卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第218話 縁の下の音楽家

「おっさんと猫姫さんですねっ?お姉さまがいつもお世話になっていますっ!」

 

「あら?卍さんの妹さん達ですわね。しかし、容赦はしませんのよ?」

 

「妹君とは【A−YS】以来かな。そして噂の第2人格。マジ卍だね。撫でていい?」

 

「よろしくね♥でも、わたしのカラダは男の子には触らせてあげられないかなー」

 

 

 2人の対戦相手はおっさんと猫姫さんだ。おっさんは【A−YS】ガチ勢なだけあって、熟練度(プレイヤースキル)も高いし、猫姫さんは料理付与(バフ)によって純粋にステータスや能力を引き上げてくる。強敵ですね。

 

 ボクとしては、よく見るメンツが勢揃いといった光景なんですけど、意外と彼女らの面識は深くはない。それでもボクの配信を通じて互いのことはわかっているので、準決勝にしては和気あいあいとした会話が行われているようです。

 

【START!!】

 

 しかし、一度(ひとたび)試合が始まれば、そんなほんわかとした雰囲気は瞬時に霧散し、真剣な勝負が始まる。

 

 おっさんはまず、紙でできた家を地面から召喚することで陣地を確保する。〈トンネル避け〉が『Tier1』となった現環境であっても【ホームリターン】の利便性は健在だ。相手が地上にいるならば【空神の加護】で攻撃を仕掛けることができるし、必須とまでは言わなくとも、安定の初手だろう。それと同時に、おっさんは【フレキシブルアップ】による付与(バフ)を追加した。【範囲付与】の受動(パッシブ)によって猫姫さんとおっさん、2人の『フレキシビリティ』が増加する。

 

 一方で灑智たち『くーてく』チームは家の召喚を主体としない戦法を取った。ベッドに飛び乗って宙に浮かび、【ホーム】で高さを確保したおっさんたちのさらに上を取る。

 

 そこから〘リアルステーション〙によってのみ発揮される異次元の投擲法により、凄まじい速度で2本の槍が放たれる!【ナイト】の付与(バフ)スキル、【シャープウェポン】によって威力を高められた魔槍は弾丸の如き速度でおっさんの身体に迫り——。

 

「——【ディヴィジョン】」

 

 猫姫さんによるスキルの発動が宣言されるとともに、あっけなく弾かれてしまう。

 

「なんですかっ、あのスキルは!?」

 

「【アサシン】のスキルだね。……相変わらずどこが【アサシン】なんだか全くわかんないよね♥」

 

【ディヴィジョン】

[アクティブ][支援]

詠唱時間:0s 再詠唱時間:480s

効果:[攻撃]を[受けた][直後]に[発動]できる。[攻撃]を[無効]にする。

 

 位置を入れ替える【シフトチェンジ】に分身を召喚する【ユビキタス】……。確かにトリッキーな技を使いそうな職業(クラス)名ではありますが、脈絡がなくて面白いですよね。

 

 灑智は弾かれた槍を即座に回収するが、お返しとばかりにおっさんが動く。

 

「【エアーマシンガン】!」

 

 カラフルな色をした杖を相手に向けると、恐るべき勢いで連続発射される風属性のマシンガン。連続攻撃を主体とする風【メイジ】の極致ともいえるスキルだ。【フレキシブルアップ】の効果によって巧みに操作された弾丸は、ベッドに乗って飛び回る灑智たちに嵐の如く迫り続ける。

 

「威力は低いよ!避けようとするよりは無視したほうがいいかも!」

 

「わかりましたっ!」

 

 灑智は回避を諦め、弾丸は無視しておっさんたちのいる屋根を目掛けてベッドを向かわせる。そんな2人に【エアーマシンガン】が連続で命中していく。確かにダメージは低いのだけど——風属性特有のやらしい戦術が2人を侵食していく。

 

 ——毒だ。

 

【毒牙の法】

[パッシブ][スイッチ]

効果:[攻撃]に以下の[効果]を[追加]する。

[妨害][毒]

効果時間:4m

効果:[確率]で[キャラクター]を[毒][状態]にする。[既]に[効果]が[適用]されている[場合]は[毒]の[出力]を[増加]させる。

 

 攻撃時に確率で妨害(デバフ)や効果を発生させる受動(パッシブ)スキルを、絶大な連続攻撃によって重ねがけしていく——風属性の得意とする凶悪な戦法だ。

 

 とはいえ即座に瀕死に追い込まれるような妨害(デバフ)ではない。【エアーマシンガン】の威力もたかが知れたものだ。だがこの戦いは【ダブル杯】——味方との連携が肝となる。

 

「さあ、行きますの!【追撃のカノン】!」

 

 【バード】の十八番、【追撃のカノン】はダメージが発生したときに追撃が発生する。今まで何度も活躍していたスキルだけど、【エアーマシンガン】との相性は最高峰!ゴミみたいなダメージでも追撃が自動的に発生し、凄まじい速度でHPゲージを削り取っていく。

 

【追撃のカノン】

[アクティブ][聴覚][詠唱中][支援][魔法][攻撃][演奏]

消費MP:6 詠唱時間:20s 再詠唱時間:30s

効果:

[詠唱中]:[ダメージ][発生時]、[追加][ダメージ]を[発生]させる。

[詠唱後]:[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。

 

 しかしそれでも即座にHPが削り切られるほどではない。ダメージを厭わず灑智は突っ込んでいき、ベッドは猫姫さんに肉薄する。戦術の中核を担う猫姫さんの撃破——それが灑智たちにとっての勝利条件だ。

 

「【シェアリング】【ガードブレイク】!」

 

 槍を思い切り猫姫さんに向けて突き出しながら、ベッドごと突撃する灑智。カノンを維持しつつ避けようとする猫姫さんだが——ほんの一瞬だけスキルの発動に遅れが発生する。

 

 とがみんの【マインドハック】の影響だ。『何もしない』というアシストに対する命令を強引に差し込まれた猫姫さんは無防備に槍を受け、勢いよく跳ね飛ばされる。演奏も中断された。

 

 そのまま吹っ飛んだ猫姫さんに追撃に向かおうとするが……。

 

「——職業(クラス)チェンジ・【ナイト】。そして【アンカー】だ。最近のナウい使い方とは違うけどね?」

 

 すかさずおっさんの【アンカー】が発動し、2人をその場に縫い止める。

 

 そう、これが【アンカー】本来の使い方だ。【ナイト】を無視して追撃をしようとするプレイヤーに多大な妨害(デバフ)をかけ、味方を守る。基本となる使い方でありつつも、誰もそんな使い方をしていない。【フォッダー】においては古典と化した廃れた戦法が、2人に圧力をかける。

 

 【アンカー】の効果を受けた2人は、妨害(デバフ)を受けたまま猫姫さんを仕留めに行くか、先におっさんを仕留めるか。選ばなければならない。もちろん妨害(デバフ)を解除するという選択もあるけれど、【アイテムマスター】ではない2人は治療ポーションを取り出す際に隙ができてしまう。

 

 一瞬の逡巡の後、2人はおっさんにターゲットを切り替える。とがみんは【ジュエルシールド】を呼び出して、詠唱時間(キャストタイム)を破棄しつつ【ミラクルファウンテン】を発動させる。灑智もまた、HP吸収効果が付加されたスキルによっておっさんに打撃を加えようとするが、再び攻撃は完全に無効化された。いや、これはもしかして——。

 

「【誘いのレクイエム】——わたくしを放置なんて酷いんじゃありません?」

 

 ダメージの遅延効果を発揮させる【バード】のスキル、【誘いのレクイエム】!最近めっきり使っていないボクの【ミュージックハウス】にも収録されているとっておきの楽曲だ。

 

 【ミュージックハウス】の音楽は周囲に無差別に鳴り響くけれど、本家本元である【バード】のスキルは効果を受けるキャラクターをフィルタリングできる。攻撃を先送りにしたおっさんは、ベッドを正面から強引に受け止め、隙だらけの灑智に【ガードブレイク】を叩き込む。直後に4連続の追加ダメージがバチバチと音を立てながら発生し、灑智のHPを一撃で全損させた。

 

 そこからは【ダブル杯】の王道を綺麗になぞる試合展開だった。先に味方を失った側が劣勢に立たされる。2人のチームワークによってそのまま、とがみんも圧殺されて試合は終了。残念ながら優勝は叶わなかった。

 

【ゲームセット WIN:✝聖天使猫姫✝&おっ LOSE:✝灑智✝&屠神 荒罹崇】

 

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