卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第204話 魔族の街

 最近よく来る【グレイブウッド】。クエスト達成者用の街もできるみたいですし、ポータルを作っておいたほうがいいですね。【ギルドメニュー】から貢献点を大量消費して、入口に直通するポータルを設置しておいた。すると、生成されたポータルを通じて、すぐさまプレイヤーがどかどかとやってくる。

 

 黒幕討伐にやってきたプレイヤーでしょうね。聞くところによると、今なら【女神】戦をスキップして黒幕に挑めるらしい。なので【願いの石】も手軽に入手できるはずだ。人里離れた隠れ家である魔族の街も、すぐにプレイヤーさんたちに埋め尽くされそうな予感がします。

 

 とはいえ今のところはまだまだ空いているはず。せっかくなので一足先に魔族の街を楽しませていただきましょう。

 

 魔族の街は【グレイブウッド】入口の洞穴を抜けたあと、ポータルを反対側からくぐった先だ。【女神】の拠点と同じ場所らしいですから、合っているはず。

 

 さっそく手順に従って街に突撃してみると、そこは以前に訪れた【女神】の拠点とはまるで違う光景だった。

 

 以前は【グレイブウッド】とほぼほぼ同じ景色だったはずなのだけれど、今、眼下に映る風景は外とまるで変わらない。太陽がさんさんと辺りを照らし、気持ちいい風が鼻をくすぐる。他に特徴的な点としては、とてつもなく大きな木が日当たりを遮らない程度に、まばらに点在しているところだろう。【女神】が環境を整えてくれたのでしょうか?

 

 でも街は一体どこにある?最初はきょろきょろと周囲を探していたのだけど、すぐに気がついた。

 

「わあっ、木の上に家があるんだねー!」

 

 めりぃさんが感嘆の声をあげる。その言葉の通り、少し離れたところに見える大木に目を向けると、一戸建ての家が何軒も枝の上に建ち並んでいる。

 

 風にあおられただけで飛んでいきそうに見えるけれど、アイテムでない家は設置してしまえばその場から動かない。だから安心だ。ってことは普通の木の上にも家を建てられるのかな?

 

 それにしてもなんでわざわざそんなところに家を建てているのか、すごく気になる。何らかの事情でとてつもなく高い特殊な木の上で暮らしているならわかるのだけど、一見すると普通の木に見える。

 

 また、すでに他のプレイヤーもぽつぽつと辺りを探索しているのが見える。ボクたちが黒幕を倒してからだらだらしているうちに、先を越されてしまったらしい。別に先を越されたところで、最初にたどり着いた人の称号みたいなのがあるわけでもない。配信さえ先を越されなければまったく問題ない。

 

 さて、まずは魔族の人と会話でもしてみようと思ったのだけど……。

 

「あ、みてみてー。あのおうち、おみせみたいだよ?」

 

 」さんが言う方向を見てみると、たしかになにかのお店があるようだ。ポーションやら武器やら、いろんな絵がごった煮みたいに描かれた看板が置かれている。なんでも売ってるのかな?

 

 この段階でプレイヤーメイドの店が建てられているということはないだろうし、【マップ】を見る限り、あの店は初期配置の建物だと確認できる。それではあの店に行ってみましょうか!

 

 ボクは【エアジャンプ】でぴょんぴょん跳ねて、」さんは【オネイロス】の力で、めりぃさんは巨大な精霊さんに飛び乗って、純白の翼さんは精霊に相乗り——それぞれ思い思いの方法で木の上に登っていく。

 

 枝に飛び乗って建物を観察し、何らかのお店であることを再確認したうえで、勢いよく入店する。【黄金の才(ユニークスキル)】の性質上、」さんが当然のように先にたどり着き、すでに店の中に入っている。先を越されましたね。

 

 」さんが開いた両開きの扉をくぐってすぐ、思わずその光景に圧倒される。

 

「すごい……まったく整理されてない!」

 

 剣の隣にポーションが置いてあって、その隣に箒が置いてある。箒の上にはいくつもの携帯食料が無造作に重ねられていて、目的のものを探すのに一苦労しそうな有様だ。

 

 【モーションアシスト】を活用すれば、例えば剣が欲しいなーと考えれば見つけられるんだろうけど……。

 

「いらっしゃい!!あっ!!人間さんだ!!!来てくれてありがとう!!!」

 

 ごちゃごちゃとした物置の奥から現れたのは翼の生えた人間だった。肌が少し青白い気がするけど、異形や転生モンスターが跋扈している世の中では余裕で人間で通るに違いない。

 

「きたよきたよー!ここってお店なんだよねー?なんかおすすめのアイテムとかあるー?」

 

「めりぃさん、おすすめって言ってもこんなにいろいろあったら絞れないよー」

 

「そっかそっか。じゃあ武器や防具じゃなくてアイテムとかでー!」

 

「おすすめ?あるよ!!この万華鏡とかどう??」

 

 そう言って店員さんが見せてくれたのは手のひらサイズの万華鏡の筒。なにかのマジックアイテムなのかな?

 

「この【万華鏡】は魔族特製!!人間さんが喜ぶすごい効果があるよ!!!」

 

「すごい効果ー?なにそれ気になるー!」

 

「この万華鏡はね!!」

 

「うんうん」

 

「覗くとすごいきれいなんだよ!!!」

 

「すごいー!きらきら輝いて見えるー!」

 

 普通の万華鏡でした。それでもめりぃさんは喜んで、くるくると筒を回しながら眺めている。こういうきゅーとな反応はすごい配信ウケしそうですよね。

 

 でもボクは残念ながらゲーマー……。擦れちまってるんですよ……!なんか効果とかないんですか!?ロールプレイ特化にも限度がありますよ!

 

 と言いつつも、ボクもめりぃさんから【万華鏡】を受け取って覗いてみる。

 

「あ、これすごい!【万華鏡】って言ってるのに対称じゃない!でもどことなくそれっぽい!」

 

 一見すると対称に見えるのだけど、間違い探しのように細かい点が違って見える。面白いけれど、誰が何を考えて、何のために作ったアイテムなのだろうか。

 

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>それって本当に万華鏡なんですか?

 

>万華鏡っぽい光景が見える謎のアイテム

 

>オーバーテクノロジーなオーパーツだぞ

 

>と見せかけてただ映像が映ってるだけだったら笑う

 

>分解してみたい

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「すごいでしょ!!!」

 

「すごいねー!」

 

「」にもみせて!」

 

 4人で【万華鏡】トークに大盛り上がりする傍ら、純白の翼さんはそれを軽くスルーし、ごちゃごちゃになった倉庫を探索していた。やっぱり彼女は実用性のあるアイテムのほうが好みですよね。

 

「お、これいいじゃん。未鑑定の盾が転がってる。買うよ」

 

「はい!!!お安くしておきますよ!!!」

 

「未鑑定の装備なんてのもあるんですね。本当にごちゃまぜのお店ですけど、なにか理由があるんですか?」

 

「ここはね、【ストレージ】のゴミ箱に捨てられたアイテムを売ってます!!!」

 

 ふんす、と腰に手を当て、自信満々に宣言する店員さん。なるほど。となるとあの未鑑定装備も、効果だけ確認したうえで捨てられてしまったアイテムなんでしょうね……。

 

 つまり性能としては産廃品である可能性も高い。だけど純白の翼さんはほんの一瞬逡巡したものの、購入を決めたようだ。下手をするとそこらの店で効果なしの装備を買うのと同じくらいの値段みたいだしね。それなら外れ効果でもスキルがついてるほうがお得だろう。

 

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