卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
「——さて、じゃあ決着をつけようじゃないか。君たちの世界と僕の世界、どちらが上かをね!」
「唐突に仕切り直されても困るんですけど?」
残念ながら、この非常に気まずい状況のままラストバトルに突入するらしい。【フォッダー】を配信してると、こんなのばっかりで本当に困る。
黒幕さんはボクの抗議を無視して、なにやら大魔法めいた呪文をぶつぶつと唱え始めている。どうやら本当に戦いが始まるようですね。
真っ先に突撃するのは神様だ。悠長に詠唱を始めた黒幕さんに接近し、剣を思いっきり振り下ろす。
「【ガードブレイク】!」
防御力を低下させる追加効果を持つ【ナイト】の剣技だ。最初に使っておけば、以降は物理攻撃のダメージが増加する。
棒立ちのまま詠唱していた黒幕さんは回避もせず、打撃をもろに受けて仰向けに叩きつけられる。
けれど——そこで詠唱が完了したのだろう。ぶっ倒れながらも神様めがけて手を突き出し、満を持してスキルの発動を宣言する。
「【シャドーブレイク】!」
その瞬間、黒幕さんとまったく同じ真っ黒な光線が一瞬で神様を貫き、はるか後方まで飛んでいく。……貫通と言っても、すり抜けてるだけなんだけど。
「無効化された!?」
「いやいや、最近流行ってるテクとか調べてないわけ?常識なんだけど?」
「知ってるわけないじゃないか。ボスキャラが当たり前のようにプレイヤーが使っている技を活用したらおかしいだろう?」
確かに。こんな謎空間にいるキャラがプレイヤーの間で流行ってる技を知ってたら、おかしいですよね。
【女神】様の言うとおり、真面目な性格なんだろう。役割を忠実に演じるために、あえて情報を得ることなくこの戦いに臨んでいるらしい。
でも——それでやられちゃうのと、事前に調べておいて対策するのと、どっちがいいんだろうね。
「効かぬ、効かぬぞ!神である我に攻撃は効かーん!」
「【シャドーショット】!【シャドーショット】!当たんないんだけど!?」
前回の戦いでは【女神】様はすぐに状況に対応していたけれど、今回は理屈についてひとかけらも説明していないし、わざわざ説明する必要もない。
AIとしての力をフル活用して粒子の動きを解析すれば、理屈も理解できるかもしれない。けれど、少なくとも人間が知覚できる範囲の情報だけでは、攻撃が回避できる理由にたどり着くことはないだろう。
「《
必死に攻撃を乱射してくる黒幕さんを無視し、神様は〈
「神に不可能はない」
そんな一撃があるなら【女神】戦で使ってくださいよ!って言いたいところだけど……実際にあのとき使用可能だったなら、間違いなく彼は出し惜しみしなかったはずだ。最近生み出された〈
「……今度は最後まで削りきったから、イベント続行不可能とかないですよね?」
そんな懸念が脳裏をよぎったが、どうやら杞憂だったらしい。無事に【ストレージ】に【願いの石】が1つ追加され、クエストが完了したことが暗に告げられた。
けれど、黒幕さんは何をしていたのか。それを倒したことで世界はどう変わったのか。まったくわからない。クソゲー!
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>面倒なシナリオが不評だったのでオミットしてくださったんだぞ。神ゲーだな
>マジかよ敵倒してるだけで全部終わるとか最高じゃん
>魔族は救済されましたか……?
>進行役の女神が逝ったから……
>今クエスト攻略したら女神スキップして黒幕戦行けたわ。やっぱ神ゲーだな
>クソゲーと神ゲーは表裏一体
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「……帰ろっかー」
「そうですね……」
「……一応、【ディスポサル城下町】に寄ってもらえるか?イベントがあるんだ」
アリンドさんもすでにメタ発言を隠そうともしない。本来ならストーリーの流れに従って切り出される話なのだろうけれど、【女神】がいないこの状況では情緒もへったくれもない進行をするしかないらしい。
ポータルを潜って【グレイブウッド】に戻り、そこから【ギルドリターン】で帰還する。最後に【ディスポサル城下町】へのポータルを潜った。
ポータルを通じて広場に出現したボクたちは、1人の男性と邂逅する。魔王だ。そのままアリンドさんとの会話イベントが始まる。
「貴様らのおかげで我らは【女神】の呪縛から解放された。……だが、これまでに我らがやってきたことが帳消しになるわけではないだろうな」
ヒュマデサタンは魔族を統べる王であると同時に人間種でもある。だからこそ彼は、これまで魔族が行ってきた数々の残虐行為がもたらした世界の流れを、最も客観的に見ることができていた。
「……そうだな。おまえは直接今回の事態に関わった。仕方ないことだというのはわかっている。けれど、だからといって実際に被害を受けた人間が納得するかは別の話だ」
人類の味方である勇者アリンドもまた、【女神】に操られていた魔族の真実は理解している。けれど同時に、絶対に変えられない普遍的な事実も指摘する。
そして……傀儡から解放されてもなお、魔族が人間や神々に害をなさないとは限らない。なぜなら彼らは、人類の未来を守るために犠牲にされた人柱だったのだから。であるならば、勇者として為すべき行動はただ1つ——。
「——ならば我を公開処刑にしろ。そして魔族たちは、ここから離れた遠いところに住処を移し、人に関わらず暮らすように命ずる。だから——頼む。彼らを見逃してやってくれ」
そんなヒュマデサタンの決死の覚悟を、アリンドは鼻で笑った。
「はっ。おまえはまだ何もやっていなかっただろう?魔王としても知られていないどこぞの馬の骨を処刑したところで、何も意味がない。
——だから、おまえは魔族と一緒にその住処でおとなしく暮らしていろ。そして……いつの日か、人類と魔族が手を取り合って笑える世界を俺が創ってやる」
「いい話ですね!」
「ここに至るまでの流れがちょっと残念だったけどね?……あっ、ちなみに魔王さんたちはどこで暮らすの?遊びに行っていい?」
「人と関わらずに暮らすと言ったはずだが……?」
「いいじゃん、あかりちゃんは当事者だよ?」
「……【グレイブウッド】だな。かの【女神】が利用していたエリアに間借りさせてもらうことになった。奴がのうのうと生きているのは非常に癪だが、仕方ない。我らに事情があったように、奴にも神という立場における職務があったのだ。人間に許しを乞いでおきながら自分たちは許さぬ、というわけにもいかぬよ」
【女神】様、死んじゃいましたけどね。そのうち代理の【女神】が採用されるんでしょうかね……。
そして最後のイベントも無事終了し、瞬間移動でかき消える魔王様と、日常業務に戻るアリンドさん。何はともあれ、終わりよければすべてよし……かな?
「じゃあ次は魔族の街に行ってみましょうか!クリアで解禁される街であれば面白いものも置いてあるかも!」
そもそもボク、魔族に会ったことがないんですよねー。メインクエストの通常ルートの方ではばんばん暴れるらしいんですけどね。魔王様は魔族じゃないですし。
とりあえずクエスト自体は無事にここで終わったと見ていいので、何人かのメンバーが離脱した。神様は《
なのでボクと一緒に街へ向かうのは、めりいさん、」さん、純白の翼さん。さて、どんな場所なんでしょうか。楽しみです!