卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第202話 クソゲー

 (トラップ)を大量に設置する以外の戦略を用意していなかった【女神】はあっという間に鎮圧された。

 

「仕方ないわね。黒幕退治に協力してあげるわよ」

 

「いや、そういう身も蓋もないストーリー進行はやめてくれません?黒幕がいるなんてボクたちは知らない設定なんですけど?」

 

「どうせ決まりきったシナリオに従って新たな敵が出てくるだけなんだし、もういいじゃない。茶番よ茶番」

 

 ここまでに積み重ねてきた世界観やシナリオをすべてぶっ壊してくる最低のNPCではあるけれど、まあ一理なくもない。

 

 ゲームとしてプログラムに設定されたシナリオを攻略するのならまだしも、NPCの人も頑張って演技してるんだなー、とか考えてしまうと、ちょっと冷める気持ちもわかる。

 

 でもね?そこは、ふと我に返ってしまうような言動を取らないようにするのが、NPCさんの役目だと思いますよ!?

 

「じゃあせめてあらすじ教えてよー。どういう理由で共闘して敵を倒しに行くの?」

 

「いいわよ。私は黒幕を倒すために神それぞれの【テオス・エネルゲイア】を一点に集約したほうがいいと考えたという設定なの。レベル20の神が100人いるよりレベル100の神が1人いたほうがゲーム的には強そうでしょ?で、外宇宙的なところから侵略してくる黒幕がいつか襲ってくるからその間にこの世界を信仰牧場にして力を貯めてたの。わかった?」

 

「もっと仰々しい言い方にしてくれないかなー?」

 

 このすごく軽いノリの裏で魔族が犠牲になっている設定らしいです。最悪ですね。

 

「ちなみにそのボス強いん?ルールガン無視の【女神】の方が強いとかありそう」

 

「ああ、私より弱いわよ。しかもアイツは真面目だから私みたいに違反もしないでしょうね。今日突撃すれば終わるんじゃない?ちなみに倒すと【願いの石】出るわよ」

 

 取れ高、終わった。

 

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>願いの石出るなら完全に義務だな

 

>黒幕より強い女神と協力して黒幕を倒しに行くらしい

 

>はークソゲー

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 とはいえ挑戦しに行かないわけにも……。というわけで、非常にテンションが下がりきった状態ではあるけど、裏ボスに挑みに行くことに。

 

「はい、NPC特権で直通のポータルを作ったわ。行きましょう」

 

「もうやめませんか?この【女神】に従って黒幕に挑みに行くこと自体にすさまじい敗北感があるんですけど」

 

「そんなこと言っても……。あかりちゃん的にも【願いの石】を回収しないわけにはいかないし……」

 

「では、我が先陣を切ろう。神がこの世界を救ってやるぞ!」

 

 そう言ってポータルを勢いよく潜っていく神様。もしかしてこれが実はさらなる【女神】の(トラップ)で、ここまでのシナリオはプレイヤーを騙すための既定路線だったりしないかな?

 

 そんなことを考えながら神様を追って、ポータルを潜ったけど、さすがにそれはなかったらしい。きらきらと光り輝く地面が特徴的な謎のエリアにたどり着いた。

 

 地面が発光しているのとは対照的に、空は真っ暗でいびつな世界だ。足を踏みしめると同時に、ごつごつとした大地の感触が伝わってくる。【モーションアシスト】なしであれば、間違いなく戦いすらままならないだろうと思えるほど、足場が悪い。

 

 幸いにしてぴかぴかと輝いているから、そこまで転倒の危険性はないのだけど、クレーターのような大きなへこみやでっぱりがあって非常にめんどくさい。

 

 なんなんだろう、この空間。何かしらの設定はあるんだろうけど、そういうのを全部無視してきてしまったせいで、さっぱりわからない。

 

 とにかくそんな謎空間ではあるけれど、ラストバトルの会場というのも間違ってはいないらしい。100mほど離れた先に、ぽつんと小さな人影が見えた。その人が目的の黒幕とやらだろう。

 

 とことこと歩みを進めつつ、その人影に近づいていくと……どうやらただの人ではないことがわかった。

 

 確かにシルエットだけなら人間そのものだ。しかし、その色彩がまるで違う。

 

 シルエットがそのまま3Dになって空間に出現したかのように、純粋な黒だった。地面が光り輝いて周囲を照らしているにもかかわらず、そこだけが不自然に真っ黒に切り取られている。本当にそこにキャラクターが存在しているのかと、疑問に思うくらいの黒だ。

 

「そこにいるのが黒幕とやらか?言葉の通り、本当に黒いのだな」

 

 そういう意味で黒幕と言ったんじゃないと思いますけどね。

 

 ボクたちがある程度近づいたのをトリガーにして、黒幕さんが話を始めた。

 

 

「この世界を求めて幾星霜の時が流れただろう……三千世界の影でしかない僕が全てを喰らい、本体へと成り代わるその日を。ずっと待ち焦がれてきた。あぁ、今、この時より真なる世界が構築される、全ての事象が逆さに——」

 

 

「シナリオがわかってないからかもしれないけど、まるで意味がわからないんだけどー?」

 

「えっ?」

 

 もしかして、【女神】様が普通にシナリオを進めてくれればすごく盛り上がるシーンだったんですかね?

 

 というわけで戦いの前に黒幕さんにシナリオの解説をしてもらった。

 

 黒幕さんは、この世界が存在することで対になって発生する『影』なのだとか。影がなければ、逆にこの世界も存在を維持できない。だけど裏方に回るのは嫌なので、本体であるこの世界を喰らい、役目を逆転させるのが狙いらしい。

 

 ちなみに役目が逆転すると、あらゆる事象も逆転する。物体は下から上に落ち、犯罪が美徳とされ、これまでの歴史の流れもすべてがなかったことになるんだとか。……これも全部、シナリオ通りに進めば段階的に明らかになったんでしょうか。

 

「そうなんだ。じゃああかりちゃんはそれを阻止しに来たの?」

 

「何のためにこの空間に来たんだい?モンスターがいるからとりあえず倒しに来たみたいなノリかい?」

 

 その通りだと思います。

 

「ちなみに僕を倒すために必要な全ての神の【テオス・ソウル】は集めてきたのかい?」

 

「今作ったわ。これでいい?」

 

 ポロポロと輝く結晶を手から生み出していく【女神】様。すべての神から集めるものをなんで1人で生成してるんですかね?

 

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>さりげなくこの女神の存在がフォッダーの一番のクソゲー要素では?

 

>今まで世界観考察とかしながらストーリーを追ってきたのはなんだったのか

 

>壁抜けよりもクソゲーな要素を備えるNPCとか前代未聞だろ

 

>フォッダー終わりすぎてる

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「はい、これで戦闘条件は満たしたわね。じゃあさっさと戦いを——あっ」

 

 傍若無人な【女神】様がクエストアイテムを召喚し、さあラストバトルへ……と言ったところで、急に彼女の姿がかき消えた。まるでログアウトでもしたときのような消え方だったけど……。

 

「あー。ユーキさんにBANされたみたいだね」

 

 壁抜けが発生しようが、ガチの神様が登場しようが動かなかったユーキさんが動く案件でしたか……。

 

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