卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第200話 混沌へのプロローグ

「ククク……アクタニアがやられたか……」

 

「奴は四天王の中でも最弱……」

 

「人間ごときに負けるとは神の面汚しだよー」

 

「……なにやってるんですか?」

 

 ログインすると、なにやら謎の寸劇をしている人たちがいた。漆黒の翼さん、純白の翼さん、それにめりぃさんだ。

 

「ネットニュースで見たんだけどさー。アクタニアがやられたんでしょ?でもどうせこのゲームとユーキさんのことだし、まーたその上が出てくるんだろうなーって」

 

「上って言ったって、神の上ってなんですかね?ニコニコ動画?」

 

「なんでニコニコ動画が神の上なの?」

 

 でも、やっぱり神に匹敵する力を持ってる『異形』は1人じゃないでしょうね。本当に神の上と呼ばれる存在がいるとしたら、単純に、アクタニアよりも格上の神、といったところでしょうか。

 

 と、そこに遅れてログインしてきたのはとがみん。運営(ユーキさん)に頼んでアバターのデータを分割してもらったのだ。小さくてきゅーとなロップイヤーのうさぎさんがボクの隣に現れる。

 

「相変わらずとがみんはかわいいねー。なでなで。卍さんも触ってみてよ。すっごいふわふわだよー!……あれ?」

 

「耳を揉まないでよー♥」

 

 めりぃさんに揉みくちゃにされるとがみん。さりげなく純白の翼さんも興味深そうになでなでしている。

 

「キャラクターのアカウントが分離しているのも興味深いが……それよりも、聞きたいことがあってな」

 

「聞きたいこと?なんでしょうか」

 

「アクタニアのことだ。どんな力を使っていた?正体はなんだったんだ?人類に勝てる存在なのか?どういう異形なんだ?」

 

 やはり研究大好きな漆黒の翼さん。未知の存在である神がどういう『異形』なのか。それが気になっていたらしい。メニューからメモ機能を起動してボクの回答をまだかまだかと待っている。

 

 と言っても実際に戦ったのはボクではなくとがみんだ。ボク自身は被害だけ押し付けられて早々にリタイアしていたので、あまり詳しいことは語れない。状況と戦いの流れくらいならわかるけれど、実際に対峙したとがみんの考察とは異なるだろう。だって別の存在だし。

 

「なのであまり詳しいことは語れないんですけど……強いて言うなら、『生物』でしたね」

 

「『生物』……なるほどな」

 

 神と言えば、まずなんとなく思い浮かぶのは全知全能、なんでもあり。こういった存在だ。全知全能の定義についてはパラドックスうんぬんも含めて議論の余地があるけれど、まあ概ね何でもできる存在だ。

 

 けれどアクタニアはなんでもはできない。改変できるのは思考能力を持つ知的生命体に限られるし、そもそも自分の思った通りにすらならない。

 

 それでも凄い存在ではあるのだけど、人智を超越した存在というわけではない。だから『生物』と表現した。

 

 漆黒の翼さんのことなので、ボクのここまでの考察をいい感じに読み取ってくれただろう。たぶん。

 

「能力とかその辺に関してはとがみんに聞いてください。当事者じゃないので」

 

「了解した。だが、アクタニアは神であっても生物、か。つまり——」

 

 ——本当にその上がいる可能性もあるということ。

 

 以前ابتسامةさんが言っていましたね。あれはとがみんの記憶でしたか。神に消されちゃう、とかなんとか。

 

 確かにアクタニアでも似たようなことはできるかもしれない。けれどあの神は良くも悪くも明日香さんに執着していた。ابتسامةさんも含む多くの異形に対して、大規模に悪いことをするような人には見えないんですよね。どちらかというと凄い力を使って個人に粘着してくるイメージだ。

 

 人畜無害になったみたいなので話を聞いてみてもいいかもしれないけど、さすがに【フォッダー】にはもうログインしてこないだろうなあ。

 

「ま、なんとかなるでしょ」

 

 このゲームはどんなに勝ち目の見えない相手だとしても、可能な限りの最適解を導き出してくれる。その果てに人類がどんなバケモノに〈進化(エボルド)〉してしまうのかという不安もあるけれど、それでも負ける気はしない。

 

 この終わりに終わったゲーム世界は、崩壊した環境の中で生まれを問わず、あらゆる生命に平等なバランスを保っている。たとえ神が相手でも、プレイヤーは対等に立ち向かうことができるはずだ。

 

 ということで神やら『異形』やらについては思考の隅に追いやって、そろそろこのゲームの基本に立ち返ろうと思う。

 

「そういえば——このゲームのプレイヤーって、何を目的にしてたか、みなさん覚えてますか?」

 

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>なんだっけ?

 

>クソゲーをネタにして遊ぶ?

 

>新人類に進化するためだぞ

 

>人として生きる意味について問うのか?

 

>フォッダーを人生扱いとか狂ってんな

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「そう!みなさん覚えてますね!このゲームは1000億円を得られる大会に出場して優勝するのが目的であり、その参加権である願いの果実を集めるのがプレイヤーの目的なのです!確かあと3つくらいですね。あれ、何個集めるんだっけ?」

 

----

>卍さんも大会の記憶を忘却してやがる……

 

>そんな重要アイテムなら何個必要かくらい覚えとけw

 

>なんか間違えてない?

 

>願いの石定期

----

 

 【願いの石】だった!間違えた!い、いや、名前なんてどうでもいいんですよ!問題はそのアイテムを集めるということだけです!

 

「大会の開催時期は出場者枠が揃い次第らしいのでボクもそろそろ【願いの石】を集める作業に回らないといけませんね!たぶん昨日の【女神】のクエストでさらに1個くらいはもらえると踏んでるんですけど……どうでしょう?」

 

 それで手に入ったら残り2個なんだけど、それでもまだ目標数には届かない。気がついたら参加者締め切られてる!なんてことにならないように、早めに条件をクリアしておくことに越したことはない。

 

「なので次回の放送からは願いの花を求めて【フォッダー】世界を歩き回っていこうと思います!応援してくださいね!」

 

 と言ってもまずは【女神】戦を終わらせてからなんだけどね。ま、1回は完全に削りきったんだし、条件を達成するくらいなんてことないでしょ。

 

 ボクは漆黒の翼さんがとがみんに付きまとって質問の嵐を浴びせかけている光景を見ながら、そう楽観視していた。

 

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