卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

218 / 542
第211話 死教徒

 【ジュエルラビット】がただ集まっているだけで無敵の城塞が築かれている現状だけど、うさぎハンター側も負けてはいない。うさぎを陣地から外に追い出せばいいのだから。«疾風迅雷»類似の【マクロ】で瞬間的に陣内へ侵入したプレイヤーは、うさぎさんをひょいと抱えて誘拐しようとしている。

 

 しかしそこでめりぃさんの【アンカー】が発動する。離れるほどに速度が遅くなるこのスキルを受けたプレイヤーは必死にエリア外へ抜け出そうとするが、完全に他のプレイヤーの格好の的だ。そこに【ビショップ】たちの回復魔法が容赦なく浴びせられる。

 

 本来なら味方を回復するためのスキルの持ち主である【ビショップ】だが、(ビルド)によっては強力な攻撃役(アタッカー)ともなり得る。それが【死神の加護】を用いた(ビルド)、『死教徒(デスビショップ)』!

 

【死神の加護】

[パッシブ][信仰][条件:他信仰未取得]

[自身]の[発動][する][回復]は[敵][キャラクター]に[反転]して[適用]される。

この[効果]が[適用]された[回復]は[闇属性]として扱う。

 

 【先取りの加護】で一瞬にして撃ち放たれる、本来詠唱時間(キャストタイム)20秒の大回復魔法だ。それを3発も4発も受けて無事で済むはずがない。さらに当然のように【シャラップ】で詠唱時間(キャストタイム)を踏み倒した追撃も入り、愚かな誘拐犯はあっけなく蒸発した。

 

 ただでさえ〈トンネル避け〉が氾濫している現環境で、仮に攻撃が命中してもダメージを与えられない大結界だ。勝ち目がないと判断したうさぎハンターは次々と撤退していく。今回はめりぃさんたちの勝利みたいですね。

 

「勝ったー!」

 

 大喜びしているうさぎ防衛軍のもとへ向かって事情を聞いてみると、やはり想像通りの流れが起きていたらしい。

 

 といっても防衛軍側も別に本気で動物愛護の精神でうさぎ狩りを阻止したいというわけではないらしく、わざわざプレイヤーが可愛がっている最中のうさぎさんに狙いを定めたハンターに反発しただけらしい。まあ、うさぎさんが可愛いから倒さない!なんて言ってたらゴブリンさんや狼さんがかわいそうですしね。

 

「じゃあ後は解散で防衛軍のお仕事は終わりなんですか?」

 

「そだね。密集してるだけでダメ無効できるんなら放置でも結構生きそうじゃん?……にしても、こりゃ結構研究のしがいがあるかも。モンスも職業(クラス)取得できるんだ」

 

「まあ、連れ去られたらやられちゃうから時間の問題だよねー」

 

 ボクはうさぎさんを抱えて癒やされつつ、純白の翼さんとめりぃさんの話に耳を傾けていた。そういえばコメント欄でも言及されてたけど、モンスターって持ち帰ってもいいのかな?家に持って帰って室内飼いしちゃおうかな、なーんて。

 

「あ、職業(クラス)が覚えられるってことはレベ上げできんのかな?試していい?」

 

「それだー!名付けてうさぎさんをレベル上げしてプレイヤーに対抗させちゃおう大作戦ー!」

 

「最悪のMPKかな?」

 

----

>これは極悪犯罪プレイヤー

 

>モンスターに殺させるなら犯罪じゃない。これがゲームだ

 

>うさぎさんがフォッダーのプレイヤー業界に殴り込みに来るらしい

 

>俺も今からディバインゴーレムを育成してくるわ

----

 

 めりぃさんのすぺしゃるな作戦に防衛軍の方々も賛同し、さっそくレベルを上げてみることに決まったらしい。といってもこの魔族の街エリアにはうさぎさんや猫さん以外のモンスターは見つかっていない。同士討ちで蠱毒を形成させるのは……さすがに絵面が最悪ですね。

 

「俺に任せろ!」

 

 そこで颯爽と宣言する男性プレイヤーがいた。防衛軍に参加していた方のようだけど……見覚えがある。一本の刀で二刀流をする謎のロールプレイヤー。某アニメキャラが着ていたのとまったく同じ黒い服装で戦場を駆け抜ける【ナイト】!

 

「キリトさん!!!」

 

「俺が全武装を解除してうさぎに殺される!見ておけ!」

 

「キリトさん???」

 

 初期装備の布の服に換装したキリトさんはうさぎの群れに突撃し、【タウント】を発動!

 

 人懐っこうさぎといってもシステムとして攻撃を誘発させるこのスキルから逃れることはできない。一斉にキリトさんに集まったうさぎさんは、じゃれてるのと大差ない体当たりを繰り返し、じわじわとHPを減少させていく。

 

「うわー、すごい勢いでHP減ってますね。初期装備と言っても脆すぎじゃないですか?」

 

「AGIに特化してるからな。VITなんて躱せば死にステータスだぜ」

 

 などと言いつつHPを全損させて消滅していくキリトさん。さて、レベルは上がったかな?

 

 【サイキック】にクラスチェンジして【マインドハック】によってステータスを開かせると……上がってるようですね。PKによる経験値取得は効率としてはかなり残念な部類なのですが、さすがにレベル1が最上級の主人公であるキリトさんを撃破すればレベルくらい上がりますよね。

 

「よーし、みんなー!死ぬよー!」

 

『おー!』

 

----

>地獄絵図で草

 

>半分放送事故だろ

 

>全部放送事故だぞ

 

>これ逆にうさぎさんがかわいそうすぎない?

 

>動物虐待やめろ!!

----

 

 さて、何度もみなさんが倒され続けたことで、うさぎさんたちは【ビショップ】のエリアスキルをいくつも取得した。猫さんも【支配領域】を持っているようだし、同じように【ビショップ】スキルで固めていく。

 

 

「次はコメットに連れて行ってレベル上げしよー!」

 

『おー!』

 

 そして防衛隊の皆さんは魔族の街から集団で動物たちを引き連れて町の外へ。【グレイブウッド】を抜けて【ディスポサル城下町】へ徒歩で向かう。傍から見るとやばい集団にしか見えない。ボクはさりげなく他人のフリをしつつ、距離を取りながらも配信を続けていく。

 

----

>通り道のモンスターが蹂躙されていく……

 

>モンスター虐待反対!!

 

>うさぎと猫以外に人権はないぞ

 

>この世の終わりみたいな光景だ……

----

 

 別に彼らは普通に行進しているだけなのに、襲い掛かってくるモンスターには、エリア内の味方が攻撃されたときに発動する【応報の奇跡】が自動で反応する。反撃が何重にも発生し、襲ってきたモンスターは一瞬にして木っ端微塵に消滅する。おまけにこのスキルはキャラクターに対して発動するので〈トンネル避け〉も貫通だ。6人の【パーティ】戦ならともかく【レギオン】で闘うなら最強の構築と見て間違いない。

 

 これらのスキルは『味方』……つまり【パーティ】あるいは【A−YS】のシステムである【レギオン】のメンバーを対象にする。

 

 うさぎさんたちは当然のように【A−YS】から持ち込んだスマホを経由して戦略(スタイル)を獲得しており、同時に【レギオン】も解禁済み。下手をすると触れただけで蒸発しかねない危険集団が生まれてしまった……。

 




テクニックその97 『アドクラス』
スキルを取得する、職業(クラス)を取得するという行動パターンを持たないモンスターであっても、代わりにプレイヤーが操作して取得させてあげれば覚えてくれます!
今回は一般モンスターでしたが、地味に使い勝手が良さそうなテクニックですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。