン】

[アクティブ][投射][攻撃][補助][物理][条件:銃器][弾丸]

消費MP:4 詠唱時間:0s 再詠唱時間:60s

効果:[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。

[投射]への[命中時]に[弾道]を[変更]し[落下]させる。

[キャラクター]への[命中時]に[対象]を[地上]に[落下]させる。

 

 至近距離なら当てられると踏んだのだろうけど、それは甘い。【テレポート】で【女神】の上を取りつつ回避し、【ストレージ】から家を召喚する。そのまま自由落下させて【女神】に叩きつける。

 

 【女神】も〈トンネル避け〉をマスターしている。自然に落ちてくる家程度を躱せないはずがない。けれど、ここで家を出した理由は当然ながら仲間を呼び寄せることにある!

 

 そして呼び出した家の屋根に降り立ったのは神様だ。純白の翼さんの蘇生によりこの戦場に舞い戻ってきた。

 

「神は復活してこそが本領よ!」

 

 それは神の子では?

 

「無様に負けた癖に調子に乗るんじゃないわよ!【ダブル】【オリジンガイデッド】!」

 

【ガイデッド】

[アクティブ][投射][妨害:確定][攻撃][物理][条件:銃器][弾丸]

消費MP:4 詠唱時間:0s 再詠唱時間:60s 効果時間:4m

効果:[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。[命中時]、[効果時間中][自身]の[投射]を[キャラクター]に[追尾]させることができる。

 

 当てた相手にマーカーを付加し、すべての攻撃に追尾性能を与える【ガンナー】のスキル、【ガイデッド】。それを上にいるボクと、下にいる神様に同時に撃ち放つ【女神】。ただし、この攻撃自体に追尾性能はないので、何かと組み合わせる必要があるわけだけど……と考察していると、【女神】が銃器をぱっと手放し、さらなるスキルの宣言をする。

 

「——【起源引力】」

 

「なっ!」

 

 【モンク】のスキルである【引力】は次に放つスキルに相手を引き寄せる効果を付加するスキル。ただし、【モンク】の条件として素手でなければ発動することができない。——だから手放した。

 

 途端に引き寄せの性質を帯び、確かな【引力】を発揮する【ガイデッド】ロケット弾。

『[キャラクター]が次に使う[攻撃]に適用』の意味を履き違えていませんか!?使った後に効果が適用されてますけど!?

 

 唸りを上げながら迫るその弾を回避しきれず、ボクはその攻撃をまともに受けてしまう。当然ながら神様も同じように攻撃を受けたが……ダメージを厭わず【エアジャンプ】で【女神】に肉薄する。【ストレージ】からアイテムを取り出しながら。

 

「馬鹿ね。これで終わりよ。【オリジンサイクルスペル】【オリジンファストスペル】【バニッシュ】!」

 

 追尾性能を持つ【バニッシュ】を回避することは〈トンネル避け〉であっても不可能。神様はその攻撃をまともに受け——ずに相殺する。

 

 神様はボクの【パーティストレージ】から取り出した【かかしの種】を身代わりにして【バニッシュ】を相殺したのだ。

 

「神を舐めるな、若輩者が!」

 

 そのまま勢いよく剣を振り下ろし、【女神】を地面に叩き落とす!

 

 一方、その下では」さんがログイン&ログアウトにより待ち構えており、【ホーム】の盾を構えながらぶつぶつとスキルを連呼していた。

 

「【秘孔】【車輪】【開眼】【収奪】【虚穿】【引力】【浸透】……()()()()()()()()。さあ、まんじさん。やっちゃってー!」

 

 言葉とともに家を天に向けて勢いよく射出する」さん。急場の連携ではあるけれど、ご期待に応えなければならない!

 

「おっけーです!【ホームリターン】!」

 

 発射された家へ【ホームリターン】で即座に飛びつき、一緒にすさまじい勢いで空を駆け抜けるボク。そして、すれ違いざまにあらゆる付与(バフ)を上乗せした最強の一撃を【女神】に叩き込む!

 

「【フルバーニング】!」

 

 自身を含めた広範囲に炎属性の爆発を叩き込むエリアスキル。そこに【モンク】の持つありとあらゆるスキルによる追加効果が付与される。

 

 そう、この爆発は【秘孔】(弱点を突き)【車輪】(計算にINTを加算し)【開眼】(乱数を最大にし)【収奪】(MPを奪い)【虚穿】(スキルを相殺し)【引力】(敵を引き寄せ)【浸透】(防御力を低下)させる。

 

 本来なら素手という縛りがあるからこそ許される強力な効果——そのすべてが適用されて、あらゆる要素により威力が最大限に高められた究極の一撃は、【女神】のHPを一気に削り取る。こうなってしまえばいかに莫大なHPを持つ彼女でも成すすべはない。瞬く間にHPを全損させて消滅していった。

 

 

「大勝利です!」

 

 いやー、楽勝でしたね。一時期はどうなるかと思いましたが、コンボ技が恐ろしいほどきれいにヒットしましたよー。視聴者さん見てましたかー?とドヤ顔を見せようとしたところで、アリンドさんが一言。

 

 

「おい、20%まで削ったところでイベントが発生するはずだったんだが?」

 

 

「え?」

 

「【女神】にだってなんやかんや事情があって、その後に出てきた黒幕を一緒に倒す流れだったんだが?」

 

「え?」

 

「卍さん、なにやってんのー?」

 

「いや——でも、なんかガチのチートとかしてましたしまともなシナリオ進行とか期待できないじゃないですか?仕方ないですよね?」

 

「卍さんがシナリオを破壊したので今回はここまで!みんなは普通に削ってシナリオの続きを拝んでね。あかりちゃん達も今からクエストをリセットしてやり直すよ!」

 

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>卍さん最低だな

 

>あかりちゃんさんにフォローさせるとか許されざるよ

 

>はい解散

 

>マジかよチャンネル登録外します

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 もう駄目だ。ボク達のクエストの世界線は、なんか助けてくれるらしい【女神】がいないので、黒幕に支配されましたとさ。終わり。

 

 

 さすがに疲れたので、これから即座に戦闘開始!というわけにもいかない。それに【女神】のことだ。クエストをリセットしても、平気で戦いの記憶を保持しててメタってくるだろう。というわけで【ギルドリターン】で我らが【ギルドハウス】に帰還し、お茶でも飲んでゆっくりしましょうか。

 

 適当なギルド内の喫茶店にみんなでぞろぞろと入店し、テーブル席に座る。

 

「」はパンケーキがいいな!」

 

「じゃあたしはホットケーキ!」

 

「パンケーキとホットケーキが両方あるの?でも、あーしはタピるわ」

 

 さすがに早々に黒幕編まで到達するプレイヤーが現れることはあるまい。大量のホットケーキとパンケーキ、それからアリンドさんの出した【パインサラダ】をもぐもぐと頬張りながら、ネットニュースを見る。ふむふむ、銭湯に壁抜けで潜入した男性が逮捕されたらしいですね。最近の世の中は怖いなー。

 

 次に【フォッダー】の配信動画を見てみる。デス子さんはどうなったかな?と見てみると、途端に壁抜けをし始めた【女神】にも臨機応変に対抗して戦い続けている。全部は削らなくてもいいらしいし、2日くらいでイベント発生までいけるのかな?

 

 他の配信勢の動画も見てみようかな、と動画サイトを操作していると、突然【フォッダー】のメッセージ機能に通知が来た。どうやら公式からのお知らせらしい。なんだろう?

 

 

『これより緊急メンテナンスを開始します。10分以内にサーバーからプレイヤーが切断されます。念のためにその前にログアウトしていただくことを推奨いたします』

 

「メンテナンス?我は初めて見たな。以前のアップデートもサーバーの切断なしで行われていたはずだったが」

 

「なんだろー?バグでも見つかったのかなー?」

 

 〈トンネル避け〉の修正でしょうか?ユーキさんのことだからどうせそのままにしておくんだろうな、と思っていたのですけど。

 

 耐久戦を繰り広げているデス子さんが巻き込まれてしまってるのは可哀想ですが、仕方ないですね。

 

 諦めて今日は終わりということで、いつもの配信終了前の挨拶をし始める。あかりちゃんさんには明日にでもまた挑戦しましょう、と約束して自分もログアウトしようとしたところで——

 

 

 ——明日香さんからメッセージが入った。

 

 

 そのメッセージを見た瞬間、ボクは勢いよく駆け出した。«疾風迅雷»を駆使して、【ギルドハウス】内の廊下をジグザグに移動し、ポータルへと向かう。向かう先は【アンネサリーの街】、そしてその南部に存在するマップ、【インカパタ雪原】に彼女がいる!

 

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>どうしたどうした

 

>10分以内に予定ができたの?

 

これはあれだ、メンテナンス終了後に現れるであろうリポップモンスターが狙いで……

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 配信を強引に打ち切って【アンネサリーの街】に飛び、«階段革命»で上空に駆け上がって«疾風迅雷»。ありとあらゆる障害物を無視して最短距離で雪原へと向かう。

 

 明日香さんが闘う時は一緒に手伝うって、約束しましたよね!してなかったっけ?知らないです!

 

 早とちりかもしれないけど、関係ない!急に始まった緊急メンテナンスと明日香さんのメッセージ。この2つの情報から推測できるのは1つだけだ。それなら締め出される前に現地に駆けつけさせてもらう!

 

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屠神 明日香

 

o月x日 16時40分

 

決着をつけてきます

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テクニックその95 『ウェポンモンク』
【モンク】のスキルは発動条件の素手であること。つまり、付与(バフ)を掛けるときに素手であれば武器を装備しても効果が適用される。また、これらの効果は付与(バフ)であるので【サイキック】の【シェアリング】によって武器を持つ味方に付与することもできます。少なくとも素手で戦う職業(クラス)というコンセプトは終わりましたね。
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