卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
『
どろりと溶けた肉塊のようになったわたしは、そのまま粘土を捏ねられるみたいに、今までとはまったく違う新たな姿へと、〈
駄目だっ……抑えきれないっ!
《なるほど、精神改竄に対する対策があったと見てよさそうだね?》
そして手品の種もアクタニアに割れてしまった。そう、今までわたしが無効化していたのは、精神に働きかける暗示によるものだ。『ボク』とは独立した精神を持つわたしは、『ボク』自身がいかに心を操られようが、お構いなしに動くことができていた。
けれど、身体の構造そのものを変化させる改竄には対抗できない。極端な話、『自殺しろ』と命じられても無視できるけど、命そのものを直接奪われたらどうしようもない。
やがて身体の変化が完全に止まった。それは改竄を阻止できたという意味ではなく——。
《予想よりも随分と面白い姿になったね?》
手もなく、脚もなく、関節もないし髪もない。武器も持てないし服も着られない。
白磁器よりも真っ白な身体に、サインペンの落書きみたいな顔が乗った、サッカーボールサイズの球体。
——それが今のわたしだ。
鏡なんてないし〈ストリームアイ〉も使えないけれど、自分という存在の変化については自分自身が一番理解していた。
《どうする?その身体でまだ戦いを——おっと》
アバターをチェンジしてごちゃごちゃと語りだすアクタニアに、勢いよく体当たりを仕掛ける。うさぎのアバターに切り替えたけれど、改竄の効果はこちらにも侵食しているらしい。まったく姿形が変わらない。
けれどあらゆる装備を装着できなくなった卍さんのアバターと違い、モンスターのアバターなら装備不可の形態でも、装備の効果は適用できる。スキルに制限はかかるけれど、こちらの方がやりやすい!
ごろごろと勢いよく転がりながらアクタニアに衝突すると、強力な物質干渉力が生じる。そのままぽよんと跳ね返り、大きく距離を取った。
《足を地面に固定したつもりだったのだけど……その姿には足がないからね。失敗したなあ》
さっきからアクタニアは何度か気になることを言っている。わたしをまんまるのお団子フォルムにしたときもそうだったけど……彼がこの姿になるように指定したわけではないってこと?
それ以外にも気になることがある。それは、アクタニアのスピードがあくまで«疾風迅雷»と同程度だということ。
好きなようにステータスをいじれるなら«疾風迅雷»よりも速くてもおかしくないはずなのに。なにかの制限がある?いや、もしかすると——。
——この推測が正しければ、アクタニアの改竄能力を
《まあいいさ、それなら正々堂々と勝負しようか》
そう言うとすぅっと滑るように近づいてきて、きゅーとなわたしを勢いよく蹴り飛ばそうとするカミサマ。〈トンネル避け〉を利用して蹴り足を透過させようとしたけれど、アクタニアはそれに合わせて、今度は自分自身を改竄する。
来るとは思っていた。どうせ当たるなら、と襲い来る足に向かって体当たりをするけれど——当然のように物質干渉力で完全に敗北し、サッカーボールのように勢いよく弾き飛ばされる!
「【ホームリターン】!」
先ほど撃ち出したばかりの家を基点に瞬間移動し、追撃を避ける。さらに一瞬だけ«疾風迅雷»を発動させて慣性をリセットし、その場に踏みとどまる。体を弾ませてぴょーんと大きく跳躍しながら、スキルを発動させる。
「【ジュエルシールド】!」
【ジュエルラビット】の固有スキル、【ジュエルシールド】。好きな場所に約30秒間だけ宝石の盾を召喚できるスキルなんだけど……当然、空中にも作ることができる。勢いよくシールドに飛び乗ったわたしは、カミサマの頭上から【空神の加護】【パイロキネシス】を撃ち込んでいく。
盾を動かしながら、レーザーのように【パイロキネシス】を撃ち放つ。アクタニアはそれを〈トンネル避け〉でかわしていく。途中で明日香ちゃんを操って何度か殴ってみたけれど、やっぱり意味がない。
けれど——そもそもHPに変化がないのに、これって攻撃なのかな?
そう疑問を覚えた瞬間、【パイロキネシス】がわずかに掠った。やっぱりだ。
それなら、まだやりようはある。
《ここまでは君の戦い方に合わせてあげたわけだけど、そろそろ終わりにしてもいいかな?》
飽き飽きしたと言わんばかりにあくびをし始めるカミサマだけど、あえてわたしはそんな彼を挑発する。
「HP0で動いてるくせに、どこがわたしに合わせてるの?どうせなんでもありなんだから、好きにやりなよ」
《じゃあお言葉に甘えて。じゃあ、最初はどうしてあげようかな。この世で最大の苦しみと苦痛を転写してあげる、というのはどうかな?》
わたしをどう料理するかを考えているアクタニアを無視して、明日香ちゃんに改竄から逃れる方法を【マインドハック】経由で伝えておく。これでいけるかは五分五分だけど、分の悪い賭けは嫌いじゃない。
そしてその間にカミサマはわたしの調理法を決めたらしい。びしりと指でわたしを指し示しながら、こう宣言した。
ステータス的なダメージはまったくない。けれどその宣言は、確かに一般的なプレイヤーにとって最大の効力を発揮するに違いない。想像を絶する苦痛によって相手を屈服させる。本来なら一般人であるわたしに耐えられるはずがない。
なので、最大の苦痛の定義を考えることにした。
最大の苦痛ってなんだろう?痛いのかな?でも痛さといっても、人間が感じられる痛みには構造上、上限があるよね。そういえば、苦痛は痛みとは限らない。精神的な苦痛、ということも考えられる。さて、では『ボク』が苦痛に思う事柄とはなんだろう?
定義する——最大の苦痛とは、チャンネル登録を外されたときの感情!
途端に、しょんぼりしそうな悲しみが心の奥を襲ってくる。けれど同時に、『ボク』にとってこの程度の悲しみは日常だ。動けなくなるほどじゃない!
「効かないよ、その程度の苦痛っ!」
【ジュエルシールド】からぴょんと飛び降り、«疾風迅雷»の勢いで自称カミサマを勢いよく跳ね飛ばす!やっぱりダメージはないけれど、吹き飛ばされたアクタニアの顔色が変わった。
テクニックその96 『ムーブキャンセル』
【マクロ】はどんな状況でも絶対にその動作が行わます。
瞬時に動作をキャンセルしたり、慣性を打ち消したりする事でアクロバティックなアクションが可能になります。