卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第213話 テセウスの船

「で、この半分になった石の断面を合わせると自動的に溶着されるにゃん」

「な、なるほど。1アイテムで3役を果たせるということですか」

 仕組みはすごいけれど、【アイテムマスター】なら3つ持っていけばいいだけだから関係ないかな?

「のんのん、それだけでは終わらないにゃん!このアイテムは1度分解して再構成すれば、効果こそ同じだけれど別のアイテムとして扱われる……この意味がわかるかにゃ?」

「別のアイテムとして扱われる……?」

 同じ効果のアイテムになるのなら、システムの判定として別のアイテムになるということですよね……?

 たとえばポーションなら、1度使用すれば同名アイテムのすべてに再使用時間(リキャストタイム)が同時に適用される。けれどこういった付与効果付きのアイテムは原則として一品もの。それがもし分解と結合という過程で別のアイテムとして扱われるのであれば……。

「30分の再使用時間(リキャストタイム)を踏み倒すことができる……?」

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>実質的にクラスでスキルを獲得しているのとまるで変わらない状態で使えるわけか

>下手するとクラス側は30秒のリキャストタイムがあるからそっちより早く撃ち込めるぞ

>やべーなこの石。欲しい

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「なるほど、すごいアイテムですね。ただ……このアイテムに付いているスキルはさすがに魔法職業(クラス)の【メイジ】であるボクとはシナジーがないですね。他の効果のものはないんですか?」

「石は簡単に作れるけど、付与効果自体は新しいフォルダさんの方でガチャになってしまうから……。なかなか理想の効果は出ないにゃん。一応他にもいくつかあるけれど……」

 そう言って猫ですさんは他の石をいくつか見せてくれる。【三つ葉のクローバー】で3連ガチャを引かないといけない以上、理想的な組み合わせはなかなか揃わない、といったところですね。

 いつか魔法系の石が出たら取り置きしてください!とお願いしておいて、今回は購入を諦めることに。味方を強化するのにも使えるわけだから買っておいて損はないけれど、やっぱり最大限に活用できるプレイヤーに使ってほしいよね。

 というわけで視聴者さんにこういうアイテムが今売ってますよ!と宣伝した上で、資材コーナーを見に行く。かなり有用なエンチャントですし、オークションでも始まるかもしれませんね。

 こっちは【ディバインゴーレムの欠片】や【ウッドゴーレムの欠片】、あるいはただの木材といった生産に使えそうな素材がいくつも集まっている。いま挙げたのは建築用の素材だけど、もちろんモンスターの牙や毛皮なども含めてさまざまな素材が揃っている。ただ、買い取ったアイテムを並べているだけのようなので、特別な改良が施された品があるわけではないけれど……。これらの素材で何を作れるか、想像しているだけで楽しめそうです。

 とりあえずそのあたりの建築素材は購入して、他になにか珍しい素材はないかな、と見て回っていると素材置き場には似つかわしくない存在がいた。

 ふわふわと台の上を漂う妖精さん。ちょうちょみたいな羽をぱたぱたさせてホバリングしながらこちらに手を振っている。

「その子は【ロジング砂漠】にいる【フェアリークイーン】がドロップするアイテムにゃん。置き場に座ってられなくて、すぐに遊びに行っちゃう困った子なのですにゃん」

 【ロジング砂漠】……。この前のアップデートで追加された国家にあるエリアでしょうね。行ったことはないんですけど。それはともかく、衝撃的な事実がここで判明した。

「この子、アイテムなんですか……?」

 キャラクターとアイテムの境目がわからなくなってきた。試しに【マインドハック】を送ってみたけれど失敗した。というか、発動すらしない。キャラクターを対象にするスキルが発動しないのだから、純粋なアイテムであることは間違いないらしい。

 どうやって素材にするんでしょう……。いや、このままの形で使えるアイテムなのかな。せっかくなので購入してみることに。購入を決めた途端、妖精さんはふわふわーっと羽ばたいてボクの肩に飛び乗り、すとんと腰を下ろす。かわいい。

 人差し指でなでなでしてあげて、そのまま肩に乗せたまま店を出る。入れ替わりにプレイヤーの集団が【アイテムショップ】に入場していった。おそらく石が目当てでしょうね。

 さて、建築素材(+妖精さん)は揃ったけど、1つ困ったことがある。それはこれらのアイテムを使って何を作ればいいのか、さっぱり見当がつかないということ。

 お店を建ててなにか面白い商品でも売るのが街の発展としては一番簡単だけど、あいにくボクはそこまでショップ経営に特化する気はない。

 聞くところによると、バイトのNPCや【A-YS】産の工業機械を雇ってアイテム生産や販売を代行させているところもあるらしい。けれど、それでも唯一無二の個性がなければ十把ひとからげのお店の域を出ない。

 理想はまさにシルヴィさんのコメット。建てるだけでみんなが勝手に利用してくれる不労所得!加えてレベル上げの常識を塗り替える超効率の仕組みまで作り出しているのだから完璧だ。あのレベルの施設を建てれば間違いなく魔族の街の開拓・発展に対する最高の貢献と言えるだろう。

「でもねえ。そんなアイディアがぽーんと出てきたら苦労しないんですよ。なんかみなさんアイディアあります?作りますよ?」

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>アイディアと仕組みがあればモーションアシストで自分で作れるし言うわけないんだよなあ

>いっそ数で勝負とかどうよ。武器屋も防具屋もアイテム屋も全部建てろ

>そもそも施設立てれば発展という発想がおかしい。なんかあるだろなんか!

>でもマップ埋めて開拓に貢献!とか森林伐採しました!とか地味すぎない?

>総合評価で考えるなら地道な活動全部やった奴に勝ちの目があるかも

>NPCの人の主観評価って時点で少なからずインパクトある偉業が有利なんだよなあ

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 さまざまな議論が飛び交うコメント欄。やはり勝利条件が非常に曖昧なのが面白いですよね。極端な話、ボクが報酬を出して大イベントを開いて一時的に大盛り上がり!なーんて流れでも発展に貢献していると言えるわけだ。必ずしもなんか施設を建てる!アイテムを売る!なんて発想に執着する必要はない。

 ならばどうするか。コメント欄を見ると、なかなかに鋭い意見があることに気づく。

 そう、全部をやればいいのだ!

 




テクニックその98 『テセウスの船』
一度分解されて組み直されたアイテムは同じ効果を持ちながらも違うアイテムとして扱われる……。
つまり、使用したという目印である再使用時間(リキャストタイム)も初期化され、実質的に踏み倒すことができる!
その割には効果自体は欠けさえなければ同じ効果となるので無敵ですが、いかんせん厳選の難易度が高いのが欠点ですね。
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