卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第217話 観測回避

 戦闘中に忽然と姿を消した対戦相手——にもかかわらず、【メテオ】や【アクアショット】といった様々な攻撃が2人に撃ち込まれていく。

 

「【アクアショット】は投射攻撃。ってことはあの攻撃が出現した位置にいるはずっ!」

 

 灑智が槍を全力で投擲する。風を切って真っ直ぐ突き進む槍は、敵に命中した気配もなく空間をすり抜けていった。灑智は即座に装備解除を選択し、槍に込められた呪いを発動させて手元に引き寄せる。

 

「当たりませんでしたね……」

 

「見えないけれど、どこかにいるはずなのは間違いないよ。【モーションアシスト】への指示を変えてみて!」

 

 とがみんが灑智に助言しているそのとき、見えない敵がスキルを発動させる。女性の声だ。

 

「〈森羅万象遍く世界に等しく広がる大地の加護よ、集いて染まり、呪詛を成せ〉【グラビティー】!」

 

 

 土属性中級魔法、【グラビティー】。【女神】も使っていた土属性魔法だ。彼女はあくまでエリアに対する攻撃として使っていたようだけど、このスキルの真価はそこにはない。

 

【グラビティー】

[アクティブ][座標][エリア][土属性][攻撃][物理][魔法]

消費MP:6 詠唱時間:20s 再詠唱時間:30s 効果時間:30s

効果:[座標]を[起点]として[エリア]を[形成]し、[範囲]の[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。[空中]の[キャラクター]に対して[ダメージ]を[増加]させる。[命中時][対象]は[地上]に[移動]し、[効果時間中][滞空]できない。

 

 その正体は、空中のキャラクターを強制的に地上へ叩きつける対空魔法!もしこのゲームが無限にジャンプできるようなゲームでなかったならば、飛行型のモンスターにしか効果がない産廃スキルであっただろう。

 

 

 しかし今や、あらゆるプレイヤーがあらゆる手段で宙を舞う現環境において——この効果は最悪のメタスキルとなる。

 

 多大な重力が発生し、【空神の加護】の効力まで上乗せされて、急激に落下していく灑智ととがみん。

 

「槍を投げて!」

 

「わかりました!敵に当たれ!1本ずつ!」

 

 灑智は落下しつつも、狙いを定めずに2本の槍を投擲する【モーションアシスト】は〈全知のアシスト〉。DEXに特化している灑智が投擲した槍は、大きくカーブを描きながら軌道を変え、何もないはずの空を一直線に狙う。

 

「【ジュエルシールド】!」

 

 とがみんは【アストラルプロジェクション】を解除して意識を肉体に戻し、地面に柔らかな【ジュエルシールド】を発生させることで、落下ダメージを大きく軽減する。その直後に神聖な回復の光——【アルティマヒーリング】が2人の身を包み込む。

 

 とがみんか灑智のスキル……じゃないですね。あれはまさか、【ジュエルシールド】……!

 

【ジュエルシールド】

[アクティブ][召喚]

消費MP:6 詠唱時間:2.5s 再詠唱時間:30s 効果時間:30s

効果:[自身]の[ステータス]に[依存]した[耐久]を持つ[障壁]を[召喚]する。

 

 【ジュエルシールド】は一見するとただの壁に見えるが、システム上では召喚モンスターだ。つまり〈アドクラス〉によって職業(クラス)を獲得させられるということですか。自らの意思を持つようには見えないし、あり得ないと思いましたが……恐らくは【マインドハック】を通じてスキルの発動指令を送り込めるのでしょう。

 

 一方で灑智が放った槍は空を突き抜け——何もない空間にHPバーが表示される。キャラクターにダメージを与えた証だ。つまり、あのゲージの下に対戦相手がいる!

 

 ただしHPゲージが浮かぶのは空の彼方。逆に灑智ととがみんは【グラビティー】によって約30秒間は空を飛ぶことができない。

 

「それなら、お相手さんにも降りてもらおっか♥【シェアリング】!」

 

「それなら私もっ!【シェアリング】!」

 

 自身の法外(デバフ)を相手と共有する【サイキック】の十八番、【シェアリング】。2人はそれぞれ別のキャラクターに自身が受けた『滞空不可』の妨害(デバフ)を移した。これによって2本のHPゲージは急速に地上へ向けて落下していく。

 

「くそっ、やっパリゲージが見えるダケで封殺されるか……」

 

「【エアジャンプ】!だめだぁ……落下ダメージで終わりだよぉ……降参!降参!」

 

【ゲームセット WIN:✝灑智✝&屠神 荒罹崇 LOSE:まほーしょーじょ&アンドロイド『電気羊』】

 

 

 相手に落下ダメージを押し付けようとする一方で、自分たちは対策を用意できていなかったみたいですね。特異な戦術を使う割にはあっけなく幕引きとなったようです。【マクロ】で慣性を消せば生き残る目はあったかと思いますが、自らの戦術を押し付けられなかった時点で勝敗は見えている、か。

 

 にしても透明になったときにはどうなるかと思いましたが、システム的な表示であるHPゲージまでは隠しきれなかったのが惜しいですね。

 

 恐らくは〈トンネル避け〉の要領で光を透過することによって姿を消していたのでしょう。

 

 しかし気になる点もある。バトル開始直後には発動していなかったこと、そして発動直前の会話から推測するに、明らかに男性プレイヤーの側が発動の基点になっているように見えたことだ。もしかすると、あくまでその仕組みは表面的なものであって何か別の意図があったのかもしれないけれど——外から眺めた限りでは、これ以上わかることはありませんね。

 

 なんにせよ、一瞬だけ面を喰らいましたが〈全知のアシスト〉であれば最適解によってキャラクターの位置を知らずとも攻撃することができる。【フォッダー】界隈においては戦術としてミスマッチだったのでしょう。

 

 

 1戦目は衝撃的な試合運びだったけれど、それ以降の試合は〈トンネル避け〉によって封殺された一部の攻撃が使用されないだけのオーソドックスな戦いだ。

 

 戦いを観察している限りではDEXに振っているプレイヤーが増えているように見える。投射攻撃は敵を追尾して〈トンネル避け〉を貫通するし、モーションを変化させた特殊な攻撃スキルも一般化している。その代わり火力の方が減少傾向にあり、全体的に試合が長時間化している……といったところかな?

 

 近接攻撃役(アタッカー)はDEXに数値を割り振らなくても攻撃を当てることができるので、そちら側のプレイヤーについては火力に変化がない。近接攻撃役(アタッカー)のスキルは詠唱時間(キャストタイム)が短い代わりに魔法に比べると威力が低いのだけど、相対的に見れば現環境では優位に立っていると考えられますね。

 

 そしてその後も2人はテンポよく勝ち進んでいき、準決勝へ。どうやら対戦相手は知り合いのようです。

 




テクニックその99 『観測回避』
生き物はどう言った理屈により相手を視界に収め観測しているか。それさえわかっていれば至極当たり前の発想でしょう。光を避けてしまえば視界に映る事も無くぱーふぇくとな戦い方が可能!一見すると無敵にも思えるテクニックですが、〈全知のアシスト〉には勝てません。こんな無敵の戦い方が時代遅れになってしまうという【フォッダー】とかいう魔境。
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